60年代ジャズの幕開けに登場の新星が到達した円熟のサウンド:Freddiie Hurbbart・ Outpost [音源発掘]

ここのところ、冷え込みの増した朝夕の空気に、冬到来の兆しが感じられる晩秋の候。

今年の秋は、関東を中心に相も変わらず、日々あちらこちらを飛び回っている私ですが、歩き回っていて感じるのは、ここ数年に比べ紅葉の訪れが、1.2週間早いなということ。

いずれにせよ、秋深し。


そうした空気の中で聴く音楽、前回に、「いつもにも増してその音が耳に入り響いてくる。
こうした空気の下で、今度はこれまで億度となく聴いて来た、著名アーティストの音に親しんで見よう。」とお話をしましたが、今回取り上げることにしたのは、その前言に従って、昨今良く聴いているある著名アーティストの作品から。

1960年代を代表するトランペット奏者としてその名を知られるFreddiie Hurbertの、この作品を取り上げることに致しました。

freddiie hubbart Outpost.jpg


それが、1981年制作の”Outpost”。

さて、ここで取り上げたFreddiie Hurbert、1950年代末期に登場するや、その若く溌剌としたプレイで、John Coltrane,Bill Evans,Eric Dolphy,Ornette Coleman,Herbie Hancockなど、その頃のジャズ界をけん引する多くのアーティストのレコーディング・セッションに招かれ活躍、1960年には早くもBlue Notㇾコードより初リーダー作品”Open Sesame”を発表、その後も続けて数多くのリーダー作を手掛けつつ、1964年には、Lee Morganに代わって名門Art Blakey率いる Jazz Messengersに加入、サックスのWayne Shoterと共に3管編成による60年代Messengersの黄金期を築くなど、あれよあれよという間にジャズ界に頂点に上りつめたアーティストなのです。

そして、その後70年代に入ると、フュージョンの波に乗りそのクリエーターの一人として人気トランペット奏者としてその地位を盤石なものとして行くことになるのです。

しかし、そうした成功の反面、私としては、特にスタジオ・アルバムの上で、若き日の攻撃的かつ溌剌とした輝きは希薄になってしまい、心地良いだけでのジャズらしいスリルに満ちた面白さに欠けるものばかりとなってしまったと感じ、常々残念なことだと思っていたのです。

そして今は、実際そうした私の見方が一般的であったのか、Hurbertの名盤と言うと60年代の作品が選ばれることが多いようなのです。..
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ところが、今回選んだ作品は、1981年のもの。

その訳は、フュージョン時代のスタジオ制作作品では気の抜けたプレイが多いにように感じてしまったHurbertなのですが、実はこの時期、彼が所属していたCTIレコードの所属アーティストが一同に会したCTI ALL STARSのライブ作品や、1976~79年に、Herbie Hancockが Newport Jazz Festivalのために、60年代Miles DavisクインテットのメンバーであったRon Carter、Tony Williams 、Wayne Shorter等と結成した、V.S.O.P. Quintet に参加での演奏は、若き日の攻撃的一面を見せながらもまろやかな情感をも醸し出す巾広い表現力を備えたものであったことから、V.S.O.P. 以降の彼のリーダー作品の中には、期待に違わぬものがあるはずと確信し目に留まったのがこの作品だったいうこと。

そしてさらに、レコーディング・メンバーを見ると、ピアノにはStan Getzの晩年を共にした名手Kenny Barron、ベースにはMcCoy Tynerの下で頭角を現したBuster Williamsの名に加え、ドラムには70年代Miles Davisのリズムを支えたAl Fosterと、百選練磨の面々の名が見える。

