期待されるも、はかなく消えた思い出のアーティスト;Madura  [音源発掘]

ようやく本来の秋らしい穏やかさが訪れたところで始めたのが,その昔聴いていたアナログ・レコードのデジタル化作業。

アナログ・レコードが脚光を浴びている現在、流行に逆行しているかのように見えますが、確かに、アナログの機器の調整如何でデジタルでは味わえない些細な音の変化を見つけ出し味わうことの面白さには、格別なものがあるのも事実。

そうした折、どういう訳かこの夏、若い時にアナログで聴いた日本では無名のとあるバンドのサウンドが頭の中で鳴り始めたことから、そのアナログ盤を取り出し超久々(30年ぶりぐらいか)に聴いてみたところ、その昔、聴いた時はよく分からず自分の趣味とは合わないサウンドだなと思っていたにもかかわらず、なぜか今は妙に心にフィットしてしまって。

ならば、持ち歩き所を変え腰を据えて聴いてみたいと思うも、如何せんアナログでは気軽に持ち運びどこでも気軽に聴くという訳には行かず、やはり、それを可能にするのはデジタル化だと作業を始めることにしたという次第。

そうして聴いたそのバンド、持ち運び場所を変えて聴いてみると、また新たな良さが見えて来てなかなかいい。

と言うことで、今回、取り上げる作品は、そのとあるバンドの作品とすることに致しました。


さて、その作品が、これ!!!

Madura madira.jpg


アメリカ、シカゴ出身の3人組によるジャズロック・トリオ、Maduraの1971年発表のデビュー・アルバム”Madura”です。


しかし、Maduraと言っても、その名を知る人はそう大くはいないはず。
というのも彼ら、日本では、紹介され作品発表には至ったのですが、ほとんど話題に上ることはなく、いつの間にか忘れ去られてしまった存在なので、それは当然のこと。

しかし、そんな無名の連中、聴いてみると、それぞれの楽器を担当するメンバーの類い稀なテクニックから生まれ出るスリリングな音の絡み合いと、巧なヴォーカル・ハーモニーで隙のないサウンドを生み出している。
これは只者にあらず、埋もれさせておくわけには行かないと、ここで取り上げることにしたのです。

まずは、そのMaduraの経歴
1969年、Alan DeCarlo(ギター、リード・ヴォーカル)、Hawk Wolinski(キーボード、リード・ヴォーカル)を中心にトリオ結成。
翌1970年にはドラムをRoss Salomoneに替え、本デビュー作を発表。

とあるのですけど、それまでの活動でかなりの力量を示していたと思われる彼等、そのための彼らデビュー作品の制作発表に当ってはレコード会社も、かなりの力の入れようだったことが思い出されます。

その証拠に、プロデュースには、当時ブラス・ロックの旗頭として人気の頂点にあった、そして現在も活動を続けているChicagoを世に送り出し、敏腕プロデュサーとしての評価を得ていたJames William Guercioが当り、さらには、Chicagoの弟分として大々的なプロモーションが行われるなど、単なる新人アーティストとは思えないほどのものであったのです。



それではそのMadura、前置きはこのぐらいのして、センセーショナルなデビューを飾るも、大きく名を残すことがなかった彼らのサウンド、一体どんなものであったのか、まずは1曲お聴きください。

曲は、"Drinking No Wine(邦題;ワインも飲まずに)" です。



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秋の夜長はピアノ・トリオで:Bill Evans Trio '64 [音源発掘]

記録的な猛暑が続いた今年の夏。

しかし、ここ来てようやく朝夕の風に秋の訪れが感じられるようになった昨今。
長らく待ち続けていた爽やかな風の流れが愛しい秋の夜長の到来。

それは、ゆっくりと音楽を楽しむには最高の季節!!

