サウンドに革新をもたらした男、在りし日の熱きドラム・プレイ;Elvin Jones in Japan '91・本日の作品;vol.144   [デジタル化格闘記]

前回の記事でご紹介した、30年前のライブ映像。
思いのほか、状態も良く演奏も質もかなり良かったことから、ならば他にも何かあるかもしれないと、柳の下には、もうドジョウはいないかもと思いながら捨てる気でいたビデオ・テープの山を再度物色してみたのですが、もうないと思った柳の下から、また1本。

そのライブ映像さっそく視聴したところ、ほぼ同時期のヨーロッパでのLive音源はCD化されていいるものの、映像としては市販化されていないものようで、その上画質も演奏の質も良かったことから、再びデジタル化作業かかることにしたのです。


ところが、作業をを始めてしばらくして、ひょっこりと顔を擡げ出て来たのが、ここ数年沈静化していた持病の悪化。
当初は、これまでと症状が違っていたことから何の病かわからず、軽い夏風邪かな程度と思っていたのですが次第に発熱、とうとう高熱が続くようになり医者に通うもなかなか快方に向かわず、その原因突き止め適切な投薬開始となるまで結構時間がかかってしまい、10日間余り寝たきり状態となってしまったのです。

体質病なので、完治しても再発すると医者からは言われ気を付けているのですけどね、おかげで記事の更新もまた1ケ月ほど滞ってしまうことになってしまいました。



とは言いながらもなんとか床を離れられるまでに回復、そこで作業再開、そうしてデジタル化作業を終えた、その映像を、今回は、またひとつご紹介したいと思います。


そのプレイを捉えたアーティストは、現代ドラムの技法を大きく変え後進に多くな影響を及ぼしたドラマーのElvin Jones。

elvin jones.jpg


そして、この写真がドラムを叩くElvinの姿。
この迫力の面構え、これだけでもおのずから革新手的と言われた白熱の彼のドラム・プレーへの期待が湧いて来るのではないかと思います。

2004年に他界(享年76歳)してしまった彼ですけれど、Elvin Jonesといえば、60年代ジャズを革新を起こし、その後のジャズに大きな影響(ジャズをおかしくしてしまったという方もいらっしゃいますが)を残したジャズ史上にその名を深く刻まれたあの名高いJohn Coltraneの黄金のカルテットのメンバーとしてMcCoy Tyner(ピアノ)、Jimmy Garrison(ベース)共に、強烈なパワーで炸裂し続ける圧倒的なドラム・プレーで、その一翼を担い、新たなジャズの流れを築くに多い貢献したアーティストとして、その名を思い出す人が多いのではと思いますが、今回掲載した映像は、1966年、フリーの道に足を踏み入れだしたColtraneと、目指す音楽の方向性の違いから袂を別ったElvinが、その後独立、1980年代になって結成したグループ”JAZZ MACHINE” の1991年来日時の東京・青山Blue NoteでのLive。

そこで見るEllvinは、リーダーとして、Coltrane時代のようなひたすら他を圧倒するよう激しいプレーからは一歩身を引き、個々のメンバーの動きにも気を配りつつ彼らの主張も受け入れながらグループとして、その音楽の奥行きを築いて行くかのようにも見える、そのドラム・プレーが聴きどころと思えるもの。

まずは演奏をご覧いただく前に、在りし日のElvinがこの来日時に、その”JAZZ MACHINE”に訥々とその胸の内を語っているインタビュー映像がありましたので、このグループにかけた彼のその意気込み、そこから始めることにいたしましょう。



音楽という表現手法で、多くの人々との密な心の繋がりを築き、共にその音楽を深めていこうしている彼の姿勢が良くわかる映像だったのではと思います。

それにしても、前掲のElvinの写真で感じた彼の印象、実は、私もその昔初めてColtraneカルテットでプレイする彼のポートレイトを見た時は、随分恐ろしげな人とだという印象を受けたのですけど、このインタビュー見て、その言葉一つ一つに音楽に対する熱い情熱と、人を引き寄つけてやまない無限の暖かさが、そのシャイな表情の中から見えて来る、そのことに、私自身もあらためてElvinというアーティストの偉大さを知ることになったのです。

さて、この映像をご覧いただきElvinの音楽にかけるその意気込みを感じていただいたたところで、今度はその演奏映像、この辺で1曲ご覧いただきその真髄、味わっていただくことにいたしましょう。











Elvinには珍しいフルートが加わった楽曲。
フルートを演奏するは、マルチリード奏者のSonny Fortune というアーティストですが、この人1970年代の初頭には John Coltraneの黄金のカルテットのメンバーとしてElvinの僚友であったピアニストのMcCoy Tynerが、Coltraneの後継者との評価を決定付けた作品”Sahara”でのプレイで名を上げて以来、1974年からは前任のDavid Liebmanの後を受けMiles Davisのグループに参加、健康状態の悪化によりMilesが活動を休止する翌年の1975年までMilesと共にそのフロントを務め上げた百戦錬磨の人物。

そのMies時代のプレイは、Milesが活動を休止する直前の日本公演を収めた”Agharta ”と”Pangaea”で聴くことが出来るのですが、かなりファンク色の強いサウンドの中にあって、Fortune は、その強烈なファンクの渦に呑まれることなく、McCoy の下で見せたサックス・プレイ以上の鋭い力強さをもってジャズを体現していたことが思い出され、さらにはMiesのバンドでは唯一と思われるフルート・プレイ(Maisha)まで披露、Miesのサウンドにそれまでになかった新風をもたらしたアーティストなのです。

そしてもう一人注目すべきは、Fortune と共にをフロント形成する相方のサックス奏者。
この人、誰あろうあのJohn Coltraneと妻でピアニスト・ハープ奏者のAlice Coltraneの間に生まれた、Ravi Coltrane というアーティスト。

