北欧の地に降臨した熱きバップの息吹;Jackie McLean ・The Meeting 本日の作品;vol.142  [デジタル化格闘記]

桜は満開を迎えたというのに、また冬に戻ったのではと思われる寒さに襲われることもあった今年の4月(卯月)。
おかげで例年なら、その見ごろ儚く短いもので、日々日常に追われ気付いたときには既に散ってしまっていたという思いのある桜の花も、今年は長い間、花を散らすこともなく、春の幕明けを彩り我々の目を楽しませてくれたものでしたが、そうしたこと思い出しながら今を見つめてみると、早いもので月はまもなく5月。

特に今年4月は平成も終わりの月ということなのか、この時期に来てようやく陽気の方も落ち着きみせ始め、暖かな陽射しが降り注ぐ日々が毎日続くようになった昨今、こうした情勢が訪れると、どういう訳か聴く音楽の方も元気でパワフルなものが欲しくなってくるもの。

そこで今回は、3月に紹介したKenny Drew作品を聴きながら記事をしたためた時に脳裏をかすめた、もう少し暖かくなってから聴いたなら、あらためてその良さの神髄がわかるのではと感じた、 Drewが参加したこんな作品を選ぶことにしてみました。

jackie mclean dexter gordon the meeting.jpg


それがこれ!!
アルトサックス奏者 Jackie McLeanの1973年の作品”The Meeting ”です。


本作は、1940年代末期に登場、Miles Davis、Charles Mingus、Sonny Clark、Mal Waldron等、50年代を代表するアーティストと共演、その彼等と共にこの時代を代表する数々の名作に数々の足跡を残してきた50年代を代表するアルト。サックスプレーヤーのJackie McLeanが、1968年に一旦活動を休止した後、72年にカム・バックを果たした直後のデンマーク、コペルハーゲンにあるクラブ モンマルトルでのライブでの彼のプレーを収めたもの。
相対するメンバーとして、一足早く欧州に渡り新境地を切り開き、当時脂の乗り切ったプレーを展開していたバップ期を代表するテナーサックス・プレーヤーのDexter Gordonや、そのGordon同じく60年代にアメリカより欧州に渡り在住、このライブの行われたデンマークはコペルハーゲンにあるクラブ モンマルトルのハウス・ピアニスト的存在になっていたKenny Drew、そしてその相棒であるデンマーク出身のベーシストNiels-Henning Ørsted Pedersen等、最良のメンバーに囲まれて、なんら縛られることのない欧州の空気の中で思う存分自分たちのジャズ、華やかなりし往年バップを歌った作品がこれなのです。

といいながらこの私、そもそもこの作品を手に入れたのは、McLeanやGordonのプレーが目当てではなく、コペルハーゲンに移ってからDrewのピアノが聴きたかったためで、しかしながらその当時は、サックスが2本フロントを飾る編成のサウンドはあまり好みではなくむしろ苦手としていたことから、Drewのピアノは聴き良いなあと思ったものの、演奏の大半を占めるサックスのプレーが小うるさく感じられてしまい、この作品、その後はとうとうじっくりと聴かずじまいでこれまたお蔵入りにしてしまっていたものなです。

さて、そうした経緯で久々に聴いたこの作品、その昔小うるさく感じた二人のサックス・プレイ、アルトとテナーの違いはあるも、共に硬質な音色でどちらかというとゴリゴリ吹きまくる印象のこの二人、私のいいかげんな記憶の中では、互いに煽りまくり白熱の余り自己を顕示するかのようなオーバー・ブローに陥ってしまい、聴かされる側としては、しまいにシラけてしまう、そうしたものであったように思っていたのですが、あらためて耳を澄まして聴いてみるとさにあらず。

McLeanもGordonもソロに入ると次第にヒート・アップして行き、かなり熱きサウンドを放っている様が聴き取れるのですが、そこでオーバー・ブローに陥ることなく互いに自己の持てる技を駆使しして真正面からぶつかり合っている、そんな様が聴こえて来たのです。


というところでその演奏、ここで耳傾けていただき、その真偽、確かめ味わっていただくことにいたしましょう。

曲は、”All Clean”です。










聴いてまず感じたのは、それぞれソロ交代受渡しのスムーズさ。
私の耳が未熟なのがその大元なのかもしれませんが、ぼんやり聴いていると、今聴いているソロはMcLeanなのかGordonなのかを見失うことしばし。

