2015年印象に残った作品 その1 [音源発掘]

甲信の地を忙しく飛び回っていた10月、11月。

仕事好きというのは訳ではないのですけど、私を信頼して下さっているお客様たち、そのお客様から寄せられた相談や頼みごとが溜まりに溜まり、この辺で一挙にかたずけその期待に応えねばならないとスケジュールを組んだところ、えらくハード・スケジュールとなってしまった次第。

なんやかんやで時を経つのも忘れ、やっと一息ついたところで気付いてみれば時は、もう12月。

12月となると、1年の締め括り、このブログも例年の如く今年1年間聴いてきた音楽、今年もその履歴をまとめ書き留めておかねばならいなと思いつつ、今度は忘年会に明け暮れる日々、酔っぱらった頭では何も浮かばず、やっとのことで、持てた筆り。


その、ようやくたどり着いた2015年印象に残った作品の記事、その第1回目は、ジャズのお話。

と言ったものの、今年聴いたジャズ作品、何故か大当たりでどれも捨てがたい作品ばかり、さて、どの作品を選ぼうかと悩んでしまうほどの超大豊作。

年初めには、今年はトロンボーン奏者のリーダー作品、と言っても、その大御所で作品の数も多い J.J. JohnsonやCurtis Fullerの作品ではなく、それ以外のアーティストの希少な作品を探し聴いて行こうと決め、年明け早々記事でも紹介した Bob Brookmeyerの作品に出会うという幸先の良いスタート切ったのですが、終わってみれば意図した訳でもないのに、これも以前の記事に書いたピアニストのCedar WaltonGeorge Cablesの参加した作品が、その後も増え続けることになってしまったのでした。

そもそもこうなった原因、それは、2月に作家の村上春樹氏も絶賛するCedarの1974年の東京新宿でライブ・スポットPit Innでのライブ盤が再発されたことから、その翌日に同所でレコーディングされたこのトリオに渡辺貞夫を加えたアルバムで、この時のCedarのプレーの凄さを知っていた私は、かねてより、このトリオの演奏が再発されたら即Getするのだと決めていたこともあり、年初に計画したトロボーン奏者の作品探索は即休止。

この盤を早速手に入れることにしまったことに事が始まってしまったようなのです。

そして、74年のCedarの作品を聴き、このプレーに気を良くした私は、その後も彼の参加している作品が矢継ぎ早に再発される否や、こんな機会は20年?ぶりと即Getし続けることとなり、かくして、今年はCedarの作品だらけとなってしまったとのです。


そんなことで、まず選ぶ最初の作品は、Cedarの作品 ??




と思われるでしょうけど.....

そちらの方は以前にも記事で取り上げましたので、そちらの記事をご覧いただくこととして........

まず取り上げるのは、Ceder, Cablesと共演したサックス奏者、最近はどうもサックスを聴くのが鬱陶しくなっていたのですが、この二人の作品からその良さを再認識したことから、その中でも、Cedarとの共演で、あらためてその実力を強く認識させられた一人のテナー・サックス奏者の作品をと思い、この作品を選び書き綴ってみることにいたしました。



George Coleman、の1978年の作品、”Amsterdam After Dark”。

Amsterdam After Dark.jpg


George Colemanといえば1963~4年に、Miles Davisのクインテットに参加、当時ライブ・レコーディング中心だったマイルスの下、”Miles In Europe”、My Funny Valentine”、"Four" & More ”等の作品で彼の名を記憶に留めている方も多いかと思いますが、その後の日本では彼の消息が大きく取り上げらることなく、私も当時のMilesのクインテットのリズムセクション務めていた、Herbie Hancock(p)、Ron Carer(b)、Tony Williams(ds)等、その後のジャズを担うこととなる他のメンバーと比べ、その力量はもう一つ及ばないと感じていたことから、やはり二流どころのミュージシャンでしかなかったのだと思い以後、その存在すら忘れてしまっていたのです。

事実、当時の日本でのジャズ・レコードの年度別リリース・ブックを調べても、彼の名を冠した作品はほとんどなく、この作品も1979年に初リリースされたものにもかかわらず、日本ではその存在すら全く記載されることのなかったものなのです。

そのこと、それ自体、当時の日本での彼の評価の低さを裏付けるものではなかったかと考えられるのですけど、私も長い間そう思っていたのですけど、今年、1976年のCedarとの共演盤である”Eastern Rebellion”を聴き、あらためてMilesのクインテットでは聴けなかった彼の魅力を知ることとなり、この作品も聴いてみることにしたものなのです。

それでは、Milesのクインテットでは聴けなかったGeorge Colemanの魅力、また皆さんにも、この作品から聴きとっていただき、その味わいの深さ、感じていただくことにいたしましょう。

曲は、この作品の表題曲”Amsterdam After Dark”です。



John の系譜を引くテナー奏者と思われるColeman、しかし、そのサウンドはColtraneのように当時の新世代といわれるモード奏法一辺倒のプレ-ヤーではなく、バックの3人、(ピアノのみCedar Waltonに代わりHilton Ruiz で、他の二人はCedarとの共演の時の同じSam Jones (bass)、Billy Higgins (drums))の三人、その内のSam Jones とBilly Higginsの二人は明らかにモード一辺倒のプレーヤー、というよりは、どちらかというとバップの香りが漂うミュージシャン達。

こうして聴いてみると、Colemanというアーティスト、スタイルこそColtraneを継承しているといえるものも、その芯は、バップ的な空気の中でプレイすると本領を発揮する、そんなプレーヤーではなかったのかとも思え、それがMilesのクインテットの中での新世代のリズムセクションのプレーと対比すると、どこか浮いているような存在という感を与えてしまう結果となったのではと、そんなことが思いが浮かんでくるのです。

Colemanのこの作品、そのプレヤーの一面だけでその資質を判断せずに、いくつかの側面から接し聴いてみなければいけないなと、そんなことを強く考えさせられた1枚でした。



さて、2015年印象に残ったジャズ作品、思えば、今年は終始ピアニストのCedar WaltonとGeorge Cables中心に推移してしまった感が強いのですけど、それでもなんとかその呪縛から逃れようと足掻き、たどり着い出会ったのがこの一枚。

shunzo ohno manhattan blue.jpeg


日本人トランペター大野俊三の1986年の作品”Manhattan Blue”。

大野俊三という名前、サッカー好きの方には、アントラーズで活躍した大野俊三を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、これは、その大野俊三とは全くの別人。

しかし、この方、マスメディアにも取り上げられることも少なく、CDショップに行っても、彼の作品が置いてあることは極めて稀ということもあって、音楽ファンの方でも、初めてその名を聞いたという方も多いのではないかと思います。

そんな大野俊三ですが、その経歴は1974年にジャズ界の大御所 Art Blakeyに誘われ渡米、ニューヨークを中心に活動を初めて以来、Norman Connors 、Gil Evansなど、ジャズの歴史に残る巨匠達のバンドに参加、作・編曲面でも大きな功績を残した、日本を代表するトランぺッターなのです。

そこで、そうした彼の作品から1曲。

聴いていただく曲は、近年日本の童謡やクラシック曲をアレンジした作品で、独自のジャズ世界を築い来た大野俊三、その彼がその卓越したアレンジ能力を発揮してNYのミュージシャンと共に演奏した日本情緒溢れるこの曲から。

まずは一聴してみてください。






あの美空ひばりさんの名曲、

”りんご追分”でした。

この作品の制作された1986年と言うと、1983年から彼が参加したGil Evansのオーケストラが、 Sweet Basil でのライブ・アルバムでも聴かれるようにその絶頂期を迎えていた時で、そのメンバーも名だたる面々が顔を揃えていた時期。

トランペット・セクションを見ても、Lew Soloff, Hannibal Marvin Petersonといった。今を時めく名手達が名を連ねていて、その中にあって、修三自身、音の魔術師と言われたGil Evansからの大きな影響を受けるともに、それら名手達からも大いなる刺激を得、その時、さらに飛躍の端緒を摑んだことは想像に難くないと思えるのです。

そうしたことから、この1986年の作品は、そうした彼のこの時期の集大成であり、特に、この”りんご追分”は、Gil Evansの下で磨かれたそのサウンドへの感性、さらにはアレンジの力が十二分発揮された、その成果だと思えるのです。

それにしても、ここでソロをとっているMike Sternのギター、これまであまりこの人のプレーは好きではなかったのですが、意外にもその良さが心に響く、来年はこの人の作品をしっかりと聴いてみたいものだと思います。




さて、続いて今年印象に残ったジャズ作品は、冒頭に今年はトロンボーン奏者のりーダー作品を探そうとしたのに、ピアニストCedar WaltonやGeorge Cablesの作品が多く再発されたたため、トロンボーンの作品はお預けとなってしまった旨と書きましたが、それでも数少ないこの楽器の作品、合間を見て探し続けていたところ見つけたのがこの作品。

Super Trombone 4Trombone With Masaru Imada.jpg


4 Trombone With Masaru Imadaの”Super Trombone”。

実はこの作品、日本のピアニスト 今田勝のピアノを聴きたいと思い、その作品を探していたところ、出会った作品で、フロント・ホーン・セクションが4本のトロンボーンという編成に興味覚え食指を動かし手にすることとなったもの。

トロンボーン中心の作品というと、あの中低音のぼそぼそとした質感に浸っているうちに途中で聴き飽きて眠くなってしまうような感を強く持っているのですけど、それが4本となると一体どうなるものかと思ったものの、過去にChaseのトランペット4本によるサウンドのそのソリッドさの増したサウンドに好感が忘れられないこともあり、逆に今まで知らなかったトロンボーンの魅力を見つけることが出来るかもと考え聴いてみることにしたものなのです。


そうして興味津津聴いてみると、中低音から生まれる分厚いアンサンブル、そしてゆったりとした落ち着きを与えてくれる包容力のあるサウンド、ここのところの忙しさから荒れ果てしまっていた私の心に、くつろぎ与えてくれ音楽を効く楽しみを与えてくれるサウンドが、そこにあったのでした。

それではそのサウンド、最後に1曲聴いていただこうと思います。
曲は”You Don't Know What Love Is(邦題 恋とはなんでしょう)”です。



今年もいろいろ物色し続け聴いて来たジャズ。
今年はどちらかというと、マイナー所中心となってしまった感がありますけど、ジャズ通を装うつもりはありませんけど、それぞれミュージシャンの個性がダイレクトに伝わってくるジャズという音楽、来年もメジャー・マイナーに拘ることなく、ミュージシャンの奏でる心との出会いを探し求めて、その旅、続けて行くことにしたいと思います。



Amsterdam After Dark
Track listing
All compositions by George Coleman except as indicated
1."Amsterdam After Dark"
2."New Arrival" (Hilton Ruiz)
3."Lo-Joe"
4."Autumn in New York" (Vernon Duke)
5."Apache Dance"
6."Blondie’s Waltz

Personnel
George Coleman – tenor saxophone
Hilton Ruiz – piano
Sam Jones – bass
Billy Higgins – drums

Recorded
December, 29, 1978 at Sound Ideas Studio, New York City


Manhattan Blue
Track listing
1.So-Ho
2.Summertime
3.All At Once
4.Musashi
5.Ringo Oiwake
6.Blue Bossa

Personnel
Shunzo O'no(tp,flh)
Mike Stern(g)
Kenny Kirkland(p,synth)
Gil Goldstein(synth)
Pete Levin(synth)
Darryl Jones(b)
Victor Lewis(ds)
Steve Thornton(per)

Recorded
November, 5,6&7, 1986 at CLNTON RECORDING STUDIO, New York City


Super Trombone
Track listing
1.You Don't Know What Love Is 恋とはなんでしょう
2.Joggin'
3.I'll Never Smile Again
4.Corcovado
5.Spring of Dreams
6.'Round About Midnight
7.Scrap
8.Gopher Serenade

Personnel
及川芳雄(bass tb)
鍵和田道男(1st tb)
内田日富(2nd tb)
岩崎敏信(3rd tb) )
<ゲスト>
今田勝(p)
斉藤誠(b)
守新治(dr)
大久保博行(g)
川瀬正人(per)

Recorded
1980





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りなみ

(*^_^*)親父さん、こんにちは。今年はあと3週間ですね。師走に聴くジャズ、沁みますね。【リンゴ追分】素敵でした。日に日に寒くなりますので、ご自愛くださいませ。
by りなみ (2015-12-13 16:07) 

ハンコック

こんばんは。
「4 Trombone」!
ハードバップど真ん中という感じで、
自分は大好きです。
ジャケットを見て、Trombone 4つかと
やかましいイメージがしますが、
まったくそんなことはないですね。
アンサンブル!
まさにこの言葉がぴったりの曲ですね。

当方も平日は毎日残業、土日はレコードセールと
家族サービスでまったく休む時間がございません。

親父さんもお体を大切になさって下さい。

by ハンコック (2015-12-13 21:56) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

リーナ
【リンゴ追分】、気に入っていただけて良かったです。
このアレンジ、暮れゆく北国の秋の様子と、これから来る厳しい冬の様子を思い起こさせる、いかにも日本人らしいアレンジで、私も結構気に入っています。

寒さ、昨日は雨の中、一日中外で仕事をしていたのですけど、いよいよ冬到来を感じさせるものがありました。
明日からは今年最後の出張。

年ですから、せいぜい体に気を使って、無事乗り切れればなと思っています。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-12-14 05:52) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ハンコックさん

「4 Trombone」!
今田勝のピアノとこのジャケットに惹かれ、聴いてみたら、大当り、実はこの作品、春先に手に入れたのですけど、今の季節に聴くのが、一番ぴったりのように感じています。

ハンコックさんもお忙しいようですが、お互いこれを頑張り乗り切って、気持ちよく新年迎えられるようにしたいものです。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-12-14 06:09) 

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