2019年、今年の年初めはテナーサックスの響きから;Michael Brecker・Tales from the Hudson [音源発掘]

年末そして正月気分をほとんど感じることなく、あれよあれよと過ぎてしまった、私の今年の正月。
確かに仕事は方は、かなり忙しくなっていたのだが、これはいつもの事。

どうして、こんな気持になってしまったのわからないのですけど、すでに2019年となって早2週間、年初に日々前向きに過ごすことを誓ったことでもあり、そうしたことをいつまでもくよくよと考えるのは止めて、今はこの1年を災禍に合うことなく、無事に乗り切れるようひたすら英気を養っているところ。

そこで、今回はそうした英気を養うべく、ここのところ聴いて心身ともに新たな活力を得ているテナーサックス作品のお話。

それがこの作品。

Tales From the Hudson.jpg


Sonny Rollins,John Coltrane以降、さも大きな影響を残したテナーサックス奏者といわれる Michael Breckerの1996年制作の作品、”Tales From The Hudson”です。

私が、このMichael Breckerを知ったのは、彼のデビュー草創期の1970年初頭のこと。
当時、私は、それまでにはなかった、バンドにブラス・セクションを加えたロック・バンド、いわゆるブラス・ロックと呼ばれるそのサウンドに斬新なものを感じ、Blood, Sweat & Tears、Chicago、Chaseなどの音楽をよく聴いていたのですが、さらに新たなブラス・ロックのに触れたくて、そうしたバンドを探していたところ見つけ聴いたのが、まだデビューしたばかりのMichael Breckerの兄である、トランぺッターのRandy BreckerとMichaelが率いるブラス・バンドのDreamsだったのです。

まだ、フュージョンなどというジャンル名はなかった時代。
この当時、その中軸となっていたブラス・ロックバンドが、ロックにジャズやクラシックの要素を取り入れた新鮮なサウンドで人気を博したのですが、このDreamsは、ジャズの要素は強いもののそのサウンドは伝統的なジャズとはどこか違って(今なら、スムース・ジャズということになるのでしょうけど。)いて、このあたりにブラス・ロック サウンドとは一線を画すものだったということがかすかな記憶に残っています。
しかし、その彼らの音楽は、当時はあまりも斬新過ぎたのか、Dreamsとして、2作品を残すも大きな評判を残すことなく、いつの間にかシーンから消えてしまっていたのでした。

その後の彼等は、フュージョン・ロックシーンでセッション・ミュージシャンとして活動を続け、そして1975年にBrecker Brothers名義よる初の作品”The Brecker Bros.” を発表、さらに1978年に、フュージョンの傑作とされるライブ作品”Heavy Metal Be-Bop”の発表で一躍その頂点に立つことになるのです。

ところが、当時の私は、伝統的なジャズに傾倒していたこともあって、この二人のこうしたフュージョン界の成功ゆいてはあまり興味がなく、そのプレイを聴いてもさしたる新鮮味を感じられなかったことから、評価することはまったくなかったのでした。

その当時の評価外の流れ、どうやらそれは私だけではなかったようで、1990年代になってジャズ評論誌を読んだところ、そこにポスト・Coltraneを担うテナーサックス奏者は誰かと特集が掲載されていて、その記事によれば、ポスト・Coltraneを担うテナーサックス奏者として当時新進気鋭のテナー・サックス奏者として頭角を現していて来ていた、Joshua RedmanやBranford Marsalis、Ravi Coltrane等の名が挙げられているも、Michael Breckerの名はどこにもなく、その当時、そのアーティストを選定をした評論家の諸氏の間でもMichaelは過小評価されていることを知ったのです。

ところが、その1990年代になると当の私の方は、そうした彼への評価の間違いに気付き、どうして評論家先生たち、Michaelのを挙げないのだろうと思うようになっていたのです。
その原因となったのが、80年代の終わりに聴いた、シンガー・ソングライターのJoni Mitchellの79年に収録されたライブ音源作品”Shadows and Light”で、Pat Metheny, Jaco Pastoriusと共にバックを務めたMichaelのプレイ。
そこで聴いた彼のサックスには、Mitchellのフォークともジャズ・フュージョンとも一線を画すその独特なサウンドの中で、間違いなく伝統的なジャズの香りを漂わせつつ、そのサウンドと絶妙なバランスを保ち調和していたことが、大変印象に残り、Michael Breckerというサックス奏者について興味を覚えるようになっていたのでした。

そして、その後は機会があれば真摯な気持ちで彼のプレイに接するようになったのですが、その彼のサックスの凄味を思い知らされたのが、1995年のMcCoy Tyner の作品”Infinity”での彼のプレイ。
そこで彼は、あのColtraneの黄金のカルテットのピアニストとしてとして活躍した巨匠McCoyを相手に、堂々としたサックス・プレイで実に緊張感溢れるサウンド空間を創り出していたのです。

そのスケールの大きさと重厚感は、このMcCoyの”Infinity”の前作”Prelude and Sonata ”で同じくテナーサックスを担当していた、前述のポスト・Coltraneを担う若手テナーサックス奏者に選ばれ、№1の実力と評価されたJoshua Redmanのプレイと比べてもそれを遥かに超えるもので、そのプレイによりMcCoyのプレイも往年の輝きを取り戻した感じられるほどの、この時期もっとも偉大なテーナー・サックスとしての力を大いに見せつけるものだったのです。


そのMcCoyとの共演、今回取り上げたこの”Tales from the Hudson”の中にも2曲収められているのですけど、この作品ではさらにギターのPat Methenyが加わり、McCoyのピアノに内在する土俗的な雰囲気とPat の洗練されたナチュラルの相反した要素が、Michaelの存在によって見事に融合している様子を聴くことが出来ます。

それでは、評論家先生方もMichaelを見直したMcCoyとの共演、ここで1曲耳を傾けてみることにいたしましょう。
曲は、”Song For Bilbao”です。







激しくウェーブするMcCoyのピアノ、そのウェーブに乗りColtrane.でスタイルで重厚なソロを展開するMichael Breckerと、ギター・シンセサイザーを駆使し、70年代後半にMcCoyがバンドにヴァイオリン奏者を入れた時の、往年のサウンドを蘇らせているMetheny.。

一見するとMcCoyとMetheny、異色の組み合わせと考えてしまいまいますが、この演奏、逆にそのことがアーティスト相互間に強い緊張感を生み、それぞれの好プレーを引き出す結果をもたらしたのではと思うのです。

さて、まずはMcCoyとの共演で、あのColtraneを想起させるMichael のプレーをからお聴きいただきましたが、これがこの人のスタイルのすべてではなく、彼のプレーをいろいろ聴いてみるとわかることですが、そのスタイルは、プレーを求められた場面々でそれぞれでの雰囲気に合う最良の形を指向構築し、そこに独自のスタイルを加味、そのサウンドとの調和を生み最良のサウンドに仕立て上げるプレーが出来るアーティストなないかと思うのです。

それは、フュージョンというあらゆる音楽を融合した音楽フィールドで育ったということの他、スタジオ・ミュージシャンとしてジャズのみならず、ロックやフォークのアーティストの作品に参加や、驚いだことにはJ-Popのアーティストのレコーディングまでと、幅広いジャンルでの活動を続けてきたことに、その礎があるように思えるのです。

事実、この”Tales from the Hudson”の後の諸作品に接してみると、伝統的なジャズに支点を置きながら現代が浮き出てくるような、そうしたサウンドが感じられ、その後作品の中でも、彼の骨髄異形成症候群 闘病前最後のリーダー作品である2001年の制作の”Nearness Of You-The Ballad Book”では、カントリー・フォーク系の巨匠James Taylorをヴォーカルに迎え、極めてカントリー・フォーク系な要素が強いサウンドにも拘らず、生まれ出てくるサウンドは極めてジャズに近いものということにMichael の目指した究極のフュージョンの姿が見えて来るあたりに、彼の現代のジャズ界に残した功績の大きさが感じられます。

さて、この辺で、そうしたMichaelのMcCoyの呪縛から放たれたプレイ、ここで1曲聴いてみることにいたしましょう。
曲は、”Midnight Voyage”です。



前と異なりゆったりとブルースを歌い上げてるMichaelのサックス。
Methenyのギターも、オーソドクスなプレーで、伝統的なサウンドの流れを引き立てています。
Michaelの多面性を垣間見ることが出来る1曲ではとないかと思うのですけど、いかかがだったでしょうか。

2019年、年初にどういう訳か久々に聴くこととなってしまった、Michael Breckerのこの作品。
聴きながら、2007年に57歳という働き盛りに亡くなったMichaelの偉大さを知らしめさせられる共に、これまでしっかりと聴くことをしなかったことを猛省しつ、これを機に今年は、このMichael Breckerを含め我家のライブラリーお蔵入りとなっている作品の再発掘しなければという思いを痛感しました。

そうしたことで、また今年も、私が聴いてきた様々な音楽作品やアーティストの思い出、そして時には、旅で訪れ感じた季節の風景、その断片を交えながら語って行きたいと思っています。

皆様方、また1年、お付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。


Track listing
All tracks composed by Michael Brecker; except where indicated
1. "Slings And Arrows" (Brecker)
2. "Midnight Voyage" (Calderazzo)
3. "Song For Bilbao" (Metheny)
4. "Beau Rivage" (Brecker)
5. "African Skies" (Brecker)
6. "introduction To Naked Soul" (Holland / Brecker)
7. "Naked Soul" (Brecker)
8. "Willie T." (Grolnick)
9. "Cabin Fever" (Brecker)

Personnel
Michael Brecker – tenor saxophone
Pat Metheny – guitar, guitar synthesizer
Joey Calderazzo – piano
Dave Holland – double bass
Jack DeJohnette – drums
McCoy Tyner – piano (tracks 3 and 5)
Don Alias – percussion (tracks 3 and 5)

Recorded 1996
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