往年の名作を今に再現した伝説のギタリスト:Steve Hackett・Genesis Revisited II [音源発掘]

やっとのことで解除された非常事態宣言。
まだまだ用心が必要であると思われるも、この私も、宣言が出されるや否や勤務先より出社の要請があり、翌日には久々に職場に復帰。

今のところとくに急ぎの仕事はないだろうと思い事務所に行ってみると、こちらも宣言解除ということなのかに一挙に仕事が飛込んできて、あれやこれやしているうちにスケジュール満杯となってしまう始末。
こんな老いぼれでも活動の再開を待っていてくれる人たちが、大勢いたということは本当に嬉しいことだと思う反面、在宅勤務で鈍ってしまった体がついていけるかいささか心配、鎮静化してきたとは言えまだまだ油断することはできないコロナ、今は、せいぜいその予防に細心の注意を払いながらご期待に沿えるよう前へ進もうとしているところ。


さて、そうした中で今回取り上げるは、これまでに続き、在宅勤務中その空いた時間を使って聴いて来た作品のお話。
これまでは、ジャズの作品ばかりを取り上げて来ましたが、今回は毛色を変えて久々にロック作品のお話。

ジャズは、過去に聴いた作品を聴き直しその再評価すしようという姿勢で、そのサウンドに耳を傾けて中でもこれはと思った作品を取り上げご紹介して来ましたが、ロックの方は、近年のプログレシッブ・メタル、プログレシッブ・ロックを中心に、特に元Dream TheaterのMike Portnoyのソロ・プロジェクトの諸作品や、Nad Sylvan、Pineapple Thief 等を聴いていて、そうしたことから、今回はその中でも最も親しんでいたこの作品を取り上げ筆を進めることにいたしました。

steve hackett genesis revisited Ⅱ.jpg

それは、70年代に出現した5大プログレッシブ・ロック・バンドの一つである、Genesisの元ギタリストであったSteve Hackettの2012年の作品”Genesis Revisited II”。




Genesisと言えば、1960年代末に登場活躍した多くのプログレシッブ・バンドが、70年代初頭のその隆盛嘘であったかのうに影を薄めていってしまった1980年代初頭、1970年代半ばに脱退したリーダー兼ヴォーカルのPeter Gabrielよりその主導的立場を受け継いだPhil Collinesによって再生、斬新なポップ的感覚を備えたプログレシッブ・サウンドで数々のヒット曲を残したバンドとしてご記憶の方も多いと思いますが、今回取り上げたこのSteve Hackettは、80年代プログレシッブ・ポップ路線以前のGenesisのメンバーの一人として、Peter Gabrielと共に初期Genesisのサウンドの中核を担う存在として活躍したアーティスト。

しかし、Hackett在籍時のGenesisというと日本では、日本にGenesisが紹介されたのが、初期Genesisが終わる Peter Gabriel 脱退直前の1974年頃だったこともあって、Phil Collines時代のポップ色濃厚なサウンドに比べ、それ以前の耽美的色彩の強いサウンドについては多くの人にとって馴染み薄になっているように思うのです。
とは言っても、その頃の彼らは、既に5作品を発表し、その独特な音世界をもって名実共に英国プログレシッブ・ロックの中核的存在となっていて、多くのアーティストに影響を与える存在であったことから、私としては、この時代のGenesisについても、ぜひ多くの人に聴いていただきたいと思っているのです。


さて、Genesisについてのお話が長くなっていしまいましたが、この作品は、1996年 Hackettがゲスト・アーティストを集め彼のGenesis在籍時代であるその初・中期Genesisの楽曲や彼がソロ転向後に発表した楽曲をカバー再演した最初の作品”Genesis Revisited(邦題;新約創世記) ”に続くその16年ぶりの第2弾となるもの。
初期GenesisにおけるGabrielの陰影のある悪魔的雰囲気漂うヴォーカルとHackettの12弦ギターなどを用いた耽美的な響きがもたらす英国中世を感じさせる情状的なサウンドが、現在にアーティストたちの新しい息吹を浴びてどのように再現されているかがその聴きどころ。

というところで、その聴きどころ、 The Royal Albert Hallのライブで、 HackettがGenesisデビューを飾った1971年の作品"Nursery Cryme (邦題;怪奇骨董音楽箱)”収録の"The Musical Box ”をご視聴いただくことにいたしましょう。



