本日の作品;vol.62 ・Thelonious Monk;Brilliant Corners [デジタル化格闘記]

これまで多くのピアニストを紹介してきましたが、まだ登場してない大物のピアニスト。

これまで何回か書こうとして来たのですが、この人、人間も変わっているのだけど、そのピアノのスタイルもかなり変わっている。

子供がピアノを悪戯で弾いているように聴こえることもしばしなので、ご存じでない方は”なんだこの変なピアニスト”となりかねない。[がく~(落胆した顔)]

そんな訳で、ちょと取り上げるのには躊躇いがあったのですけど、意を決してお話を始めることにいたしました。[人影]

       

そのピアニストの名は、Thelonious Monk(セロニアス・モンク)。

バップの高僧といわれ、多くのジャズの名曲を残し、ジャズの世界に大きな影響を残した偉大なるアーティストなのです。

そして、ご紹介する作品は、”Brilliant Corners”。

1941年には、ハードバップの発祥地といわれるミントン・ハウスのお抱えピアニストとして、活躍していたモンク。

ところが、その余りにもユニークなピアのスタイルためか、そのレコーディングの数は、当時すでに活躍していた盟友、バド・パウェルに比べるとほんの僅かしか残されていないのです。

その才能を見抜きモンクに最良のレコーディング機会を与えたのが、当時リバーサイド・レコードを主宰していたオリオンキープニューズでした。

1955年、そのリバーサイドレコードと契約、当時最高のミュージャンを揃え、1956年、満を持して制作されたのがこの作品”Brilliant Corners”なのです。

それでは、そのモンクのちょっと風変わりなスタイルをご覧ください。



いかがですか。

この風変わりなご人、レコーディングなどのエピソードも多いのです。

コンサートでの演奏中、自分のパートを終えると、モンク氏、舞台から消えてしまった。
他のメンバーが長々とソロを続けているのだけどモンク氏は戻ってこない。

どこに行ったのかと関係者が探しに行ったら、なんと楽屋でお食事中。
菜食主義者のモンクさん、サラダを召し上がっていたとか。



そうしたエピソードの中で名高いのが、1954年X'masイブのマイルス・ディビスとのレコーディングでの逸話。
現在、X'masセッションとか喧嘩セッションと言われている出来事なのです。

このセッションで、マイルスがモンクに、自分のソロの時はピアノを弾かないでくれと言ったところ、モンクが怒ってマイルスのソロのバックではピアノを弾かないばかりかピアノの横で寝てしまった。

そのうえ、The Man I Loveの演奏では、モンク氏ソロのパートで突然ピアノを弾くの止めてしまい、怒ったマイルスが間髪いれずトランペットを鳴らしピアノを弾くよう即したのだとか。



実際は、後年マイルスが語っているように、モンクのピアノがホーン的なので、演出上ピアノを弾かないよう依頼をし、モンクもこれを了承していたとのことなのですが。

この話、この演奏の白熱した雰囲気を聴いた評論家達が、マイルスが先輩のモンクに注文を付けたことによって両者の間に確執が生まれたものと解し、流布されたものだというのが事実のようなのです。

この日の演奏、マイルス・デイビスの”Bag's Groove”と”Modern Jazz Giants”で聴くことができるのですが、こういう逸話、モンクならばあり得ないことではないと伝説化して今も語られてしまっている、それは、やはり日頃から奇行がらみのエピソードが多かった、モンクならのことではないでしょうか。

       


このモンク初の大型コンボによるこの作品、収録曲5曲中、4曲がモンクのオリジナル。
Brilliant Corners、 Pannonica、 Bemsha Swing など、このアルバムで初めて演奏され、後に多くのジャズメンに取り上げられるようになる名曲が並んでいることからも、そのレコーディングへの並々ならぬ意気込みが感じられます。

さらに、共演ミュージシャンも、Ernie Henry (as) Sonny Rollins (ts)Oscar Pettiford (b) Max Roach (d) 等と超一流どころが顔を揃え、モンクの強烈な個性を放つ曲を、いつもの彼らとは違った姿勢で、モンクの世界に包まれ、四苦八苦しながらも熱気溢れるプレーを繰り広げている。

モンクの存在を世に知らしめることになったこの作品、ジャズの面白さを心から堪能できる一枚ではないかと思います。






曲目リスト
1. Brilliant Corners
2. Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are
3. Pannonica
4. I Surrender, Dear
5. Bemsha Swing

Personel
1-3
Ernie Henry (as) Sonny Rollins (ts) Thelonious Monk (p) Oscar Pettiford (b) Max Roach (d)

