パリで花開いた異色のコラボによる名演;Marcus Miller / Michel Petrucciani / Kenny Garret-Dreyfus Night In Paris [音源発掘]

いつまでも明けない今年の梅雨。
例年なら梅雨前線を北に押し上げ梅雨明けをもたらす太平洋の高気圧が停滞し続けているためのことだというのですが、一方季節は確実に真夏に向かっている様子。

それというのも、先日、茅ケ崎のはずれの辺鄙な丘の上にあるお客様のところに伺い仕事をしていたのですが、いつもは周り壊れた重機の残骸や荒れ果てた林と倒壊しそうな建物ばかりが目に付く廃墟のごときこの場所の一角に、鬼百合と夏を感じさせる花々が群れ咲く花畑が出現していたことに、本格的な夏の訪れの兆しを感じたことがその一因。

おかげでいつもはあまり行きたいと思わないこの場所でも、遠くに見える山々と花園の心和むコントラストに囲まれて、気分良く仕事終えることが出来た次第。

コロナに注意を払いながら、相も変わらずあちらこちらを飛び回る日常過ごしている私ですが、今回の作品は、前回同様、その飛び回りのさなか出会い聴いて、お気に入りとなってしまったこの作品を取り上げることにしました。


Marcus Miller ・ Michel Petrucciani ・ Kenny Garret-Dreyfus Night In Paris.JPG


それが、この作品.
Marcus Miller ,Michel Petrucciani ,Kenny Garretによる1994年7月パリで収録のされたライブ作品の”Dreyfus Night In Paris”です。

私がこの作品に目をつけたのは、巨匠Miles Davisの最晩年、活動を共にしその音楽監督の役割を務めたベーシストのMarcus Miller と 同じくMiles の最晩年 バンドのサックス奏者として活動を共にしたKenny Garret 二人のMilesバンド出身者と、フランスよりアメリカに渡り、当時ほぼ引退の状況にあったCharles Loydの門を叩いて、Loydを復活に導いたフランス・ジャズ界の至宝と言えるピアニストのMichel Petrucciani の共演という、ちょと思いもよらなかった顔合わせによる演奏メンバーのクレジットを見てのこと。

黒人らしいファンキーでヒップなサウンドをクリエイトする Miller とエレガントで西欧的な爽やかき美しさを感じるPetrucciani の、毛色の全く異なる二人の組み合わせは、果たしてどんなサウンドが飛び出してくるか想像もできず、もしかすると新鮮な発見があるかもと考え、これは聴いてみるしかないと早速この作品を取り寄せ聴いてみることにしたものなのです。

それでは、そうして手にしたこの作品、語るよりまずは1曲聴いていただくことから始めましょう。







曲は、MilesとMiller の共同制作によるMiles Davisの1986年のアルバム”Tutu”にも収録されたいた、Miller 作曲によるアルバム表題曲の”Tutu"です。

亡きMilesに代わってその旋律を奏でているのはKenny Garret。
この人、Miles没後のリーダー作品のいくつかを聴いたのですけど、そこでのプレーは、1996年の作品”Pursuance : The Music Of John Coltrane”の他には、Milesバンド時代の溌剌とした牽引力あるプレーが希薄となってしまっていて、肩透かしを食らったという印象のものがほとんどだったという記憶から、私としてはこの作品での彼のプレーにはあまり期待していなかったのですけど、しかし、聴いてみるとそのプレーはMiles時代のそれを彷彿とさせるもの。
そのこと、この人、リーダーというよりは共演するアーティストに触発されることで本領を発揮するタイプのアーティストなのだなあ思いつつ、このプレーもMiller、Petrucciani他、才能溢れる百戦錬磨のメンバーのオーラを受け生まれたのでは考えてしまった次第。

そして、最も気になっていたPetruccianiのプレー。
自身の作品として”Music(1989)”、”Playground(1991)”などフュージョン系の味わいを感じる作品を発表しているPetruccianですが、Millerというとひと口にフュージョンと言っても、ブラック・ファンク系の色彩が濃いアーティスト。
西欧的な洗練されたスタイルのPetruccianiが、そうしたMillerとのコラボでどんなプレイを見せてくれるのかと期待しつつ聴いてみると、聴こえてきたのは、パワフルなMillerのプレイと対等の力強さと、いつもの繊細タッチを兼ね備えた美しいサウンド。
この演奏にMilesが共演していたとしたら、さらにこの曲の最良のパーフォマンスが生まれたかもしれないとの思いが脳裏をよぎってしまったほど。
さすが多くのアーティストに共演を嘱望され、相対するアーティストの個性を十二分発揮させる名演を生み出して来たPetruccianiならではのプレイがそこにありました。


さて、こうして記事を書きながらその時々の作品を聴いていると、いつも新たな出会いや発見があるものなのですが、今回も同様に新たな出会いがありました。

それは、ギターのBireli Lagrene のプレイ!!!!!

この手のサウンドとなると、ギターはロック色を帯びたスタイルのものというのが常のはずなのですが、 Lagrene のそれは、ロック的なアンプ・テクノロジーに頼らない伝統的なジャズ・ギターのスタイル。
しかし、そうでありながら、このファンク色強いサウンドの中で、違和感を覚えさせることない魅力的なサウンドを送り届けてくれていたことが、深く印象に残ります。


不勉強のため、Bireli Lagrene という人、私はどんなアーティストかを深く知らずあらためてその履歴を調べてみることにすると、その経歴は、フランス生まれで、若き日は、ジャズ・ギターの祖とも言えるDjango Reinhardtの傾倒その技法を習得し、その後はアメリカに渡り、そこで出会ったギタリストのLarry Coryellからの紹介で現代ベースの革命児のJaco Pastoriusに出会い、活動を共にし伝統と最新の新旧のスタイル併せ持つに至ったギタリストだとのこと。

それにしても、Django の香り持つ伝統的なジャズ・ギターのスタイルでここまでのプレーを聴かせてくれるとは圧巻。
今度は、彼のリーダー作品を見繕いその彼のプレー、またじっくり聴いてみなければいけないとなってしまいました。

長々とお話をしてきましたが、最後にもう1曲。
今度の曲は、Michel Petrucciani のオリジナルで、1989年の彼の作品”Music”に収められていた”Looking Up”です。



Petrucciani らしい爽やかさをを感じさせる軽快なメロディ。
Millerのファンキー・タッチのベースが、リズムにオリジナルの演奏以上の躍動感を与えています。
そして、Kenny Garretも彼の個性とも言えるアルト・サックスでありながらテナー・サックスのJohn Coltraneと見まがうスタイルを抑制、爽やかさに晴れ晴れとした歌声でこの曲の気分を盛り上げるに貢献しています。

それにしても、ここで聴くLenny Whiteのドラム、この人、70年代にChick Coreaのグループ、Return To Foreverのドラマーとして聴いたことがあるのですが、その時以来、そこで感じた彼のなんとも単調なプレーが気に入らず全く評価するに値しないアーティストと思い込んでいたところ、ここでの歯切れ良く小手先の利いた軽快なドラム・プレイ。
意外な感じて、この演奏においてのLenny Whiteの存在も、決して侮ることはできない。
近年の彼の参加作品を探し、彼のプレイ、もう一度聴き直してみなければと思わされました。

今回聞いたこの作品、人と時代が変われば、それぞれのサウンドも変化する、そのことを大いに感じながら、これこそジャズの面白さだなと考えながら、心行くまでこの作品楽しまさせていただきました。



そうは言いながら、増える一方のコロナ感染者、
政治と医療の噛み合いすれ違いばかりのように思えるけど、そもそもワクチンや治療法が分からないことから発生したこの騒動、まだまだ道のりは長そうだけど、世界中の科学者がその鎮圧にむけ国境を越え手を取り合ってる。
それを考えれば、近くコロナ克服のための治験も間もなく確立される、そこに希望を託して、私も今はせいぜいかからない、うつさないを念頭に、予防に専念することにしようと思っています。



IMG_3950(1)m.jpg


Track listing
1 Tutu
2 The King Is Gone
3 Looking Up

Personnel
Michel Petrucciani p
Marcus Miller b, bcl
Bireli Lagrene g
Lenny White ds
Kenny Garrett as,ss

Recorded
live at the Palais des Sports, Paris, in Jul 1994








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いっぷく

本当に今年の梅雨は長かったですね。明けたと思ったら連日の猛暑で身体がついていきません。
by いっぷく (2020-08-10 23:46) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

いっぷくさん
この盆の時期、屋外の仕事が続くことで、それなりに暑さを覚悟していどんでいるのですが、その覚悟が効いたのかこの程度ならという感じでなんとかクリアし続けることが出来てています。
でも、仕事の最中は気を張ってるのでOkだけども、終わった後の疲れが酷くて、毎日、膏薬やドリンク剤のお世話になっています。

年ですね~~~~!
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2020-08-11 19:13) 

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