そのうえ、ホーンはHurbertのトランペットのみのワン・ホーン作品とあって、大いに食指が動き聴いてみたところ、思い描いた通りのものであったからなのです。


それでは、そうして見つけ聴いた”Outpost”。
ここで1曲、聴いていただくことに致しましょう。

曲は、多くのジャズ・アーティストによって演奏されて来た有名なスタンダード・ナンバーの”You Don't Know What Love Is”です。

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すれ違いあう愛への嘆きが聞こえてくるようなHurbertのトランペット。
そのサウンドが、映像の一コマが目に浮かび胸に響いてくるような演奏です。

先に、若き日のHurbertは、60年代初頭のジャズ界をけん引する多くのアーティストのレコーディング・セッションに招かれ活躍したとお話しましたが、これが実に凄いことで、そのジャンルを見てみると、バップ、モードに基づくジャズを展開した新主流のジャズは元より、アヴァンギャルトからフリーまでと、当時出現した新たなジャズのスタイルに挑戦し、驚いたことにそのすべてを破綻なく良質なレベルでこなしていたのです。

そのこと、昔は、それは単なる器用さのなせる業と思われ、その器用さが70年代に彼をして人気狙いのフィールドに向かわせ、気の抜けた音楽ばかりを増産することになったのだ、等の酷評に繋がっていったものでしたが、考えてみれば、それは枠に縛られず自由にその音楽のエッセンスを自由に自分の物に出来る豊かな才能の持ち主であることの証。

そうしたことを踏まえてこの作品を聴くと、流麗なソロの中にも、一瞬、若き日に経験した異んジャンルのエッセンスが巧く味付けされ顔を覗かしていたりして。

Freddiie Hurbertならでの、変化に富んだ巧みなソロの極意、その源を求め聴くのまた一興ではと思います。

そして、ここでまた1曲。

今度は、Hurbertの、ソフトティケートなアプローチが快い演奏を聴いてみることに致しましょう。
曲は、この作品にベーシストと参加しているBuster Williams作曲の”Dual Force”です。



今回、 この記事を書きながら、彼のデビュー・リーダ―作品”Open Sesame”から始まり、”Breaking Point”、”Red Clay”、”The Rose Tatoo(邦題;薔薇の刺青)”などの歴代の作品を続けて聴いていたのですけど、そこから気付かされたのは、各作品それぞれにおけるコンセンプトの多彩さ。

これぞ、若き日の多彩な経験の賜物かと思われる、豊かな音楽性。
さらに、作品を時代順に聴き進んでいくと、そのプレイは聴く人の心情に溶け込むように組立洗練されてたものとなって行く。

これまで、巧さは認めていたものの、今一歩好感が持てなっかったHurbertですが、今回は、絶えず練習に励んでいたという彼の逸話と合わせ、聴き手に常に最良のサウンドを届けようとしていた、ミュージシャン魂の持主であったことを教えられることになりました。



Track listing
1.Santa Anna Winds(Hubbard)
2.You Don't Know What Love Is (DePaul, Raye)
3.The Outpost Blues(Hubbard)
4.Dual Force (Williams)
5.Loss (Dolphy)

Personnel
Freddie Hubbard: trumpet
Kenny Barron: piano
Buster Williams: bass
Al Foster: drums

Recorded
March 16 & 17, 1981


今年は、9月以降、度々山梨方面へ出かけることになったのですが、どういう訳か、いつも天候には恵まれず、期待していた秋の山々の景色に浸ることは出来ないままでいたのですが。

10月末に韮崎の七里岩付近を訪れた時!
ようやく秋らしい天候に巡り逢え、

IMG_8531-km.jpg


紅葉が始まった樹木の先に、薄らと雪を被った富士山を眺めることが出来ました。

それにしても、やはり今年は紅葉の訪れはいつもよりだいぶ早い、
先日、出掛けた千葉市内でもこんな風景に出会うことが出来ました。

DSC_7476-1m.jpg


この調子では、間もなく冬。
仕事も忙しくなりそうで、憂鬱なことに外で過ごす時間も増えそうな按配。
コロナ、インフルエンザの流行が懸念される中、くれぐれも健康には気を付けて過ごさなければと思っています。







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