マルチな才能が開花させるギタープレイに耳を傾けてみれば........:Steve Lukather/Candyman [音源発掘]

前2回は、なかなか見えない秋の訪れを願って、しっとりしたジャサウンドにサウンドに親しんでまいりましたが、ここに来てやっとやって来た本来の秋の空気。

その季節の急激な変化に体調を崩してしまったという人も多いやに聞いていますが、かくいう私も少々風邪気味となってしまい、早めのパブロンよろしく薬を飲んで体調を整い終えたところ。
ししかし、やっとのことでのいざ秋本番、能動的活動開始とばかり在宅勤務、猛暑の在宅で衰え気味となってしまった活力を一刻も早く取り戻そうと、今、聴いているのがロック・サウンド。

というところで、今回は私的、今、旬としているロック・サウンドの中から、ちょっと嵌ってしまったこの作品を選び紹介することにいたさいました。

Steve Lukather・Candyman.jpg


1980年代登場しAORの中心的存在として名を成したTOTOのギタリストして知られるSteve Lukatherの1994年発表の第2作目ソロ作品である”Candyman”。

そもそも私としてはこのSteve Lukather、TOTO全盛期の1980年代にはジャズのみに傾倒したこともあって、TOTOの名は知るものの全く興味がなかったことから、Lukatherの存在自体も知らないでいたのですけど、2000年を過ぎたあたりからそれまで疎遠となっていたロック作品も聴いてみようとTOTOの2002年の発表のカバーバージョン・アルバム”Through The Looking Glass”を聴いてみたところ、そこで出会ったギター・サウンド、特にGeorg Harrisonの名曲”While My Guitar Gently Weeps”での、Eric Claptonのオリジナルのプレイを彷彿とさせつつもさらに豊かな色彩が加味されたLukatherのギター・プレーに惹かれてしまい、そのことから遅咲きながら初めてTOTO並びにSteve Lukatherを親しむようになった人間。

かなりズレているとは知りながらやっと気付いたその良さ、ここでめげてはとさらに聴き続け
、予想外のインパクトを受けたのが、2006年発表された次作”Falling In Between ”にトランぺッターRoy Hargroveが参加のボーナス・トラックとして収められていた”The Reeferman”で知った、あのMiles Davisが蘇ったとも思えるほどの究極のフュージョン・サウンド。

あらためて、スタジオ・ミュージシャンとしての下積みを重ね世に出たTOTOの実力と、Lukatherというギタリストのジャンルを超越した素晴らしい音楽センスを知り、以来TOTOの諸作品をすべて聴くと共に、Steve LukatherというギタリストのTOTO以外でのプレーに多く接したいと思い続けるようになってしまったのです。

さて私事ばかりとなってしまいましたが、この作品、ジャンルを超越したLukatherの多面的な姿を感じられる作品として、私のお気に入りの作品なのですが、この辺でまずは1曲、そのサウンドに耳を傾けていただくことにいたしましょう。




曲は、Jimi Hendrix作曲の”Freedom”。

比較的Hendrixのオリジナルに忠実な演奏であるとも思えるのですけど、忠実さのうえにさっと施した独自の味付けスパイスの香りが感じられるこの演奏、となるにその隠し味として大きな役割を果たしているのが、この楽曲のレコーディングだけに参加している伝説のロック・ヴォーカリストのPaul Rodgers。

1970年代、Freeのヴォーカリストとして世に出、次に自らが中心となって結成したBad Companyで、その地位を確固とした、このロックの殿堂に名を連ねる名シンガーのR&Bに根差した渋い歌声は、あのジミヘンのブルーを内包したソウルフルな歌声に重なりつ、また一味違たカラーを添えているように感じ、そこに、この曲のヴォーカリストとして Rodgersを招いた、長年スタジオ・ミュージシャンとして経験重ねてきたLukatherのセンスの素晴らしさを感じます。

そしてもう一つ、この演奏で耳を引かれたのはドラムのプレー。
Hendrixが率いたThe Jimi Hendrix Experienceのドラマーとして共に活躍、バンド解散後もHendrixと共プレーをしたドラマーのMitch Mitchell、私はこのMitchellの当時のロック界では稀だったジャズ・ドラム的な複合リズムを叩きだすドラム・スタイルが、Hendrixの演奏を輝かせたその衝撃の原動力として、大きな役割を果たしたと考えているのですけど、このLukatherの演奏でのドラムにも、それを彷彿とさせるものがあると同時に、さらなるパワーを感じさせるものあると思っているのです。

そうして、さて、このドラム・サウンドの持主は誰なのかなとメンバーを見てみると、そこのあったのはSimon Phillips の名。

この人、1992年、TOTOのリーダー兼ドラムであったJeff Porcaroが、突然の死によりバンドを去った後、Jeffの後任サポート・メンバーとしてTOTOに参加、後に正式メンバーとなった人で、近年では自己のプロジェクトへの取り組みやジャズ・ピアニスト上原ひろみのトリオへの参加、元GenesisのギタリストSteve Hackettのプロジェクトへの参加などミュージシャンとしての活動に加えレコーディング・エンジニアとして活動しているというマルチな才能の持主。

私も、上原ひろみのトリオに彼が参加した演奏を聴いたことがあるのですけど、TOTOでの彼のプレーを知りつ、ジャズとは言っても、ロックのエッセンスを強く帯びたひろみのピアノ、もしかするとこの組み合わせは最良のひろみの演奏に出会わせてくれるのではと期待を込め彼女の”Voice ”という作品を聴いてみたとろ、受けたのはこれまで彼女の作品の中でもベストの出来と感じたその印象。

そう考えれば、ここで聴いた耳を引くドラム・プレーの存在も当たり前と言うところ、そうしたところにも気を付けてこのサウンド、聴いていただければと思います。


とにかくにもジャンルの壁を越え活躍するア―ティストたちによるこの作品、今度は彼らによるジャズの薫り高いフュージョン・サウンドを聴いてみることにいたしましょう・

曲は、Lukather とキーボードのGarfieldの手による"Froth"です。



重厚なドラムサウンドに始まるテーマ部から軽快なソロパートへ移り進んで行くこの曲、このソロ・パートで聴かれる即興演奏の世界はロックというよりも、はやジャズそのものといった感じ。
元々TOTOのサウンドにはフュージョン的な要素が強く感じられたのですが、そのTOTO中心的メンバーであったJeff, Mike,Steveの Porcaro 3兄弟が、父がジャズ・ドラマーであったことからのジャズ洗礼を受け育ったアーティストであったように、この演奏を聴くと、Lukather もジャズの因子を宿したアーティストであったことが良くわかります。

さて、こうしたことを考えながら、今回ご紹介したこの作品を聴いて行くと、この作品が制作された1993年という時期は、TOTOにとっては、その前年、リーダーのJeff Porcaroを失いその後1995年の”Tambu”に至るまでの間、スタジオ作品の制作が途絶えた時期、そうした中にあってこの作品、リーダーを失ったという逆境下においてLukather が、自身のやりたいことのすべてを注ぎ込みTOTOの再起を試みた作品ではだったのではないかと思え、そのLukatherの試みが、その後90年代以降にアルバム制作を開始したTOTOのサウンド作りにも大きく影響したと思えてしまうのです。

そうした最後にTOTOを率いた男Lukather、その音楽の原点にある人は...........!

それを暗示するのはその原点の人とは、この作品の最後に収めれている曲を捧げたJeff BeckとJeff Porcaroだった??

ということで、最後は、二人のJeffに捧げた曲である”Song for Jeff”に耳を傾けxその真偽を確かめつつ本稿を締め括ることにしたいと思います。



すべてを聴き終えLukather のマルチな才能に浸り、すっきりとした気分となったところ。
雨の日の多かった今年の9月ですが、このすっきりとした気分を得たところで、これからは、秋晴れの清々しい空気の中で、心に響くサウンドを身に一杯浸み込ませ、愁いを忘れこの季節特有の美しさを楽しめる日々が続けばと願っています。

Track listing
1.Hero with a 1000 Eyes (Lukather, Garfield, Fee Waybill) "Freedom" (Jimi Hendrix)
2.Extinction Blues (Lukather, Garfield, Waybill)
3.Born Yesterday (Lukather, Garfield, Waybill)
4.Never Walk Alone (Lukather, Garfield)
5.Party in Simon's Pants (Lukather, Simon Phillips)
6.Never Let Them See You Cry (Lukather, Garfield, Waybill)
7.Froth (Lukather, Garfield)
8.The Bomber (Joe Walsh, Vince Guaraldi)
9.Song for Jeff (Lukather, Garfield)

Personnel
Steve Lukather - lead vocals, background vocals, guitar
Simon Phillips - drums
David Garfield - keyboards
John Pêna - bass guitar
Chris Trujillo, Lenny Castro - percussion
Larry Klimas - saxophone
Fee Waybill - background vocals
Richard Page - background vocals
David Paich - Hammond organ (track 5)
Paul Rodgers - vocals (track 2)
Kevin Curry - background vocals

Recorded
March-November 1993


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