2019年!印象に残った作品; ジャズ・ピアノ編 [音源発掘]

早いもので、今年も残すところ1ヵ月半余り。

振り返ってみれば、この1年は私にとって、20年来抱え、だましだましで来た複数の持病が一挙に悪化、その再発に苦しんだ年だったのですが、おりしも仕事の方がゆとりの時間がとれるようになったことから、この際、きっちり治してしまおうと治療に専念、悪戦苦闘した1年だったなあとなどと思ってる次第。

しかし、一方、治療のための休養の時間が多く取れたこともあり、体調の方も完全に寝込むまで至らなかったらず、その間もてあました時間を好きな音楽を聴きながら過ごしたこともあって、こちらの方は、例年にも増してかなり多くの収穫を得られた年。

そうしたことから、今年はちょっと早めなのだけれども、小康状態となっている病気が再度ぶり返さない内にと、今回は、私がこの1年間聴いて来た作品の中で印象に残った作品について、この辺でとりまとめをしてみることにいたしました。


その第1回は、「ジャズ・ピアノ編」

ジャズ・アーティストの担当楽器別に商品が陳列されているCDショップに行くと、一番陳列スペースが大きいのがピアノのコーナーなのですけど、これは明らかにジャズ全体の中でもピアニスを担当楽器の主にしたアーティストの人数の多さを示すもの。
しかし、このピアノという楽器、88の鍵盤を備えた同じで楽器であるはずなのに、これだけ多くのくアーティストがいても、そこから生まれるサウンドは一人々様々で、それをそれぞれ聴き比べ、そこでそれぞれの個性やアプローチを発見するそうした楽しみが得られることが、その醍醐味のように思うのです。。

私の場合、そもそもピアノ・トリオの演奏に興味を惹かれ、ジャズを聴き始めたこともあって、今ではその醍醐味が病みつきになってしまい、毎年、一年が終わり気づいてみれば、私のライブラリに一番多く加わっているのはジャズ・ピアノ作品という有様。

ということで、今年は、そうしたピアノ作品から、そのアーティストに表情の違いを聴いていただこうと、今年印象に残った、それぞれ個性豊かな3作品をチョイスしてみることにいたしました。


トップ・バッターは、オランダのジャズ・ピアニストのLouis Van Dijk( ルイス・ヴァン・ダイク ) のこの作品。

Louis Van Dijk Nightwings.jpg


1980年制作の作品、 "Nightwings"です。

普通、ジャズの場合、初めて聴くピアニストに接する時、そのアーティストに、何らかの形でArt TatumとかBud Powell、Bill Evansなどといった、ジャズのピアノのスタイルを築いた偉大なる先人たちの影響の見て取れるもので、その影響下、そのアーティストがいかに自己のスタイルを発展させ独自性を築いているのかを見極め聴くのことが、また一つの楽しみ方のように思うのですが、このVan Dijkを初めて聴いた時に感じたのは、そのどの系譜も属さない、ジャズではないように思えるが、やはりそのサウンドはジャズだという不思議なこれまで感じたことのない体験だったのです。

確かに、ヨーロッパ系のピアニストといった場合、クラシックの影響が色濃いアーティストが多いのですけど、Van Dijkの場合、確かにクラシックの影響は感じられるものの、一般的なヨーロッパのピアニストとは、また一味違った、シンプルでありながら美しく可憐さに満ちたピアノの旋律に、私の心は強く惹きつけられてしまったのです。

そこで、私を惹きつけた彼のピアノ、まずは聴いていただき、その印象、確かめていただくことにしたいと思います。
曲は、"Cavatina (From The Deer Hunter)"です。



噛みしめるよう繰り出される一音々が紡ぎ生み出す耽美なメロディ、少ない音数でこれだけ人を惹きつけるサウンドの奥深さ、いかが思えたでしょうか。

ジャズというよりは、子供の時に聴いた懐かしいファンタジックな童謡の世界の中に佇んでいるような気にさえなってくるような演奏でなかったかと思います。

このVan Dijk、オランダ出身の世界的女性ジャズ・ヴォーカリストAnn Burton の伴奏者として、その存在を知られるようになったピアニストだったと記憶しているのですが、私としては、Ann Burton との作品も含め、来年は引き続き、この人の作品を探し聴きその彼の独自世界を追い求めて行くことにしたいと考えています。



そして、二人目のアーティストは、

実家にあったビデオ・デッキを貰い受けたことに始まった、撮りためたビデオ・テープに記録した平成初頭のライブ映像のデジタル化作業、それをする中で出会いお気に入りとなってしまったピアニストの作品です。

それが、こちら!

