欧州で花開いた秘められた天賦の才・Kenny Drew:Everything I Love 本日の作品;vol.141 [デジタル化格闘記]

その昔、聴くも我ライブラリーに長い間眠ってしまっていた作品、今年はそうした作品にも光をあてるべく聴き直し、それを書き留めて行こうとこれまで3作品を取り上げ語って来ましたが、今回も引き続きそうして再発掘した作品のお話。

その作品、それはあるバップ時代に活躍していたとあるピアニストのピアノ・ソロ作品なのですが、若き日何気なく街に出て、時間つぶしにとたまたま目にし飛び込んだジャズ喫茶で耳にしたそのサウンドが、バップ時代のスタイルとは大きく異なっていて、その変貌ぶりにおおいに驚嘆、その帰り道にまだ発表されて間もないそのレコードを求め歩き、ようやくGet相成ったという、私にとっては自身の深い思い出があったもの

その作品がこちら.........

Kenny Drew:Everything I Love .jpg


1973年制作の Kenny Drew、欧州移住後の第2作目のリーダー作品となる”Everything I Love”です。

私にとってDrewというピアニスト、John Coltraneの”Blue Train”でそのプレイ接して以来、大のお気に入りなていて、この作品と出会うまで、1961年渡欧後 デンマークのコペルハーゲンに拠点としてその地にあるカフェ・モンマルトルのハウス・ピアニストとして生涯のパートナーとなるベースのNiels-Henning Ørsted Pedersenと、その時期、既に拠点をヨーロッパに移していたサックス奏者のDexter GordonJohnny Griffinのサイドマンとして共演したこれら作品を通して彼のプレイを楽しんで来たのですが、それとはまた違った印象のこのリーダー作品での彼のプレイ。

前者の作品では、50年代アメリカ時代のバップ・ピアニストとしての彼の元のスタイルとは違う、60年代主流となったBill Evansのスタイルに近づき変貌しつつも、どこかバップの余韻の名残が聴こえるものであったものが、このソロ作品ではさらに進化し、フランス印象派的クラシックの余韻を宿すものとなっていたことへの心地良い驚きのひと時!

そこでまずは、1曲。

私に、そうしたことを強く感じさせた楽曲から、新鮮な驚きをもって聴いた"Sunset" をお聴きいただきその心の余韻を感じていただくことにいたしましょう。






















豊かに実りを湛えた広大な穀倉地帯のはるか地平線上、真赤に空を染めその日の仕事を終えた太陽が沈み行く情景が目に浮かび、あたかもそこに佇んでいるような気持ちなってくるような演奏、と感じているのですが、いかがだったでしょうか。

欧州の旅情を秘め感じさせるこのDrewのペンによるこの楽曲、後の1988年のピアノトリオ作作品”IMPRESSIONS(パリ北駅着、印象)”に収められたやはりDrewのペンよる名曲”Impressions ”に通じ、その曲作りの原点にあるのがこの楽曲ではないかと考えるのですが、そうしたDrewの欧州テーストを感じられるこれら楽曲を収録したこの作品”Everything I Love”は、この前後に発表されたNiels-Henning Ørsted Pedersenとのデュオ作品や、その後のピアノトリオ作品の人気の影に隠れてしまって、私に知る限り、これまでほとんど話題に上ることがなかったように思うのです。

しかし、今回あらためて聴き思ったのは、1980年代に入り 大いに好評を博した日本人プロデュサー木全信とのタッグによる諸作品に、欧州で磨かれたこの作品の心の片鱗が随所に発揮されていて、それをが彼の持つ好ましいサウンド個性として大いなる評判を呼んだと考えているのですが、そのことから今思うと、この”Everything I Love”という作品は、そうした彼の個性が明瞭に打ち出され現れたその始発点に位置するものだと思われ、そうしたことからDrewというアーティストを聴くうえで重要な作品の一つではないかと思われてくるものなのです。

それではこの辺で、欧州で培ったDrewのフランス印象派的クラシック・テーストを宿したプレイ、また、ここでもう1曲聴いてみることにいたしましょう。
曲は,アメリカのミュージカルや映画音楽の分野で、多くのスタンダード・ナンバーを残した作曲家のCole Porterによるr"Ev'rything I Love"です。
古きアメリカン・サウンドの味を持った曲でありながら、ヨーロピアン・テーストをふんだんに感じさせるDrewのピアノ・プレイ、私同様楽しんでいただけたらと思います。



1950年代のバップのスタイルを継承したピアニストであったはずのDrew。
その時代の彼の乗りの良いスウィング感溢れるプレーには、他には感じられない光るものがあったと思う一方、バラード・プレイとなると、バップ系ピアニストの通例に洩れず、それまでの心地よいリズムは失われ、窮屈な様相が残る、しまいには不安定さが露出していしまい、聴くももどかしく苛立ちさえ覚えてしまうことが、その常だったのですが、このソロ作品では、そうしたもどかしさの影は微塵もなく、繊細なタッチで曲の中に秘められたその情景を美しく描き上げていた。

それは、ヨーロッパに渡り見事自身のサウンド世界を見出し、その後の彼のプレイの中に連綿と流れ続けたその姿の原点ともいうべきもの。

そうしたことから、この作品はその人生の大半を欧州デンマークの地で過ごし、大きな名声を獲得したアメリカ人ピアニストの新たかつ偉大なる出発の瞬間をあからさまに捉えたものとして、見過ごされがちではあるけれど、kして忘れてはいけない作品だということ、今回久々に聴いて痛感させらることになりました。



Track listing
All compositions by Kenny Drew except as indicated
1."Sunset"
2."Portrait of Mariann"
3."Blues for Nils"
4."Yesterdays" (Otto Harbach, Jerome Kern)
5."Ev'rything I Love" (Cole Porter)
6."Flamingo" -
7."Winter Flower" (Thomas Clausen)
8."Fall"
9."I Can't Get Started" (Vernon Duke, Ira Gershwin)
10."Don't Explain" (Billie Holiday, Arthur Herzog Jr.)

Personnel
Kenny Drew - piano

Recorded
October 1 (tracks 6 & 9), November 13 (tracks 1, 4 & 8), November 14 (tracks 2 & 10) and December 31 (tracks 3, 5 & 7), 1973 in Copenhagen, Denmark

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mk1sp

素敵な余韻のある曲ですね
特にSunset

この曲の雰囲気で毎日を終えられたら
素敵ですね♪
by mk1sp (2019-03-15 20:46) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

確かに、そうですね。
私などこの曲、今日も無事一日が終わったという充足感に満たされる感じがしたので、仕事帰りの電車の中で聴いています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-03-16 12:24) 

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