2019年!印象に残った作品;Jazz-Anoter Instmental & Vocal編 [音源発掘]

長かった入院生活からも、無事解放。
今は日常を取り戻すべくリハビリ、療養中となったところで当ブログも、再開の運びとなりました。

前回は、これから入院、当ブログもしばらくお休みということもあって、例年より少し早めであるけれど一年の締め括りとして”2019年!印象に残った作品”の第一弾としてジャズ・ピアノの作品を取上げ語らさせていただきましたが、今回は引き続きその第2弾。

ピアノ以外の楽器によるジャズ作品と、同じくヴォーカルの作品を選び語ることにしたいと思います。


しかし........


そうは決めたものの、いざ、どの作品をチョイスするかの段になって、今年は例年に増して多くの作品に接しすることが出来、その分印象に残った作品が多かったことから、困ったことに、今度はその中からさらに3作品程度に絞り込み選ぶとなると、それを決めきるのはなかなか難しくなってしまう始末。

とは言いながらもなにが幸いするかわからないもので、そこに訪れたのが病院のベットの上で過ごすことになった入院生活。
何もすることがなく時間を持て余し退屈であったことから、ならばと言う訳でそれらの作品を再度聴き直し、選択肢を絞ることにしたのです。

そうして、選んだのが以下の3作品。



まずは、日本のテナー・サックス奏者 中村誠一の

中村誠一 First Contact.jpg


1973年の作品、”First Contact”から。

この作品、今年たまたまビデオデッキを手に入れたことから、我がのライブラリーにお蔵に入りしていた平成の初めのライブ映像のデジタル化しようとその作業をする中で、この中村誠一が、日本のジャズ史上名高いジョージ川口とビッグ4の後継であるニュー・ビッグ4のメンバーとしてのプレーしている映像を発見、デビュー当初はピアニストの山下洋輔トリオのメンバーとして、フリーなプレーに徹していた彼が、客演で同カルテットに参加していたテナー・サックス奏者の松本英彦と共にオ-ソドックスの香り高いジャズを歌い上げているのを見て、そのリーダー作品が聴きたくなり調べ手に入れたのが本作だったのです。

この作品、中村誠一ソロ転向後の初リーダー作品なのですが、発表当時は、それまでの山下洋輔トリオで演じたフリージャズのスタイルから一転して、オーソドックスな演奏に変貌した意外なその姿が話題を呼んだものっだったのだとか。

しかし、今あの時代を振り返ってみると、本場アメリカでは、60年代後半のフリー・ジャズの行き詰まりから次の時代へのジャズを模索する動きの中で生まれたロック等の要素を取り入れた、その多くが今にいうファンクやフュージョンへの方向へと進む中、日本で次の時代に引き継がれるべき本来のジャズの伝統を汲むこうしたジャズが生まれていたこと、その動きが本場アメリカの場合、70年代後半以降であったことを考え合わせると、あらためて日本人の優れた感性と先見性に喝采を送りたくなってしまうのです。


それでは、ここでこの作品から1曲、お聴きいただき、その素晴らしい感性、じっくりと味わっていただこうかと思います。
曲は美しいバラード曲、”Everything Happens To Me ”です。



実はビデオ編集時に中村誠一のプレイに興味が湧き、彼の経歴ついて調べていたところ、インタビューに答える形でその生い立ちにについて彼自身が語っていた記事を見つけ読んだのですが、それによるとフリー・ジャズをやめたのは、フリーを演じるエネルギーがなくなって来たからなのだとのこと。
そしてソロ転向後に、ジョージ川口に誘われ、いきなりそれまで演奏したことない曲を演奏させられることになったことから、思い切り滅茶苦茶にプレイをし首になると思ったら、レギュラーの座を射止めてしまったという、自分に正直かつ無手勝流で成功を収めてしまったとのことが語られていたのです。

そうしたことから、本作のこの演奏も、そうした彼の音楽に対する生き方から生まれた、それが既成の伝統に捉われない今にも通じる、新鮮さを保ち続けている大きな要因なのでは考えされてしまうのです。



さて、続いての作品は..........

今年は妙にフルートが主体となる作品が聴きたくて、こちらもいろいろ探してみたのですが、フルートと言うと、どうもその軽快でナチュラルなそのサウンドが災いしてか、フュージョン色が濃い作品ばかりになりがちで、これまで、なかなか本来のジャズらしさを持った作品を見つけられないでいたのです。

