暗雲立つ年の幕開けに希望の燈明灯す-Music--・木住野佳子:Face [音源発掘]

年明け早々に、発令された一都3県の緊急事態宣言!!!!!

年末からのコロナ感染者の急激な増加を考えれば、当然の成り行きとも思えるのだが、いつもなら御屠蘇気分抜きらずまま、新しい年のもたらす新鮮なエネルギーに身を浸しほろ酔い気分でいるはずのこの時期のこと考えると、気持ちは重くなってい来るばかり。

そう言う私も、今年のお正月は、そのなんとも晴れない思いを引き摺りながら、自宅で音楽を聴きながらおとなしく過ごしていたのですが、そうした中で出会い凍てついた心に光を燈してくれた音楽。

新年、最初のブログは、その音楽をご一緒に聴きながら、立ち込める暗雲を打ち払い2021年が希望溢れる年にならんことを祈ることにしたいと思います。

そこでその音楽とは、日本の女性ジャズ・ピアニスト、木住野佳子のこの作品。

木住野佳子 face.jpg


2008年発表の”Face"です。

1995年にプロデ・ビューを果たして以来、現在もその一線で活躍している木住野佳子。
彼女がデビューした1990年代の半ばから2000年代初頭というと、現在、日本のジャズ・ピアノ界を牽引する大西順子や上原ひろみなど、有能な日本の女性ピアニストが登場した時期。
この二人、そのデビューは、日本ではなくジャズの本場アメリカあったことから、当時私は、これこそ日本のジャズ界の地位も世界に定着し来た証と感じ、そのことを喜びつ立て続けに発表された彼女らの作品に親しんでいたのですが、この木住野佳子も、そのデビュー作”fairy tale”は、ジャズの名門レーベルとなったアメリカのGRPレコードからであり、さらに、巨匠Chick Coreaが賛辞が寄せるなど大いなる評判を呼んでいたこともあって、それを聴き、私にとって以来、先の二人と同様、親しみ続けることになったアーティストの一人なのです。

しかしながら、その彼女、その活動は、大西・上原の二人と比べるともう一つ話題性に欠けているようにも感じてしまう向きもあるのですが、そもそも全曲バラード曲構成というジャズ作品で冒険ともいえる企画を6作目なる作品”Tenderness”で熟し切ったという実績からして、流麗な中にも一瞬の強力なテンションが聴くものに強力なインパクトもたらす、先の二人とは真逆のピアノ感性の持ち主。

そのソフトで繊細な美しさを放つピアノ・サウンドは、派手さはなく先に二人と比べると地味な印象があるものの、一つ一つ端正に紡がれるそのサウンドで異次元の歌の心世界を届けてくれているあたりに彼女の真骨頂がある優れたアーティストだと思うのです。


それではこのへんで、いきなり暗雲が立ち込めた今年の年明け、その重苦しさをはねのける力を育て、彼女の歌の世界、早速お届けすることにいたしましょう。








曲は、アルバム表題曲の”Face"でした。

キラキラと輝きを放っているような一つ一つの音。
現代ジャズ・ピアノ主流派の祖であるBill Evansの影響を強く感じるそのプレイ、しかし、その心は大変日本的であり、特に紡がれ生まれ出るメロディは美しく、思わず口ずさんでしまいたくなるほど親しみやすさを覚えるもの。
この曲のタイトルからなのか、今一度自分の顔を見つめ直し、刻まれた年輪の痕を追ってみたくなるような、ふと、そんな衝動に駆られてしまいます。

彼女のその一音一音大切に奏でる姿勢、そこにはジャズというよりはクラシックの質感が色濃く滲み出ているの感じられ、それが彼女のピアノの最大の魅力のように思うのですが、

ここでそのクラシックの質感をより感じさせる曲を、もう1曲。
曲は、”凛嶺(リンレイ)”です。



デビューより13年目に制作されたこの作品、バラード・プレイの美しさにはさらに磨きがかかり、そのうえに心の襞奥から湧き出る情感が備わって来ている、そうした彼女の成長の跡が窺える演奏です。

彼女の作品にはこうしたオリジナル曲に加えて、独自のアレンジを施したロックやソウルのヒット曲も収められていますが、この作品にもこうした曲が2曲収められています。
そこで、最後はその曲を1つご紹介することにいたしましょう。

曲は、今だ新しいファンを獲得し続けている伝説のロック・バンド Queenの”Love Of My Life”です。



ジャズでQueenの曲が取り上げられることは大変珍しいのですけど、原曲と比しゆったりとしたテンポで語られるこの演奏、この曲に内包されているクラシカルな美しさを引き出しながらも、また違った視点からの良さをも醸し出している。
Queenが日本で初めて紹介されて以来、彼らの音楽に惹きつけられ聴き続けてきた私にとって、短いながらも最も深く印象に残ったのがこのトラックでした。

いつも心の中に憂鬱の影が宿り晴れることない空気が渦巻く日々が続く中、今回聴いていたこの木住野佳子の作品、その中に内包されている美しく豊かな感性のおかげで、その暗雲を乗り切る勇気を得たように思います。

新年早々、現地を調査をしなければ事は前に進まないことの多い仕事柄、外出もせいぜい予防に気を付けて勤めに励もうと思っています。


ワクチン接種が始まるまであと少し、皆様方におかれましても今一気を引き締めて直して、日々お過ごしください。


Track listing
1.Face
2.Jealousy
3.少女のワルツ(カネボウ「Impress」CM曲)
4.雪待月
5.And I Love Her
6.極楽鳥
7Heat Wave
8.凛嶺
9.シチリアーノ
10.地球兄弟
11.Love Of My Life
12.星の贈り物(パナソニック「VIERA」CM曲)

Personnel
木住野佳子(p)
西嶋徹(b)
鳥越啓介(b)
藤井学(ds)
岡部洋一(per)
笠原あやの(vc)
tomoca (ob, e.horn)
Siesta Strings
Siesta Quartet

Released
2008-4-16




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mk1sp

今年もよろしくお願いします。
心落ち着くピアノの調べですね、焦らず一歩一歩丁寧に歩もう、そんな気になります(*^-^*)
大変な時期が続きますが、コロナに感染しない様、お体にお気を付けください。
by mk1sp (2021-01-14 20:53) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1sp さん
今年も早々のコメントありがとうございます。

春の時と違って今回のコロナ、こんだけ感染者がでると、重症化危険年齢の私など、風邪気味となるとすぐ、もしかしてという気分になり、心が落ち着かなくなる毎日を過ごしています。

本当に、くどいほどに用心に用心を重ねて過ごさなければいけない、ワクチンまであと少し、それまで十二分に気を付けて過ごすようにいたしましょう。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2021-01-20 19:31) 

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