John Coltraneが亡くなった1967年にはまだ2歳だったというRavi ですが、このElvinのクインテットに参加したこの時期は、Branford Marsalis、Joshua Redmanと並んで次世代を担うサックス奏者として大いに注目されていた時。
そのプレイ・スタイルは、Coltraneという名から父Johnの激しくスピリチュアルなスタイルのサックス奏者というイメージを浮かべてしまいますけど、実際はそれとは裏腹の聴き手を包み込むように歌いかけるリリカルさを感じさせるもの。

私自身、これまで父Johnとのスタイルとは異なる彼のスタイルはあまり好きではなかったのですけど、このプレイを聴いて彼を見直しこれからはもう少しそのプレイを聴いてみなければと思うに至った次第。
今は、次世代を担うサックス奏者として評されたBranford やJoshua のその後と比べるといささか影が薄い存在になってしまっているようにも思えるのですが、このあたり、やはりあまりにも偉大だった父Johnの2世としての悲哀があるように思ったのです。



さて、Elvinのドラム・プレイというと荒々しく複雑なリズムが交差するスティック・プレイの印象が強いように思うののですが、その一方ブラッシュ・ワークによるプレイも魅力も相当のもの。

特に、1950年代、J.J. Johnsonのカルテットでの演奏や、そのカルテットのピアニストでであったTommy Flanaganの大名盤”Overseas”などでのプレイはブラッシュ・ワークの妙技には筆舌しがたいものがあるようにさえ思えるのですが、そこで次の曲。

今度は、そうしたElvinのブラッシュ・ワークの妙が聴ける曲、”Sentimental Journey”の演奏をご覧いただきたく思います。



奇しくも今回も、我が家のライブラリーに眠っていた名演を見つけてしまったという心境。

これまでElvinの演奏は、CD・レコード等でだいぶ聴いて来たはずだったのですが、実際に映像で見てみるとそのプレイは、メンバー各人のサウンドにも気を配りながら、大胆でありながら繊細でそのサウンドをグループとしての協調を保ちつ各自の個性を最大限に発揮させようとしていることがわかり、これまで知っていた以上に凄いドラマーであることに気付かされることになりました。

そして、Sonny Fortune 、この記事を書きながら彼の事を調べて知ったのですが、昨年10月に他界とのこと。
アルトサックスからバリトン・サックス、そしてフルートまでこなすマルチなプレーで、それぞれのサウンドのカラーを築き上げていたFortune 、この映像でのプレー見て、彼の生前にもっと注目すべきプレヤーだったと、その死が惜しまれます。


さて、こうして見ていただいた1991年のElvin率いるJAZZ MACHINEの演奏いかがだったでしょうか。
まだまだ我が家の映像ライブラリー、探せば何かありそうな。
と言いながら、既にいくつかを発見したところ、またこれらの映像吟味編集して、次回お目にかけることが出来ればと思います。





nice!(19)  コメント(6) 
共通テーマ:PLAYLOG

nice! 19

コメント 6

yuzman1953

老年蛇銘多親父さん、こんにちは。
おからだの具合、大丈夫ですか。あまり無理を為さらないでくださいね。
老年蛇銘多親父さんのブログが更新されたことに気づいてましたが、私の休みの日にじっくり訪問しようと楽しみは取っておきました。
今、”JAZZ MACHINE”を鑑賞しながら、日常の疲れを癒しています。
by yuzman1953 (2019-06-11 11:41) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

yuzman1953さん

今回の病気、前の職場の時に患ったもので、これまでも前の職場時代に患った他の病気がいくつか発病、やっとのことでそれが完治した所に真打が発病してしまったというところ。
一番恐れていた真打だけ、きつかったですね。

ところで、”JAZZ MACHINE”お休みの日にじっくりというご配慮、喜ばしく思っています。

このLiveで日本の曲を演奏した映像もありますので、お気に召しましたら、また御紹介したいと思っていますので、声をかけてください。



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-06-13 15:59) 

mk1sp

インタビューでも音楽への愛情が豊かな方だなと感じましたが、演奏中の表情なども、息子を見守るお父さんのようですね。器の大きさを感じます。

音楽は、音源だけでなく、映像で見た方が断然いいなと思いました。たまには、ライブで、できれば肉眼で見える距離で観賞できるといいのですが(^_^;)

体調崩されていたのですね、今は回復されているとのこと、良かったです。ご自愛ください、次のブログの更新も楽しみにしております(*^_^*)

by mk1sp (2019-06-15 18:37) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

おっしゃる通りですね。
演奏中のElvinのメンバーを見守っているように感じられる慈愛に満ちた表情など、映像ならではのものだと思います。

私など、こうしたElvinを見て、これはColtraneのカルテット時代の同僚のMcCoy Tynerも同様なんですけど、こうした精神、それはヨガの伝道師から多くの啓示をけていたColtraneからの影響だったのではないかと思いました。

体調の方、やっとのことで90%ぐらい回復(食事が出来ず4㎏ほど痩せ体力が落ちてしまったので)、また新たな映像を準備していますので、またよろしくお願いします。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-06-16 09:49) 

いっぷく

コメントありがとうございます。
夢の島行かれたんですね。
夢の島熱帯植物館もスコールとかあって楽しいところです
by いっぷく (2019-06-17 02:49) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

いっぷくさん
夢の島熱帯植物館、スコールあるのですね。

ここ、いつもこの近くにあるお客様ところへ行く際、時間が余った時の時間調整で立ち寄っていたので、熱帯植物館には入ったことがなく知りませんでした。

今度は、うまく時間調整して立ち寄ってみなければいけませんね。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-06-18 20:35) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント