21世紀の若者たちが歌い上げる伝統のサウンド・New Century Jazz Quintet;In Case You Missed Us [音源発掘]

コロナウィルスの猛威に世界が翻弄されつ、私たちの住む日本もこれからがその収束ためへの本番を迎えているところ、一歩間違えば負の連鎖を断つのはますます難しくなる非常事態と、連日次から次とへと打ち出されるかってにはなかった規制要請の嵐に、息苦しさを覚えつつ多くの人が力をつくしこのウィルスと闘っている今。

私も自分が感染しないことはもとより、感染してもすぐ症状が現れないという厄介なこのウィルスの性質からして、かりに自分が感染しても人にうつすことはないようにと、これまで以上に出来る限り家の中で過ごすように努めているところ。


さてそうした暮らしの中、このところは、もっぱら音楽を聴きその時間を楽しんでいるのですが、これまでは以前に手に入れお蔵入りにしてしまっていた作品を中心に聴いてきたその方向をここに来て若干転換、今は、今年最初の記事でも取り上げさせていただいた黒田卓也を皮切りにニューヨークで活躍する若手日本人アーティストを探しその作品を聴いている次第。

そこで、今回はこれまで聴いてきたそうした作品の中から一作品を選び語ってみることにしようと思います。

それが、この作品。

New Century Jazz Quintet In Case You Missed Us.jpg


New Century Jazz Quintetの2015年の作品” In Case You Missed Us”です。
日本人アーティストの作品と言いながら、パッとジャケットを突きつけられると正面に立っているのは黒人、「あれ!!!」と思われるかもしれませんがよく見てください。

ジャケットの両サイドに立つ人の顔。
その向かって右側に写る日本人こそ、このバンドの生みの親であるピアニストの大林武司なのです。
そして、真正面に立つ存在感大の黒人は、その大林と共にアメリカで活躍する若手アーティストを集め新たなバンドを組もうとその創設に尽力した ドラムのUlysses Owens Jr.という人物。

私が、彼らを知ったのは、彼らが来日した2014年のこと。しかし、この時は私の聴く姿勢が悪かったのか、そう強いインパクトを感じなく彼らのことを半ば忘れかけていたのですが、年初でご紹介した黒田卓也を聴いてから、そういえば、以前聴いた日本人が核となったバンド、あれは何だったかと考え思い出したのが、このNew Century Jazz Quintetだったのです。

そして今度は腰を入れ聴いてみたところ、聴こえてきたのは伝統の香り持つ小気味よいジャズ・サウンド。
80年代にも、当時の若手アーティストによって伝統回帰への風潮が主流と言われた時代があったのですが、その時私は、確かに演奏はうまいものの、テクニックばかりが目立ってしまっていて、肝心のハートが感じられなかったことから、以来そうした若手アーティストの動きには懐疑的なっていたのです。

ところが、彼らの演奏、確かにテクニックも凄いと感じるも、それ以上に音楽を語る熱いハートあったことにたちどころに魅了されてしまったのです。


と言うところで、やはりここで彼らの演奏を聴いただけねばと思い、1曲お聴きただくことにしたいと思います。

曲は、日本の方なら誰でも知っている、あの!!

じっくりと耳を傾けていただければと思います。












宮崎駿のアニメ作品”となりのトトロ”でお馴染みの名曲”風のとおり道”でした。
この曲、私自身、ジャズには不向きな曲だと思っていて、その演奏がどんなものになるか全く想像できなかったのですが、その曲が見事にジャズとして鳴っている。
ピアノの大林武司の見事なセンスが際立つ演奏です。

私の場合、New Century Jazz Quintetのようなトランペットとサックスによる2管編成のクインテットというと、 前々回の記事でArt Blakey & Jazz Messengersを取り上げたばかりということもあってか、同じ編成であった50年代後半のMessengersを思い浮かべてしまい、どうしてもその比較しながら聴いてしまうことになってしまったのですけど。

