往年の名曲に新たな息吹を・TOTO;Through The Looking Glass [音源発掘]

寒い日が続いたと思えば、突如暖かい日が訪れたり、これは例年より早い季節の変わり目の三寒四温の到来かと思いきや、早、梅の花開花の便り届く今日この頃。

これも暖冬であるという、今年なればこその季節模様ということなのか。

そこで、今回の作品はこの少し早い春の訪れの萌芽に触れて、かなり個性的なジャズ・アーティストの作品を取り上げた前回とは裏腹に、気分爽快なカバー曲集を取り上げ聴いてみることにしてみました。

through the looking glass toto.jpg


それが、これ!!
AORの中心的存在として70年代後半より活躍してきたTOTO、その彼らの2002年発表の11作目となる作品 ”Through The Looking Glass”です。

この作品、彼らの正式作品ではあるものの、面白いのはその曲目。
全曲が60年代から70年代の楽曲のカバー集なのです。

しかし、そこは有能なスタジオ・ミュージシャンとして多くの経験を積んできたTOTOのこと、その選曲は、ロックの楽曲だけに留まらず、レゲエ・ソウル・ジャズなど幅広いジャンルに及んでいて、それらの名曲が、彼らの百戦錬磨の腕前によって、どう料理されているのかに接することが出来るのが、この作品最大の聴きどころ。

とは言っても、「所詮カバー曲集じゃないか、彼らの腕前なら難なくこなして当たり前だ!!」という向きもあろうかと思いますが、そう言わず、何はともあれご一聴あれというところ!!

名曲の味をしっかりと伝えながら自己の個性も発揮している、TOTOならでの面白さがあるのがこの作品。

とうところで、まずは1曲。

1967年にあの伝説のスーパー・グループが世に送り出した、ロックのあの名曲から聴き始めることにいたしましょう。











若き日のEric Claptonが在籍していたことでも知られる伝説のロック・バンド”Cream”の名曲、”Sunshine Of Your Love”でした。

この曲、今もClapton自身、ステージでは必ず演奏している曲ですのでご存じの方も多いかと思いますが、TOTOの演奏、その大元のCreamの演奏にどこまで迫り、自身の味を出しているのか、そのあたりも聴いてみたくなるのではと思います。
そこで今度はその原曲、ここで聴き比べしてみることにいたしましょう。



この演奏、ヴォーカルを担当しているのは、ベーシストのJack Bruce。
当時、この人のヴォーカルを初めて聴いた時、そこにそれまでのロックのアーティストではちょっと聴くことの出来なかったメリハリと伸びやかさがあるのを感じ、かなり気に入ってしまったのですけど、対するTOTOの演奏でヴォーカルをとっていたSteve Lukatherも負けてはいない。
TOTOのヴォーカルといえばBobby Kimballがその看板になっているはずなのだけど、このヴォーカルに接してLukatherもなかなかやるものだと、あらためて感じ入った次第。

そしてインストメンタル、Creamといえば、ロックにジャズのアドリブのプレーを大きく取り入れ、3人の繰り広げるバトルの世界が印象的かつ大きな魅力でしたが、対するTOTOも、元々ジャズの素養をしっかりと蓄えたアーティスト、フュージョン的乗りで、さらにソウルフルなプレーを聴かせてくれています。

中でも特筆するは、Simon Phillipsのドラム。
この人、現在は日本のジャズ・ピアニスト上原ひろみのトリオの一員として活動をしているのですけど、原曲の土着的な感じのするGinger Bakerのドラムに対し、ジャズのセンスを生かしたスピーディかつスケールの大きなドラミングで、この曲をさらにハードなものに盛り上げている、この当たりも大きな聴きどころの一つだと思います。


さて、こうしたジャズのエッセンスを多分に吸収したTOTOのメンバーたち。
この作品では、ジャズの名曲にもチャレンジしています。

曲は、現代ジャズ界の重鎮 Herbie Hancockが作曲、1965年Blue Noteレコードに残した名曲”Maiden Voyage(処女航海)”。
まずは、その原曲から聴いていただくことにいたしましょう。