となると、無性に聴きたくなってしまうのは、清涼かつ繊細な響きを宿したピアノ・トリオの音楽。

そして、そうしたピアノ・トリオというと真っ先に思い浮かぶのは、没後40年を過ぎた今も、ジャズ・ファンだけではなく、クラシック・サイドからも愛され影響与え続けているピアニストのBill Evans.。
 
そうした思いの中で、今回選んだのは、数あるBill Evansの作品の中から、ここのところずっと聴いているこの作品、

bill evans trio 64.jpg


1964年制作の作品 ”Trio '64”と致しました。。


さて、この選択、Bill Evans.のピアノ・トリオ作品と言えば、60年代初めのScott LaFaro(ベース)、Paul Motian(ドラムス)のトリオによる”Portrait in Jazz”や”Waltz for Debby”か、ベースがEddie Gómezとなった68年の”Bill Evans at the Montreux Jazz Festival”などの諸作品ではないのと思われるかもしれませんけど........。

確かに私としても、これまで、これらの作品に加え、Evansの最晩年、ベースにMarc Johnsonを迎えたトリオの諸作品が好きで、そうした作品を中心に聴いて来たのですけど、今回はこれまで腰を据えて聴いたことのなかった、1961年 突然、盟友Scott LaFaroを交通事故で失い失意のどん底に突き落とされてから、1967年Eddie Gómezと出会うまでのEvansの作品を中心に聴いてみようと考え、いろいろ見繕ったところ、コレダッ!!!と感じ手にしたのがこの作品。

その訳は、Evansのトリオに、この作品に限り参加しているベーシストのGary Peacockの存在。

Bill Evans のピアノ・トリオというとその醍醐味は、従来のピアノ・トリオはベースやドラムスはあくまでもリズムを刻むためのものであったのに対し、それまでのピアノ・トリオとは一線を画すまったく新しいそのスタイル。

テーマのコード進行に従ってピアノ・ベース・ドラムスの三者がそれぞれ独創的な即興演奏を奏で干渉・刺激しあいサウンドを築き上げて行く、いわゆるインター・プレイと呼ばれる演奏スタイルが最大の聴きどころなのですが、それは、各演奏者個々にかなり高度な演奏テクニックが求められる演奏スタイル。

それまで、それを可能にし、三位一体と言われるサウンドを作り出す原動力となっていたのが天性の資質を備えたベーシストのScott LaFaroだったのですが、1961年に突然訪れたLaFaroとの別れ。

その後、Evansは LaFaroの後継としてChuck Israels迎えトリオによる活動を再開するも、Israelsに天才LaFaroの成したその聖域の再生は望むべくもなく、この時期のEvansトリオにおいては、LaFaroと築いた緊密なインター・プレイの世界は希薄となってしまっていたのです。

そうしたEvanトリオ不遇の時期にレコーディングされたのが、ベースにGary Peacockを迎えたこの作品。

Gary Peacockというべーシスト、超絶テクニックの持主で、この時Scott LaFaroの再来と言われていたアーティスト。
そのうえ、私にとっては、1980年代以降、Keith JarrettのStandards Trioや菊池雅章のTethered Moonで、そのプレイを聴き親しみ楽しんで来た、お気入りのベーシスト。

果たして、Evansとどんな対話を交わしていたのか、ここで目にしたのが百年目、腹を据えてじっくり聴き込んでみることにしたものなのです。

それでは、その音楽、ご一緒に聴き始めることに致しましょう。


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27年ぶりの再会レコ-ィングから生まれた円熟の味・・Randy Crawford & Joe Sample:Feeling Good [音源発掘]

9月になったというのに連日続く夏日の毎日。

そこに来て、突然我が職場を襲って来た仕事の山。
急な忙しさの到来で、普段は若手に現場の仕事は任せきりの私も、ここまで来るとその進行を見守り指導しているばかりという訳には行かず、久々に日々東へ西へ飛び回ることになってしまっているところ。

しかし、この暑さに加えて久々の外歩きはかなり堪える。

とにかく、老体に鞭打ってでもこの難局を乗り越えなければと、リズミカルなサウンドを耳にしながら頑張っている昨今なのですが、今回は、その疲れを癒し頑張り与えてくれているソウル・ジャズ・サウンドから、Randy Crawford & Joe Sampleの2006年発表の作品”Feeling Good”を取り上げ語って行くことにしたいと思います。

Randy Crawford & Joe Samplee  Feeling Good.jpg


Randy CrawfordとJoe Sample、特にRandy Crawfordというとピンとこない向きもあるかもしれませんが、この作品は、1979年 Randy CrawfordとJoe Sample(Joe Sampleについてはこちらの二人が生んだ日本でもよく知られるあの大ヒット曲以来、27年ぶりの再会レコーディングとなったもの。