そこで今年は何としてもジャズらしさのあるフルート作品を掘り出そうと考えた挙句、70年代の初めChick Coreaの率いるグループのReturn To Foreverで、フュージョンとは言えジャズの伝統を宿したサウンドの上を、美しく聴き応えのあるフルート・プレイで駆け抜け聴かせてくれていたJoe Farrellのことを思い出し、もしかするとと思い、その彼の作品に焦点当て探した結果見つけたのがこの作品だったのです。

georg benson & farrell.jpg


それがこの作品、1976年発表の”Benson & Farrell”です。

この作品、タイトルにある通り、ギターのGeorge Bensonとリード奏者Joe Farrellのコラボによる作品なのですが、そこでギターを務めるBensonも、Wes Montgomeryの後継者という鳴物入りで登場、登場直後はMiles Davis、1968年発表の作品”Miles in the sky”の中の”Paraphernalia”でその評判通りのプレイを聴かせてくれていたものの、その後は彼の属していたCTIレコードの意向か、急速にフュージョン化、挙句果てには達者なヴォーカルでソウル・フュージョン化、そこで多くの人気を獲得するに至るも、反面、彼自身のギター・プレーの醍醐味が希薄となり、私のようなデビュー当時の彼の素晴らしギター・プレーを知る者にとっては、かなり残念に思いを持っていたのです。

そうこうする中、出会うことが出来たこの作品、Farrellとの組み合わせならばBensonも、 初期Corea的雰囲気に包まれたフュージョン・サウンド中で、縦横無尽にギタ―・ソロを繰り広げているのではないかという淡い期待を抱き早速入手、聴いてみることにしたのです。

そして、その結果は...........

というところで、1曲、その演奏、聴いていただきその答え探っていくことにいたしょう。
曲は、Farrellの爽やかかつ軽快なフルートが心地良い”Flute Song”です。



CTIレコード制作の作品には珍しく、同社の他の作品に見られるオーバーな演出もなく単なるイージーリスニングに終始することないサウンド造りがなされているように感じるこの演奏、クレジットを見ればそのアレンジを手掛けているのはDavid Matthews とのこと。

後年、Manhattan Jazz Quintetのリーダーとして、原曲の良さも保ちつつ一味違うアレンジを施した楽曲を、同Quintetに提供して来たMatthews の真骨頂が、既にここでも大いに発揮されているのを感じます。

そして、そこでプレイをするBenson と Farrellも、リックスした雰囲気の中、熱いソロを繰り広げている、私としては、緊張感溢れるジャズ・サウンドもいいけれど、時にはこうしたゆったりとした気分で、それぞれの秘儀を駆使したソロに浸れる、こうしたサウンドも良いものだと思っているのですが、いかがだったでしょうか。



そしてラストは、
ヴォーカル作品から。

今度は、70年代、”Killing Me Softly With His Song(邦題;やさしく歌って””で一世を風靡した女性ヴォーカリストのこんな作品をチョイスしてみました。

roberta flack Let It Be Roberta.jpg


その作品は、Roberta Flack の2012年の作品”Let It Be: Sings the Beatles ”
文字通り、Robertaによる The Beatles の楽曲のカバー集です。

彼女、これまで自己のアルバムの中で、Bob DylanやSimon & Garfunkelの楽曲を取り上げカバーして来ているのですが、デビュー以前は教会のオルガニストをしていた時もあったとかで、そのぜいかこれら楽曲も、静謐なゴスペル的アプローチで淡々と歌い上げていたその印象が私の心に深く残っていて、そのことからこの作品、果たしてRobertaがBeatles をどう料理し聴かせてくれるのかという興味と、デビュー以来50年近くを歩んできた彼女の円熟の境地を確かめてみたいという思いから手にし聴いたもの。

そうして聴いてみると、詳細な録音時期は不明なるも、この作品が発表された2012年というと、彼女の年齢は既に75歳であったはず、この年齢になる歌手の多くが声量の衰えから、引退もしくは、それをテクニックでカバーし枯れた味わいを醸し出すことで新境地を切り開いたりする等の例が多い中、彼女の場合、その歌声は往時のまま、それに加えて年輪を重ねたことから生まれる新たなアプローチでそれらを歌い上げていたことに、いたく感動を覚えることになってしまったのです。


それでは、 そうしたRoberta Flack の歌声、まずはここで 1曲聴いていただき、その年輪の技、聴いてみることにいたしましょう。
曲は”In My Life ”です。



カラフルかつ軽やかなリズムに彩られた”In My Life ”、そこから聴こえる彼女の歌声は、若々しさを通り越して初々しささえ感じます。
実際、全曲聴いてみて、聴きなれたBeatles の楽曲に、こんなアプローチがあったのかと思うことしばし、さすがRoberta というところです。


それにしても、ここまで言って、この1曲だけで終わるのはなんとも無責任、そんな訳で続けてもう1曲聴ききながら、今回のお話ここで締め括ることにしたいと思います。
曲は、Beatles の初期のバラード曲から、”If I Fell”です。




早いもので、いよいよ年の瀬、12月。
私にとっては消化器系の不調に悩まされ続けた1年でしたけど、年の終わり迫っての入院で、どうやら完調に復せそう。
しばらく、養生しながら年明けには、迷いながらも今回ご紹介出来なかった諸作品をご紹介して行きたいと思います。
最後に、このRoberta の”Oh Darling”で、クールなソウルを味わいながら、じっくりと英気を養うことにしたいと思います。





