不滅のカリスマ :T.Rex(Marc Bolan )・Electric Warrior[電気の武者] [音源発掘]

前回、久々に書いたCDアルバムの記事をUpしたところ、いきなり多くのアクセスをいただき、結構私の音楽記事を待ってる人いるのかなと、勝手に手前勝手な解釈をして。

そこで今回取上げるのは、前回のジョン・マクラフリンに同時期の60年代の終りに登場したロックのカリスマ、T Rex。
デビッド・ボーイとともにグラム・ロックという分野を作った彼ら、ギラギラしたルックスに顔には薄化粧という、当時のロック・ミュージシャンには珍しかった姿が、その音楽以上に大きな話題となっていたことが思い出されます。

そのルックス、今見ればけして派手なものには見えないないのですが、当時は硬派なイメージなロック・ミュージシャンが化粧をして出てくるというのは、かなり驚くべきことであったのです。
しかし、今思えばそれは、その後ヴィジュアル化の道をたどるロックのあり方を、このT・Rexがいち早く先取りし実践していたということだったのです。



ところが、こうしたT・Rex、私自身、当時ある冗談めいた評論、「何を今さら外国のグラム・ロックか。日本にはずっと以前から、化粧姿でギラギラ衣装の三波春夫という歌手がいる。」を読み、なるほどと思って以来、そのリフの繰り返しのような曲想もあいまってどうしても好きなれなくなってしまったのです。

そうした評価が変ったのは5年ほど前、TVで放送されたロック・ミュージック・ビデオの傑作”Born to Boogie ”を見てからのこと。

元ビートルズのリンゴ・スターの監督で話題になった1972年に発表されたこの作品、このT・Rexのリーダーでその音楽の核であったMarc Bolan のカリスマかつ個性的な姿を、ビートルズ時代、ミュージック・ビデオの制作でその映像手法を知りつくしたリンゴが、ごく自然かつ生々しくその個性を表現していたのを見て、新たな興味が湧いて来たことにありました。

そして手にしたが、このアルバム。
1971年の発表の”Electric Warrior”

日本では”電気の武者”と名付けられたこの作品、、本来彼らの最高傑作という評価は、その翌年の1972年に発表された”The Slider”であるという声が多いのですが、リアルタイムで彼らの登場を見て来た私にとって、そのセンセーショナルなデビューとその直後に訪れた人気フィバーぶりを生み出した作品として、どうもElectric Warrior”に対する思い入れの方が強いということから、今回は、この作品を選ぶことにしてみました。

T.Rex・Electric Warrior.jpg






さて、1968年にTyrannosaurus Rex(ティラノザウルス・レックス)という名で登場した彼ら、当初はマーク・ボラン(ギター・ヴォーカル)とスティーヴ・トゥック(パーカッションヴォーカル)2人組のアコースティック・フォーク路線のバンドだったのですが、1970年にそのバンド名をT・Rexと改名、同時にボランはそのギターをエレクトリックに持替え、新たなパーカショニスト ミッキー・フィンとの2人で再出発を果たします。

そして、翌71年にはさらにスティーヴ・カーリー(ベース)とビル・レジェンド(ドラムス)をメンバーに加え4人組となり、T・Rexとして2作目の作品となるこの”Electric Warrior”を発表、ここから彼らの快進撃が始まることになるのです。

このエレクトリック・ギターへの変更、ボランの言葉によれば、エリック・クラプトンにその弾き方を習ったのだとか。
また、T・Rextになったこの頃から薄化粧をしたルックスを取り始めるなど、後にブームとなるこのグループの形がこの時期に出来上がっているのです。

それでは、彼の快進撃の始まりとなった大ヒット曲、”Get It On"、その彼の人気ぶりが偲ばれるPVを見つけましたので見てみることにいたしましょう。



この”Get It On"、当時私達の仲間の間では、こんなへにゃへにゃなサウンドはゲット・イット・オンでないと言い合い、そのためT・Rexのものは偽ゲット・イット・オンと呼んでいたのです。
それは、この”ゲット・イット・オン”がヒットした頃にヒットした、もう一つの”ゲット・イット・オン”があったから。

その”ゲット・イット・オン”はアメリカのブラス・ロック・グループ チェイスの”ゲット・イット・オン”。
日本では、”黒い炎”という邦題で大ヒットした曲で、あの和田アキ子もTVのヒット番組で歌っていたのを覚えています。(チェイスの”Get It On"についてはこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2009-04-21

しかし、そう思えたのは若気の至り、今もう一度、このT・Rexのサウンドをしっかりと聴き直してみると、そのサウンドの細かい点まで非常によく計算され念入りに作り込まれていること気付かされるたのです。

パーカッション+ギター・トリオというロック・バンドとしては、一風変わったシンプルな楽器構成ながら、そこから出てくる音の厚い響き。
重厚感あるバス・ドラムの響き、空間的広がりを感じさせるベースの音、それに躍動感を強調するパーカッションが加わって来る。
そしてこれらの、楽器をより効果的に使った絶妙のアレンジ。

そうしたことが、一見単調そうに聴こえる彼らの曲に躍動的な変化と重厚感を与えている。
特にボランのギターのコー・ドカッティングやドラムにその傾向がよくうかがえる点、リズムに興味を持っていると語っていたボランの作る音楽の真骨頂がここにあったことが、分かるように思えます。