そこで、お話を始める前に、まずはこの二人の生んだあの往年の大ヒット曲を聴いて頂き、Crawfordの歌声に耳を傾けて頂くことに致しましょう。



曲は、Joe Sample率いる当時大人気を博していたファンク・バンドのThe CrusadersにRandy Crawford
が加わった演奏で”Street Life”。

実はこの私、当時はこうしたファンク系のサウンドはあまり好みではなく、The Crusadersもその存在は知っていたもののあまり真剣に聴いてはいなかったのですが、ある日ラジオでこの曲を聴きその軽快なリズムとソウルフルなヴォーカルの心地良さが深く心に刻まれてしまった曲。

今回、軽快かつリズミカルなサウンドを求め考えたところすっと思い浮かんで来たのがこの”Street Life”だったのですが、この曲が世に出てから40年余りを過ぎた今、この”Street Life”以後、他にCrawfordとSampleの共演作品はないものかと探したところ、見つけたのがこの作品だったのです。

こうしたことで、今回ご紹介するこの作品、2003年スイスの Montreux Jazz FestivalでのThe Crusaders とCrawfordの共演がその制作の切っ掛けだったというのですけど、この時期、フュージョンの軽快さを持ちながらアコースティックな香りのする聴き応えのあるリーダー作品を残していたSampleの動向から、
そしてさらには、バックを支えるメンバーにChristian McBride.とSteve Gaddという当代きっての名手の名前があったことから、この二人の共演盤はThe Crusaders 時代の共演とはまた違た何かがありそうな気がして聴き始めたところ、その予感は的中。

軽快なフュージョンやファンク、ボサバ・タッチあり、そしてさらには純ジャズ的ナンバーありで、そのサウンドは実に多彩。

聴き始めるやその心地良さに即没頭して一機に聴き終えてしまったものなのです。


そうして私の気に入りに加わってしまったこの作品。
これ以上語り続けるのは野暮なこと、まずはその音源、早速お聴き頂くことに致しましょう。

曲は、軽快なフュージョンの味わいが心地良い”Feeling Good”です。







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カナダから出現したプログレ・メタルの新生・Inner Odyssey:The Void [音源発掘]

コロナ嵐が治まり、やっとのことで,心置きなく自由を謳歌できるかと思われた今年のお盆休み。

しかし、そこに待っていたのは予期せぬ二つの台風到来。
おかげで、この騒ぎに巻き込まれ、予定を変更したり悪くすれば足止めを食らったりと、その対応に疲れ果ててしまった人も多かったのではと思います。

その言う私の方は、この休み、帰省しなければならない田舎があるわけでもなく、わざわざ暑さを押して混み合う場所へ出掛けることもないしと、これを期に、盆前外に出ずっぱりの仕事の連続で疲れてしまった体を癒そうと、家で音楽を楽しみながらゆっくりと休養をすることにしたのですけど。

しかしながら、とは言っても、ただボケッとしてられない性分の自分。

ここのところジャズばかり聴いていたので、たまにはロックをと思い、ゆっくりと休養するはずがドタバタと、これまで聴いたことないロック作品を探し出し聴くことになってしまったのです

そして、これイケると感じ出会ったのがこの作品。

InnerOdyssey-TheVoid.jpg


カナダのプログレッシブ・メタル・バンドInner Odysseyによる2020年発表の作品”The Void”です。

休養を忘れて見つけたこの掘り出し物
なれば、皆さんにも是非とも聴いて頂きたいということで、今回はこの”The Void”をご紹介することに致しました。

さて、このInner Odyssey、2007年にギタリストのVincent Leboeuf Gadreauによって結成され。2011年に1stアルバム”Have a Seat”でCDデビューしたバンドなのですけど、本作は、”The Void”は2015年発表の2ndアルバムである”Ascension”に続く2020年発表の第3作目の作品。

一聴して好きになったこのサウンド、私も彼らを聴くのは初めてということもあって、どんな連中かと調べてみたのですけど、しかし、ネットを見ても記事は少なく動画も少ない。
上記以外にわかったことは、彼らが大きく影響を受けたのは、Dream Theater、Symphony X、Riverside、Portcupie Tree等のプログレ界のビッグ・ネームの連中だった言うこと。