4
Thelonious Monk (p)

5
Clark Terry (tp) Sonny Rollins (ts) Thelonious Monk (p) Paul Chambers (b) Max Roach (d)

Recorded Date

1-3
NYC, October 9, 1956

4
NYC, October 15, 1956

5
NYC, December 7, 1956



最後に、この作品から、トランペットのクラーク・テリーが加わったこの曲をどうぞ。


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コメント 8

せいじ

高校生の時にマンハッタントランスファーの「モンクに捧ぐ夜」を聴きどんなピアニストかと思って聴いてみたら、当時はさっぱり意味不明でした。
でも、はまっていくんですよね!
このピアノ[嬉しい顔]
by せいじ (2011-01-22 21:23) 

かなっぺ

セロニアス・モンク。。。
存在自体が謎みたいな人ですね。
この人の名を聞くと以前、千里さんと
お話しできた時の事を思い出します[揺れるハート]
(内容はヒミツ~[複数のハート])
「マイルスがモンクに文句を言った」 という
話はこのLIVEでの事だったんですね[ムード]
演奏している姿、初めて見ました[ふらふら][るんるん]
by かなっぺ (2011-01-23 00:00) 

ituki

待ってました~^^[手(パー)]
親父さんがモンクをどう料理されるのか楽しみにしていました 笑
マイルスとの確執ね~ 一流ミュージシャンのプライドなんでしょうか
まあそんな逸話もモンクなら不思議はないかなって感じですよね^^;
ソロ吹いてる時に突拍子もない音を入れられたりしたらね 笑

でも上のモンクの曲聴いてると
=====
いつもの彼らとは違った姿勢で、モンクの世界に包まれ、四苦八苦しながらも熱気溢れるプレー
=====
これすごくわかります
ソニー・ロリンズがモンクカラーになってる 笑

モンクの様子がよくわかる動画貼っときます^^
この「Ugly Beauty」も好きなんですが原曲長いんですよね^^;
http://www.youtube.com/watch?v=


それと面白い物 笑
最近たまたま見つけたんですが こんな昔のカセットが出て来ました[ふらふら] あんまり聴いてなかったのかな^^;
http://playlog.jp/_images/blog/9/1/917su/m_200839028.jpg
モンクの曲入ってました 笑
おまけにバド・パウエルが「No Problem」弾いてるし[ふらふら]
ジャズを聴いてみたいっていう気持ちだけはあったようです^^;
by ituki (2011-01-23 12:09) 

老年蛇銘多親父

せいじさん[ハート]&コメントありがとうございます。

私も、モンクを初めて聴いた時、なんやら風変わりな音楽だなと思っていたのですけど。[ふらふら]

他のミュージシャン、特にエリック・ドルフィーが演奏しているモンクの作品を聴いているうちに、モンク自身の演奏にも興味が湧き、以来モンクはお気入りになってしまいました。[複数のハート]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-23 12:55) 

老年蛇銘多親父

かなっぺさん[ハート]&コメントありがとうございます。

謎の人、これモンク自身が一番自分は謎だと思っていたような気がします。[雷]

モンクの曲、多くのミュージシャンが演奏しているので、よく差曲者を見て聴いてみてください。

きっと、これもモンクの曲だったのと、その才能の豊かさに驚かされますよ。[るんるん]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-23 13:07) 

老年蛇銘多親父

itukiさん[ハート]&コメントありがとうございます。

=====
ソニー・ロリンズがモンクカラーになってる
=====

これロリンズだけではないのです。[ふらふら]

アルトのErnie Henry、この人前衛奏者ではないのに、ここではまるで前衛奏者のようなアルトを吹いているし、ベースの Oscar Pettiford、モンクのピアノが入るところで、一音間違ってモンクに後で文句を言われた音が、そのままレコードになっているのだとか。

そして、もっと激しいのは、Max Roach 。
モンクの音楽にあわせようとしたのか、スタジオの何処かからティンパニを探して来て、それを”Bemsha Swing ”で叩いている。[雷];

当のモンクご本人も、”Pannonica”でチェレスタを探して来てそれを弾いている。

とにかく、騒然としたレコーディングだったようで、これもモンクならではなのかもしれませんね。[複数のハート]




カセットテープ、スウィング派の、テディ・ウィルソン、バップのバド・パウェル、新主流派の、ビル・エバンス。チック・コリアと、ピアニストの歴史を見るような構成ですね。

この中で、テディは唯一まだ取上げていない一人。

廃盤になっているのだけど、お気に入りのアルバムがあるのですが。[るんるん]

これ日本で制作したもので、音もいい。

いずれ紹介しましょうかね。[嬉しい顔]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-23 13:46) 

老年蛇銘多親父

ぷにょさん
こーいちさん
ヒサさん
ジンジャー@欧州支部長さん
ねこのめさん
りなみさん
マチャさん


[ハート]ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-24 12:11) 

老年蛇銘多親父

snowmansaさん[ハート]ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-29 05:08) 

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