ジャズとロックの巨頭が集った夢のLive・Live in San Francisco 1988:Carlos Santana & Wayne Shorter Band [音源発掘]

ゴールデンウイークも終って、早1週間余り。

休みボケも解消、日常生活にもようやく体も馴染み再び日々忙しく過ごしていることと思いますが、今年のゴールデンウイークは、長かったコロナの猛威も収まりを見せたこともあり、どこに行ってもそれを待ち望んでいた人たちの賑わいで大盛況となっていた様子。

私の方は、皆が休みの時こそ稼ぎ時という因果な職業であることから、通常仕事の采配は若手に任せるも、老体であればこそ出馬しなければならない場面も多々あり、そのため、なんとか不連続4日間の休みは取れたもののあとは仕事。

それでも、まとめてではないけれど4日間の休みが取れたことはありがたいこと。
老骨への休養と運動を兼ね、音楽を聴きながら連休で人の出の減った街を散歩するしていたのです。

そうしたことから,
今回の作品は、その散策がてらに聴いていた作品から、

聴いていたのは、今年亡くなったJeff Beck、Wayne Shoter、 坂本龍一等の音楽。
ロック、ジャズ、クラシック・ジャンルのアーティストと、いささか支離滅裂な感のある聴き方のようにも思えるかもしれませんが、いずれも私が若き日より親しんで来た人たち。
私に、ジャンルの垣根を越えた音楽の奥深さを教えてくれた彼等、もう一度その偉業の跡を振り返ってみようと、その残された作品を聴くことにしていたのです。

そうした彼らの作品の中から今回選んだのは、その逝去を知り多くの著名人の追悼のコメントに接したことが切っ掛けで探し見つけたこの作品。

Live in San Francisco 1988:Carlos Santana & Wayne Shorter Band.jpg


1988年、Carlos Santana と Wayne Shorter 率いる臨時編成バンドよる”Live in San Francisco 1988”です。

1988年夏の間の限り、ラテン・ロックのパイオニアであるCarlos Santanaとジャズ界の大御所サックス奏者でクリエーターのWayne Shorterがアメリカとヨーロッパのライヴのみで活動を展開したこのバンド。

このライブ作品は、アメリカのTVネット・ワークPBSのスペシャル番組として放送された、同年6月のサンフランシスコ公演の様子を収めたもの。


その作品、私がこれを見つける切っ掛けとなったのは、たまたま見たShorterと長き渡り親交があった渡辺貞夫さんの追悼コメント。
そこで、貞夫さんが語っていたのは、Shorterとはよく酒を飲み交わした仲であり、それが縁となって二人ともSantanaとライブ共演することになってしまったのだとのこと。

そう言われてみれば、確かに渡辺貞夫さん、確かに1991年のSantanaのバンド来日の際、ライブに客演しSantanaの名曲”Europa(哀愁のヨーロッパ)”等を演奏していたのを、私はTVで放送で見て知っていたのですが、

その映像がこちら


ShorterがSantanaのステージに上がり共演していたことは全く知らず、古くからのSantanaファンである私としては、その音源があればなんとしても聴いてみたいと、探し見つけ出したのがこの作品だったのです。

そこで、ShorterとSantanaの夢のライブ、
まずはご覧にただくことに致しましょう。

本作品からの音源ではありませんが、同じ年の7月、スイスのモンタレー・ジャズ・フェスティバルの映像で、
曲は、ShorterがMiles DavisにMiles1970年発表の問題作”Bitches Brew”のために作曲、提供した”Sanctuary”です。







ジャズとロックが混ざり合い化学反応を起こしたようなサウンド。

Milesの”Sanctuary”は、ジャズがロックのエネルギーを吸収し新たな世界を切り開こうとした、何かオドオドしさが漂う感のあるものでしたけど、この演奏は、Shorterのソロ・パートでは純ジャズの4、Santanaのソロ・パートでは純ロックの響きが感じられ、それが全体として見事に融合している。