そうしたことから私も、1stアルバムから最新作の3rdアルバムまで一通り聴いてみたところ、確かに1stアルバムには、これらプログレ界のビッグ・ネーム(特にDream Theater)の影響の痕跡が大いに感じられたものの、2ndアルバム以降からは、その影響の痕跡は薄くなり、急速に、アコースティックな側面を備えた独自の路線が濃厚となって来ている様子。

なんとも好ましいそのスタイル、おかげで、そのオリジナリティを指向する彼らのサウンドに、私は、釘付けとなることになってしまったのでした。


いろいろ御託を並べてしまいましたが、まずはInner Odyssey、なんと言っても、やはり話よりその音をに触れるのが一番。

そこで、曲は、数少ない動画の中から見つけた、スタジオライブの演奏で”Into the Void”。
まずは、聴いてください。



さあ 聴いてみましょう!!!!


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地味ではあるも1950年代ジャズといえばこの人あり:kenny Dorham・Short Story [音源発掘]

前回の記事の最後に、「この調子では、この夏はどっぶりと50年代ジャズに浸ることになってしまいそう。」と書きましたけど、以来50年代のジャズ・サウンドの心地良さが耳に残ってしまい、おかげで我がライブラリにある50年代のジャズ作品を物色し、かたっぱしから聴きまくったかと思えば、気になればそのアーティストの生い立ちを辿り、未試聴の作品を探し出し聴いてみたり。

そこで、今回の作品は、そうしたことをしながら探し見つけた作品から、昨今、何度も繰り返して聴いている、この作品をご一緒に聴いて行くことにいたしました。

kenny Dorham Short Story.jpg

その作品は、トランペッターkenny Dorham、1963年制作の” Short Story”。

その作品の主役のkenny Dorhamと言う人、ジャズに大きな影響与え、その在り方を大きく動かすことになったアーティストではないのですけど、50年代半ばに出現しその後ジャズをリードすることになるThe Jazz Messengersの初代トランぺッターであり、Charlie ParkerやThelonious Monk, Max Roach等、ジャズ・ジャイアントと呼ばれる人たちの下でサイド・マンとして数多くのレコーディングに参加、その軌跡を残す共に、彼自身もリーダーとして”Afro-Cuban”や”Quiet Kenny(邦題;静かなるケニー)”等の名作を残している同時代を代表するトランぺッター。

しかし、50年代と言うと、トランぺッターとしてはMiles DavisやClifford Brownが華々しく活躍し脚光を浴びていた時期。

それに比べるとDorhamの存在は、一歩引っ込んだ感じで人気の方は今一つ、世間では長らく1.5流のアーティストだとの評価を受けて来たというのです。

しかし、そうした世間の評価、私がDorhamに注目するようになったのが、1940年代Miles Davisの後任としてCharlie Parker クインテットに参加した演奏だったこともあって、私にとっては、地味ではあるけれどその人柄を感じさせる暖かく堅実なプレイに、当時のどこか稚拙な感じがあったMiles Davisにはない安定感を感じ、以後ずっと好感を持ち聴き続けて来た-アーティスト。

そうしたことから、その良さを再度見つめ直したいと、50年代のジャズに取り憑かれた今回、50年代と言えば真っ先にkenny Dorhamだと、それまで聴いていなかった彼の作品を物色、そこで出くわしたのがこの作品だったのです。


こうして出会ったこの作品、私がまず気を引かれたのは、ライブであるこの作品のレコ-ディングが行われた場所。

それは、デンマークはコペルハーゲンにある"Jazzhus Montmartre"と言うジャズハウスなのですけど、この”Montmartre"、1960年代アメリカのジャズの潮流が大きく変わり、それまでの隆盛をきわめたバップが衰退する中、多くのアメリカのバップ世代のアーティストたちが渡欧、多くのバップの名演が残されたという、欧州におけるジャズの聖地ともなっている場所でだったということ。

そして、さらに興味を引かれたのはDorhamをサポートするメンバーの顔ぶれ。
ピアノには、欧州のジャズを世界に広めたという評価のあるスペイン出身の盲目のピアニストTete Montoliu、そして、ベースとドラムには、後にピアニストのKenny Drewと共にこの"Jazzhus Montmartre"のハウス・ピアノ・トリオのメンバーとして活躍するベーシストののNiels-Henning Orsted PedersenとドラムのAlex Rielの名があったこと。

