2022年 今年出逢い、よく聴いていたJazz作品:片倉真由子・plays Standards [音源発掘]

12月に入った途端の本格的寒さ。

それにしても今年は、日々の寒暖差が大きく、日によって着るものを選び返すに大忙し。

ともあれ、日々目まぐるし変わる気候の変化について行くのは至難の業。
ロートルとなった身にはちょっとしたことでも体の調子に影響するしということで、日々万全の備えで過ごしているのですが、今回は............。

さて、前回のロック編では、今年出逢ったレジェントたちの2022年の新作を取り上げましたが、今回は今年一年に出逢い、よく聴いていたジャズの作品より、

今年、ジャズ作品は、ここのところ疎遠となっていたレジェンドや近年頭角を現して来たアーティストの作品を中心に聴いて来たのですけど、その中で、これまで今やレジェント的存在となっているWoody Shaw、Freddie Hubertの作品を紹介して来ました。

そこで、今回取り上げるのは、近年頭角を現して来たアーティストの作品から、日本の女流ピアニストのこの作品をご紹介することにいたしました。

片倉真由子 plays standards.jpg


片倉真由子、2020年制作の”plays Standards”。

その彼女、昨年他界したサックス奏者の土岐英史のカルテットの一員として、晩年の土岐を支えて来た、土岐の秘蔵子とも言うべき感のピアニスト。

一昨年、70年代から80年代に活躍したこのサックス奏者の演奏を聴きたくなって、ここ2,3年に発表された晩年の土岐の作品を聴いてみたところ、土岐のサックスにしっかりとフィットして潤いをもたらしながら、彼女ならではのピアノ表現で演奏全体に輝きもたらしていた姿に触れたのが、私の彼女との出逢いの始まり。

そして、そこで聴いた、サポート・メンバーとして参加しリーダーを盛り立てつつも、聴く者の心に残るサウンドを発し輝きを放っていた彼女のピアノにすっかり魅了され、今年一年は彼女のリーダー作品にすっかり傾倒することになってしまっていたのです。


そうして聴き選んだ片倉真由子のこの作品、本作は、John Coltraneの楽曲を収めた作品”plays Coltrane”と2作同時発表されたもの。

精神性の強いColtraneとナンバーと、片や多くの人に親しまれているリラックス感あるジャズのスタンダード・ナンバーを収録した”plays Standards”。
この両者、音楽的性格がかなり異なることから、その演奏集を同時発表するということはかなり冒険だったように思えるのですが、聴いて見ると確かに作品それぞれに異なるアプローチで迫りながらも、共に破綻なく彼女のサウンドとしての仕上がりとなっていて、その豊かな表現力にはただ感服の一言。

本来なら、この兄弟作品は両方とも取り上げるべきなのかもしれませんが、やはり親しみやすく良く知られたジャズのスタンダード・ナンバーで、彼女のピアノ魅力を心行くまで味わっていただきたい。

ということで、今回選んだ”plays Standards”。

この辺で1曲聴いていただくことに致しましょう。
曲は、Bobby Timmons作曲のArt Blakey & The Jazz Messengers のよく知られたあの名曲です。





曲は、ご存じ”Moanin'”!

オリジナルのArt Blakey & The Jazz Messengersの泥臭ささの中にソウルを感じさせるBobby Timmonsのピアノに対し、片倉真由子の演奏はソウルではあるけれど洗練された爽やかな風を感じさせる”Moanin'”。

この”Moanin'”と同様、この作品に収められたすべての曲に彼女ならではの音が詰まっていて、そこに聴き慣れたスタンダード・ナンバーであるもののまた異なった新鮮さを感じさせられます。

そうし類い稀な才能を感じさせる片倉真由子。..
こうなってくると、その経歴も気掛かりとなってくる。
そこで、調べたところ現れたのは、

洗足学園短大ジャズ科出身、

同学卒業後、2002年バークリー音楽大学を経て、2005年9月、ジュリアード音楽院入学、憧れのピアニスト、Kenny Barron に師事。
2006年、Mary Lou Williams Women In Jazz Piano Competitionで優勝。
続く2006年9月  Thelonious Monk International Jazz Piano Competitionのセミファイナリストに選ばれる。
2009年9月初めてのリーダーアルバム”Faith”を発表。