しかし、そうして聴いてみると、そこで感じた彼らの演奏は、伝統的ジャズの香りを放ちながらも、強く伝わって来たのが過去のサウンドと一線を画す新しさがあるということ。
バップ以後の、モード、フリー、ファンク、フュージョンといった、バップ以来半世紀のジャズの成果が、伝統の一瞬の間の中にさり気なく浮かび上がり聴こえてくるのです。

そこで、今度は往時のThe Jazz Messengersのファンキーな息吹を多分に感じる、そうした演奏を聴いていただこうかと思います。
曲は、”Revolution"  それではお聴きください。



しっかりと大地に根を下ろしたビートを刻むベースを先行に始まるこの曲、そのニヒルな印象に惹かれてそのその演奏にじっくりと耳を傾けみると、演奏のあらゆる局面においてそのベースが鋭いビートを送り込み続け、それでいてサンド全体を包み込む暖かい包容力がもたらしてていることに気付かされたのです。

ベーシストの名は、このバンドを構成するもう一人の日本人である中村恭士。
聞くところによると、このバンドの中の人選で一番最初に白羽の矢が立ったのがこの人だったそうで、このプレイを聴けばそれも必然だったということがうなずけます。

そして、ここでもう一人印象に残ったのがトランペットのBenny Benack、切れ良くよく歌うそのプレイが大変気に入ってしまいました。

さて、この作品Art Blakey & The Jazz Messengersを思わせる曲だけではなく、他にも60年代のHerbie Hancock,Ron Carter,Tony Willamsが在籍していた頃のMiles Davis クインテットを彷彿させる曲があったりと、これまでのジャズの成果を十二分吸収した若手アーティストが、現代のスタイルで伝統を蘇らせているという、そこに大きな興味をそそられるというのもその魅力のなのですが、
70年代以降の音楽が多様化したした時代の楽曲にも取り組んでいるが聴きどころ。

そこで最後に、現代の若手アーティストらしい演奏を1曲。
曲は、Stevie Wonderの”Love's In Need Of Love Today”です。



それにしても、なかなか収束の兆候が見えないコロナ・ウィルスの猛威、緊急事態宣言もさらに延長されることに。
在宅勤務といえども、仕事柄どうしても出向かなくてはならないことも多い私ですが、その移動もすべて車としているところ。
しかし、その移動の道中、通りかかりの行楽地を覗いてみると、どこも駐車場は閉鎖されガードマンが監視に立っているという状況。

確かに早い収束を達成するには、当然のことだと思うのですが、さすがここまでくると息が詰まる。
長期の持久戦となりそうなこの事態、まあここは辛抱強く、忍耐を鍛えて過ごすしかない、そして、続けて家でサウンドを物色しながら、その事態収拾に協力しようと考えているところです。


Track listing
1.In Case You Missed It
2.Revolution
3.Swag Jazz
4.Upon Closer Look
5.Burden Hand
6.Kaze No Torimichi/風のとおり道
7.Uprising
8.View From Above
9.Naima
10.Light That Grew Amongst Us
11.Eleventh Hour
12.Love's In Need Of Love Today/ある愛の伝説

Personnel
Benny Benack- tp
Tim Green - as
Yasushi Nakamura /中村恭士:- b
Takeshi Ohbayashi/大林武司 -p
Ulysses Owens Jr.- Dr

Gest Artist
Braxton Cook -as

Recorded
2015年3月30日

























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コメント 2

mk1sp

なんともカッコイイ「風のとおり道」ですね
ほんわかした感じもあり、柔剛のバランスが良いですね

コロナ、元の社会へ本当に戻るのか不安ですね
無事乗り切れるよう、今は静かに引き籠ります
by mk1sp (2020-05-03 21:14) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

ジャズというと、私は曲名も見ずに演奏だけを聴いてしまうので、最初聴いたときは、どこかで聴いたことのあるメロディだなと思いつつ何の曲かわからなくてね。
風のとおり道だと知った時は、アレンジとアドリブの意外さに即もう一度聴いてしまいました。

ジャズだからこそのアプローチ、楽しんでいただけたけたようで良かったです。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2020-05-05 17:52) 

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