歴史の波に翻弄された二人が過去を忘れて集った庭  -松戸・戸定邸庭園- [閑話休題]

前回の記事でも冒頭、今年は梅の花の見頃が1週間近く早いように感じるというお話をしましたが、そうしたことから、最近では家の周辺や通勤途上に咲く梅の花を見かけるついつい眺めてしまうようになってしまい、そうこうしているうちに、梅林に群れ咲く早春の風情に浸りたくなり、どこかそうした場所へ行ってみたくなってしまった私。

ということで、どこを訪ねたら良いかのか思案し、やはり梅林と言えば水戸の偕楽園か!と考えるも、 
しかし!!

新型コロナ・ウィルスの猛威が吹き荒れる中、年寄りの不用心な遠出は憚るべきではなどと悩んだ末、ふと浮かんで来たのが、季節は秋であるも18年ほど前に訪れ見た、梅の木が立ち並んでい松戸にある戸定邸の庭園風景。いつかは、梅の花の季節に、ここに訪れてみたい思いながら、それきりになっていたこともあり、我が家からも1時間足らずで行ける場所ということで、さっそく出かけてみることにしたのです。


かくして訪れたその場所、その入口まで来てみると、古風な風情を湛えた門脇にいい塩梅に白い花をつけた梅の木が立っています。

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これは考えていた通り期待できそうと、勇んで門をくぐり抜け、母屋入口の前まで来てみると、

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今度はその建物の前に、あったのは!!

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満開の桜!!

早咲きの寒桜が誇らしげに枝一杯に花を咲かせ、一足早い春の訪れを告げるかの如く来る者を迎えくれています。

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さて、早くも春の装いを纏っていたこの戸定邸という所、 
ここは、徳川幕府最後の将軍である15代慶喜の異母弟で、水戸藩、最後の藩主(11代)であった徳川昭武が、別邸として建設、明治19年(1884年)に完成させた後、その後半生を過ごした、現在は国の重要文化財ともなっている唯一、一般公開されている徳川家の住居として知られる場所。

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さらに、この建物の前面に広がる庭園は、徳川昭武庭園(別称:戸定邸庭園)と呼ばれる、前面に芝生を敷き詰めた日本最古の洋風庭園であり、こちらも国の名勝に指定されている場所なのです。

そして、この館の主である徳川昭武という人、藩主となる前、徳川幕府最末期の1867年にパリで開かれた万国博覧会に徳川将軍慶喜の名代とし出席、その後、再度パリに留学したという経歴の持ち主で、その時に触れた西洋文化、洋式庭園に感化され、自身の監修の下、和の中にさり気なく洋を混ぜたこの庭園を造らせたのだというのです。

皇族、そして兄 慶喜も訪れたという、特に兄 慶喜とはこの庭でお互いが趣味であった写真を楽しんでいたということで、この庭園を眺めながら目を閉じてみると二人が、撮影に興じ互いにプロ裸足だったいうその腕前を競い合っていたその姿と屈託ない笑い声が見え聴こえしてくような気にさえなってくるのです。

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時の明治天皇に謁見し長きにわたる逆賊の汚名を晴らした慶喜を祝い招き、互いに歴史に翻弄された過去を忘れて喜びあい、晴れた心でカメラに興じる兄と弟、そうした微笑ましさを感じる歴史の一駒がここにはあったのです。

しばし、そうした歴史の余韻に身を浸したところで、次に向かったのはお目当ての母屋の先にある梅林。

果たして、その花の様子は.......

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来るべき春の暖かさを感じられる、期待通りのこんな風景。

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地面しっかりと根を張り、可憐な花を咲かせている梅、桜とはまた一味違った美し趣が、そこにありました。

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園によれば、紅梅の見頃が終わり白梅が見頃を迎える時期となっているとのこと、私が訪れたこの日はちょうどその端境期だったのか、紅白ともほどよく調和して艶やかさ満点という感じ。

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しばし、歴史と梅の告げる春の香りに浸っり思ったのは、江戸時代、水戸街道の宿場町として栄えたこの松戸いう街、日頃は何気なく通り過ぎているも、あの水戸の黄門様こと光圀公はじめ歴史的由緒が秘められた街であるということ。

今度訪れる時は、今回の戸定邸訪問で得た知見を元に、この地に残る隠れた歴史の痕跡を探し歩いてみたいと思いました。

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帰路、買い物をして行こうと津田沼の街に立ち寄り、何の変哲もない児童公園の前を通りがかると、ここにも早咲きの桜が..........

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こんなところにも、早咲きの桜の木があったのかと思っていたところに、どこからともなく聴こえて来たのがこの音楽。

Bill Evansのピアノによる”Spring is Here ”

最後の最後まで、早い春の訪れ鑑賞三昧となった今日一日でした。






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きたろう

老年蛇銘多親父さんコメントありがとうございます(*^_^*)
戸定邸は、子供が小さいとき、何度か行きました。
昔なら、下々の民衆はとても入れないところが、気軽に入れるということに感心した記憶があります。
by きたろう (2020-04-15 20:13) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

きたろうさん

そうですね、昔は下々者は近づくことも憚られた場所だったでしょうね。

でも、このお庭、この日は見えなかったのですけど、界隈随一の高台にあることから、庭越しに富士山が望める場所で関東の冨士見の名所の一つになっているのだそうなのです。

それにしても、こういう場所に屋敷を構え、新感覚の庭園を造営した徳川昭武のセンスは良さ、今、こうした場所に気軽に入れること本当にありがたいことだと思います。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2020-04-16 08:11) 

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