重い空気を吹き飛ばした思い出のギター&フルート・サウンド;Kenny Burrell・All Night Long [音源発掘]

年明けの心配が現実となってしまった、コロナ禍の現実。

とうとう、私の職場でも感染者が出てしまって!!
幸い、家族内感染ということもあって、幸い感染判明の前後には皆出張のため、職場内には本人と濃厚に接触をしていた者はおらず、その後のPCR検査でも全員陰性との結果で、その後も何事もなく大事にはならなかったのですけど、しかし、一方世間では、感染が急速に拡大、連日過去最高の状態となってしまっていることから、会社も社員に在宅勤務を発令となってしまったのです。

そうした訳で、今は私も不要な外出は慎みつ、ここ1週間はおとなしく巣ごもりに徹しているところなのですが、その暮らしも長引いてくるとどうも気持ちが滅入ってくる。
そこで、好きな音楽を聴くことでちょっと気を間際わしてみようかと考え、それなら、軽快なギター・サウンドが適当かと思いを巡らし思い当ったのがこの作品。

kenny burrell all night long.jpg








曲は、Kenny Burrell作曲の”All Night Long ”

さて、今ではKenny Burrellのリーダー・アルバムとして知られているこの作品、50年代ジャズの名門レーベルであるPrestige・レコードの代表する豪華な顔ぶれによるオールスター・セッションとして企画されたもの。
そのメンバーは、ギターのKenny Burrellに始まり、トランペットDonald Byrd 、テナー・サックスHank Mobley、フルートJerome Richardson、ピアノMal Waldron、ベースDoug Watkins、ドラムスArt Taylorの、50年代にジャズ作品に多くの名を残す颯爽たる面々。

これを見ただけで、メンバーそれぞれが、この顔ぶれの中でどんなプレイを聴かせてくれるのか、大きな興味が湧いてくるものですけど、私としてまずに気になったのは、”Opus de Jazz”がこの作品との出会いにきっかけであったことから、Kenny BurrellのギターとJerome Richardsonのフルートのプレイ。

”Opus de Jazz”のヴァイブのMilt JacsonとフルートのFrank Wessを、その二人に投影し聴いてしまったのですけど、そこから聴き取れたのは、その両作品、確かにコンセプトは相通じるもがあるも、いつもとは微妙に違うBurrellのMiltを意識したようなに硬質な音色とパーカシッブな感がするギタープレイに、Wessに比べソフトで流麗な感じのするRichardsonのフルート・プレイ。

そうした違いを聴き分けながらも、ブルー・ティストを備えたスィング感に身を包まれて行く感触は、”Opus de Jazz”に勝るとも劣らないという感じ。

そして、その記憶通りのサウンドに気を良くしてさらに聴きこみ意外な感じを受けたのが、ピアノのMal Waldron。
彼のピアノついては、これまで重いブルのーイメージを強く抱いていたのですけど、そのいつもの深いブルーを放つMal 独特のピアノも、軽快さの中に溜めのある個性的なスィング感をもって響いて来て、これがまた新鮮。

遠い記憶に残っていたこの作品。
今回聴き調べて、珍しいアーティストの顔合わせのセッションであったことを知り、久々にじっくりと聴きこんでみて、参加アーティストそれぞれのこれまでの記憶にはなかった姿を見つけることが出来ました。


さて、1曲聴き、思い抱いていた通り気の滅入りも解消しリラックスを得られことは、上々の出来とを良くしたところで、続けてその昔聞き流してしまった演奏も、聴いてみたくなってしまいました。
そこで、次に聴いてみようと思ったのがこの曲。



曲は、Hank Mobley作曲の”Li'l Hankie”。

小編成のユニットではあまり聴けないトランペット、サックス、フルートの三管編成による、フルートが加わったことで柔らかなアンサンブルで始まるこの曲。

その三管の一翼を成すトランペットのDonald Byrd と、テナー・サックスのHank Mobleyについて私は、若い時に読んだジャズ評論家粟村正昭氏のこの二人に対する「50年代を代表する二線級アーティストだ。」という評価の言葉が頭に残ってしまったことに合わせ、特にMobleyに関しては1963年のMiles Davisクィンテット在籍時、”Someday My Prince Will Come”でのJohn Coltraneとの共演の聴くも無残な演奏の記憶に強烈に残っていて、これまで余り深く聴いてこなかったのですけど、ここで聴いた豊かな音量で朗々と歌うByrdのトランペットとMobleyの甘い音色で歌いかけるテナー・サックスの心地の良さ。
そのプレイには、この二人の誠実さが感じられそれがこの魅力的サウンドを生み出しているように思えて来たのです。

そう思えばMobleyのColtraneでの前でのあの失態も、その誠実さが災いした結果だった。
そして、粟村正昭氏のあの言葉も、この二人はジャズ史を揺るがす超一流アーティスとではないが、50年代ジャズの花形アーティストとして愛すべき存在であることを示唆したものだったと思えるようになったのです。

こうして聴いてきた、Kenny Burrellの”All Night Long”。
聴き終えて思うのは、50年代ジャズの暖かさ、そこには、テクニックの面では現代のジャズに到底及ばないものの、それを越えるハートがあるということ。
今回は、そのことをしみじみと味合わせてもらいました。

そして、思い出したのがこの作品の中心にであるKenny Burrellが、1975年来日の際のインタビューに答えた言葉。
今のギタリストについてどう思うかの問いに「今はアンプリファイア・プレヤーが多くなっているけど自分はあくまでギター・プレヤーでいたい。」との答えたこと。

それは、若き日のBurrellのこの作品でも聴けた、彼の真骨頂ともいえるブルジーでありながら繊細かつスィング感あふれるギター・プレイへの揺るぐことない信念の賜物であり、それこそが今も多くの人に聴き継がれ愛される由縁なのだということの思いを強くすることになりました。


Track List
1.All Night Long (Kenny Burrell)
2.Boo-Lu (Hank Mobley)
3.Flickers (Mal Waldron)
4.Li'l Hankie (Hank Mobley)
 Bonus tracks on CD reissue in 1990:
5.Body and Soul (Frank Eyton, Johnny Green, Edward Heyman, Robert Sour)
6.Tune Up (Miles Davis)

Personnel
Kenny Burrell – guitar
Donald Byrd – trumpet
Hank Mobley – tenor saxophone
Jerome Richardson – flute, tenor saxophone
Mal Waldron – piano
Doug Watkins – bass
Art Taylor – drums

Recorded
December 28, 1956
Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey



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コメント 4

raccoon

そうですか。ついに。
私の職場でも昨年に引き続き、今年も感染者が出てしまい、在宅勤務を経験しました。意外にできるものだな、と思いましたが、長期は無理ですね。
コロナ渦は、まだまだ続きそうですが、お気をつけて。
by raccoon (2022-02-01 06:43) 

tarou

お早うございます、吾妻山公園(スイセン)に
コメントを有難うございました。
コロナで自宅勤務ですか、大変ですね
好きな音楽を聞いて自己免疫力を高めて
ください。


by tarou (2022-02-01 13:54) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

raccoonさん
子供の発症で、親である本人発症前に濃厚接触者であるとして出社を控えたため、社内感染はなく無事済んだのですけど、オミクロンは感染力の強さから、これまでと違い家庭内感染の防止に努めなければないことを実感しました。

しかし、在宅勤務が続くと、次第に外に出るのが億劫になってくる。

気持ちを切り替え、なんとか復帰できるよう努めることしようと思っています。
困ったものですね。




by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-02-02 20:09) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

tarouさん

今年は寒いせいか我が家の水仙の開花は、まだ。

早く花をつけて、好きな音楽に合わせまた一つ楽しみが出来ること、tarouさんの記事を見て、昨今そのことも楽しみのひとつになって来ました。



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-02-02 20:21) 

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