PureとBeautifulが織りなす音世界:John Stubblefield:Morning Song [音源発掘]

連続猛暑記録更新となった今年の夏、しかし、8月8日の立秋を過ぎたこともあるのか、ここのところ、その暑さも幾分や和らぎ、朝晩には僅かに秋の心地良い風の香りも感じられるようになったここ数日。

おかげで、それまで負けてなるものかと気負い過ごしてきたその気持が緩んでしまったのか、風邪をひいてしまったようで、体の方はいささか不調気味。

とは言っても盆のお休み、昨年は孤軍奮闘、職場の中で私一人が頑張る羽目となってしまいましたが、今年はその逆。
私一人が、暇で他の連中が大忙し。
そうしたことから、「昨年は、一人頑張っていたのだから今年はゆっくりと休ましてもらうよ。」と、高らかに宣言をして............。

堂々とお休みをもらえたこともあり、その間にじっくりと休養、体調を整えることができればと思っています。



というところで、今回の記事は、前々回の記事(http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2015-07-05)で、私のライブラリー、今年はピアノ作品が多く集まってしまっている旨お話をしましたが、それから1ケ月。

気付いてみると、今度増え始めたのはサックス・プレヤーのリーダー作品。

どうして、そんなことになったのかというと!

これまで集めていたピアノ作品、そこに登場するピアニストの顔ぶれというと、Ceder Walton、Mulgrew Miller、George Cables、といったリーダーとしての活動よりも、どちらかというとサイドマンとしての活動で有名な人たちの作品ばかり。

従って、リーダー作品の数もそれほど多くなく、その上、市場では希少となっているものが多く、入手が困難であるこため、彼らのピアノを聴こうとするとサイドマンとして参加しているものもその対象にして探しているうちに、サックス・プレヤーのリーダー作品が増えてしまう結果となてしまったようなのです。


そうしたことで、今回の作品は、今年4月の記事でもご紹介した、Mr.ビューティフルことピアニストのGeorge Cables、その彼のピアノを聴きたくて探しているうちに見つけた、彼がサイドマンとして参加しているサックス・プレーヤーのリーダー作品とすることにしました。

といっても彼の場合、その晩年を支え名演を残したことで知られるアルト・サックス奏者のArt Pepperとの作品が有名、もしやその作品かと思われるかもしれませんが、今回の作品はそのPepperとの作品ではなく、選んだのは.........。

John Stubblefield morning song.jpg


John Stubblefieldとの1993年の作品”Morning Song”

といってもこの名前、あまり耳に馴染みがないかもしれませんよね。

そういう私も、この作品、Cablesのピアノが聴きたい一心で手にしたもので、当のStubblefieldについては、Miles Davisの作品でその名前を聞きかじったことがあるものの、そのプレイについては全く記憶がなく、この作品で初めてしっかりと聴くことなったものなのです。

しかし、この作品、一聴しての感想は、Cablesのピアノが美しさはもちろんのことなのだけど、このStubblefieldのプレイも、なかなかの聴き応え。

そこで、今回はこの作品を選ぶことにしたのですけど、記事を書くにあたって、もう少し彼のことを調べてみようとネットで検索をしたところ、これだけのプレーをする実力を持ったアーティスでありながら、信じられないほどの記事の数の少なさ、画像に至ってはさらに僅かしかないのです。

これでは、馴染みのない方も多いはず。

それではと思い、音楽をお聴きいただく前にStubblefieldというアーティスト、どんな経歴の持ち主なのか、
紹介しなければと思ったのですが..........。
それを、私のつたないにわか知識でお話しするのも憚れる、ならばネットで見つけた数少ない彼についての記事、こちらを見ていただいた方がよりよく分かるのではということで、そのリンク先を貼り付けておくことにしました。
http://www.bigjazzriver.com/ja/jo/bio.html

さて、そのリンク記事を読んでいただいたところでStubblefield、多くの名だたるミュージシャンとの共演を重ね高い評価を受けていたアーティストだということがお分かりいただけたのではないかと思うのですが、そのリーダー作品の希少さ(全10作)、またその活動の分野の主軸が、フリー・ジャズ,ビッグ・バンド、また作編曲家としての比重が高かったことから、特にビッグ・バンドの人気がイマイチで、彼をフリー・ジャズ・フィールドのミュージシャンとして位置付けていた日本では、彼の存在が紹介される機会は少なくなってしまい、それが彼の作品の評価にも影響、その知名度に繋がってしまっていたのではと思うのです。


それでは、Stubblefieldというアーティスト、その経歴についてご理解いただいたところで、この辺で彼の音楽を聴いていただこうか思います。

その曲、私がこの作品を聴き、強く彼のプレイに惹かれてしまうことになってしまった演奏から、まずは聴いて行くことにいたしましょう。





曲は、Duke Ellington 楽団の有名なオリジナル曲で”In a Sentimental Mood”。

John ColtraneとDuke Ellington の演奏でも有名なこの曲、このStubblefieldもColtraneの影響を強く受けている演奏家といわれ、事実この演奏の随所にもその残影が聴き取れたのではないかと思いますけど、こうなってくるとその両者の演奏、ここで聴き比べしたくなってしまうもの。

そこで、少しばかり寄り道をして、John ColtraneとDuke Ellington との演奏も、ここで聴いてみることにしたいと思います。



Ellingtonの、人の心の内への扉を開かせるよう、静かに語りかけるピアノに導かれ、その心の中を歌うかのごとく瞑想するColtraneのテナー・サックス、シンプルの中にも敬虔な祈りの世界に導かれてしまうColtraneと Ellington の演奏、それに対し、どこまでも澄んだ美しさを湛え、聴く者の心の奥底まで染み入り深い情感を残すStubblefieldとCablesの演奏。

2005年に享年60歳で他界したStubblefield、この”Morning Song”という作品は、彼の最後のリーダー作品なのですが、この作品、ピアノにMr.ビューティフルを迎え、Stubblefieldのサックスもその美しさの極みに達していた、そして、この”In a Sentimental Mood”は、Coltraneと Ellington 、二人の大巨匠の演奏と比べても甲乙つけがたい、彼のプレイの白眉ともいえる名演奏だと思うのです。

さて、作編曲にも才能を発揮したStubblefield、この作品にも自己のペンになるオリジナル4曲が収められています。
そこで、次の曲は、彼のオリジナル曲から1曲、その演奏を聴いていただこうと思います。
曲は”King of Harts”です。



ミディアム・テンポの軽快なリズムに乗せて歌われる哀愁を帯びたテーマ、それに続くCablesの好演が光る演奏。
Stubblefieldのソロもその好サポートを得て、Coltrane的フレーズを覗かせながらも、爽やかかつピュアーな香りを放ち感じさせてくれています。

70年代にマーヴィン・ゲイ、ダイアナ・ロス、ティト・ブエンテなどとも共演、幅広い音楽性を身に着けたStubblefieldらしい、ポップな感覚を宿しながらもコアの部分はしっかりとジャズを聴かせてくれている、彼ならでの楽曲だと思います。


ここ数年サックス嫌悪症に陥っていた私。
しかし、この作品に出会えたことで、その病も一気に吹っ切れたところ、本当にいい拾い物をしたなと思いつつ、今は、やはりジャズにサックスは欠かせないとものだと再認識をしているところ。

さて、この勢いで次はどんなサックス奏者のプレーに出会えるか、そうした作品との出会い、これからもまた記事に取り上げて行きたいと思っています。


Track listing
1.Blues for the Moment  -John Stubblefield -
2.king of Hearts  -John Stubblefield -
3.So What  -Miles Davis -
4.Morning Song  -George Cables -
5.Blue Moon   -Lorenz Hart / Richard Rodgers-
6.A Night in Lisbon   -John Stubblefield -
7.The Shaw of Newark -Victor Lewis -
8.In a Sentimental Mood -Duke Ellington / Manny Kurtz / Irving Mills -
9.Slick Stud & Sweet Thang -Mickey Tucker -
10. Here and There -John Stubblefield-
11.Here's One -Traditional -

Personnel
John Stubblefield (ts, ss)
George Cables (p)
Clint Houston (b)
Victor Lewis (ds)

Recorded
1993-5 New York




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ハンコック

こんばんは。
今日まで仕事だったのですが、私も風邪でダウンしてしまいました。
冷房と外の熱さに体がついていきません。

Stubblefieldの演奏良いですね!
そして、George Cablesのピアノがとても効いていますね。
Cablesという人やはり上手いですし、センスが良いですね。

by ハンコック (2015-08-14 20:24) 

老年蛇銘多親父

ハンコックさん

おっしゃる通り、George Cablesのピアノがとても効いている、本当にその通りだと思います。

そこでStubblefieldの好演、やはりCablesに刺激をうけてなかとも思い、その後、他のピアニストとのものをということで、Mulgrew Millerとのものを聴いてみたのですけど、味付けは違うけど、こちらもなかなかいいのです。

そうしたことで、今しばらく、この人のプレー、聴きこんでみようかと思っています。

風邪の方、私も今だ抜けずのままなのですが、ハンコックさんもお大事にしてください。


by 老年蛇銘多親父 (2015-08-15 09:06) 

mk1sp

John Stubblefieldさんのサックス、人柄の良さそうな優しい演奏ですね、「俺のサックスを聴け」的な威圧感がなくて好印象です♪、早速メモしておきます♪
by mk1sp (2015-08-21 21:47) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

「俺のサックスを聴け」的な威圧感がなくて!!

確かにそうですね。この表現、Stubblefieldのサックスの印象、うまく言い得ているように感じます。
この発想、ジャズにどっぷりと浸かってしまった、私などにはとても思いもよらないこと。

ちょとレアどころかもしれませんけど、Stubblefield、また味わってみてください。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-08-23 08:36) 

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