現代を歌うソプラノの歌姫たち(その1) [音源発掘]

今回は、501回目の記事。

これも一つの区切りだと思い、これまで使ってきた葵の御紋のプロフィール画像に変え、今や彼のおかげで全国的に有名になった船橋市、その市民としてやはり彼の姿をプロフィール画像にしてみることにしてみました。


さて、プロフィール画像を変え気分を変えたところで今回のお話。今回取り上げるのは、2年前ぐらいから嵌まってしまっている癒しの音楽。

それは、ソプラノの歌姫によるポピュラー歌唱作品。

実は、私が本格的にジャズを聴くようになる前、よく聴いていたのはプログレシッブ・ロックだったのですが、このプログレという代物、ジャズやクラシック音楽の要素も貪欲に吸収し育っていったサウンドであったため、当時私はそのサウンドの原点を探ろうとジャズやクラシック音楽も聴くようになってしまい、特に英国のプログレシッブ・ロックは、かなりクラシックの要素が強かったことから、その作品をいつの日かクラシック・オーケストラの演奏で聴けるようにならないかと考えていたことがあったのです。

ところが、ロックの黎明期であった70年代初頭の当時にあっては、まだまだクラシックの音楽家の間にはPopやRockという音楽に対し軽侮の念が強かった時代、...........[バッド(下向き矢印)]

がそうした環境の中にあってもDeep PurpleのJon LordやKeith Emerson、Rick Wakeman等のプログレシッブ・ロックのアーティス達が、クラシック側から冷たい視線を浴びながらも果敢にもクラシック・オーケストラを従え、その融合を図ろうと挑戦し胎動し始めていたのですが。

しかし、その結果は一部の例を除いて成功とは程遠い惨憺たる状態にあった。
そのような記憶があるのですけど、その大きな原因の一つあったのが、ロックのリズムへの乗りの悪さ。

熱く疾風するバンドの演奏に乗り切れないオーケストラ、そして次第に大きくなって行く両者の間の溝。
特にクラシック系のヴォーカリストの歌唱は、その発声法の違いも手伝って、かなりの違和感を感じるものであったことが思い出されます。

そうしたことから当時は、いつの日にか、日常生活の中でロックを体験した世代のクラシック・アーティストが育ち、彼らの手で、クラシックの手法で違和感ないロックが演奏されることを楽しみにその時を待つことにしたのでした。



そして、待つこと15年。
その願いが叶えてくれたのが、この二人アーティスト。

フレディマーキュリー&モンセラートカバリエ.jpg


その彼らによって1988年に生み出された、この作品によってでした。

mercury_in_barcelona.jpg


QueenのヴォーカリストFreddie Mercuryと、スペインの誇る偉大なるオペラ歌手Montserrat Caballéの二人による作品”Barcelona”。

この異色の組み合わせ、特に生粋のオペラ歌手であるカバリエが、ロック色の濃いマーキュリーのペンによる楽曲をどのようにこなすのか。

興味深いものを感じ、早速手に入れ聴いてみたのですが、その感想は。

なにはともあれ、この作品の中から1曲、二人のロックとオペラ歌唱が融和した”How Can I Go On”に耳を傾けていただき、味わっていただくことにいたしましょう。






この二人、その出会いはカバリエを敬愛するマーキュリーが、彼女を自宅のパーティに招待し、そこで意気投合、一晩中歌い明かすこととなったことが、その始まりなのだそうですが、この後、カバリエがマーキュリーに自分の故郷の歌を作って欲しいと依頼をしたことから、このアルバムが生まれたというもの。

とはいううものの、これはロック曲、初めてこれを聴く時、これまでリズムに乗りきれないクラシックのアーティストを見てきた私にとって、果たしてカバリエがそれをどこまで歌いきれるのかという不安を持って臨んだのですが、聴き始めるとリズム圧倒する声量でサウンドを強く牽引する彼女の歌声、そのパワーに驚かされともにオペラ歌手の真の底力を見せつけられるに至ってしまったのです

