武道館に響く味わい深き匠たちの音：Hank Jones The Great Jazz Trio with Friends 1981 本日の作品☆ vol.153 [音源発掘]
変化に満ちた年であった2021年も、いよいよラスト。
次から次へといろいろなことが起きて、なにがなにだか分からぬうちに気付いてみれば12月だった感があるのですが、ここのところの私はコロナ禍も沈静していたこともあって、1年ぶりに都心を訪れたり近県に出張したりと忙しく過ごしながらも、合間合間には、昨年は叶わなかった行く先々での色づく秋の気配を楽しめたことを楽しみ安堵しているところ。
そこで今回は、今年の私の見た秋の色、今回我が家のエア・チェック・ライブラリーから発掘した未発表の匠たちの演奏に乗せてご覧いただくことにしたいと思います。
それでは、まずはこの演奏からお聴きください。
選んだ作品は、1981年9月に開催されたAurex Jazz FwstivalでのHank Jones率いるThe Great Jazz Trio with Friendsのライブで、まず聴いていただいた曲はそのトリオによる”Autumn Leaves”でした。
そのHank Jones、1950年代に数々のセッションにサイドマンとして参加、燻銀の輝きともいえるタッチで多くの名演を残してきたピアニストなのですけど、長らく決定打といえるリーダー作品には恵まれずにいたのです。
その転機が訪れたのは1975年の春、ベースRon Carter,ドラムTony Williamsを従えThe Great Jazz Trioと名乗りニューヨークの名門ジャズクラブ”、ヴィレッジ・ヴァンガードへの出演をしたのがそのきっかけ。
その後、1976年、日本のジャズ専門レーベルEast Windが企画制作した渡辺貞夫の作品”I'm Old Fashioned”のリズム・セクションとしてこのThe Great Jazz Trioが参加、これを機に同レーベルより ”Love for Sale”、” The Great Jazz Trio at the Village Vanguard”を発表、いわば日本人の手によって頂点を極めることになったアーティストなのです。
さて、今回のThe Great Jazz Trio、聴いていただいた1981年のこの演奏のメンバーは、ベースにEddie Gómez、ドラム Buddy Williams という布陣。
いわゆる第2期The Great Jazz Trioの布陣なのですけど、珍しいのは本来この時期のドラムの正式メンバーはAl FosterまたはJimmy Cobbであったはずのところ Buddy Williams となっていたところ。
Jimmy CobbもAl Fosterも、Miles Davisのバンドで名を馳せた名ドラマーであることから、スケジュールの都合で来日できず、このBuddy Williamsがピンチ・ヒッターとして参加することになってしまったということなのだろうけど、私としては、彼についてフュージョン・サイドのアーティストとの印象を強く持っていたことから 、Hankとの相性はいかがなものかと疑問を感じてしまっていたのです。
しかし、実際に聴いていみると、ツボを心得た軽快かつビート感に富んだプレイでこのトリオの心地良いスイング感を支えていてこれがガチッとキマッテいた。
これは、嬉しい誤算、こんなところも他には残っていない、このライブのちょっとした聴きどころがあるのではないか思います。
まずは、ピアノ・トリオの演奏から1曲聴いていただきましたが、このステージは、The Great Jazz Trio with Friends ということで、ピアノ・トリオと他の作品ではお目にかかれないゲストとの共演がもう一つの聴きどころ。
この日、Friendsとして参加したゲストは、トランペットのArt Farmer、テナーサックスのBenny Benny Golson,ヴォーカルのNancy Wilsonの円熟の境地を感じさせる面々となれば、その期待はさらに膨らむと思います。
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そこで、まずはそのフレンドの一員としてピアノ・トリオの演奏に引き続き、Hank Jonesの紹介で登場したのが、Art Farmer。
というところで、今度はそのArt Farmerが加わったカルテットの演奏で、曲はもう一人のゲストであるBenny Golson作曲の”Yesterday's Thoughts "をお聴きください。
トランペットにイメージする煌びやかさは希薄なれど、落着きのある美しい音色で淡々と歌い聴かせるよう奏されていくArt Farmerのトランペット。
私にとっては、トランペットの巨匠Miles、Blown以上に好みトランぺッターなのですが、晩秋の風景の中に佇んで聴くとその良さはさらに格別味を帯びてくように感じます。
この曲、Art Farmerと演奏としては、Cedar Waltonのトリオとの共演で制作された1975年の彼の作品””Yesterday's Thoughts "が有名ですが、こちらはトランペットに代わりフリューゲルホーンの演奏で、バックにHank Jonesを従えたこの演奏よりさらにしっとり感深い思索的な演奏で、この辺りピアニストの個性の違いを踏まえてことなのか、そうしたことに着目しながら聴き比べてみるのも一興ではないかと思います。
Benny Golsonの曲を聴いていただいたところで、今度はこの日のもう一人のゲストであるGolson当人の登場。
Benny GolsonとArt Farmerのというと思い出されるのが、1959年から1962年にかけてこの二人をリーダ－となって活動したThe Jazztetのこと。
Golson, Farmerの他にトロボーンを加えた３管編成のバンドで、その魅力はGolsonハーモニーと言われる独特なしっとり感を覚えさせるGolsonの編曲。
親しみやすく心に余韻を残すサウンドで、派手さはないものの根強い人気を得、”Meet The Jazztet”や”Here and Now”等、今も聴き継がれる名作を残しているのですが、その二人が並び立ったこのフェスティバルのステージ、そうしたことから、おのずからあのJazztetの再演へとの期待が湧いてきます。
そこで今度は、そのHank JonesのトリオにFarmerとGolsonが加わった演奏でJazztetでも度々演奏されたあの名曲を聴いてみたいと思います。
曲はGolson作曲の”Whisper Not”です。
時を越えても色褪せることのないGolsonハーモニーの香り、Farmerと演奏することでその香りが濃厚さを増し現われ聴こえてくる、二人の時経ても変わらない深い絆を感じた演奏でした。
このこと、どうやら二人とっても感慨深いものだったようで、このフェスティバルの翌年の1982年にJazztetを再結成、日本のEジャズ・レーベルEast Windから”Voices All”の発表、1986年まで計6枚の作品を発表していることからもその心の内が窺い知れるように思います。
さて、こうして聴いてきたHank Jones率いる The Great Jazz Trio のAurex Jazz Festivalのライブ・ステージ、この後ヴォーカルのNancy Wilsonの登場、これもなかなかのものなのですが、そのステージはまたいずれの機会に。
街の木々の木の葉も既に散り行きつつ、師走の喧騒が増している中、何か追い立てられているような気分の毎日。
こうした晩秋の余韻を感じさせる音楽で、心を和ますひと時を持つのもいいものだと思います。
今年もあと少し、ラスト・スパートの心構えで頑張りましょう![[exclamation×2]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/160.gif)
Tracklist
1.On Green Dolphin Street - The Great Jazz Trio
2.Wind Flower - The Great Jazz Trio
3.Autumn Leaves - The Great Jazz Trio
4.Passport - The Great Jazz Trio with Art Farmer
5.Yesterday's Thoughts - The Great Jazz Trio with Art Farmer
6.Recorda-Me - The Great Jazz Trio with Art Farmer
7.Are You Real? - The Great Jazz Trio with Benny Golson
8.I Remember Clifford - The Great Jazz Trio with Benny Golson
9.Whisper Not - The Great Jazz Trio with Art Farmer/Benny Golson
10.I'll Remember April - The Great Jazz Trio with Art Farmer/Benny Golson/Nancy Wilson
11.Guess Who I Saw Today - The Great Jazz Trio with Nancy Wilson
12.I Thought About You - The Great Jazz Trio with Nancy Wilson
13.Save Your Love For Me - The Great Jazz Trio with Art Farmer/Benny Golson/Nancy Wilson
Personnel
The Great Jazz Trio
Hank Jones-piano
Eddie Gómez-bass
Buddy Williams-drums
Guest
Art Farmer-flugelhorn
Benny Colson-tenor sax
Nancy Wilson-vocal
Recorded
September 2 1981
Nippon Budokan Tokyo Japan