この曲、Hancockの手による海をテーマにしたオリジナル曲を収めた曲と同名の作品(作品紹介はこちら)の冒頭に登場する曲ですが、今では多くのアーティストによって演奏されジャズのスタンダード・ナンバーともなっている、名曲。
処女航海に向け、穏やかな海の上をゆったりと気品溢れる姿で進む豪華客船の有様が見えてくるような演奏だったと思います。

そのジャズの名曲が彼らの手にかかると、どんな風景となって聴こえて来るのか、聴いてみたくなりますよね。
というところで、TOTOの”Maiden Voyage”、早速聴いてみることにいたしましょう。



無数の夕陽の日の光が海面にきらめく海の上を、力強く波を蹴り進む最新鋭の客船のイメージ。
私には、そんな風景が見えて来たのですがいかがだったでしょうか。


キーボードのDavid Paichの発案によって制作されたこのカバー・アルバム、TOTOならではの試みで、聴きなれた曲にまた違った息吹を添えている。

今回ご紹介したこの2曲以外にも、いろいろ面白い試みが隠されている。
その原曲と聴き比べながら、その隠し味を探しながら聴くのも、また楽しいものではないかと思います。


Track listing
1. "Could You Be Loved" Bob Marley ・Lead vocals-Kimball
2. "Bodhisattva(菩薩)" Walter Becker, Donald Fagen・Lead vocals- Kimball and Lukather
3. "While My Guitar Gently Weeps" George Harrison ・Lead vocals-Lukather
4. "I Can't Get Next to You" Norman Whitfield, Barrett Strong ・Lead vocals-Kimball
5. "Living for the City(汚れた街)" Stevie Wonder ・Lead vocals-Kimball
6. "Maiden Voyage(処女航海)/Butterfly" Herbie Hancock
7. "Burn Down the Mission" Elton John, Bernie Taupin ・Lead vocals-Kimball
8. "Sunshine of Your Love" Jack Bruce, Pete Brown, Eric Clapton・Lead vocals- Lukather
9. "House of the Rising Sun(朝日のあたる家)" traditional・Lead vocals- Kimball
10. "Watching the Detectives" Elvis Costello ・Lead vocals-Lukather
11. "It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train to Cry (Live)" Bob Dylan ・Lead vocals-Paich

Personnel
Bobby Kimball: vocals
Steve Lukather: guitar, vocals
David Paich: keyboards, vocals
Mike Porcaro: bass
Simon Phillips: drums, percussion

Released
October 21, 2002 (UK)
November 5, 2002 (US)



※PS

今年は、梅の花の開花も早いというニュースを聞いて、私も一昨日、訪れていた甲府で毎年、梅の花と対面している、いつもの甲斐風土記の丘へ足を運んでみたのですが、着いてみるとこの通り。

DSCN1464m.JPG


例年より10日以上早い、花の様子。

DSCN1450m.JPG


今年は、この場所での梅の花との対面は、叶わないなと思っていたのに、出会えたこと、これは本当に喜ばしい限り。

良いことなのか悪いのか良くわかりませんけど、暖冬の今年の冬、何か良い贈り物をくれたような、そんな気がして来ます。



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raccoon

三寒四温になってきましたね。 偶然にも、2/19 に私も梅の花を見つけて、写真を撮っていましたよ。
本当に暖かい冬ですね。
by raccoon (2016-02-27 19:27) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

raccoonさん

先日2/23に茅ヶ崎に行った時、今度は河津桜が咲いているのを見つけたのですけど、もう満開の時期は過ぎていたのには少々驚かされました。

昨年は、3月の初めが見頃にだったのに。
本当に今年冬は暖かだということなのでしょうね。

そのせいか、長期天気予報では今年の夏はかなり暑いとのこと。
心してかからねば!!


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2016-02-28 15:26) 

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