そして、共に唱法の全く違う二人の歌声が、それが互い呼応しあって、大きな臨場感を生み出し、それがスケールの大きな情感をもたらしていることに気付かされたのです。

カバリエの資質を生かし、自らの曲を提供したマーキュリーの才能も凄いが、たとえジャンルが違っても自らの技法でその音楽を克服、そのサウンドの可能性を大きく開花させたカバリエの凄さ、これには至極驚かされたものでした。


さて、この世界的オペラ歌手のロックへの挑戦、今、振り返ってみるとこのことが、クラシック・サイドからロックへのアプローチの開始の導火線であったように思うのですが、事実、その後の英国では、ロンドン交響楽団やロイヤル・フィルハーモニー等、伝統的なクラシック・オーケストラも、Pink Floyd やYes ,Genesis,Jethro Tull、Queenの曲に挑み、次々とそれらの作品を発表されていくことになったのです。

そして、その傾向は器楽にとどまらず、クラシックの歌姫たちにも影響を及ぼし、その活動が開始されていったように思うのですが、

その代表的な歌手がこの人、



クラシック・クロスオーバーのSarah Brightman。

80年代には、ミュージカル『オペラ座の怪人』のクリスティーヌ・ダーエ役で世界的名声を獲得していたという彼女、90年代にクラシック・クロスオーバーの先駆者ともいえる ドイツの音楽プロジェクトのEnigmaから、ソロでの活動を薦められソロに転向、バンドのメンバーであったFrank Petersonをプロデュサーに迎え、ソロ・デビュー果たしたアーティストなのですが、その彼女の地位を固め、クラシック・クロスオーバーを世界的の認知さししめたのが、ここで聴いていただいた”Time To Say Goodbye”なのです。

この曲を初めて聴いた時、私は、待ってたものがいよいよ来たと感じ、何枚か立て続けに彼女の作品を聴くことになってしまっていたのですけど、カバリエとサラの最大の違いは、カバリエがあくまでオペラの手法でロック曲を歌唱しつくしたのに対し、彼女の場合、その経歴がミュージカル出身だということもあり、クラシカルな曲ではオペラ歌手並の声量を見せるのに対し、ポップの曲では抑揚の効いた癒しさえ感じさせる美しいソプラノ・ヴォイスでの歌唱があり、それが、これまでになかった新しい魅力となっていることを発見したのです。

さて、それではその彼女のポップの歌唱を、プログレシッブ。ロックの名曲”A Whiter Shade Of Pale(邦題;青い影)”で、その魅力、この辺で味わってみることにいたしましょう。



40年近く聴き続けた来たこの曲、その歌にサラは透明な空気を注ぎ込み新鮮さを醸し出してくれている、そんな気さえして来ます。

その透明感、この曲を聴いていたら、もう一つサラの歌唱、坂本龍一作曲のあの曲が聴きたくなってしまいました。



”Forbidden Colours(邦題;禁じられた色彩)”

いかがです。

シルバー・ウィーク最後の日、明日からまた仕事とかと鬱陶しさを感じている方も多いかと思いますが、そんな心を癒してくれる、歌声ではないかと思います。


さて、癒しの歌声が登場したところで、さらに癒しの歌声、今回はこの辺にして、次回には、昨今のソプラノの歌姫たちの歌声、またお聴かせしたいと思います。




******

ところで、今回の連休、船橋市民として驚いたこと。

市内のアンデルセン公園が、ディズニーシーやUSJと並ぶ観光スポットになっているのだとか。
今回の連休も10㎞近い渋滞が発生、これたださえ渋滞だらけの船橋市、しかし、ここまでなるとは、信じられないほどの超人気。

私も子供が小さい頃、ここにはよく行きましたけど、市の施設のはずなのに入場料は高いし、入っても取り立ててなにかあるというわけではないし。

おまけに、中に建っている風車、この操業のために市の職員が研修のためオランダに出張したのですけど、出来てみれば電動で回る風車だったことから、税金の無駄遣いと市議会で問題になったとか。

あまり良い印象はないのに......