ところで、”Get It On"の演奏、映像でもピアノが加わっているのがご覧いただけたかと思いますが、アルバムのレコーディングに際してそのピアノを弾いていたのは、あのYesのリック・ウェイクマン。
この時期のウェイクマンさん、いろいろなアーティストのレコーディングに参加しているのを見かけるのですが、それでもブギ・スタイルのピアノを弾いているウェイクマンというのは、大変珍しいように思います。


T・Rexが脚光を浴びたこの時代、ビートルズなきあと、あらゆる方面の音楽を吸収しつつ成長を続ける混沌したロック界において、しばしば話題になったのは誰が第2のビートルズになりうるかということ。
そして、その最有力としてしばしば名前を上げられていたのが、このT・Rex。

当時は何故T・Rexが上げられるのかよく分からなかったのですけど、今彼らの音楽に接し直してみると、その影響を彼らなりに自分の曲の中に取り入れ上手に使っている。
そこで、次にはそうした彼らの姿を聴くことできる、この曲を聴いてみることにしたいと思います。



アコースティックなロック・バラードの”Cosmic Dancer”。
このストリングス、バック・コーラス、そしてギター・ソロにどことなくビートルズの面影を感じませんか。
そしてこのドラム、どこかリンゴ・スターが叩いているかのように思えて来ますね。


それでは最後にもう1曲、このアルバムからシングル・カットされもう一つのヒット曲、”Jeepster”をいってみましょう。




生前、30歳まで生きられないと予言を受けたこのグループの中心人物のマーク・ボラン。
その予言通り、1977年に同乗していた愛人の運転する車の事故で30歳の誕生日を迎える2週間前にこの世を去ってしまいます。

しかし、そのカリスマは生き続け、2007年に彼の生誕60年を祝って作られた祭壇と胸像、

-Bolan_Bust4 50px.jpg


その回りには、ファンからの多くの捧げものが備えられ、そのホーム・ページには、彼の命日への墓参参加の記事が載せられているなど、今だ彼を慕う人々が生れ続けているのです。

魔術師の下で修業し、魔女とも同棲したというオカルトじみた伝説に包まれたマーク・ボラン、その霊力は今だ衰えることなく威力を放ち、その音楽は時代を越えて輝き続けている。

不滅のカリスマ!!
どこからともなく浮かんで来たこの言葉、彼こそ、その言葉ふさわしいアーティストはいない、何故かそう思えて来てしまうのでした。

Track listing

All songs written by Marc Bolan.
1."Mambo Sun"
2."Cosmic Dancer"
3."Jeepster"
4."Monolith"
5."Lean Woman Blues"
6."Get It On"
7."Planet Queen"
8."Girl"
9."The Motivator"
10."Life's a Gas"
11."Rip Off"

Personnel
Marc Bolan – vocals, guitars
Mickey Finn – conga drums, bongos
Steve Currie – bass guitar
Bill Legend – drums
Howard Kaylan – backing vocals
Mark Volman – backing vocals
Rick Wakeman – keyboards on "Get It On"
Ian McDonald – saxophone
Burt Collins – flugelhorn

Recorded
March–June 1971

Trident Studios, London;
Advision Studios, London;
Wally Heider Studios, Los Angeles;
Media Sound Studios, New York

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コメント 5

ituki

恐竜のティラノザウルスではないんですね^^;
バンド名は知りませんでしたが、「Get It On」 は有名ですよね。
【躍動的な変化と重厚感】
記事を読んで聴くと、なるほどなぁと・・・
いつも親父さんの音の分析には感心させられます[ぴかぴか]

「Cosmic Dancer」も、思いっきりビートルズ路線の素敵なバラードですね^^[ラブラブハート]
こんな才能を持った人が若くして亡くなるのはホント惜しいです。
かなり薬中だったみたいですが、クラプトンみたいに立ち直れる機会もなかったのがとても残念です[汗]

by ituki (2012-04-22 23:32) 

老年蛇銘多親父

イッチー

マーク・ボランという人、私の場合、どちらかというか彼の生前から破滅型の人間に思えていたんです。

そのせいか亡くなるべきして亡くなったいう感じを持っています。

そうした危ない感じがまたボラン、だから今でも彼の音楽を慕う人がいるということではないかなと思っています。
by 老年蛇銘多親父 (2012-04-24 21:28) 

えい♪

クリムゾンのイアン・マクドナルドも参加してるんですね。
マーク・ボランを陰で支えるイエスとクリムゾン・・・
なんとなく豪華!?
by えい♪ (2012-05-02 23:10) 

老年蛇銘多親父

えい♪さん

そうなんです。

この人、後に作られたミュージック・ビデオ”Born to Boogie ”を見ても意外な人が映っていたりしている。

当時、ミュージシャン仲間からの評価も高いという話をよく聞かされ、どうしてなのかよく分からなかったのですけど、今思えばそれもなんとなく理解できる。

不思議な魅力を持ったアーティストではないかと思います。


by 老年蛇銘多親父 (2012-05-04 07:11) 

老年蛇銘多親父

ねこのめさん
raccoon さん
(。・_・。)2kさん
thisisajin さん
ジンジャー さん
ヒサさん
yuzman1953さん
TAMA さん
マチャさん
こさぴーさん

皆さんどうもありがとうございます。

マーク・ボランが亡くなって、早35年、T-REXって忘れられた存在になってしまったんだというのが感想。

かく言う私も、忘れていてね、最近CDを見かけ、懐かしく思って買ったのがきっかけなのですけど。








by 老年蛇銘多親父 (2012-05-06 17:59) 

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