それは、アルトとテナーという楽器の違いはあるにせよMcLean 、Gordonのスタイルには共通項の部分が多いように思えることから、そのせいよるものかと思いさらに聴いてみると、前のソリストがプレイしたサウンドをそれを引継いだ次のソリストが、そこで築かれたサウンドの印象を崩すことなくスムースにそのサウンドを受継ぎ、そこから次第に自らの味付けを施して行る、そうした様が見えて来たのです。

しかもそのこと、あらかじめ意図したものではなく、極めて自然流れの中から生み出されてるよう!
ならば、それは互いの個性を熟知していればこその賜物ではないかと考え、そこで、McLean 、Gordon、Drew、Pedersen等のこの演奏以前の4人のディスコグラフィからその共演履歴を調べてみたのですが、その結果は.........。

まず、Gordonについて、Drew、Pedersenの二人とは、彼が60年代半ば、欧州に活動拠点を移していたことから、彼等とのこのコペルハーゲンでの共演記録がいくつもあったのです。
それに対して、McLeanは、68年に活動を休止するまでその活動拠点がアメリカであったことによるものか、この二人との共演の記録はなく、彼等との共演は、72年にカムバックの時に契約したSTEEPLE CHASEレコードの専属であったDrew・Trioであったことなのか、記録としてはそれ以後のものしかなかったのです。

そして、共に1940年代から活動を始め、必ずその長きキャリアのどこかで共演ているはずと思われたGordonとMcLeanの二人の方には、その共演記録がまったく見当たらなかったのです。

それはともあれ、1950年代ジャズシーンを沸かしてきたMcLean、GordonとDrew、10数年以上の時を経てこの北欧の地で再会した3人が、本国アメリカでは過去のものとなってしまったバップのサウンドを同世代の喜びをもって共に高らかと歌い上げている、その様が溢れ出ている印象的なこの演奏、共演のあった無しではなく、その繋がりがアーティスト各人のテンションを最大限に高め緊密な一体感溢れるソロの応酬を生んだ、そのように思えて来るようになったのです。

それでは、ここで1曲。
今度は、ピアニストのDrewの曲で、以前の記事にで紹介したDrewのソロ作品から、お聴きいただいた”
Sunset ” を聴いていただこうかと思います。

McLean とGordonの加わった演奏、Drewのソロ作品の演奏から受ける印象の違いを、また楽しんでいただければと思います。



Drewのソロ作品では、その耽美的な美しさから、欧州の旅情を秘め感じ、そうしたことを書き留めたのですが、この演奏ではDrew自身のピアノ・ソロにはそうした雰囲気が感じられものの、McLean とGordonの出番となるとその風景は一変。

果たして、どの地の夕暮時の情景かと思いを巡らしてみたところ、思い当たったのが広大なアメリカの大地における夕暮れ時の風景。
サウンドが描く風景も、それぞれのアーティストの境遇によって異なるタッチが浮き出てくる。
そう感じるのは私だけかもしれませんが、こうした聴き方もまた面白いのではと思います。

さて、長々と語ってきたこの作品、繰り返し聴いてみると、McLean とGordonの二人のホーン奏者の思う存分の痛快なプレー生まれたこと、つきつめてみれば、それはDrewトリオの好サポートあってこそだったということ。

飛躍の戯言を言いながら、またの間、しばらくは、Drewのピアノから離れられなくなってしまいました。

さて、私の平成最後となる本ブログ。
思わぬ戯言が出てくるくらい夢のまた夢を彷徨った私の平成、来るべき令和が皆にとって良き時代となるよう祈りながら、また夢の中を彷徨いながら、ゆっくりと音楽を楽しんで行こうと思います。



Track listing
1.Introduction by Jackie McLean - 0:50
2.All Clean (Dexter Gordon) - 17:10
3.Rue de La Harpe (Sahib Shihab) - 8:34
4.Callin' (Kenny Drew) - 13:41
5.Sunset (Drew) - 10:37
6.On the Trail (Ferde Grofé) - 13:13

Personnel
Jackie McLean – alto saxophone
Dexter Gordon – tenor saxophone
Kenny Drew – piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen – bass
Alex Riel – drums

Recorded
July 20 & 21, 1973
Jazzhus Montmartre in Copenhagen, Denmark





nice!(15)  コメント(0) 
共通テーマ:PLAYLOG

nice! 15

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント