欧州で活躍する日本人女流ジャズ・ピアニスト・高瀬アキ;Aki [音源発掘]

3か月余り続けた、30年前のライブ映像のデジタル化復刻作業も、とりあえず前回の記事でお話した通り、一旦お休みをいただき、今回からはまたいつもに戻って、私がここのところよく聴き気に入っている作品のお話。

さて、その作品はというと..........



5月以降ライブ映像復刻の作業する中で、これまで余り聴いてこなかったアーティストの演奏に出会い、それまで知らなかった新鮮なサウンド体験をすることが出来たことから、そうした初体験をしたアーティストの作品を探し聴いていたのですけど、今回は、それらアーティストの作品を探す中で偶然見つけた、初体験をしたアーティストとは別のアーティストによる、この作品を取上げることにしました。

高瀬アキ aki.jpg


ピアニスト:高瀬アキの1979年のレコ-ディング・デビュ-作品、”Aki”です。

実は私にとってこの高瀬アキというアーティスト、どうしたことで聴いたのか覚えていないのですけど、25年ほど前に一度聴いて以来、そのサウンドに一聴ぼれしてしまい、その作品をGetしようと探し続けて来たのですが、見つけることが出来ず、手に入らぬものと探すのを諦めて、とうにその存在すら忘れてしまっていた人なのです。

ところが、その待望の作品突然目の前に現れて、一挙にその昔の記憶が蘇り、即Getしてしまったのがこの作品なのです。


しかし、高瀬アキと言っても日本人でありながら、日本のマスコミではほとんど話題になることないアーティストですので知っているという方は少ないのではと思うのです。

そこで、彼女について簡単にその略歴をご紹介すると、

桐朋学園音楽学部 でクラシックピアノを学び、その後1978年頃には、ジャズピアニストとしてプロ活動を開始、米国に渡り、サックス奏者のDavid Liebman、トランペットのLester Bowie等と活動を行っていたとあります。

そして、、1981年にはのヨーロッパに渡りドイツのベルリンジャズフェスティバル出演、ここで大きな評価を得、1988年にベルリンに在住、その後はここを拠点として活動を続け、

1999年 ベルリン新聞文化批評家賞を受賞。
ドイツ批評家レコード賞を5回に渡って受賞(1990-2002)
2002年 SWRジャズ部門最優秀音楽家賞受賞 
2004年 ”Plays Fats Waller ”で2004年度ドイツ批評家賞ジャズ部門年間ベスト・レコード賞

等の多くの賞を受賞している、東の秋吉敏子、西の高瀬アキと言われるほどの日本を代表する女流ジャズ・ピアニストなのです。


そこで、この作品から1曲.......と行きたいところですが、いろいろ探してみたのですけどこの作品のPVが見つからなかったため、この作品の5年後後に制作された名作”ABC"から”Dohkei”をお聴きいただき、彼女独特のそのサウンド世界を触れ感じてみてください。




わらべ歌にも似た日本的詩情に溢れるSheila Jordan のヴォーカルに導かれ始まるアキのピアノ。
Keith Jarrettを思わせるフォーク・ソングのようなメロディ・ラインを奏でるその音色は、ようやく訪れた秋の夜長のピッタリと寄添い、否応なしにその情緒の深みへと聴く者を導き入れてしまう、そうした力が隠されているように思えて来ます。


そして続いて聴こえて来る、アキ、Cecil McBee (bass)、Bob Moses (drums)の3人による、まるで一人の演奏者のプレーではと思えるほどの一体感に満ちた即興演奏、わらべ歌を思わせるテーマとは裏腹に、そのプレーは次第にテンポも速くなり熱を帯びながら、フリーフォームの世界に足を踏み入れて行く。

一つの曲の中に、フォ-ク、クラシック、フリーなどの要素が凝縮され、それが破綻することなく見事に調和している、そのサウンド生成の完璧ともいえる見事な構成力に、高瀬アキというアーティストの唯一無二の世界を見せつけられることになりました。


実は、今回紹介するこのデビュー作でも、その唯一無二の個性は既に遺憾なく発揮され、加えてジャズでありながらも、その曲のテーマには、メンバー3人で出来る限りの精緻なアレンジが施されていることに、40年前の作品ながら、古さなど微塵も感じさせない新鮮さがあるのです。


さて、ここでもう1曲。
曲は、1981年彼女このデビュー作品以来、度々レコーディングを共しているベースの井野信義と、ドラムに日野元彦、サックスにDavid Liebmanの布陣で臨んだ、”Aki”続いて発表された作品、”Minerva's Owl ”から、その表題曲をお聴きただくことにいたしましょう。



美しさを感じるDavid Liebmanのソプラノ・サックス。
70年代初頭、Miles Davisのグループの屋台骨というべき存在だったLiebman、私はあまりこのLiebmanというアーティストは好きではないのですけれど、ただピアニストのRichard Beirachと共演した演奏には、彼のの真骨頂があると感じているのですが、この高瀬アキとのプレイには、それを越えるものあるように感じたのです。

それにしても、John Coltrane研究の第一人者と言われるこのLiebmanに、これだけの美しい歌を歌わせる高瀬アキのピアニストとしての腕はもとよりその作編曲の能力も、デビュー作以後、着実に育ちつ異彩の輝きを増して移ることを強く実感しました。

そして、現在は、夫君である Alexander von Schlippenbach の率いるBerlin Contemporary Jazz Orchestra のコ・リーダーとして活動、多くの楽曲の作編曲を手掛け活躍している、その優れた才能の根源が、これら彼女の若き日の作品群の中に宿っていたことを、あらためて確認することになりました。



それでは最後に、そうしたジャンルの壁を超越した彼女の演奏、直近のものと思われる映像がありましたので、そのライブ映像でその超越の世界をご堪能ください。



こうして聴いていただいた高瀬アキの世界。

やはりこのサウンドはアメリカではなく、ヨーロッパという緻密かつ歴史的伝統を宿す世界にあってこそ大きく開花したものだと思うのですけど、彼女の母国である今の日本では、知る人ぞ知るの状態であること、こうして書きながら、私としてはなにかとても寂しい気持ちを抱くことになりました。

そうしたことから是非、ここに挙げた楽曲群、もう一度耳して、彼女の生み出したサウンドを心に刻んでいただければと思います。

Track listing
1. How Do You Do
2. Carnival 謝肉祭
3. Birdland こもりうた
4. Cumulo-Nimubus 積乱雲
5. Season Off
6. Idle Talking おしゃべり
7. After A Year 一年のうち

Personnel
高瀬アキ(piano)
井野信義(bass)
楠本卓司 (drums)

Recorded
1978.8.16 &22




PS
それにしても、今年の9月、私にとっては、寂しい懐、直撃の最悪事態が。

消費税のアップもあるということで、25年を迎えた我が家のりフォームを発注したところ、どういわけか以前に取り換えた給湯器、ガステーブルがあいついで故障、おまけにBDレコーダーまでがお釈迦となってしまい、元々予定の車の車検(4回目ともあってタイヤ・バッテリーの交換も必須だったこともあり、さらに費用増大してしまったのですけど。)の費用も加わって、一挙に大散財となる事態。

人間も年とあって故障も多く病院とお友達の日々の中、何もかも故障で、この負の連鎖には本当にまいってしまいました。

まあ、生きて元気がなにより。
こんな愚痴をこぼせるだけ、まだまだなのかもしれませんけどね!!!




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