ソウルの心がほのかに香るピアノ音 Junior Mance・Junior 本日の作品;vol.96 [デジタル化格闘記]

今日の音楽記事、前回、前々回と馴染み深い曲を取り上げてきましたが、今回はそれとは打って変わり知る人ぞ知るというアーティストのお話。

知る人ぞ知るというと、ジャズのアーティスト?
それなら知らなくてもね~ という方もいるかと思いますが、このアーティスト、デビューしてから今年で65年、現在も現役第一線で活躍しているという名プレヤーなのです。

その名プレヤーは、ピアニストのJunior Mance。

このジュニア・マンス、1940年代後半には、伝説のテナー・サックス奏者のレスター・ヤングや同じくテナーのジーン・アモンズなどとの共演で活動を開始し、50年代にはアルト・サック奏者のキャノンボール・アダレイや巨匠ディジー・ガレスビーのコンボのレギュラー・メンバーとして活躍していたという輝かしい楽歴とともに、61年にはダウン・ビート国際批評家投票新人ピアニスト第一位に選ばれたという、まさに名プレヤーというべき素晴らしい経歴の持ち主なのです。

そうしたジュニア、今日ご紹介する作品は、1959年制作の彼の初リーダー・アルバムとなった”Junior"

Junior.jpg


私自身、このジュニアについてまったく知らずに、このアルバムを初めて聴き、その場で直感的に気に入ってしまった作品で、以来好きなピアノ・トリオ作品のひとつとして愛聴し続けてきたもの。

かの名ピアニストのオスカー・ピーターソンも高い賛辞を贈っていたこのアルバム。
その言葉、このアルバムの良さをもっとも的確に表現しているものだと思いますので、ちょっとここに引用してみることにいたしましょう。

「昨今、ピアノの何たるかをさえもまだわきまない前衛ジャズマンや低級なピアニストが横行するジャズ界にあって、豊かなテクニックとフレッシュなアイデアに恵まれたジュニア・マンスの登場は、実に爽快だ。

しかもジュニアは、聴き手の心に直接的に訴えかけるエモーショナルなものを内蔵しており、ジャズの根元的なスィングをけして忘れることがない。

豊かな楽想に恵まれているジュニアは、アイデアをとめどなく発展、変化させていく過程で、一つの演奏にいくつの場合にもある種物語性をもたらす。

これはマンス独自の特質だが、そんな意味からも、このアルバムは、あなたに多くのドラマを伝えられるはずだし、マンスは、まだまだこれからもこれからも我々を楽しましてくれるに違いない。」


いかがですか、あのピアノの名匠、最高峰の賛辞ともとれるこの言葉。
これを知るとそのジュニア、一体どんな音を聴かせてくれるのか、なにがなんでも聴きたくなてしまいまいますよね。


そうした訳で、ここまで来てお待たせするのも罪なもの。
早速このアルバムから、彼のエモーショナルな一面が窺えるブルース曲を一曲、お届けすることにいたしましょう。



どこか可憐さをの中に哀愁のこもったメロディー。
このレコーディング時期、ジュニアが参加していたコンボ、そのリーダーであったディージー・ガレスピーのペンによるブルース、”Birk's Works"です。

どうですか。
彼のピアノ、も少し聴きたくなったのでは??








さて、このアルバムの演奏メンバーは、当時オスカー・ピータソン・トリオのベーシストであったRay Brownと
同じくこの時期ジュニアと共にディジー・ガレスピーのコンボで働いてたドラマーのLex Humpheiirsの二人。

共に同じコンボで演奏を積み重ねてきたハンフリーとの息の合ったプレーはもとより、やはりここでは、長きにわたりピーターソンをサポートし続けてきたレイ・ブラウンのベースの存在の大きさが印象的です。

どこかブルーな面持を構えた、太くずっしりとした響きを生み出すベース、そのプレーが、次第にマンスのソウルの心を呼び覚まして行く。

そして、マンスは、その心に閃いたいくつかの物語の世界をピアノに託して歌い続けている。

まさに、ピーターソンが指摘した、マンスの世界がここにあるように思います。


そうしたマンスの世界、このアルバム中からもう一曲。
今度は、ハンク・ジョーンズの名演奏でも知られる、あの名高きスタンダード・ナンバーの演奏です。



Cole Porter作詞 作曲の”Love For Sale”です。
売り子の威勢のいい掛け声を思わせる軽快なリズムに乗って、マンスのピアノは時折ソウルフルな顔を見せながら速いテンポで、クライマックス作り上げて行く。

聴き手の心を惹きつけずはおかない、何度聴いても飽きることない”Love For Sale”だと思います。

DSCN1537m.JPG


1928年生まれの今年85歳となる、現役最長老のジャズ・ピアニストのジュニア・マンス。
近年アルバムを聴いてみると、その熱きソウル度は年齢重ねるごとに増加し続けてきたかのように感じます。
特にそのブルース・プレイのエモーショナルな様は、今や達観の境地にあると言ってもよいのではというくらい。

そこで、今日の最後の曲は、2001年 新進気鋭のテナー・サックス奏者 エリック・アレキサンダーとのカルテットの演奏。
曲は”Lonely avenue”です。
マンスの燻銀の味ともいえるブルース・プレイをお楽しみください。




Track listing
1.A Smooth One
2.Miss Jackie’s Delight
3.Whisper Not
4.Love For Sale
5.Lilacs In The Rain
6.Small Fry
7.Jubilation
8.Birk’s Works
9.Blues For Beverlee
10.Junior’s Tune

Personnel
Junior Mance (p) Ray Brown (b) Lex Humphries (ds)

Recorded
April 9 1959



































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ミスカラス

どこかのCDショップで、もし一番最初の曲がかかっていたら誰が演奏してるとかは二の次で直感的に買うかも。
by ミスカラス (2013-02-21 19:17) 

老年蛇銘多親父

ミスカラスさん

書きながらミスカラスさん好みのサウンドかななどと思っていましたけど、

この作品、やはりブルース好きにはたまらないですよね。
by 老年蛇銘多親父 (2013-02-22 12:55) 

ミスカラス

上品さの中にも骨太さもある感じですね。私が購入する際には選択肢のひとつです。オスカー・ピータソンって上品なんだけど、黒人っぽさって正直感じません。そうはいっても、彼のサンバ・ジャズのSoul Espanolというアルバムはお気に入りなんですが・・。
by ミスカラス (2013-02-23 12:46) 

老年蛇銘多親父

ミスカラスさん

そうなんですよね、ピーターソン。

この人、カナダ出身のせいもあってjか、ちょっとブルース感覚が足りないようにも感じます。

ある意味、レイ・ブラウンのベースがその足りない分を補っていたなんて、このアルバムを聴くとそう思えて来てしまいます。

最近、ジュニア・マンス、2000年制作のアルバムの”Yesterdays”を聴いているのですが、このタイトル曲やわが心のジョージアなどなど、有名スタンダード・ナンバーが極上のブルースになってしまっていて実に痛快。

この人のブルース・フィーリングは、最高だと思います。






by 老年蛇銘多親父 (2013-02-23 17:21) 

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