思い出のロック・不朽の名作品 Yes:Fragile「こわれもの」 [音源発掘]

ひっちゃかめっちゃかの忙しさが続いた今年の3月。

昨年11月にはこうなることは見えていたのが、年明けにさらに新たな仕事が飛び込み加わって、それをこなすのに日々悪戦苦闘の連続となってしまったのだが。

おかげで、普段は若手に仕事を任せて、その後ろから指導するに徹してる私の方にもその余波がやって来て、自身もあちらこちらへと飛び回なければならなくなってしまったのです。

とは言っても、ものは考えよう。
陽気も良くなって来たことで桜も咲き始め、こうした時期に外に出て花を見ながらそうした空気に身を浸すことが出来るのはこれまたラッキーと、その忙しさも楽しさに変えて過ごしていた次第。


そうした中であったけど今回は、前々回、若き日に聴いたジャズ作品を聴いてそれまでとはまた違った見え方を感じたことから、今度はそれをロック作品でも試してみようと、選び聴いてみたのがこの作品。

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プログレシッブ・ロック黎明期をけん引し、後の時代に多大なる影響を及ぼした英国のプログレシッブ・ロック・バンドのYesが1971年に発表した、彼らの第4作目の作品”Fragile(邦題:こわれもの)”です。

この作品、ギターにSteve Howeが加入しプログレ色を明瞭とした前作、”The Yes Album(邦題:イエス・サード・アルバム)”の続く作品で、さらにそのコンセプトを推し進めるべくキーボードがTony KayeからRick Wakemanに替えた後の、Yesの黄金期を築いた言われるメンバーによって制作された最初の作品。

日本では、それまで注目されることなかったYesだったのですが、この作品によってマスコミも大きく紹介、それにより、その評価を獲得、その存在を定着することになった、ロックの歴史において忘れることの出来ない作品なのです。

私も、当時ラジオ番組でこの作品に初めて耳にしたのですけど、その時は、線の細いヴォーカルとブルース・フィーリング皆無のギター・サウンドが、私の好みと合わず興味を惹かれることなかったものの、DJのすこぶる熱い紹介トークが深く耳に残り、数年してから、たまたま店頭で見かけた輸入盤を思わずゲット。

腰を据えて聴いてみると、澄んだヴォーカルの美しさと、息をつく間を与えないほどのスリリングかつ複雑なインストメンタル・パートに圧倒され、すっかりそのサウンドにのめり込んでしまうことになってしまったものなのです。


そこで、私に大きな衝撃を与えてくれたその楽曲。
今や、Yesのみならずロック史にその名を刻む名曲なってしまった、”Roundabout”をお聴きいただくことに致しましょう。







この曲、当初聴いた時には、間断を置かずに各プレヤーが発する調和を崩すことなく整然とした音の交差の連続に圧倒されるばかりでしたが、何度も聴いているうちに実感したのが、その核を担うChris Squireのベースの重要性。

太く粘りのあるその音色は、サウンド全体に重厚さとオーケストラ的臨場感をもたらしている。
そして、この作品からメンバーとなったRick Wakemanが、サウンド全体にに豊かな色彩を与え、さらにスケールを大きなものへと昇華させているそんな様子が聴こえてきます。

この辺り、Yesが初めて高い評価を獲得した前作、”The Yes Album(邦題:イエス・サード・アルバム)”と聴き比べてみると、本作では、Squire、Howeのプレイもスピード感が増し生き生きとしたものになっていて、その表現力は格段に向上していることがさら見えて来ます。

そうしたことから、久々に耳にしたこの作品、まさしくYes黄金期の始まり告げたものであり、現代に至るプログレの原点でもある作品であることを、あらためて確信するに至りました。


さて、この作品には、メンバーの合作曲3曲の他、各メンバー一人々々の作曲の小曲が6曲収められていますが、この小曲もそれぞれメンバー各自の個性が出ていて、短いながらなかなか興味深いものがあるのです。

そこで次にお聴きいただくのは、その中でも最も私の好きな楽曲、Steve Howe作曲の”Mood for a Day”をお聴きいただこうと思います。



クラシカルな響きを持つHoweの、ギター曲。

実は、ロックにおいてブルース・フィーリングのあるギター・プレイが好みだった私に、Howeのクラシカルなフィーリングに裏打ちされたエレクトリック・ギターの味わい深さを教えてくれたのがこの曲。

当初、Howeのギターが好み合わず聴かなかったYesでしたが、この曲でその評価は一変、今では私とYesとの出会いの記憶を鮮明した思い出の1曲となってしまいました。