Ronnie Mathews Selena's Dance.jpg


Ronnie Mathewsの"Selena's Dance"です。

こちらは、以前に記事でご紹介した”Mind Medicine Jazz Festival〜face to face〜”のコンサート・ビデオを編集した際に、Young Men & Oldsの一員として来日していた彼のプレイを聴き、そこで発散されていた強烈な個性が強く印象に残り、あらためて彼のリーダー作品を探し手にしたもの。

その私を捉えた彼の強烈な個性とは、ブルーが脈打つダイナミックかつ躍動感溢れるピアノプレイ。

私としては、これまで、彼のピアノはサイドマンで参加した作品のいくつかを聴いて来たはずだったのですが、お恥ずかしいながらそうしたことに全く気付かず、ライブ映像を見、聴たことよって初めて気付かされ、一発でお気に入りとなってしまったのがこのRonnie Mathewsだったのです。

ともかく、その演奏、長々と語るよりはまず聴いていただこうと思います。
曲は、Duke Ellingtonの名曲”In A Sentimental Mood”です。



この曲、多くのアーティストによって取り上げられ演奏されている曲ですが、しっとりと憂いを歌い上げている演奏が多い中、このRonnie Mathewsの演奏は憂いの歌に加え他では見れない躍動感を感じる”In A Sentimental Mood”に仕上がっているように思えるのですけど、いかがでしょうか。

そして聴き進み曲の終盤には、彼らしいダイナミック溢れるプレーに変貌して行くあたりは、大きな聴き所。

彼の母国アメリカではほとんど評価されず、日本、ヨーロッパで評判を呼んだという Ronnie Mathewsですが、私としては、Van Dijkと同様、来年も続けて探求し、その深遠なる技に触れてみたいアーティストの一人だと考えている次第です。



さて、続いての3つ目の作品は、
こちらも、ビデオのデシタル化編集作業で出会ったことから探し見つけた作品なのですが、1988年に伊勢で開催されたPEARL ISLAND Jazz Festival に出演していた、以前より私としてはお気に入りとしていたとあるピアニストのライブで、彼が演奏していたその曲が気に入り、その曲が収録された作品を探し手に入れたもの。

それが、この作品。

益田幹夫 Dear Friends.jpg


益田幹夫の” Dear Friend”です。
益田幹夫については、今年、年初の記事で彼の”Black Daffodils (黒水仙)”という作品をご紹介させていただきましたが、本作は、その彼の闘病後に制作されたこの"Black Daffodils "より遡ること10年前、発病前の彼の全盛期に制作された作品なのです。


そして、この両作品を聴き比べてみたところ、今回ご紹介する1980年代制作の” Dear Friend”においては、鮮やかつ流麗でエネルギー漲る印象を強く受けたのに対し、10年後の”Black Daffodils (黒水仙)”では、前者の流麗さを保ちながらも一音一音大切にしたシンプルな歌いまわしで語る、枯れた渋みのあるプレーが印象的となっているように感じ、時を経ての同じアーティストのプレー・スタイルの良質な変化を実感することになったのです。


それでは、そうした違いを踏まえながら、全盛期の益田幹夫のプレー、今回の紹介作品” Dear Friend”からの曲の演奏で、私がこの作品を探すきっかけとなったPEARL ISLAND Jazz Festival での演奏映像を掲載いたしましたので、ここでご覧お聴きいただこうかと思います。

曲は、”MAJORCA”です。



ショパンの前奏曲第4番 ホ短調に導かれ始まり、曲は一転してサンバの世界へ。
冒頭のショパンのメロディが聴こえて来た時は、これはショパンをべースにしたバラード曲だと思いきや、静から動への意表を突く鮮やかな転身、全く正反対の曲想が破綻なく繋がり流れて行く、その曲作りの巧みさにすっかり惚れ込み、この曲をの収録された作品を探してしまったという気持ち、お分かりいただけたでしょうか。

それにしても、この益田幹夫というピアニスト、さらに過去に遡って70年代の彼の作品”Trace”等と聴き合わせてみると、こちらは当時の日本のジャズ界の主流として大いなる人気を博していたMcCoy Tynerのプレーにも似た、激しく精神性の強いピアノ・プレーに徹し、その後、フュージョンの世界にも進出していたことを考えると、その変貌振りを見極めながら聴き綴って行くという興味が湧いて来るアーティストだなと思い、この辺り、また来年の課題にしたいと考えています。


以上3作品、こうやって聴いて行くとピアノという楽器、ここで取上げたアーティストも三者三様、面白いぐらいのその個性の違いが出ていたのではないかと思います。

そして、その即興を伴うピアノ・ジャズの面白さ、どうやらこの調子では来年も、終わってみれば私のライブラリー、またピアノ作品ばかりが増えていたとなってしまいそうです。