次から次へといろいろなことが起きて、なにがなにだか分からぬうちに気付いてみれば12月だった感があるのですが、ここのところの私はコロナ禍も沈静していたこともあって、1年ぶりに都心を訪れたり近県に出張したりと忙しく過ごしながらも、合間合間には、昨年は叶わなかった行く先々での色づく秋の気配を楽しめたことを楽しみ安堵しているところ。
そこで今回は、今年の私の見た秋の色、今回我が家のエア・チェック・ライブラリーから発掘した未発表の匠たちの演奏に乗せてご覧いただくことにしたいと思います。
それでは、まずはこの演奏からお聴きください。
選んだ作品は、1981年9月に開催されたAurex Jazz FwstivalでのHank Jones率いるThe Great Jazz Trio with Friendsのライブで、まず聴いていただいた曲はそのトリオによる”Autumn Leaves”でした。
そのHank Jones、1950年代に数々のセッションにサイドマンとして参加、燻銀の輝きともいえるタッチで多くの名演を残してきたピアニストなのですけど、長らく決定打といえるリーダー作品には恵まれずにいたのです。
その転機が訪れたのは1975年の春、ベースRon Carter,ドラムTony Williamsを従えThe Great Jazz Trioと名乗りニューヨークの名門ジャズクラブ”、ヴィレッジ・ヴァンガードへの出演をしたのがそのきっかけ。
その後、1976年、日本のジャズ専門レーベルEast Windが企画制作した渡辺貞夫の作品”I'm Old Fashioned”のリズム・セクションとしてこのThe Great Jazz Trioが参加、これを機に同レーベルより ”Love for Sale”、” The Great Jazz Trio at the Village Vanguard”を発表、いわば日本人の手によって頂点を極めることになったアーティストなのです。
さて、今回のThe Great Jazz Trio、聴いていただいた1981年のこの演奏のメンバーは、ベースにEddie Gómez、ドラム Buddy Williams という布陣。
いわゆる第2期The Great Jazz Trioの布陣なのですけど、珍しいのは本来この時期のドラムの正式メンバーはAl FosterまたはJimmy Cobbであったはずのところ Buddy Williams となっていたところ。
Jimmy CobbもAl Fosterも、Miles Davisのバンドで名を馳せた名ドラマーであることから、スケジュールの都合で来日できず、このBuddy Williamsがピンチ・ヒッターとして参加することになってしまったということなのだろうけど、私としては、彼についてフュージョン・サイドのアーティストとの印象を強く持っていたことから 、Hankとの相性はいかがなものかと疑問を感じてしまっていたのです。
しかし、実際に聴いていみると、ツボを心得た軽快かつビート感に富んだプレイでこのトリオの心地良いスイング感を支えていてこれがガチッとキマッテいた。
これは、嬉しい誤算、こんなところも他には残っていない、このライブのちょっとした聴きどころがあるのではないか思います。
まずは、ピアノ・トリオの演奏から1曲聴いていただきましたが、このステージは、The Great Jazz Trio with Friends ということで、ピアノ・トリオと他の作品ではお目にかかれないゲストとの共演がもう一つの聴きどころ。
この日、Friendsとして参加したゲストは、トランペットのArt Farmer、テナーサックスのBenny Benny Golson,ヴォーカルのNancy Wilsonの円熟の境地を感じさせる面々となれば、その期待はさらに膨らむと思います。
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そこで、まずはそのフレンドの一員としてピアノ・トリオの演奏に引き続き、Hank Jonesの紹介で登場したのが、Art Farmer。
というところで、今度はそのArt Farmerが加わったカルテットの演奏で、曲はもう一人のゲストであるBenny Golson作曲の”Yesterday's Thoughts "をお聴きください。
トランペットにイメージする煌びやかさは希薄なれど、落着きのある美しい音色で淡々と歌い聴かせるよう奏されていくArt Farmerのトランペット。
私にとっては、トランペットの巨匠Miles、Blown以上に好みトランぺッターなのですが、晩秋の風景の中に佇んで聴くとその良さはさらに格別味を帯びてくように感じます。
この曲、Art Farmerと演奏としては、Cedar Waltonのトリオとの共演で制作された1975年の彼の作品””Yesterday's Thoughts "が有名ですが、こちらはトランペットに代わりフリューゲルホーンの演奏で、バックにHank Jonesを従えたこの演奏よりさらにしっとり感深い思索的な演奏で、この辺りピアニストの個性の違いを踏まえてことなのか、そうしたことに着目しながら聴き比べてみるのも一興ではないかと思います。
Benny Golsonの曲を聴いていただいたところで、今度はこの日のもう一人のゲストであるGolson当人の登場。
Benny GolsonとArt Farmerのというと思い出されるのが、1959年から1962年にかけてこの二人をリーダ－となって活動したThe Jazztetのこと。
Golson, Farmerの他にトロボーンを加えた３管編成のバンドで、その魅力はGolsonハーモニーと言われる独特なしっとり感を覚えさせるGolsonの編曲。
親しみやすく心に余韻を残すサウンドで、派手さはないものの根強い人気を得、”Meet The Jazztet”や”Here and Now”等、今も聴き継がれる名作を残しているのですが、その二人が並び立ったこのフェスティバルのステージ、そうしたことから、おのずからあのJazztetの再演へとの期待が湧いてきます。
そこで今度は、そのHank JonesのトリオにFarmerとGolsonが加わった演奏でJazztetでも度々演奏されたあの名曲を聴いてみたいと思います。
曲はGolson作曲の”Whisper Not”です。
時を越えても色褪せることのないGolsonハーモニーの香り、Farmerと演奏することでその香りが濃厚さを増し現われ聴こえてくる、二人の時経ても変わらない深い絆を感じた演奏でした。
このこと、どうやら二人とっても感慨深いものだったようで、このフェスティバルの翌年の1982年にJazztetを再結成、日本のEジャズ・レーベルEast Windから”Voices All”の発表、1986年まで計6枚の作品を発表していることからもその心の内が窺い知れるように思います。
さて、こうして聴いてきたHank Jones率いる The Great Jazz Trio のAurex Jazz Festivalのライブ・ステージ、この後ヴォーカルのNancy Wilsonの登場、これもなかなかのものなのですが、そのステージはまたいずれの機会に。
街の木々の木の葉も既に散り行きつつ、師走の喧騒が増している中、何か追い立てられているような気分の毎日。
こうした晩秋の余韻を感じさせる音楽で、心を和ますひと時を持つのもいいものだと思います。
今年もあと少し、ラスト・スパートの心構えで頑張りましょう
Tracklist
1.On Green Dolphin Street - The Great Jazz Trio
2.Wind Flower - The Great Jazz Trio
3.Autumn Leaves - The Great Jazz Trio
4.Passport - The Great Jazz Trio with Art Farmer
5.Yesterday's Thoughts - The Great Jazz Trio with Art Farmer
6.Recorda-Me - The Great Jazz Trio with Art Farmer
7.Are You Real? - The Great Jazz Trio with Benny Golson
8.I Remember Clifford - The Great Jazz Trio with Benny Golson
9.Whisper Not - The Great Jazz Trio with Art Farmer/Benny Golson
10.I'll Remember April - The Great Jazz Trio with Art Farmer/Benny Golson/Nancy Wilson
11.Guess Who I Saw Today - The Great Jazz Trio with Nancy Wilson
12.I Thought About You - The Great Jazz Trio with Nancy Wilson
13.Save Your Love For Me - The Great Jazz Trio with Art Farmer/Benny Golson/Nancy Wilson
Personnel
The Great Jazz Trio
Hank Jones-piano
Eddie Gómez-bass
Buddy Williams-drums
Guest
Art Farmer-flugelhorn
Benny Colson-tenor sax
Nancy Wilson-vocal
Recorded
September 2 1981
Nippon Budokan Tokyo Japan
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背比べ
少し早いですが良いお年を！
by U3 (2021-12-26 11:41)
U3 さんご訪問ありがとうございます。
来年もよろしくお願いいたします。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2021-12-31 12:17)