静寂な空間に響き渡るオルゴールの音、そこから密かに湧き出るメルヘンの世界に誘うかのようなピアノとHackettの繊細かつ幻想的なギターの音色で始まるこの演奏、初期GenesisのGabrielとHackettの前任であるGenesisの初代ギタリストのAnthony Phillipsが生み出した耽美な幻想世界を見事に再現しているように思います
しかも、そのサウンドはオリジナルよりさらに分厚く、ロック的メリハリが強くなっているようにも感ぜられ、GabrielがGenesisに持ち込んだ演劇的要素にさらなるドラマチックな効果を齎しているようにも感じられます。

そうした今にGenesisを再現したこの作品、この第2弾ではどんなアーティストが参加しているのかを見てみると、まず目を引かれるのが、プログレシッブの変遷の流れに残る King Crimson、Uk、ASIA 渡り歩き名を残したこの1996年の第1弾にも参加していたJohn Wettonの名、そしてその第2弾にはNad Sylvan 、The Flower Kingsのリーダーで、また元Dream TheaterのドラマーであるMike Portnoyらと立ち上げたTransatlanticで活躍するRoine Stolt、同じく Portnoyらと立ち上げたTransatlanticの中心的存在であるNeal Morse 、第二のPink Floydとも呼ばれるPorcupine TreeのリーダーであるSteven Wilson、そして、Gabrielの後を受け継いだPhil Collinesの息子でSound of Contactのドラム兼ヴォーカルのSimon Collins とざっと見ただけども現代プログレシッブ・ロック、プログレシッブ・メタル界の大物アーティストたちの名が新たに加わり見て取れる、もの凄い陣容。

改めて、これだけのアーティストを集めきったSteve Hackettの現代プログレ界での求心力の大きさが覗えます。


そうしたもの凄い陣容で記録されたHackettのセルフ・カバー作品、今度はスタジオ収録である本作からの音源から、Gabriel在籍最後となった1975年発表の”The Lamb is down on Broadway(邦題;幻惑のブロードウェイ)”より”The Lamia”をお聴きいただくことにいたしましょう。



1997年、Hackettの作品として13年ぶりに全英トップ100入りを果たした前作”Genesis Revisited(邦題;新約創世記) ” に続く本作品、前作が、John Wetton、Bill Bruford、Ian McDonald 等、Hackettと同世代アーティストとのセルフ・カバー集であったのに対し、20年後の本作では先に見た通り新世代のアーティストがその中心。
その彼らによるものか、元は煙ったロンドン濃い霧が漂うイメージがあった初期Genesisサウンド(このため、初期Genesisのアメリカでの評判は、いま一つだったそうなのですが)が、ここでは鮮明クリアとなって、オリジナルまた違った情緒味わいを感じさせてくれているように思います。


それにしても、この作品、今回聴いてみて、私にとっては今の若いプログレシッブ・ロック系のアーティスト達の心の中に、往年のGenesisサウンドの精神が連綿と継承され続けているのを感じ大変嬉しく思ったと同時に、日本では今一評価が定まらないSteve Hackettというアーティストについて、この作品を通じてもう一度見直してもらえれる機会となればとの願いを持ってしまいました。


さて6月、宣言解禁後以降仕事の依頼が止まらなくなってしまって。
第2波感染防止のニュースがあわただしく報じられる中、ここでおちおち病気になってもいられない状況になってしまった私。

蒸しばむ暑さ到来、コロナもしかりだけどもさらに老体には堪える季節、より一層衛星健康管理を心掛けて過ごさねばと気を引絞め直しているところです。


Track listing
All tracks written by Tony Banks, Mike Rutherford, Peter Gabriel, Steve Hackett and Phil Collins, except where mentioned.

Disk 1
1.The Chamber of 32 Doors Original album-The Lamb is down on Broadway
2. Horizons Original album-Foxtrot
3. Soups are ready Original album-Foxtrot
4.The Lamia Original album-The Lamb is down on Broadway
5.Dancing with the Moonlight Knight Original album-Selling England off the pound
6.Fly on a windshield Original album-The Lamb is down on Broadway
7.Broadway Melody of 1974 Original album-The Lamb is down on Broadway
8.The music box Original album-Nursery Cryme
9.Can-Utility and the Coastliners Original album-Foxtrot
10.Please Don't Touch    Original album- Please Don't Touch

Disk 2
1.Blood on the rooftops Original album-Wind & Wuthering
2.The Return of the Giant Hogweed Original album-Nursery Cryme
3.Complex Original album-A trick of the tail
4.Elevenh Earl of Mar Original album-Wind & Wuthering
5.Ripples" Original album-A trick of the tail
6.Incredible slumbers for the Sleepers...   Original album-Wind & Wuthering
7.... In the quiet earth  Original album-Wind & Wuthering
8.Afterglow" Original album-Wind & Wuthering
9.A tower knocked down" Original album-Voyage of the Acolyte
10.Camino Royale    Original album-Highly Strung
11.Shadow of the Hierophant   Original album-Voyage of the Acolyte