Louis Van Dijk Trio ‎– Nightwings
Track listing
1.We're All Alone
2.Someone To Watch Over Me
3.Whisper Not
4.You And Me (We Wanted It All)
5.Cartes Postales (From Jamala Plus Toujours)
6.Nightwings
7.Cavatina (From The Deer Hunter)
8.Close Enough For Love (From Agatha)
9.La Granja

Personnel
Louis Van Dyke - Piano
Niels Henning Orsted- Pedersen - Bass
Terry Silverlight - Drums

Recorded
1980


Ronnie Mathews-Selena's Dance
Track listing
1. In A Sentimental Mood Composed By – Duke Ellington
2 My Funny Valentine Composed By – Lorenz Hart, Richard Rogers
3 Stella By Starlight Composed By – Victor Young
4 Selena's Dance Composed By – Ronnie Mathews
5 Body And Soul Composed By – Edward Heyman, Robert Sour
6 There Is No Greater Love Composed By – Isham Jones
7 Blue Bossa Composed By – Kenny Dorham
8 Fee Fi Fo Fum

Personnel
Piano – Ronnie Mathews
Bass – Stafford James
Drums – Tony Reedus

Recorded
February 1, 1988  at Studio 44, Monster, Holland


益田幹夫- Dear Friend
Track listing
1.Majorca
2.Bossa Serenade
3.Little Waltz
4.That's So Nice
5.Istanbul
6.Everyday Everynight
7.Blues For J
8.Impromptu Of Blue

Personnel
益田幹夫(p)
河原秀夫(b)
奥平真吾(ds)
横山達治(Per)

Recorded
1986 at Victor Studio


PS
冒頭の病気に明け暮れた1年と書きましたが、その明け暮れの最後に入院の宣告を、受けてしまいました。

といってもその病、これまで治療で都度一応の回復はして来たものの、何回も再発を繰返していたことでもあり、医者からのこれ以上再発を繰り返さぬよう、この辺で入院手術した方が良いとういう診断に従い、これからも健康で安定した生活を送れるようしたいと考え決めたもの。

そうした訳で、当ブログは以後3週間ほどお休み。
また、再開の節は、よろしくお願いいたします。



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mk1sp

 どれも素敵な曲ですね♪、優しく軽やかに躍動的に情熱的に・・・最も表情豊かな楽器と言っても過言ではない、かも知れない。
 ご入院により良い結果になること祈念します、ご自愛ください。
by mk1sp (2019-11-11 09:29) 

mwainfo

いつも楽しみに読ませていただいています。健康での再会を期待いたします。
by mwainfo (2019-11-23 19:02) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

有難うございます、無事退院することが出来ました。

また、ピアノの奥深さ、楽しんでいただけたこと嬉しく思います。

入院期間中は、術後回復期に至って、暇を持て余し、毎日音楽三昧の日々を過ごしていました。
そこで聴いた音楽の数々、ちょとした発見もあり、またその辺りをご紹介していこうと考えていますので、よろしくお願いいたします。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-11-27 19:49) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mwainfoさん

お見舞いの言葉ありがとうございます。

いつも楽しみにして下さっているとの由、なんとか無事退院いたしましたので、ご期待に添えられるようまた頑張って行きたいと思っています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-11-27 19:52) 

ハンコック

老年蛇銘多親父さん
こんにちは。
Ronnie Mathewsの感情を爆発させたときの
グルーブ感は半端ないですね。
私は、Ronnie Mathewsが好きですね。
MAJORCAもかなりいい演奏でした。
普段、自分でこの演奏にたどり着くことはないと
思うので、親父さんの日記はとても貴重です。
お体大丈夫ですか。
益々寒くなりますので、お大事になさって下さい。

by ハンコック (2019-12-30 13:56) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ハンコックさん
気遣い有難うございます。

今回の入院、悪い部分の他は悪いところもなく、そこを取れば大丈夫ということで、退院から1ケ月、摘出部位が大きかったことから難儀しましたが、今は、多少の無理は出来るぐらいのところまで回復してきています。

Ronnie Mathewsがお好きとの事、やはり彼のピアノ、なんとなく50年代の心が見え隠れしているところ、私もそうなのですけど、そんなところ魅力を感じるかもしれませんね。

益田幹夫のMAJORCAは、それと裏腹の演奏、私のジャズ聴き始め頃は、Keith JarrettやChick Coreaが脚光を美初めて頃で、おかげでこの手の演奏にはすぐ反応してしまう税壁があって、気に入っていただけたようで良かったと思っています。

本当にジャズって、時様々な表現があって、面白いものだなと思っています。




by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-12-30 20:19) 

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