情熱ほとばしる官能美追求の果てに;SANTANA Ⅲ 本日の作品;vol.128 [デジタル化格闘記]

今年は、一人のアーティストの作品をいろいろ聴き比べながら、これまで何回も聴いてきた作品のまた違った魅力に接してみることにしたジャズの作品、前回の記事もそうしたことで、これまで気付かなかった新たな発見をした作品を取り上げてみたのですが、今回そのロック編。

こちらもジャズ同様聴き比べながらと思ったのですが、そこはロック、かねてより体で感じる直観的な感覚を大切にしてそのサウンドを捉え続けてきたこともあり、聴き比べはするものの、その変遷をもっと直観的に感じてみることを念頭に試み、選んだのがこの作品。

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ラテン・ロックで一世を風靡したSANTANAの1971年に発表された第3作目の作品”SANTANA Ⅲ”。

この作品を選んだのは、先日ログ友さんのところにお邪魔した時に見たJourneyの記事。
そこで聴いたJourney曲から、無性にこの作品が聴きたくなってしまったことから、久々に他の作品と聴き比べをしながら聴き直してみようと思いたち選んだもの。

とはいっても、JourneyとSANTANA、共にアメリカのアーティストだけど、そのサウンドはかなり異なっているし、JourneyからSANTANAという発想がとうして出てきてしまうのか? ちょっと唐突なのではと思われている方もいらっしゃるかもしれませんね!

その発想の繋がりの源、それは、このJourneyというバンドの生誕譚にあるのですが、それは、JourneyというバンドはSANTANAから生まれたバンドだという事実。

というのは、まずは、Journeyの中心人物であるギタリストのNeal Schon、その彼のデビューがSANTANAの№2ギタリストであったいうこと、そして、この”SANTANA Ⅲ”こそが彼の輝くデビュー作だったとうこと。

そしてさらには、Journeyというバンドは、このNeal Schonと初期のSANTANAでミュージック・ディレクター的存在であった、キーボードのGregg Rolieの二人が、SANTANA脱退後、立ち上げたバンドだということがあったのです。



さて、この作品でSchonの加わったSANTANA。

この作品は、Schonが参加しているということで、SANTANAの全作品の中で唯一ツイン・リードギターのプレーが聴ける作品となっているのですけど、彼が加わったことで、それまでのCarlos SantanaとGregg Rolieとパーカッション群の織りなす官能的かつ情熱的なサウンドに、さらに、聴く者を釘付けにする刺激的な緊張感が加わって、その音世界の中にあっという間に包み込まれてまれてしまうほどのものになっているのです。

それでは、その刺激的な官能美の世界、ここで1曲、体験してみることにいたしましょう。















曲は”Toussaint L'Overture(祭典)”。

テーマに続くGregg の熱さほとばしるオルガン・プレー、そしてそれに続くSantanaのギターが、その場を甘美な情熱の世界に導いて行く、とここまでは、これまでのSANTANAのパターンなのですが、聴きどころはコーラスを挟んでの終盤部分。

官能的な音色でメロディアス旋律を弾くSantanaのギターに続いて現れるSchonのギター。
Santanaの紡ぎ出した憂いのある官能美の世界を、まるで鋭利な刃物で引き裂いて行くかのように鋭い音色で切り込んで来る、そこの生じる張り詰めた緊張感、その高まりがたちまちのうちに曲をクライマックスへと導き、聴く者を興奮の坩堝へと陥れてしまうほど。

この時、 Schonの年齢はわずか17歳。
ほとばしる若さのすべてギターに叩きつけ歌わせている迫真のプレー、サウンドの質の異なったJourneyではちょっと聴けない、Schonの姿がここにあります。

さて、こうした情熱に満ちたSANTANAのサウンド、しかし、この作品以降はそのサウンドは大きく変化してしまうとになるのです。

それは、元来伝説のギタリストJimi Hendrixを敬愛、それをルーツにおいていたこのバンドの中心的存在であるCarlos Santanaが、この作品以降、生前のJimi HendrixとプレーをしたアーティストであるドラムのBuddy MilesやギターのJohn McLaughlin 等とレコーディング重ねるうちに、McLaughlinからジャズの巨人John Coltraneの存在を教えられ、その音楽のみならずその思想に大きな影響を受けしまったことに起因するのですが、その結果、Santanaと他のメンバーとの間に音楽の方向性の違い生まれ、最後にバンドは空中分解してしまうことなってしまうのです。

この時、バンドを去ったメンバーによっていくつかのバンドが生まれているのですが、その一つが先にお話ししたGregg RolieとNeal Schonによって結成されたJourneyという訳。


以後のSANTANAのサウンドは、ジャズ・フュージョンの色彩を強め、これまでの本能の趣くままの熱情を帯びたサウンドから、一歩身を引いた内省的な憂いを帯びたサウンドへと変化して行く(それにはまた別の味わいが感じられるのですが.........。)ことになるのですけど、ほとばしる情熱と甘美な官能世界に満ちた第1期 SANTANAの3枚の作品、中でもこのSantanaとNeal Schonとのギターバトルが聴ける”SANTANA Ⅲ”は、何度聴いても聴き飽きることのない、今もって私の必須アイテムとなっている作品なのです。


それでは最後にもう1曲、この作品の中から、その二人のギター・バトルが聴ける曲、."Jungle Strut"をお聴きいただくことにいたしましょう。



久々に聴いた”SANTANA Ⅲ”。
おかげで、何か若き日の元気が戻って来たようです。

今のSantanaの奥義を極めたような渋い演奏もいいですけど、若さゆえのパワーが漲っていた、この時代のSANTANAもいいものです。
良質の音楽は、時を経ても色褪せない、この作品はそうした作品の一つではないかと思います。


Track listing
1."Batuka" (instrumental) (José Areas, David Brown, Michael Carabello, Gregg Rolie, Michael Shrieve)
2."No One to Depend On" (Carabello, Coke Escovedo, Rolie)
3."Taboo" (Areas, Rolie)
4."Toussaint L'Ouverture" (Areas, D. Brown, Carabello, Rolie, Carlos Santana, Shrieve)
5."Everybody's Everything" (Milton Brown, Tyrone Moss, Santana)
6."Guajira" (Areas, Brown, Rico Reyes)
7."Jungle Strut" (instrumental) (Gene Ammons)
8."Everything's Coming Our Way" (Santana)
9."Para los Rumberos" (Tito Puente)


Personnel
Carlos Santana – guitar, vocals, producer
Neal Schon – guitar, producer
Gregg Rolie – keyboards, piano, lead vocals, producer
David Brown – bass, producer, engineer
Michael Shrieve – drums, percussion, producer
José "Chepito" Areas – percussion, conga, timbales, drums, producer
Mike Carabello – percussion, conga, tambourine, vocals, producer

Additional personnel
Rico Reyes – percussion, vocals, lead vocals on "Guajira"
Thomas "Coke" Escovedo – percussion, vocals
Luis Gasca – trumpet on "Para Los Rumberos"
Mario Ochoa – piano solo on "Guajira"
Tower of Power – horn section on "Everybody's Everything"
Linda Tillery – background vocals
Greg Errico – tambourine
John Fiore – engineer

Recorded
January – July 4, 1971 at Columbia Studios, San Francisco


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ミスカラス

このアルバム私も好きでした。ニール・ショーンって若いのに凄いなって思ってました。音楽性は違うけれど、何か・・若いギタリストといえば、シュギー・オーティスと彼がダブります。
by ミスカラス (2016-01-25 20:39) 

mk1sp

改めまして親父さん、Journeyの記事へコメント有難うございます。コメント中に「サンタナ」というキーワードがあり、気になってはいましたが、曲は視聴してませんでした。
情熱的な音楽、Journeyとはまた異なりますね♪
パワー溢れる演奏、元気がでますね(*^_^*)
by mk1sp (2016-01-25 21:47) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ミスカラスさんも
そうですか。

シュギー・オーティス、よく知らなかったのでいろいろ聴いてみましたが、そのブルース、若いのにいい味を出していますね

ダブってくるという感じなんとなくわかったように思います。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-01-30 08:05) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

SANTANAでのNeal Schon、Journeyでの演奏とはまた違った良さがあるでしょう。

Gregg Rolieも80年代、Santanaとの再会で白熱のプレーを聴かせてくれていましたけど、SchonもまたSantanaと再び共演し、成熟した二人のギター・バトルを聴くことが出来ればなと思っています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-01-30 08:14) 

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