二人の堅い絆が生んだ心通う究極のサウンド;Tokyo Adagio: Charlie Haden/ Gonzalo Rubalcaba [音源発掘]

春真っ盛りと厳寒の冬の間を行き来する、寒暖の激しさが身に応えた今年の春の訪れ。
とは言っても、ソメイヨシノも開花、すでに東京では満開を迎えたとのこと。

コロナの嵐も収まりつつある中、まだまだ油断は出来ぬものの、今年は何とかお花見を楽しむことが出来そうな雰囲気。

そうした日々、私の方は3月に入ると一足早く春の訪れに浸ろうと、季節を彩る花の目覚めを探して街をうろうろ。
亀戸天神の梅の花を皮切りに、

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これまで、津田沼で見つけた河津桜、

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そして、我家の最寄り駅である薬園台駅前広場の彼岸桜でお花見、

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そして、船橋・御瀧不動のソメイヨシノ鑑賞と、

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遠出を避けながらも、春の幕開けを楽しんでいるところなのですが、

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今回、取り上げるのは、その穏やかで清楚な春の幕開けを告げる花々の風情を眺めながら聴き、その味わいをさらに格別なものにしてくれたこの作品。

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2015年発表のベーシストのCharlie Hadenとキューバ、ハバナ出身のピア二スト Gonzalo Rubalcabaによるデュオ作品”Tokyo Adagio”です。

本作は、”Tokyo Adagio”とある通り、2005年に収録された東京のブルーノート・ジャズクラブでのライブ作品なのですが、その発表は、2014年7月Hadenが76歳で亡くなった、翌年の2015年6月にジャズの名門レーベルImpulseよりリリースされた、いわば偉大なるベーシストでありクリエーターであったHadenの追悼作品とも言えるもの。

私にとってHadenは、1974年にKeith Jarrettのアメリカン・カルテット来日公演でそのカルテットの一員として来日した 彼の生のベース・プレイに接して以来、もっとも好きなアーティストの一人として、長年聴き続けて来たのですが、
中でも、彼のピアノとのデュオ作品は、これまでもKeith Jarrett、Hank Jones、Kenny Barronと言った著名ピアニストとのものがあり、そのどれもがHadenと組むことで、それぞれのピアニストのまた違った個性的な一面が浮かんでくる感があって聴きどころ満点。

そういう意味でこのGonzalo Rubalcabaとのデュオ作品も興味尽きないものがあるのですけど、それ以上にこの2人、1986年にキューバで初めて出会い、その出会った瞬間にHadenは英語も理解できないRubalcaba(当時23歳)に運命的なテレパシーを感じ、その後共に演奏しその才能を育んで来た、互いに心が通じ合った師弟のような関係とあって、その期待はさらに大きく膨れ上がってくるものなのです。

それでは、その演奏、早速、お聴きいただくことに致しましょう。








2002年のグラミー賞最優秀ラテン・ジャズ・アルバム賞を受賞した、Hadenの2001年の作品”Nocturne”にも収められていた曲、”En la Orilla del Mundo”でした。

静寂の中から湧き出てる美しく敬虔な旋律。
2001年の作品”Nocturne”では、クインテットによる演奏でしたが、こちらは、HadenとRubalcaba二人だけの演奏。
二人の緊密な関係から生み出されるピュアでナチュラルな空気の流れ。
その底流には、人の心を和ます温かい心の風が流れている。

こうしたことを考えながら思い出したのは、かねがねHadenのサウンドに感じていたフォークソングのようなナチュラルで懐かしい空気がここにも流れていたということ。

そこで、これまで気にかけたことのなかったHadenの生い立ちについて調べてみると、音楽一家であった家族の元、幼いころからフォーク・カントリー・ミュージックに親しんで来た人だとのこと。

そして、晩年には、彼の子どもたちと共に、フォーク・カントリー作品を制作、聴いてみるとHadenのベースは、いつもの響きながらも不思議に調和して新鮮な感覚をもたらしてくれていた。

そうしたことで、Hadenというアーティストの、他のジャズ・ベーシストとは異なる唯一無二の存在であったそのわけを知ることになりました。



さて、この辺でもう1曲。
今度は、ピアニストのRubalcaba作曲の”Transparence”を聴いていただくことに致しましょう。



Rubalcabaの名が世界的に知られるようになったのは、Blue Noteレコードから1991年に発表された作品、”Discovery: Live at Montreux”であったのですが、この作品は当時日本でも大きな話題を呼び、私も初めて彼のプレイに接したのが、この作品。
その時は、彼について超絶技巧のピアニストと印象で、この演奏のような奥深い抒情的なプレイをする人ではないとずっと思い続けていたのですが、その後、Hadenの2001年の作品”Nocturne”で彼のピアノに聴き、それまでの印象とは裏腹の緻密かつ繊細な奥深いプレイにはずいぶん驚かされ、以来、その豊かな資質を再認識することになったのです。

そうした彼の資質を感じられる、この”Transparence”という曲、1993年の彼のピアノトリオ作品である”Suite 4 Y 20”にも収められているのですけど、”Nocturne”の流れをくむこのHadenとのデュオ作品では、さらに奥行きが増していて、なにか悟り得たような深淵な響きが感じらるあたり、彼にとってのHadenの影響の大きさを図り知ることが出来るものだと思いました。



さて、日に日に花の勢いが増して行くソメイヨシノ。
その花の命ははかなく短いも、人々に春の訪れの喜びをもたらし伝えてくれる。

そんな季節に聴いたHadenとRubalcabaのこのデュオ作品、心の中に静謐な温かさの感触を残してくれました。

何度も聴いたそのサウンドも、季節によってその聴こえ方も変ってくる、見え方も変えてくれる。
今回は、こうした、桜の季節の楽しみ方も、またいいものだと思いました。


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Track listing
1.En la Orilla del Mundo  (The Edge of the World) (Martín Rojas)
2.My Love and I  (David Raksin, Johnny Mercer)
3.When Will the Blues Leave  (Ornette Coleman)
4.Sandino  (Charlie Haden)
5.Solamente Una Vez (You Belong to My Heart) (Agustín Lara)
6.Transparence  (Gonzalo Rubalcaba)

Personnel
Charlie Haden – bass
Gonzalo Rubalcaba – piano

Recorded
March 16–19, 2005
Blue Note Jazz Club, Tokyo




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raccoon

柔らかな桃色の桜、まだ、今年は真近で見てないので、鑑賞させて頂きました。Hadenの「En la Orilla del Mundo」、桜を見ながら聴くと、更に癒されます。
by raccoon (2022-03-31 23:10) 

mk1sp

Charlie Hadenの独特な間、流れ、雰囲気、良いですね♪
桜の花、きれいですね~。
by mk1sp (2022-04-02 17:01) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

raccoonさん

ソメイヨシノは花の命が短いこともあって、今年は運動不足解消も兼ねてあちらこちらを歩き回り、例年以上にお花見を楽しんでいます。

今は、ソメイヨシノも散り始めたところ。
その締め括りとして今度は、「En la Orilla del Mundo」を聴きながら、その様を見てみようかと考えています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-04-03 17:34) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

Hadenの独特な間、それが彼のプレイの大きな魅力ですよね。
それに気付いていただこと嬉しく思います。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-04-03 17:38) 

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