Seiichi Nkamura-First Contact
Track listing
1.Frank'n Earnest
2.Everything Happens to me
3.Billie's Bounce
4.Melba's Blues
5.Judy's Samba
6.Colsing theme for quintet

Personnel
中村誠一(ts)、,
向井滋春(tb)
田村博(p)
福井五十雄(b)
楠本卓司(ds)

Recorded
1973年12月30日 青山ロブロイ

Benson & Farrell
Track listing
All compositions by David Matthews except as indicated
1.Flute Song
2.Beyond the Ozone
3.Camel Hump
4.Rolling Home
5.Old Devil Moon  (Burton Lane, E.Y. "Yip" Harburg)

Personnel
George Benson - guitar
Joe Farrell - flute, bass flute (tracks 1, 3, 5), soprano saxophone (tracks 3 & 4)
Eddie Daniels (tracks 1, 3, 5), David Tofani (tracks 1 & 3) - alto flute
Don Grolnick - electric piano (tracks 1-4)
Sonny Bravo - piano (track 5)
Eric Gale (tracks 1 & 3), Steve Khan (tracks 2 & 4) - guitar
Will Lee (tracks 1-4), Gary King (track 5) - bass
Andy Newmark - drums (tracks 1-4)
Nicky Marrero - percussion
Jose Madera - congas (track 5)
Michael Collaza - timbales (track 5)
David Matthews - arranger

Recorded
January 20 & 21 and March 12, 1976
Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey


Roberta Flack-Let It Be: Sings the Beatles
Track listing
1 In My Life
2 Hey Jude
3 We Can Work It Out
4 Let It Be
5 Oh Darling
6 I Should Have Known Better
7 The Long And Winding Road  Vocals [Duet] – Sherrod Barnes
8 Come Together
9 Isn't It A Pity
10 If I Fell
11 And I Love Him
12 Here, There, And Everywhere

Personnel
Backing Vocals – Jerry Barnes, Katreece Barnes*, Roberta Flack, Sherrod Barnes, Tameka Simone, Vivian Sessoms
Bass – David Williams , Jerry Barnes, Nichlas Branker*, Sherrod Barnes
Drums – Bernard Sweetney, Buddy Williams, Charlie Drayton*, Chris Parks, Kuhari Parker, Ricardo Jordan
Guitar – Dean Brown, Jerry Barnes, Nathan Page, Sherrod Barnes
Keyboards – Barry Miles, Bernard Wright, Morris Pleasure, Roberta Flack, Selan Lerner*, Shedrick Mitchell, Sherrod Barnes
Release
2012
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いっぷく

大変でしたね。
体を温めてご養生ください
by いっぷく (2019-12-02 23:17) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

いっぷくさん
ありがとうございます。

治療のため通算2週間もの間、絶食を強いられたため、ひと月で10㎏も体重を落としてしまい、体力的に少々きつさを感じています。
お言葉の通り、しばらくは体を温めつ養生に努めたいと思っています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-12-03 16:37) 

yuzman1953

ブログの記事や選曲から、老年蛇銘多親父さんが、お元気になられた様子が伝わり、何よりです。これからも楽しませてください。
by yuzman1953 (2019-12-04 17:15) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

yuzman1953さん

病気というものは、寝てばっかりじゃ良くならないものだということ、今回は痛感しました。

この選曲は、入院中にほぼ決めていたのですけど、何か書くとなると暇を持て余しているのにいざ書こうとするとなかなかまとめられず、退院後、まだ完調とは言えないのに、いろいろ動き回っているうちにだんだん形になって来たもの。
やはり外に出ればいろいろ刺激があり、そうしたことの大切さが良く分かりました。

退院して1週間、日々体調も良くなっていること実感出来るようになって来ましたので、今月中に次の記事をUpしたいと思っているところ。
その節は、また引き続き、よろしくお願いいたします。、
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-12-04 21:20) 

mk1sp

入院お疲れ様です。体調が良くなっているとのこと、良かったです、今後もブログ楽しみにしております(*^-^*)

さて、考え事も手も止めて、聴き入りたくなる、ジャズ・バラードいいですね♪

ロバータ・フラックのビートルズのカバーは、アレンジが自由というか、驚きました、別の曲みたいで面白いですね(笑)
by mk1sp (2019-12-07 17:57) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

通算1ケ月弱の入院、やっと解放されました。

Robertで自由なアレンジを感じられたとこと、それこそジャズの真髄なんですよね、中村誠一の演奏でもそうですが、アーティスト個人々の個性がもろに表に出てくる、これがジャズの面白さだと思うのです。

楽しんでいただけたようで良かったと思います。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-12-08 07:56) 

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