友とのふれあい、その大切さを教えてくれる名曲;You’ve Got A Friend(君の友だち) [名曲名演の散歩道]

山梨県への出張が度重なってしまった今年の9月。
仕事とはいえ、たまには都会の雑踏を離れ秋の気配が漂いだした空気に身を染めるのもいいものだと考え、そそくさと出掛けてみたのですが..........。

出掛ける度に発生襲来する台風の影響で、なかなか秋らしい青空には恵まれず、なんとか南アルプスの山々や八ヶ岳の姿は拝めたものの富士山は全く拝むことは出来ず、当初思い描いていた目論見は大外れ。

それでも、曇天の間に間に僅かながらも秋の気配が漂いだした山の空気に浸ることが出来たし、仕事の方も無事終えられたことから、こんなこともあるよなと今は一先ずほっとしているところ。

そうしたところで、今回は、この旅の道すがら車中で流し聴いていた曲の中で、久々に耳にして旅の想いでの一駒となったあの名曲のお話。

誰もがどこかで一度は耳にした曲ではないかと思うのですが、まずはそのオリジナル・ヴァージョンから聴いていただくことに致しましょう。



曲は、米国のシンガーソングライターであるCarole Kingのペンによる”You've Got a Friend(邦題;君の友だち)”。
ここで聴いていただいた演奏は、1971年発表された彼女の不朽の名盤”Tapestry(邦題;つづれおり)”収められていたものなのです。

Carole King Tapestry.jpg


1960年代後半には、米国では当時人気を博していた The Monkees 等に曲を提供するなどソングライターとして認められた存在だったCarole Kingですが、この作品は、日本での彼女の名を大きく知らしめることになったもので、この作品以後、五輪真弓、八神純子、久保田早紀等,ピアノの弾き語りスタイルの女性シンガーソングライター登場の起爆剤となったとも言える作品なのです。

ところが、この曲、ロック史に残る超名盤とも言えるに作品に収められていたにもかかわらず、この曲が多くの人に知られ、名曲としての道を作ったのは、Kingよるこのオリジナル演奏ではなかったのです。

というのも、この曲、当時、アルバムに収められたもののシングル・カットされなかったためで、それに代わりこの曲を多くの人に知らしめたのは、”Tapestry”の発表と同じく1971年にシングルカットされた同じく米国のシンガーソングライターJames Taylor のヴァージョンで、これにより、同年7月にビルボード・チャートの1位を獲得、さらに翌1972年のグラミー賞では、James Taylorが最優秀男性ポップボーカル賞、ソングライターのCarole Kingは最優秀楽曲賞を受賞するという、大きな評価を勝ち取っているのです。

Kingが作りTaylorによって世に認められたこの曲、この曲が同じ時期に二人のアーティストによってレコディングされ作曲者のオリジナルがシングル・カットされなかったその経緯、それは、私自身この曲を初めて聴いた時より感じていたことだったのですが、それは、”You’ve Got A Friend”いう曲はTaylor の作ったとある歌とこの”You've Got a Friend”が一対の存在だったということにその因あるようなのです。

と言われてもピンと来ないかもしれませんが、なにはともあれその訳を語る前に、まずはその対の元となったTaylor の作ったその名曲を聴いていただくことに致しましょう。



曲は、1970年発表のJames Taylorの作品”Sweet Baby James”収められていた”Fire and Rain”です。

James_Taylor_-_Sweet_Baby_James.jpg


さて、曲を聴いていただいたところで私がこの2曲が一対のものではないかと感じていたその訳とは。

実は今回、”You’ve Got A Friend"を取り上げるにあたり、長年抱いていた漠然としたその思いについて確証たるものはないかと調べてみたところ、見つけたのがこの曲の誕生に係るJames Taylorのこの証言。

Taylorによれば、”You’ve Got A Friend"という曲は、KingがTaylorの”Fire and Rain”の中で繰り返される "I've seen lonely times when I could not find a friend "(友達を見つけられない寂しい時期があった)という一節からインスピレーションを得、その返歌として書いたものだったというのです。

そして、さらにその歌詞を続け読んでみるとそこにあったのは、
But I always thought that I'd see you again(でも、いつもあなたにまた会えると思っていました)という一節。

それは、まさしくその後に続く再びの出会い、そこで友情を交わしふれあうことの喜びを知った二人の姿を歌った”You’ve Got A Friend"の登場を暗示する言葉。

とまあ、これで私の長年の漠然とした思いの謎も氷解。
それにしても古来日本の和歌の世界にあったような返歌の手法が、現代の洋楽の世界にもあったなんて!!

と思いながらも、まぎれもなくこの曲は、レコーディングやコンサートで共演を重ねていたKingとTaylorの親密なミュージシャン・シップが生んだ名曲だということ。

そして、この曲はKing の手になるものの、その誕生にはTaylorの影響もかなり大きく、そういう意味では、Taylorの”You’ve Got A Friend"もオリジナルと言っても過言ではないように思うのです。


さて、そうしたダブルのオリジナルを持つこの名曲、この後は、KingとTaylorが共演したTaylorヴァージョンの”You’ve Got A Friend”から、その他アーティストのカバー・ヴァージョンをご紹介して行くことにしたいと思います。





虚ろな表情で気怠く淡々とその内にある心情を歌っていたKingの”You've Got a Friend”とは、また違った飄々としたイメージの中にも何かうんちくありげな感を秘めたTaylorの歌唱。

Kingのオリジナル・レコーディングにも参加していた、スチール・アコースティク・ギターの名手としても知られるTaylorのギター・プレイが、この曲に深みのある静かな詩情をもたらしている。

このギター・プレイは、曲に完全に溶け込み、その曲のカラーの一部となって、後のカヴァー・ヴァージョンにも不可欠なものとして大きな影響を残しているように思うのです。

さて、ここまでこの曲が生まれた経緯に係る演奏を聴いて参りましたが、お次は、現代のフュージョン・フィールドのアーティストのサックスによるカヴァー・ヴァージョンをご紹介しようと思います。



Chick CoreaのElectric・Bandのメンバーとして活躍したサックス奏者のEric Marienthal 2005年の作品 "Got You Covered"に収められていた”You've Got a Friend”です。

eric marienthal got you covered.jpg


実は、この演奏は、今回の山梨行きの際聴いていた演奏で、この記事を思い立つ発端となったもの。

King、Taylorのどこか翳り感じた”You've Got a Friend”に対し、こちらは制作年代の新しさも手伝ってか、おおらかで明るさ満ちた清々しさを感じる”You've Got a Friend”という感じ。

おかげで、秋の気配が漂いだした山の空気を胸いっぱい楽しむことが出来ました。


さて、続いての”You've Got a Friend”は、現代を代表する伝統的ジャズ・ギターの第一人者である、Russell Maloneの演奏。
彼の 2001年の作品”Heartstrings”でギターソロよるこの曲の演奏を披露しているですけど、その音源を探していたところ見つけたのが、現代のトップ女性ジャズヴォーカリストの人であるDianne Reevesとのデュオによるこの演奏。

CD等では発表されていない私も初めて聴く演奏なのですが、この当代きって超名プレヤーとして名高い二人による”You've Got a Friend”となれば、決して悪かろうはずはない。

果たして、この名曲に一体どんな新風を持たらしてくれるのか!!?
大いなる期待いに湧き包まれてしまっています。

それでは皆様とご一緒に、その真偽、確かめてみることに致しましょう。



Dianneの表情を見つめながら、いつもになく真剣な表情で彼女の最良のパーフォマンスウィ引き出すべくギターを弾いているRussell Malone。
そして、そのギターの音の流れを汲みつつも、その上を自由に舞綴り歌うDianne。

この名手二人だからこその、緊張感満ちたこれぞジャズと言うべき”You've Got a Friend”。
自由な空気の中でアーティストの個性を発揮表現させうるジャズならではの演奏、実に圧巻でした。


ところで、いろいろこの曲のことを調べていたらヒットしたのが、驚いたことに、この曲を作曲をしたCarole Kingは、先日国葬が営まれた元総理大臣安倍晋三氏、お気に入りアーティストだったという話。

国葬に対する賛否、政治家としての残した多くの疑惑について様々な意見があるものの、しかし、こした話を聞くと、公の安倍晋三とはまた違った生の人間としての安倍晋三の素顔・真情が見えてくるような気がします。

国葬が始まる直前に知ったこの話、この記事を書き始めたところであったことから、盟友として艱難をともにした菅前総理の弔辞と相まって不思議な因縁を感じることなりました。


当初予期しなかったそうした思いに駆られながら、ここまで、Taylorに続いてジャズ系のカヴァーを2曲を聴いていただきましたが、この辺で締め括りとして、1971年、この曲をいち早くカヴァーし発表しヒットをしたソウル系の”You've Got a Friend”、かなり名高いカヴァーなので、やはり、はずすことは出来ないと、聴いていただくことにしたいと思います。

1973年の”Killing me softly with his song(やさしく歌って)”のヒットで知られるRoberta FlackとDonny Hathawayのデュエットで、”You've Got a Friend”で、この曲のまた違った味わい確かめてみてください。



ソウルフルな味わいの”You’ve Got A Friend”。
Hathawayのオーラを受けけてか、いつもに増してソウルフルなRoberta Flackの歌唱が耳に残ります。


以上、いろいろ聴いていただいた”You’ve Got A Friend”、アーティストの個性によってその表情は、変貌するものの、友とのふれあいの喜び、そのありがたさを歌うその言葉の意味は変わらない。

この曲は、人として生きる上での普遍的な姿を語り継ぐもののとして、これからも多くの人に歌い継がれて行く曲だと思いました。


曇り空に付きまとわれた今回の山梨行き。
その中でわずかに晴天に恵まれた朝、昇る太陽の光を受け輝く八ヶ岳の姿を思い浮かべながら、私もこの歌の心をもう一度考えてみることにしたいと思います。

DSC_7294-1m.jpg









nice!(16)  コメント(6) 
共通テーマ:PLAYLOG

nice! 16

コメント 6

mk1sp

こうして作曲の背景をおしえていただくと、やはり原曲が一番しっくりくる気がします。
駆けつけてくれる友が欲しい、という願いが感じられます♪
自分にそんな友がいるか分かりませんが、そうしたい友は何人かいるので、それで良しとします(*^-^*)
by mk1sp (2022-09-30 16:58) 

yuzman1953

"Carole King Tapestry"は私のお気に入りのアルバムです。
”You've Got a Friend”の歌詞と曲をピックアップしただけで、これだけ奥深い世界があることに驚きました。
by yuzman1953 (2022-10-01 00:11) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

Carole KingとJames Taylor、曲を聴いただけで詩の意味まで伝えてしまう、凄いアーティストですね。

友達の大切さ、思い返してみると、私もこれまで、相手は気付いていないけど、その存在に助けられてきたなと思い返しています。

そういう意味で、この歌を聴くとそうした友への感謝の念を抱いてしまいます。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-10-01 19:51) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

yuzman1953 さん

”Tapestry"は、私も好きな作品の一つです。

この作品が出た頃は、シンガー・ソングライターが多く登場した時期で、今も時折耳にする曲が多く登場しています。

よろしければ、ここで取り上げたJames Taylorの他、Cat Stevens、Laura Nyro、Joni Mitchell、などの作品にも耳を傾けて下さい。



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-10-01 20:07) 

raccoon

私も、この曲大好きです。癒されます。私も以前、この曲について書いてます。簡単ですけど。

セリーヌ・ディオンなど歌姫がキャロルを囲んで唄っています。このカバーがお気に入りでした。
https://youtu.be/GUw8zQQ-Auw
by raccoon (2022-10-12 22:22) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

raccoonさん

歌姫たちが、それぞれの個性を出しながらの”You’ve Got A Friend”。

また違ったこの曲の魅力を引き出していますね。

Carole Kingも彼女らに刺激されてか、より一層声が良く出ているようで、新鮮な感じを受けました。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-10-19 19:04) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント