ありがとうChick Corea! 新時代を切り拓いたそのサウンドは永遠に。;本日の本日の作品☆ vol.149 [デジタル化格闘記]

2/13の朝、いつものように新聞に目を通していると、目に入って来た悲しい記事。
それは、私がジャズを聴き始めた頃、ロック・ファンであった私がうっすらとしたジャズへの興味を覚えつつも、今一歩奥へと踏み越えらずにいた時、そのつかえの扉をを吹き飛ばし開いてくれたアーティストの訃報。

そのアーティストの名は、現代ジャズの巨匠として知られるピアニストのChick Corea。

CC_At_the_Piano_Color_photocredit_ChickCorea_Prod-p.jpg


享年79歳、となれば、それもその人に与えられた寿命であり致し方ないと思えるものの、70歳を越えてからも、今のジャズに活力を取り戻すためにはロックのエッセンスを取り入れることが必要だと強く提唱し、自らその先頭に立ちながら新しい境地を開きつつ、2019年には来日しアコースティックなサウンドで現未来を駆け抜けるサウンドを生み出していた、そのことを聞き知っていた私にとっては、その突然の終焉の報はあまりにも唐突で、今だ信ずることが出来ないでいる有様。

そのChick Corea、その登場は1960年代半ばのこと。
Stan Getzのカルテットの一員としてプレイしたそのピアノ・タッチの美しさが大いに話題となり、日本でもそのStan Getzのカルテット来日に際しては、これに随行し初の来日を果たしたCoreaのピアノが大きな話題の焦点になっていたというほど。

Getzのカルテット後のCoreaは、Miles Davisのグループに参加、そこでエレクトリック・サウンドやロック・ビートを取り入れた新しいサウンドを模索していたMilesの下で働き、その後独立。
一時フリーの道にも足を踏み入れつも、1972年制作の作品”Return to Forever”では、ジャズ本来の味にボサノバの要素やエレクトリック・サウンドを取り入れ、清々しく親しみやすい新世代のサウンドでジャズの世界に新風を吹き込み、ジャズ界のニューリーダーしての地位を築くことになったアーティストなのです。


そこで、Chick Corea!
その彼を偲んで、今回聴いていただきたいサウンドは、公式に発表されていない日本でのライブ音源!!

まずは、70年代”Return to Forever”の成功から、フュージョンの道を歩み始めたCoreaの、その時代の終盤を姿を捉えた1979年。
東京稲城市にある、よみうりランドのシアターEASTで開催されたLive Under The Skyで、Al Di Meola(g),Bunny Brunel(b),Tony Williams(ds)と共演したスペシャル・カルテットによるライブ音源で、曲は、Corea作曲の”Senor Mouse”からお聴きいただくことにいたしましょう。






Al Di Meola,Bunny Brunel,Tony Williamsの3人を従えたCoreaの演奏、私の知っている限りでは、これまで公式アルバムとしてこのメンバー編成で発表された作品はなっかったはずで、そうしたことからこれはかなり貴重な演奏の記録。

特にドラムのTony Williams共演のCoreaの作品というと、Miles時代のものはそれとして、Coreaがリーダーを務めてのものは公式にはないはずなので、その珍しさはさらに貴重であると思うのです。


さて、ドラムにTonyを迎えたこの演奏のこと。
1972年の”Return to Forever”以降、バンドにAl Di Meola等ギタリストを迎え、急速にロック指向が強くなっていったCoreaだったのですが、私としては、強烈なビートと電子化しすぎたそのサウンドに,
私の好きなCorea本来の潤いのあるタッチが感じられなくなってしまったように思っていたことから、そのサウンドには共感出来ずにいたのです。

そのため、この年のLive Under The SkyのChick Corea Nightと 題されたこの演目も半ば懐疑的であったものの、メンバーに珍しくTonyが加わっていたということから、とりあえずFM放送で配信されたその演奏を録音し後に聴いてみたところ、Tony一人が加わったことでそのサウンドに大きな緊張感が生まれ、それがCorea他二人を刺激し緊張溢れるインプロビゼーションの応酬が繰り広げられる音空間がそこにあることに目を見張り、以後その録音テープを大切に保管し続けることなってしまったものなのです。

思うにこの演奏、この時期アコースティック路線に回帰しつつあったCoreaの70年代フュージョン時代の集大成といった趣があるような気がしているのですが、80年代に入るとCoreaは再びアコースティック路線を追求するようになります。

そこで80年代、Coreaのアコースティック路線のライブ演奏を、

70年代、前述のAl Di MeolaやBunny Brunelに加えてStanley Clarke(b)、Lenny White(ds)等、優れた若手を世に送り出してきたCoreaですが、80年代に入ってからもJohn Patitucci(b)、Dave Weck(ds)、を発掘、彼らと共に、Akoustic Bandを結成しています。

そこで、今度はそのAkoustic Bandの結成間もない1989年来日時のライブの音源で、今やスタンダード・ナンバーともなったCoreaの代表曲”Spain”を聴いていただくことにいたしましょう。



アコースティックに回帰した80年代のCorea、実は、その音楽ジャンルはジャズ・ロックの範疇にととまらず、1982年にクラシック・ピアノの大巨匠 Friedrich Guldatoと共演、モーツァルトの”Double Piano Concerto”した作品を発表するなどクラッシックの分野まで大きく広がり、90年代に至ってはこの名高い”Spain"をモチーフとした協奏曲を作り、ジャズ・コンボとクラシック・オーケストラの共演による作品を発表するなど、彼の最絶頂期ともいえる精力的な活動を続けていくことになるのです。

それでは、クラシックの領域まで踏み込んだCoreaの演奏、1995年夏 東京都多摩市の多摩中央公園で新日本フィルハーモニーと共演した屋外コンサートのこんな映像がありましたのでご覧ください。
曲は”Day Dance”です。




つい最近まで、78の齢を越えても精力的な活動の報が届いていたChick Corea.、その彼の訃報が信じられない私の思いは、ここまで書いても今だ払拭出来ないでいるところ。

しかし、こうして私の持つその時代時代のライブ音源を並べ聴いてみると、あらためて彼の音楽家としての裾野の広さを痛感することになりました。
そして、その精力的に活動し音楽の楽しさを教えてくれるその姿をもう見ることが出来ないことに気づき、そこに、そこはかない大きな寂しさを感じています。

私に、楽しさとジャンルに拘らず大きな視野で音楽を見つめてみることを教えてくれたChick Corea、天に旅立った彼に向けて、今、心からありがとうの言葉を唱えています。








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yuzman1953

老年蛇銘多親父さん、こんばんは。
チック・コリア氏の訃報を私も新聞で読みました。
名前は知っていても、彼の音楽を聴いた記憶はありませんでした。
”Day Dance”を拝見して、チック・コリア氏は「現代のモーツァルト」のような印象を受けました。彼の音楽をもっと知りたくなりました。
by yuzman1953 (2021-03-01 02:25) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

yuzman1953さん

「現代のモーツァルト」、とは良い表現ですね。

Coreaはいろんな顔を持っているので、間違えると思いもよらない作品をGetしてしまう可能性があるのですが、私の場合は、私は彼の最初の1970年のソロ作品”Piano Improvisations Vol.1”から聴き始め、
”Return To Forever”、”Light As A Feather””と聴き進み彼の良さを知りました。

晩年の作品もいいものがあるので、Chick Corea、その辺りを聴きながら、楽しんでみてください。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2021-03-01 06:36) 

lequiche

亡くなられたのは大変残念です。
79年のアンダー・ザ・スカイの演奏は
大変素晴らしいですね。
この音源は以前、SLANG RECORDSで
出ていたものだと思いますが、
ごく最近、Alive The Liveというレーベルで
ブートが出ています。
尚、1979年だけでなく1980年の録音も
同時にリリースされているようです。
by lequiche (2021-03-10 03:01) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

lequiche さん

79年のアンダー・ザ・スカイの演奏、SLANG RECORDSで出ていたこと承知しています。

ただ、まだChickの公式でディスコグラフィに見当たらず、ここでは公式にはとさせていただきました。

それはともあれ、演奏内容の良さから、Chickの逝去を悼み、多くの人にこの音源を知っていただきたいと思い記載させていただきました。
そうした意味で、大変素晴らしいとのご評価をいただけたこと大変うれしく思っています。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2021-03-13 20:19) 

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