と、その卓越した才能の源泉を裏付けるほどの輝かしいもの。

特に彼女が師事した憧れのピアニストのKenny Barron は、現在活動するジャズ・ピアニストの中で、私が最も好きなピアニストの一人で、自分が彼女のプレイを一聴しただけで気に入ってしまったのも、至極当然のことだったのだなあと思うことになった次第。


そこで、その才能溢れる片倉真由子のプレイ、再びここでもう1曲聴いてみることにしたいと思います。
曲は、多くのジャズ・アーティストが取り上げ名演を残している名曲!

”Body and Soul”です。



これまで、私の聴いた”Body and Soul”中で、最も美しいと感じた”Body and Soul”。

この曲、特に私はFreddie Hubertの演奏が好きなこともあってか、片倉真由子のこの演奏を聴いていると彼女のトリオに、トランぺットを加えた演奏などがあればまたいいのになあなどと思えて来て!

燻銀の持ち味を感じるトランぺッターであるEddie Hendersonとのコラボなど良いのでないかと、勝手に夢を見てしまいました。

今後は、世界にも通じる日本を代表するピアニストの一人として、ヴァイオリンの寺井尚子やピアニストの上原ひろみ等と同様、彼女には海外の著名アーティストとの共演などを通じて世界の檜舞台へと、さらに大きく羽ばたいてもらいたいものだと思います。

そして、Lastに1曲。
今度は、”Moanin'”が大ヒットした時期、Art Blakey & The Jazz Messengersに在籍していたサックス奏者であり作曲家のBenny Golsonのペンによる名曲"Whisper Not”をお聴きいただくことに致しましょう。



60年以上前に作曲された曲なのに、なんとも現代的香りが漂う"Whisper Not”。

まるでフロントにホーン・セクションが加わり、 「ゴルソン・ハーモニー」と呼ばれる あのGolsonの独特なアレンジ・ハーモニーを奏でいるかのような錯覚を覚えてしまうテーマ演奏、しかし、その先のピアノのソロ・パートに突入すると聴こえて来たのはこの曲から想像することの出来ない新鮮なソロの世界。
原曲の味わいを失うこともなく、さりげなく自己の表現を忍び込ませた彼女ならではの鮮やかな音世界がありました。


さて、なにかと慌ただしいこの時期に、心に新鮮な潤いと癒しを与えてくれた片倉真由子のこれら音世界。

彼女の"plays Standards"はじめ今年私が聴いた諸作品は、この2022年における最良の出逢いであったこと、あらためて実感させられることになりました。



それにしても12月[exclamation]

8日の夜、片倉真由子のこの作品を聴きながら眺めた、今年最後の満月の美しさまた格別でした。

_DSC7521 (1)m.jpg



Track listing
1 Whisper Not
2 Autumn Leaves 枯葉
3 Body and Soul
4 Softly as in a morning sunrise 朝日の如くさわやかに
5 Over the Rainbow 虹の彼方に
6 Moanin'
7 Alone Together
8 Summer Time
9 Sandu 
 
Personnel
片倉 真由子 (piano)
粟谷 巧 (bass)
田中 徳崇 (drums)

Recorded
2020年2月12日〜14日
福岡県うきは(浮羽)市、うきは市文化会館(白壁ホール)録音




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U3

私のジャズ遍歴は、もはやクラシックと言っても良いほどポピュラーな古いジャズで終わっています。
ピアノはハービー・ハンコックかセロニアス・モンク。
上原ひろみすらまともに聞いたことはありません。
サックスは一番新しいプレーヤーでも、グローバー・ワシントン・Jr止まりです。
by U3 (2022-12-19 09:54) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

U3さん

私も、ベースはクラシックなジャズなのですけどね。
ただ、往年のビッグネームの比較的新しい作品を聴いてみると、それと共演している若手アーティスト、そのプレイに光るものを感じたりして、そこでそのアーティストの作品を探し聴いているうちに、枠が広がってしまいました。

それにしてもコメントにあったセロニアス・モンク、その名を見て急にあの超個性的なプレイを聴きたくなってしまいました。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-12-24 15:13) 

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