世界に駆けろ和心潜む楽の響き:Bamboo Flute Orchestra [音源発掘]

再び襲って来たコロナの猛威。
とは言っても、第一次の時とは異なり、相も変わらず忙しく西へ東へと飛び回っている私ですが、訪れる場所の風景も紅葉の季節は終わり、日々冬の装いに染まり行く様子が感じられるようになった今。

再度、コロナへのガードを固めつつ行く旅の身空でふと目にした、とあるアーティストの紹介記事。
読んでみて、これは意外、何気になく面白そうと聴いてみたのがこのアルバム。

bamboo flute orchestra shakuhachi.jpg


Bamboo Flute Orchestraの2016年の作品”Shakuhachi”。

そのBamboo Flute Orchestraというのは、琴古流の尺八奏者である辻本好美のソロ・プロジェクトとして出発し、本作に次ぐ2018年の2作目では、辻本を中心に、彼女の出身校である東京芸術大学の同級生・後輩からなる5人編成の尺八ユニットとなり”尺八Classic”を発表しているアーティストなのですが、
私が彼女らに興味をもったのは、彼女らの出身大学である東京芸術大学が、かってその教授として尺八にジャズのソロ楽器として可能性を提示した作品”銀界”を生み出した都山流の尺八奏者で人間国宝の故山本邦山が在籍指導していたこともあり、また、その後も邦山の弟子であり、尺八の新境地を切り開き現在その第一人者として多くの作品を発表し活躍している藤原道山を輩出した学校である4ということから、このBamboo Flute Orchestraもその後輩たち、必ず尺八という楽器の新境地に出会えるに違いないと考え聴いてみることにしたものなのです。

そこでその結果、まずはそのサウンド、早速聴いていただくことにいたしましょう。



曲は、あのMichael Jacksonの1987年の作品”Bad"に収録の”Smooth Criminal”でした。
三味線による幻想的な和学の響きに続いて現れる強力なビートと尺八によるあのMichael のヴォーカル・パート。
ファンクなサウンドとは縁遠いと思われる和楽器が音が舞、Michael のサウンドに幽玄の空間を創出するに至っている。
これには、天国であのMichael も、してやったりとニンマリ笑っている様子が見えてくるような.....、
そして、この演奏で、天国のMichael の歌う姿が見れたならと叶わぬ願いを抱いてしまうほどです。


こうしてその幸先を感じたところで、その次は、2作目の5人の尺八奏者による尺八アンサンブルが魅力の”尺八Classic”からの演奏を1曲。

bamboo flute orchestra SECL2349-50_JK.jpg


曲は、葉加瀬太郎の代表曲”情熱大陸”。
5本の尺八による軽快なアンサンブル、ちょっと耳を傾けてみてください。



私自身、尺八のアンサンブルというのは初めて聴いたのですが、独奏よりも音に深みが増し、尺八という楽器のまた違った可能性を知ることが出来ました。

この2作品、中にはBGMに寄りすぎ詰めの甘さが感じられる演奏もありますが、そのアプローチはそうした未完への苛立ちも越えて実に新鮮。
これからも、さらへの音創りへと邁進し新しい尺八の魅力を開拓提示し続けて欲しいと思いました。





さて、今回は手短にこの辺で!
 
コロナで気が滅入ることになることも多いかとも思う今年の年末。
幽玄を湛えつつも若々しさ溢れる響きを宿す尺八の歌声で、その憂いを柔らげことが出来ればと思います。


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                               靖国の銀杏並木


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mk1sp

Smooth Criminal、すごいですね、まるでマイケルが降臨したかのよう。
尺八のポテンシャルが良く分からないので、一見、簡単に吹いている様にも見えますが、すごい難しい演奏なのではないでしょうか?
by mk1sp (2020-11-30 22:49) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

Smooth Criminal、気に行っていただけたようで良かったと思っています。

私は、この演奏を聴いた後、藤原道山の尺八を聴いたのですけど、道山のそれは、辺りの空気に身を委ねそこに吹く風を音にしているような感じがしたのですが、 辻本好美等の音はより積極的で、尺八をもって新たな音空間を創り上げている、そうした感じを受けました。

昨今の日本のアーティスト達の音楽、なかなか挑戦的で面白い。これからは、ジャズだけではなく、こちらの方もいろいろ探し聴いていこうと思っています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2020-12-06 17:02) 

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