Personnel
Steve Hackett - guitars, vocals (disc 1, track 3 - V: "Willow Farm" ; disc 2, track 10)
Djabe - (Ferenc Kovács - trumpet, violin, vocals,
Attila Egerházi - guitar, percussion
Zoltán Kovács - piano, keyboards,
Tamás Barabás - bass guitar,
Szilárd Banai - drums): (disc 2, track 10)
Roger King - keyboards (disc 1, tracks 1 & 3-10; disc 2, tracks 1-11)
Amanda Lehmann - guitar, vocals (disc 2, tracks 3, 5, 8 & 11)
Jo Lehmann - supportive vocals
Christine Townsend - violin, viola (disc 1, tracks 1 & 9; disc 2, tracks 1 and 9)
Dave Kerzner - keyboards (disc 1, slot 3)
Dick Driver - double bass (disc 1, tracks 1 & 10; disc 2, tracks 1 and 9)
Francis Dunnery - guitar, vocals (disc 1, track 3 - VII: "As Sure As Eggs Eggs (Aching Men's Feet)" & 5)
Gary O'Toole - drums, percussion (disc 1, tracks 1, 4, & 6-10; disc 2, tracks 1, 2, 4-11), vocals (disc 1, track 6 & 7; disc 2, track 1 , 4)
John Hackett - flute (record 1, tracks 1, 4, 5 & 10; disc 2, track 2 & 9)
John Wetton - bass, guitar, vocals (disc 2, track 8)
Mikael Åkerfeldt - vocals (record 1, track 3 - I: "Lover's Leap" & IV: "How Dare I Be So Beautiful?" )
Nad Sylvan - vocals (disc 1, track 1 & 8; disc 2, track 4)
Nik Kershaw - vocals (record 1, track 4)
Phil Mulford - bass (disc 2, tracks 1 and 8)
Rachel Ford - cello (disc 1, track 1; disc 2, tracks 1 and 9)
Roine Stolt - guitar (disc 2, track 2)
Steve Rothery - guitar (disc 1, track 4)
Nick Magnus - keyboards (plate 2, slot 10)
Neal Morse - keyboards, vocals (disc 2, track 2)
Jeremy Stacey - drums (disc 1, tracks 3 and 5)
Conrad Keely - vocals (record 1, tracks 3 - III: "Ikhnaton and Itsacon and They Band of Merry Men" )
Nick Beggs - bass, Chapman stick (disc 1, track 9; disc 2, tracks 4, 7 & 11)
Steven Wilson - guitar (disc 2, track 11), vocals (disc 1, track 9)
Rob Townsend - saxophone, flute and blown various goods (plate 1, track 5, 8 & 9; plate 2, tracks 1, 7 & 11)
Jakko Jakszyk - guitar, vocals (disc 2, track 3)
Simon Collins ( Phil Collins' son) - keyboards, vocals (record 1, track 3 - II: "The Guaranteed Eternal Sanctuary Man" & VI: "Apocalypse in 9/8" )
Lee Pomeroy - bass, Chapman stick (disc 1, tracks 3-8; disc 2, track 2)

Recorded
2011-12

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mk1sp

幻想的な曲々が時代を経て、更に輝きを増していますね
今後も評価され、継承されて行くのではないでしょうか♪

ジャケットの絵が衝撃的で気になり、少し検索した所、ハケット氏の前妻で、画家、ジュエリー・デザイナーのキム・プーアさんによるものなのだそうです。

非常事態宣言は解除されましたが、コロナが現代人に投げかけている課題は何か、これからどうすればいいのか、難しい問題ですね、まずは健康第一ですね。
by mk1sp (2020-06-06 16:04) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

ジャケットの絵、Hackett在籍時のGenesisのサウンドを彷彿させるものがあるなと見ていたのですけど、Hackettの奥様の作品なのですね。通りでと納得しました。

Genesisは、ライブに参戦したこともあって、Floydとともに私の最も好きなプログレシッブ・ロック・バンドの一つなのですが、現在も多くのバンドがその影響を受けているようで、私もそれらを聴きそのサウンドの中にGenesisの残影を見つけたりして、喜ばしく思いロックを楽しんでいます



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2020-06-14 10:14) 

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