そして、この曲を切っ掛けに各メンバーのプレイに注視、耳を傾けるようになったのですけど、そこで、まずそれまでイメージを塗り替えらされたのはヴォーカルのJon Anderson 。

それまで彼のヴォーカルには、線の細い弱々しいとの印象を持っていたのですけど、とある日ライブにおいてアカペラで歌うAndersonのヴォーカルを聴いて、その印象を払拭さししめらされることになったのです。
そこで聴いたのは、豊かな声量で響き渡る繊細な優しさ感じさせる美しい歌声。

そのあまりの素晴らしさに、Andersonは、ロック界における唯一無二のヴォーカリストであることを強く思い知らされことになったことが思い出されます。

またドラムのBill Brufordについても、後に、彼がYes後に移籍したKing Crimsonでのソロを聴き、そこにで出会ったモダンの裏に隠された土俗的雰囲気を持つ太鼓の音に注目。
ドラム一本で音楽的ドラマを生み出して行く 飽くことのないそのプレイにすっかり惹きつけられてしまったのですが、あらためてそのことを思い出しながらこの作品での彼のプレイを聴いてみたところ、至る所に Crimsonで聴いたあのプレイの萌芽に出会い、思わずニンマリ。

聴けば聴くほど各メンバーの豊かな音楽性とそれを可能にする凄まじいテクニックの凄みが見えて来る。
そうした意味で、この小作品もなかなか侮れないものがあると思います。


そうしたYesのこの名作、ここで今回の締めとして、この作品の発表された頃のライブ映像で聴いて頂くことに致しましょう。
曲は、本アルバムの最後飾ている”Heart of the Sunrise(邦題; 燃える朝やけ)”です。



緻密かつ複雑なこの曲を、終始乱れずに再現しているこのライブ映像、半世紀前に高い技量でここまでの緊張感を生み出した得たYesというバンドの存在に、新たな驚きを感じてしまいます。

この作品以後、メンバーの分裂・糾合を繰り返しつ、そのスタイルも大きく揺れ動き変化しながらも、現在も、黄金期メンバーとしてただ一人残ったSteve Howe を軸に中心とした若手メンバーでバンドを存続、活動を続けているというこのYes。

その現在のYesも聴いてみると、その音楽スタイルは、黄金期と言われたこの作品のエッセンスを多分に踏襲したものであることに気付かされます。

しかしながら、そこには古さはなく、そのサウンドは現代のプログレは元よりプログレシッブ・メタル等ロック・シーン全体にに相響くものがあり、そのことからこの作品は、プログレおよびプログレシッブ・メタルロックの原点であることを再確認することになりました。


今回は、忙しい最中に聴いたこの作品、そこから現代に通じるそのエネルギーを得て何とか無事乗り切ることが出来ました。

そのうえ、今年は異常に早かったソメイヨシノの開花。

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おかげで、行く先々でその花の饗宴に囲まれることになって、これも”Fragile(邦題:こわれもの)”のパワーのおかげか?
この時期に何故かこの作品を聴きたくなてっしまったことに、なにか巡り合わせのようなものがあるのを感じてしまいました。

次回は、この”Fragile”が連れて行ってくれた、これまで忘れていた新たな場所での桜の風情、また、ご紹介出来ればと思っています。



Track listing
1.Roundabout  -Jon Anderson, Steve Howe-
2.Cans and Brahms (instrumental) ブラームス交響曲第4番ホ短調第3楽章 -Johannes Brahms, Arranged by Rick Wakeman-
3.We Have Heaven -Jon Anderson-
4.South Side of the Sky -Jon Anderson, Chris Squire-
5.Five per Cent for Nothing (instrumental) -Bill Bruford-
6.Long Distance Runaround -Jon Anderson-
7.The Fish (Schindleria Praematurus) -Chris Squire-
8.Mood for a Day (instrumental) -Steve Howe-
9.Heart of the Sunrise 燃える朝やけ -Jon Anderson, Chris Squire Bill Bruford-

Personnel
Jon Anderson – lead and backing vocals
Steve Howe – electric and acoustic guitars, backing vocals
Chris Squire – bass guitars, backing vocals, additional electric guitar
Rick Wakeman – Hammond organ, grand piano, RMI 368 Electra-Piano and Harpsichord, Mellotron, Minimoog synthesiser
Bill Bruford – drums, percussion

Roger Dean – artwork, photography

Recorded
11 August–5 September 1971






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きたろう

遅くなりました。
イヌの骨第2弾アップしましたm(__)m
by きたろう (2023-04-02 11:50) 

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