この人気の摩訶不思議さは、本当に首をひねるばかりなのです。

いやいや、やはりこれもフナッシー効果なのですかね。











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ハンコック

芸術の秋ですね。
そろそろJazzやクラシックの
イベントや催し物が増えてきますね。
いつもはJazz一辺倒の私ですが、こういう機会に
クラシックに触れるとやっぱりクラシックも
良いものだなあと思ったりします。
不思議と他のジャンルも受け入れるようです。
秋は食欲も旺盛になりますし、なんでも吸収しやすい季節なのでしょうか。

サラブライトマンも以前は良く聴いておりました。
サラの声を自分の好きなように調整して鳴らす
などと熱くなっていた時期もございますので、
こうして改めて聴かせて頂きますと
ああ、オーケストラに負けない歌声、流石だなあ、
また家の装置でも鳴らしてみたいなあ、
こういう気持ちになりますね。
カバリエさんの曲を初めて聴きましたが、後半になるほどマーキュリーとの息が合うように思いました。
このあたり、凄いプロの技を感じました。

また、これからの季節、Jazz以外のジャンルに触れる機会が増えるかと思いますが、
その一期一会を楽しみたいと思っております。

by ハンコック (2015-09-27 08:36) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ハンコックさん

私も昔は、ジャズ一辺倒になっていた時期がありましてね。

ところが、それを変えたのが80年代の初頭、二人のジャズ・アーティストによるクラシックの演奏だったのです。

それは、日本で演奏されたChick CoreaとKeith Jarrett,
の二人よる、モーツァルトの”二台のピアノのための協奏曲”。
当代きってのジャズピアニストである二人の共演という豪華さに惹かれて聴いてしまったのですけど、そこであらためて、クラシックの良さを認識、その奥の深さを感じた共に、貪欲に音楽を探求する二人の姿から、聴き手も貪欲でなければと勝手に考え、以来クラシックをよく聴くようになってしまったのです。(確か、この二人の共演とういうのは、マイルス時代を除けば、後にも先にもこの1回しかないように思うのですが。)

サラ ブライトマン、いいオーディオで鳴らすとまたその良さが深く味わえるかもしれませんね。

それで、彼女がクラシックの名曲ばかりを歌った作品”Classics”を聴く。

これなど、この季節ならでは贅沢を得られるチョイスかと思いいます。
早速、試してみることにいたしましょう。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-10-01 06:55) 

moriyoko

老年蛇銘多親さんが、プログレッシブロックを聞いていたとは驚きです。私はプログレッシブメタルですが聞いていた時期があったので親しみを感じました笑
ロックの疾走感にオーケストラってなんかドラマチックで合うんですよね。ただクラシックが主体となったロックは耳にする機会がなかったのか、ピンとくるものがなかったのか印象があまりありません。
サラブライトマンはほんと違和感なく聞けるますね。ちゃんと歌い分けができているという感じがします。アルバムを持っているのを思い出したので汗、聞いてみたいと思います。寝る前に聞いたら心地よくなれそうですね。
by moriyoko (2015-10-01 21:42) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

moriyokoさん

私の方から見るとmoriyokoさんが、プログレッシブメタルを聴いていたとは、これまた意外な感じがします。

私もプログレッシブメタルは結構好きで、今でも時折、Dream TheaterとかDark Moor、Sonata Arctica等々を聴いているのですよ。

中でもDark Moorは、もろクラシックをメタル化して演奏、チャイコフスキーの白鳥の湖やヴェートベンの運命をやっているのですが、これがクラシックのスコアを壊すことなく見事にメタル化している点、大変面白く、ご存じでなかったら一度聴いてみてください。

サラ ブライトマン、良さを感じていただけたようで良かったと思っています。
お家にあるアルバム、寝る前の心地良さだけではなく、胎教にもいいと思いますので、是非また聴き直してみてください。



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-10-02 05:56) 

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