そうしたところに、これが、作曲者Shorterが本来意図したサウンドだったのではとの思いを抱いてしまいました。


ところで、不思議に思うのは、ジャズ・フィールドのShorterと、ロック・フィールドのSantanaの結びつき。

ところがこの二人、1979年Santanaが、1960年代Miles Davisの黄金期を築いたメンバーであったHerbie Hancock、Ron Carter、Tony WilliamsとWayne Shorterを招いて制作した彼の作品”The Swing of Delight ”以来の仲で、後の1986年には、Josef Zawinul とShorterが率いる伝説のフュージョン・バンドWeather Reportの作品”This Is This!”の制作にSantanaが招かれ、共にレコーディグを行ったというほどの関係。

そもそもSantanaというアーティスト、以前聞いたところによると、その出発点はブルース指向のアーティストであったものが、その後出現したJimi Hendrixに傾倒。
Hendrixが生前演奏活動を共にしたBuddy MilesやJohn McLaughlinとレコーディングを行う中で、McLaughlinよりJohn Coltraneの存在を教られたことから、急速にジャズのエッセンスを取り入れたスピリチュアルなサウンドへと路線変貌を遂げたアーティスト。

そして、片やのWayne Shorterも生前のColtraneとの共演経験もあり、初期においてはColtraneのイミテーションと言われるほど、Coltraneからの強い影響を受けたアーティスト。


こうして見て行くと、異なるフィールドで活躍するこの二人、その音楽スタイル違えども、共にColtraneという同一の根をもつアーティストであって、そうしたこと知ると、互いに親交を育みつつ、こうした共演を実現さししめる至ったということが見えてくるのではないかと思うのです。


さて、このSantana・Shorterの混成バンド。
両陣営からそれぞれ選りすぐりのアーティストが参加しているのですが、そのメンバーは
Shorter側は、この時期Shorterのレコーディング参加していたソウル系ヴォーカリストでピアニストのPatrice Rushenと、Shorter、Santana双方と共演経験のあるLeon "Ndugu" Chancler(drums)。
Santana側は、当時のSantana・バンドのレギュラー・メンバーであった Chester D. Thompson(key),Armando Peraza(congas),José Chepito Areas (timbales)とShorterとも共演経験のあるAlphonso Johnson(bass),の4人という布陣。
,
私としては、Santanaというとその最大の特徴であるラテン・パーカッションを担当するArmando PerazaとJosé Chepito Areas 二人の名手のプレイとエレクトリック・ベースの世界に新しい息吹を吹き込んだAlphonso Johnsonのプレイに気を取られてしまうのですが、二人のキーボード・プレヤーの存在もかなり魅力的。

そこで今度は、Santana、Shorterはもとより メンバー全員のプレイが堪能出来る、そんな演奏を聴いてみることに致しましょう。
曲は、1970年発表のSantanaのセカンド・アルバム”Abraxas(天の守護神)”に収められていた、激しさと安らぎの静が同居する"Incident at Neshabur(ネシャブールの出来事)"。
その 聴き応え満点なこのライブ・パーフォマンス、是非ともご覧いただければと思います。


(Youtube以外のコンテンツでは開けませんので、ここをクリックしてご覧ください。)



この演奏を見てまず耳を惹かれたのは、1970年Weather Report結成以降、バリバリとサックスを吹くことが少なくなっていたShorterの、それまでの呪縛をすべてかなぐり捨てような熱いサックス・プレイ。

Shorterが60年代Blue Note レコードに残した往年のプレイが蘇ったような感じで、あらためてその存在感の大きさを感じることになりました。

そして、Chester D. Thompsonのキーボード。
1970年のこの曲のオリジナル録音では、SantanaのワイルドなギターとGregg Rolieの燃えるようなキーボードの掛け合いが大きな山場でしたが、Chester D. Thompsonのキーボードもオリジナルに勝るとも劣らない出来。

さらに、Thompsonらしい現代的味付けが付加されている当り、音楽監督的役割を熟し、曲にSantana本来の雰囲気を損なわずに新たな空気を注ぎ込む、その手腕の確かさ感じます。


さて、Chester D. Thompsonの華麗なるキーボード・プレイに触れたところで、これを見てさらに聴いてみたくなったのが、Shoterが招いたもう一人の女流キーボード・プレヤーであるPatrice Rushenの華麗なるキーボード・プレイ。

ソウル系ヴォーカリストとしての名声が高い彼女ですが、キーボードの腕前も相当なもの。
ということで、曲は、Santana 1987年発表の作品”Freedom”に収録されていた”Once It's Gotcha”で、彼女の白熱のキーボード・プレイをご堪能ください。



後半で見られたスリリングなSantanaとのギターとRushenの掛け合い。
見事の一言です!!
ソウル系のミュージックにはあまり興味ない私ですが、彼女の作品も聴いてみることにしました。


今回聴いて頂いた、ひと夏限りのCarlos Santana & Wayne Shorter Bandのライブ、この記事を書くにあたり1988年6月のサンフランシスコのライブに始まり7月のモンタレー等、いくつかのステージ映像を見てみましたが、面白かったのは回を重ねるごとに、メンバー間の緊密性が増しその演奏もさらにスリリングなものへと成長していく様子がはっきりと捉えられていたということ。

そしてそこには、30年以上前のサウンドなれどそれを感じさせない新鮮があった。
さすが、Carlos Santanaと Wayne Shorter。

今回は、渡辺貞夫さんの追悼コメントのおかげで、思いがけないサウンドに出会うことが出来ました。
貞夫さんへの感謝の意を込めて、末尾に渡辺貞夫さんとSantanaのバンドの共演、曲は”Oye Como Va(僕のリズムを聞いとくれ)”を掲載いたしましたのでご覧くださればと思います。


Track listing
Disc 1
1.Introduction
2.Wayne Ⅱ
3.Wayne Ⅰ
4.Incident at Neshabur ネシャブールの出来事 (Alberto Gianquinto, Santana)
5.Shhh (Patrice Rushen)
7.Fireball 2000 (Rushen)
Disc 2
1.Goodness and Mercy (Santana, Thompson)
2.Band Introduction
3.Introduction John Lee Hooker
4.Sanctuary (Shorter)
5..For Those Who Chant (Luis Gasca).
6.The Healer
7.Hannibal
8.Cavatina
9..Mandela (Peraza)
10.Elegant People (Shorter)
11.Ballroom in the Sky (Shorter)
13.Once It's Gotcha (Santana, Thompson, Johnson, Jeffrey Cohen, Tom Coster)

Personnel
Carlos Santana – guitar
Wayne Shorter – saxophone
Patrice Rushen – keyboards
Chester D. Thompson – keyboards
Alphonso Johnson – bass guitar
Leon "Ndugu" Chancler – drums
Armando Peraza – congas
José Chepito Areas – timbales

Recorded
June 10, 1988 


PS.[ひらめき]
この連休中、どこに行っても混んでるだろうと極力出かけないようにしていたのですけど、仕事で仕方がなく出かけることになった小田原。

駅を出ると今年は小田原北条氏誕生500年の年だということもあってか、外さんも多くかなりの人出。
とにかく仕事く終わらせ帰り道、駅の周辺をぶらぶらしながら小田原城を見てみると。

天守閣最上階の欄干には

_DSC8211-km.jpg


たくさんの人たちが!!

そして、西口の北条早雲公の銅像を見に行くと。
北条氏誕生500年を祝ってのことなのか!!

_DSC8226-m.jpg


真新しい陣羽織を着て、今にもこちらに迫って来そうな勢い!!
仕事でもなければ来なかっただろうけれど、長かったコロナの3年間、その縛りから解き放されたことの有難さ、早雲公も祝福してくれているような、そんな思いを強く感じることになりました。












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いっぷく

コメントありがとうございます。
小田原城はもう子供の時以来何十年も見ていませんが、
時代は昭和から平成を経て令和になっても
お城は変わらぬ観光スポットですね。
by いっぷく (2023-05-22 01:11) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

いっぷくさん

私も小田原城には、現在成人した子供たちが、まだ小学生の頃に行って以来のことだったので、行ってみて修復を終えた後の小田原駅前から城までの風景の変わりようには、ちょっと驚きました。

久々に見た天守、見ているだけなんとなく歴史を感じてしまう、仕事帰りのわずかな時間でしたけど立ち寄ってみて良かったと思っています。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-05-22 11:07) 

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