春風を誘う魅惑のギター・サウンド [音源発掘]

この間、桜が咲き散ったばかりと思っていたら、早いもので4月も、もう終わり。

夏日となる日もあった、いささか初夏の面持を感じる今年の4月でしたけど、暖かく穏やかな空気に触れているうちに無性に聴きたくなって、ここところ聴いていたのが、軽やかな音の響きを心地よいジャズ・ギターのサウンド。

私の好みのジャズのギターリストと言うと、本来はWes MontgomeryやKenny Burrell,Jim Hallなのですけど、今回は、ちょっと毛色を変えて、これまで敬遠していたギタリストの作品を聴いてみようと選び聴き始めたのがこの作品。

george benson giblet gravy.jpg


今やエンターテインメントして活躍するアメリカのギタリストでヴォーカリストのGeorge Benson による1968年の作品”Giblet Gravy”です。


Bensonと言えば、1976年発表の作品”Breezin”が最も有名な作品なのですが、あえて冒頭にこの初期の作品を選んだのは、Bensonの伝統的なジャズ・ギター・プレイを聴きたかったからで、”Breezin”でヴォーカルを披露してからの彼のスタイルは、ポップ化しフュージョンの色彩が濃くなってしまっていたため、選定外としたのがその理由。

そうして選んだ彼の伝統的ギター・プレイが聴けるこの作品、全体的ソウル・ジャズの色合いが濃いものの、その根底に、私の好きなWes MontgomeryやKenny のBurrell,Jim Hallなどの伝統的なジャズ・ギターのスタイルのBensonが聴け、なんとも言い難い味わいを感じるもの。

特に、ニュ-ヨークの溜息と言われるHelen Merrill の1955年の歌唱で知られる”What's New”の演奏は、Bensonのジャズ・ギタリストとしての魅力を十二分に味わうことが出来、気分爽快。

そこで、まずはその”What's New”、この曲から聴き始めることに致しましょう。








そもそも、私がBenson のギターに注目したのは、この”Giblet Gravy”制作前に彼がMilesのクインテットに参加し録音した、Miles Davisの1968年の作品”Miles in the Sky”に収められていた楽曲"Paraphernalia"でのWes Montgomeryを彷彿とさせるプレイを聴いたことが始まりで、そこでのBensonのプレイと同様の空気が漂うこの演奏は、我が意を得たりの感があるもの。

しかし、この作品の後、Bensonは、敏腕プロデュ-サーCreed Taylorが設立したCTIレコードに移籍、ジャズの大衆化を追求しようとしていたTaylorの意向で、そのスタイルを次第にポピュラー・フュージョン化して行くことになるのです。

そのため、当時、大衆受けを狙ったCTIの路線に懐疑的であった私は、ここでBensonへの興味を失い、その後は、ほとんど彼の作品を積極的には聴かなくなってしまっていたのですが、今回、久々にBensonを聴き直してみて、CTIの作品の中にもなかなかいい演奏があることを再発見。

特に、ジャズの名曲を扱った演奏には、原曲の良さに親しみやすさ付加したアプローチがあって、これが実に面白い。

ということで、今度は1974制作の作品”Bad Benson”から

george benson bad benson.jpg


Paul Desmondが書いたDave Brubeckの演奏でヒットしたジャズの名曲”Take Five”を聴いて頂くことに致しましょう。



1976年のスイス、モントルー・ジャズ・フェスティバルでの我らが渡辺貞夫との共演ライブ映像でした。
その貞夫さんを迎えて、いつもにも増して熱いBensonのギター・プレイ。

レコードで見せる、安らぎのフュージョンの仮面をかなぐり捨てて、あらん限りのテクニックを駆使し聴き手を圧倒してしまう迫力のプレイ。

あらためて、Bensonの凄味を思い知らしめられた演奏でした。


さて、迫真のサウンドを聴いたところで思い出したのが、Bensonの弾くギターのメロディとユニゾンで歌われるスキャット・ヴォーカル。
実は、Bensonと疎遠となってしまった私ですが、どういう訳か、フュージョン化以後ではあるも彼のスキャット・ヴォーカルだけは好きで、以前より、これまで聴いて来た他のア-ティストと比べ、その中でもテクニック・構成力共に最高のものとの思っている次第。

そこで、私が、彼のスキャット・ヴォーカルを好きになる切っ掛けとなった、1979年のアメリカ映画”All That Jazz”のオープニングに使われていた曲を、ここで聴いて頂こうかと思います。

曲は、1978年発表の作品”Weekend In LA(邦題:メローなロスの週末)”より

george benson weekend in la.jpg


”On Broadway ”を、今度も1976年のライブ映像でお楽しみいただくことに致しましょう。



乱れることなくギターとスキャットのユニゾンで繰り広げられるアドリブの、極上の緊張感。
映像を見ながら聴くと、緊張感は倍加、なお一層の凄味を感じてしまいます。

数多くのギター・プレヤーを聴いて来たけれど、この至芸はBensonならではの唯一無二のものだという思いをこれまでに増して深めることなりました。


さて、こうして聴いて来たGeorge Benson、今回は、花々の狂い咲きを誘った奇妙な春の空気に乗せられて、何か良い拾い物をした気分。
これまで毛嫌して来たBensonサウンド、続けて今少し、そのサウンドの真髄、探ってみたい気分になりました。




それにしても、今年の4月のちょと異常ともいえる季節の空気、4月の半ばに家の近所を歩いてみると、5月初めが見頃のはずの................

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あやめがの花が、既に見頃の様子。

そして、一昨日、仕事で横浜に行ってみると、いつもは、この時期、見事なチューリップ畑が見頃のはずの横浜公園のチューリップも、皆,既に花を落としてしまっていて!!

この調子では、5月は夏本番となってしまうかの様相。
最早、日本は亜熱帯に入ってしまったのか。

既に猛暑が予想されている今年の夏、どんなことになるのかと恐ろしさを感じています。



Giblet Gravy
Track listing
1.Along Comes Mary(Tandyn Almer)-
2.Sunny(Bobby Hebb)
3.What's New?(Bob Haggart, Johnny Burke)
4.Giblet Gravy(George Benson)
5.Walk On By(Burt Bacharach, Hal David)
6.Thunder Walk(Harold Ousley)
7.Sack O' Woe(Cannonball Adderley)
8.Groovin' Eddie Brigati, Felix)

Personnel
George Benson – guitar
Albertine Robison, Eileen Gilbert, Lois Winter – vocals
Eric Gale – guitar, tracks 2, 4, 5, 7
Carl Lynch – guitar, track 1
Herbie Hancock – piano, tracks 3, 6, 9–12
Ron Carter – bass, tracks 1, 3, 6–12
Bob Cranshaw – bass, tracks 2, 4–5
Billy Cobham – drums
Johnny Pacheco – congas, tambourine
Pepper Adams – tenor saxophone, tracks 1–2, 4–5, 7–8
Ernie Royal – trumpet, tracks 1–2, 4–5, 7–8
Snooky Young – trumpet, tracks 1–2, 4–5, 7–8
Jimmy Owens – trumpet, flugelhorn, tracks 1–2, 4–5, 7–8
Alan Raph – bass trombone. tracks 1–2, 4–5, 7–8
Tom McIntosh – arranger, conductor, tracks 1–2, 4–5, 7–8

Recorded
February 1968 A&R Recording Studios and Capitol Recording Studios, New York City

Bad Benson
Track listing
1.Take Five (Paul Desmond)
2.Summer Wishes, Winter Dreams (Alan Bergman, Marilyn Bergman, Johnny Mandel)
3.My Latin Brother (George Benson)
4.No Sooner Said Than Done (Phil Upchurch)
5.Full Compass (Upchurch)
6.The Changing World (Benson, Art Gore)

Personnel
George Benson – guitar
Phil Upchurch – guitar, percussion (3), electric bass (5)
Kenny Barron – piano
Ron Carter – bass
Steve Gadd – drums
Garnett Brown, Warren Covington, Wayne Andre – trombone
Paul Faulise – bass trombone
Alan Rubin, Joe Shepley, John Frosk – trumpet
Phil Bodner – English horn, clarinet, alto flute
George Marge – English horn, flute, piccolo flute
Ray Beckenstein - flute
Albert Regni - flute, clarinet
Brooks Tillotson, Jim Buffington – French horn
Margaret Ross – harp
Alan Shulman, Charles McCracken, Frank Levy, Jesse Levy, Paul Tobias, Seymour Barab – cello
Don Sebesky – arrangements and conductor

Recorded
April 22 - June 20, 1974
Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey


Weekend in L.A.
Track listing
1.Weekend in L.A メローなロスの週末 (George Benson)
2.On Broadway (Jerry Leiber, Barry Mann, Mike Stoller, Cynthia Weil)
3.Down Here on the Ground (Gale Garnett, Lalo Schifrin)
4.California P.M. (Benson)
5.The Greatest Love of All (Linda Creed, Michael Masser)
6.It's All in the Game (Charles G. Dawes, Carl Sigman)
7.Windsong (Neil Larsen)
8.Lady Blue (Leon Russell)
9.We All Remember Wes (Stevie Wonder)
10.We as Love (Ronnie Foster)

Personnel
George Benson – lead guitar, vocals
Phil Upchurch – rhythm guitar
Jorge Dalto – acoustic piano, keyboards
Ronnie Foster – synthesizers
Stanley Banks – bass
Harvey Mason – drums
Ralph MacDonald – percussion

Recorded
September 30-October 2, 1977
The Roxy Theatre, West Hollywood, California




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響

今年は桜も何もかも咲くの
早いですよね。
by (2023-05-07 11:34) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

響さん
すべての花の開花が早くて、この連休は既に初夏と言う感じでしたね。

こうした季節、バイクの乗ってのツーリングには最適。

以前は、バイクを愛好していた身、またその杵柄の疼きが、バイクへの思いに掻き立てられています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-05-07 21:12) 

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