と、ここまで来ると、かなり以前より長き渡りこの”Montmartre”でのKenny DrewのトリオとDextor GordonやJohnny Griffin等のセッションの熱いサウンドに親しみ愛聴しで来た私にとっては、居ても立ってもいられない気持ち。

これは聴かずには終われないという様になってしまった訳ですが、それはともかく、大きな人気を博し高い評価を得た脚光を浴びたライバルたちに対し、いささか地味ではあるもいぶし銀の味わいがあると、現在に至るまで根強いファンを引き付けて来たkenny Dorhamというアーティスト。

この作品は、アメリカを離れヨーロッパの地という曇りない環境で、それまで過小評価気味であったDorhamのライバルたちにも勝るとも劣らない真の力量を見せつけた一枚だと思うのです。


それでは、待望の彼の真の姿を宿したサウンド、ここで皆さま方にも聴いて頂くことに致しましょう。




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異色のコラボが生んだ不朽の名盤:Kenny Burrell & John Coltrane [音源発掘]

今回の作品は、愛聴盤として若き日より聴き親しんで来たこの作品。

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ギタリストのKenny Burrell とジャズの巨人 John Coltranが共演した1958年制作の作品、”Kenny Burrell & John Coltrane”です。

この作品、愛聴盤と言いながらここ数年はほとんど耳していなかったのですが、ここのところの連日の異常な暑さ、毎日の通勤もちょっと動くだけで汗が噴き出、心がめげてしまうという有様。
ならば、軽快な音楽を聴きながら気持ちに弾みつけて乗りきればと考え、思い当たったのがこの作品。

まずはその感触、1曲お聴きいただき味わって頂くことに致しましょう。
曲は、ここでピアノを弾いている名手Tommy Flanagan作曲の”Freight Trane ”です。



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フュージョンの源から巣立った不世出のトランぺッター:Lew Soloff・Rainbow Mountain [音源発掘]

前回の記事の最後に、これからは、Blood, Sweat & Tearsで出会ったアーティストたちのその後の軌跡を探して、また聴いてみようかと考えているとお話をいたしましたが、さっそく実行。
今回は、前回のLarry Willisに続くその第2弾。

その作品は、1968年から1973年まで、このBlood, Sweat & Tearsのトランペットを担当したLew Soloffの1999年の作品

Lew Soloff Rainbow Mountain.jpg


”Rainbow Mountain”をご紹介することにしました。


と言ったもののBlood, Sweat & Tears(以下略してBS&T)、その全盛は遡ること半世紀前の1970年代。
そんな昔のことであるので、今では語られることもほぼなく、一体どんなアーティストなのかとお思いの方も少なくはないではと思います。


そこで、まずはそのBS&Tのこと [exclamation×2]

その始まりは、1967年。
ロックが時代をリードするミュージックとしてシーンに躍り出た、所謂ニューロック・エイジ黎明期、アメリカンにおいて、そのけん引役ともいえる存在だったキーボード奏者でソングライターであったAl Kooperによって、3名からなるブラスセクションをレギュラー・メンバー加えた、当時としては斬新な編成のバンドとしてデビューしたのがその始まり。

そのバンド、翌1968年には「”Child Is Father to the Man(邦題;子供は人類の父である )”でレコード・デビューをしたのですが、その直後、バンドの創始者であるAl Kooperが、バンドから追放ブラスセクションの一角も崩れ、バンドはAlの後任のヴォーカルとトランペット・セクションに新たメンバーを迎え再出発。
この年の12月に第2作目となる作品” Blood, Sweat & Tears(邦題;血と汗と涙)”を発表することになります。

そして、大胆にロックとジャズ,さらにはクラシックまでも融合させたこの作品、フュージョンなどという感覚がまだなかったこの時代、当時としてはかなり先進的で大きな反響を呼び、これもってBS&Tは、ブラス・ロック元祖としての地位を確立することになったバンドなのです。

そのこと、さらに、今の視点から見てみると、その試みがその後フュージョンやファンク、ソウル等の現代に続くジャンルを越えた音楽の生み出す礎になっており、忘れ去られたと言えど大きな歴史転換点を生み出す原動力となったバンドだと考えるのです。


それではその忘れられているBS&T、ここで1曲聴いて頂き思い起こしていただくことに致しましょう。
曲は、作品” Blood, Sweat & Tears(邦題;血と汗と涙)”から、彼等最大のヒット曲となった “Spinning Wheel”です。



