クラシックの音楽雑誌で紹介されたメタル作品 [音源発掘]

だいぶ以前のことになりますが、私がクラシック音楽にはまっていったいた頃、その手引書として買ってきった”レコード芸術編 クラシック名盤大全 協奏曲編”という雑誌、そのモーツアルトの作品を見ながらページをめくっていたところ目に止まったのがこのジャケット。

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クラッシク音楽には似つかわしくないエレクトリック・ギターを弾いているHM風体の男が写ったジャケット。
しかし、バックにあるのはどこかの歴史のあるコンサート・ホールのよう。
現代の楽器、エレクトリック・ギターをソリストにそえた協奏曲というのがあってもおかしくない、しかしHM風体のこの男、どんなギターを弾くのかと思いつつ、そのタイトルを見ると、イングヴェイ・マルムスティーン;エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調 [新世紀]とある。

さらにオケは、どこなんだろうかと見ると、なんとあの名門 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団とあるではないか。[爆弾]

どうやらこれは本気ぽい、「30才以上の人は聴かない方が無難かも」というレコード芸術誌の批評に、かえって闘志を沸き立たさせられ、これは是非聴くべしと決断、手に入れることにしたのでした。

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その音楽に耳を傾けると、爆発的パワーで咆哮するマルムスティーンのHMサウンド、それにまとわりつくバッハからパガニーニあたりを想定したという意外にも古典的なオーケストラのサウンド。
一見アンバランスに思えるこの両者が、見事にその瀬戸際で調和している。

そこには、ディープ・パープルでロックに目覚め、ジミ・ヘンドリックスに傾倒しつつ、その傍らバロック音楽にも親しんできた少年が、その後触れた、ギドン・クレーメルが演奏したパガニーニの”24のカプリス”に魅せられ自身の音楽を昇華させていった、この作品はそうした彼の音楽体験の結晶なのだろうか。


70年代より多くのロック・ミュージシャンが挑み続けてきたクラシック・オーケストラとの共演、しかしその多くはどこかちぐはぐであり、けして成功したものとは言えませんでした。

ところが、多くの先人が自己のグループで挑んできたのに対し、マルムスティーンは、単独でこれに挑み稚拙な部分を残しながらも壮観とも言える音楽世界を築き上げている。
若き日の志を貫き、このような作品を作り上げたマルムスティーンの意欲に、賛辞を贈りたい気持ちにさせらたのでした。

それでは、その作品からその冒頭飾る一曲”Icarus Dream Fanfare”を聴いてください。

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さて、そういった面持ちで接し、一時よく聴いていたこの作品、その後聴き込むごとに不満を感じるようになっていったのです。

それは、まずオーケストラとソリストの間に一体感が感じられないこと。
もう一つは、オーケストラのアレンジが薄く扁平で、オーケストラ本来の厚く深みのある臨場感に欠けていることでした。

どうもそれは、チェコフィルのオケが先に録音されたもので、後から別の場所でマルムスティーンのソロを録音されたという制作過程に要因があるようなのですが、さらに後からのソロの録音の際に、マルムスティーン自身がソロパートに改変を加えていったことで、一体感の希薄さが顕著となり、同時にオーケストラのアレンジパートの音の質感を変えてしまう結果となってしまったのではと思われるのです。


そうしてこの作品は、その後、私のライブリーの奥底にしまわれてしまうことなってしまうのですけど、2001年になって、マルムスティーンがライブで初のオーケストラとの共演を果たし、しかもそれが日本の新日本フィルハーモニー交響楽団だったことを知り、そのライブの記録を是非とも聴いてみたくなったです。

Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor LIVE with the New Japan Philharmonic.jpg


それがこの作品、エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調 コンチェルト・ライブ・イン・ジャパン・ウィズ・新日本フィルハーモニー交響楽団(Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor LIVE with the New Japan Philharmonic)です。

ここでの演奏、以前はHMなど眼中にないように見えた日本のクラッシック音楽家達、その彼らのノリの良いオケに日本のクラッシク界もロック世代の時代になったなと感じつつ、マルムスティーンもその心地よいにオケに身を委ね一体にになって凄まじい勢いで熱いくギターソロを繰り広げている。

特に今回このコンサートで新たに加えられた4つの曲では、そのオーケストラアレンジも金管、木管を効果的に使いクラシック・オーケストラ本来の荘厳さと深味が感じられるものになって、それがマルヌスティーンの激しいギターと合わさり恐ろしいほどの凄み醸し出している、そこにマルムスティーンの進歩と、この音楽の新たな素晴らしさを発見したのでした。



その素晴らしい演奏、”Trilogy Suite, The First Movement”とアンコール曲となった”Far Beyond The Sun ”の2曲を続けてご覧ください。

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CD DATA

Concerto Suite For Electric Guitar And Orchestra In Flat Minor Op.1

Track listing

All songs written and composed by Yngwie Malmsteen.
1."Icarus Dream Fanfare"
2."Cavallino Rampante"
3."Fugue"
4."Prelude to April"
5."Toccata"
6."Andante"
7."Sarabande"
8."Allegro"
9."Adagio"
10."Vivace"
11."Presto Vivace"
12."Finale"

Musician

Yngwie Malmsteen(g)
Yoel Levi(cond)
Czech Phillharmonic Ochestra

Recorded

Orchestra: June 14-June 16, 1997
Electric guitar: September 15-September 21, 1997


Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor LIVE with the New Japan Philharmonic

Track listing

1. Black Star Overture (Orchestra Only)
2. Trilogy Suite Op 5 The First Movement
3. Brothers
4. Icarus Dream Fanfare
5. Cavallino Rampante
6. Fugue
7. Prelude To April
8. Toccata
9. Andante
10. Sarabande
11. Allegro
12. Adagio
13. Vivace
14. Presto Vivace
15. Finale
16. Blitzkrieg (Encore)
17. Far Beyond The Sun (Encore)

Musician

Yngwie Malmsteen(g)
Taizo Takemoto 竹本泰蔵(cond)
The New Japan Philharmonic 新日本フィルハーモニー交響楽団

Recorded

June 17, 2001 Orchard Hall Tokyo

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コメント 10

せいじ

エレピとクラシックがこんな一体感を持っている演奏は初めて聴きました。
マルムスティーンテクも凄いけど
感性も素晴らしいですね。
by せいじ (2011-05-29 10:02) 

ねこのめ

マルムスティーンあたりは何気に耳にした時ありますね(笑)
それにしても親父さんの探究心(?)はどの音楽についてもすごいな~と感心します[__ぴかぴか]
by ねこのめ (2011-05-29 12:02) 

こーいち

私も、聴くのは新日本フィルハーモニー交響楽団の方ばっかりです
ライブでの一体感がありますよね!
by こーいち (2011-05-29 23:39) 

ituki

チェコフィルの方 親父さんが不満タラタラなのよくわかります  笑
オケとソロを別々に録音なんてありえへん[目玉]
オケがソリストを意識しないで突っ走ってる感じです
それにせっかくのチェコフィルなのに 単一なアレンジで メロディは綺麗なのに ギターとオケが同じ旋律なんて オケの意味がないんじゃないのとか^^;

確かに新日本フィルのは 上手くギターをフィーチャーさせて 各パートの使い方もうまい
マルムスティーンの素晴らしい演奏がとても生き生き聴こえます

なんてえらそーに^^;[汗汗]

親父さんの取り上げられるの バラエティに富んでてほんとに面白いです^^[ラブラブハート]
by ituki (2011-05-31 01:13) 

老年蛇銘多親父

せいじさんコメントありがとうございます。


こういう演奏、ひと昔前ならば、クラシックサイドの理解が得られずここまでの演奏は生まれなかったでしょうね。

それにしても新日フィルの技術も素晴らしく乗りもなめらかで、日本人としてなにか嬉しくなってきます。


ところで、エレキギター、この楽器を協奏曲に最初に持ち込んだのは、ジャズギタリストのテリエ・ビダルです。

この作品は現在廃盤で手に入りませんが、ビダル自身近年2作目を発表しています。
こちらは、静のエレクトリック・ギターという感じの現代音楽的作品、いずれご紹介してゆきたいと思います。
by 老年蛇銘多親父 (2011-06-02 05:42) 

老年蛇銘多親父

ねこのめさんどうもありがとうございます。

実は、この作品を聴いたのが、聴くのがシンドくなっていたHMを聴き始めるきっかけになってしまったのです。

クラシックの音楽雑誌を見て、HMを聴くようになると夢にも思いませんでしたよ。[__あせあせ][__爆弾]
by 老年蛇銘多親父 (2011-06-02 05:49) 

老年蛇銘多親父

こーいちさん、ありがとうございます。

協奏曲というのは、オケとソリストの絶妙な掛け合いの面白さに魅力があるので、やはりLiveの方がいいですね。

さらに、このマルムスティーンに初のライブ公演を挑んだのが日本のオーケストラというのは気持ちがいいですね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-06-02 05:56) 

老年蛇銘多親父

ituki先生、どうもありがとうございます。
同一の旋律、私が一番気になったのがその点です。
さすがですね。


このオーケストラとの別録音、おそらくマルムスティーンも初めての試みということで、このオケを聴きながら、自分のソロパートを煮詰める作業に没頭したのだと思います。


その成果もあり、またマルムスティーンもスタジオ盤の好評に自信をつけたのか、このライブで披露された新曲では、オーケストラアレンジも巧妙になっていて、かなり良くなっていますよね。

マルムスティーン自身も、納得の様子に見えましたしね。

by 老年蛇銘多親父 (2011-06-04 20:18) 

老年蛇銘多親父

ヒサさん
raccoonさん
ばんさん
かなっぺさん
R8さん
ぷにょさん
マチャさん
Markさん
かずもんさん
タッチおじさん

皆さんご訪問ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-06-08 11:34) 

老年蛇銘多親父

xml_xslさん

ご訪問ありがとうございます。

by 老年蛇銘多親父 (2011-06-14 04:56) 

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