聴き覚えの感触、いかがだったでしょうか。

ここでトランペット・ソロを取っているのが、今回ご紹介するLew Soloffです。


さてBS&T、この曲の収められた作品” Blood, Sweat & Tears(邦題;血と汗と涙)”以後、メンバーチェンジを繰り返しながら1980年”Nuclear Blues”、計10枚の作品を残しているのですが、その間、その後のジャズ界の礎となる多くの著名ジャズ・アーティストを輩出し続けているのです。

ちなみに、その名を挙げてみると、前回取り上げたLarry Willis、今回のLew Soloffの他に、フュージョン・トランペット界の重鎮であるRandy Breckerや、エレクトリック・ベースの革命児で伝説のフュージョン・バンドのWeather Reportに新しい息吹を吹き込んだベーシストJaco Pastorius、ジャズ・サックスの重鎮として今再評価をされ多くのファン獲得しているJoe Henderson、後にMiles Davisのバンドで活躍するギタリストのMike Stern等々、70年代以降のアメリカ・ジャズ界に名を刻んだ面々の名が連なり見えてくる。

そうしたことからも、このBS&T、今は半ば忘れられた存在となっているも、後のアメリカのジャズ界に与えた影響の大きさが窺え、その名前だけでもご記憶に留めていただければと思うのです。


さて本題のLew Soloff[exclamation]

1969年から1973年のBS&T在籍、それ以降は、Miles Davisの知恵袋として次世代のジャズを生出し提示した巨匠、Gil Evansが率いるMonday Night Orchestra,のサブ・リーダーとしてその責を務めあげ、1984年には、ピアニストのDavid Matthews率いるManhattan Jazz Quinteのトランペッターとして活動、このクィンテットが日本の企画で生まれたものであったことから、日本では母国アメリカ以上にその実力を評価され、その名を轟かすことなったアーティストなのです。


先の、BS&Tのお話が長くなってしまいましたが、この辺で、あらゆるサウンドの中で最良のパーフォマンスを聴かせてくれた名トランぺッターのLew Soloff、そのリーダー作品から1曲を聴いて頂くことに致しましょう。

曲は、アルバムのタイトル曲、”Rainbow Mountain”です。



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遅まきの花を大きく開花させたピアニスト;Larry Willis・How Do You Keep the Music Playing? [音源発掘]

今回は、遅まきながらもその才能を開花させたピアニストを取り上げ、その作品をご紹介することにしたいと思います。

そのピアニストとは、遡ること50年、彼が当時ブラス・ロックの巨頭の一つに数えられていたBlood, Sweat & Tearsのメンバーとして活動していた頃、私が、そのバンド演奏のかいまに聴こえて来た短い彼のソロがえらく気に入ってしまい、以後、彼のピアノ・プレイを思い存分聴きたいと、彼のリーダー作品を探し続けて来たアーティストなのですが、今回ご紹介するのはそのアーティストのこの作品。

larry willis How Do You Keep the Music Playing.jpg



ピアニストのLarry Willis、1992年制作のトリオ作品”How Do You Keep the Music Playing?”です。


このLarry Willis、私は、Blood, Sweat & Tears在籍時よりそのリーダー作品を探し続けて来たとお話しいたしましたが、実はつい最近までその作品を見つけられず、Blood, Sweat & Tearsの活動以後は、音楽シーンから消えてしまったものと半ば探すの諦めていたのです。

ところが、ある日 Wes MontgomeryやJim Hallの血を引く現代のジャズ・ギタリストはいないものかと 探していたところ、TV放送されたRon Carterのカルテットのライブで、そのギタリストとして参加していたRussell Maloneを発見。
探し求めていた通りのギタリストということで、その後、Maloneの作品を聴いてく中で彼の作品” Wholly Cats”を手にしたところ、その作品のサポートメンバーにLarry Willisの名に発見、ようやくの出会いを果たすことになったのです。

消えてはいなかった。!!

ならば、他にもまだ何か出てくるはずと喜び勇躍してLarry Willisの作品を探してみると、出て来る出て来る。
リーダー作品ばかりかサイドマンとして参加の作品まで、多くの作品に出会うことになったのです。


とは言っても、このLarry Willis。
日本では、マスコミ等でほとんど取り上げられたこともなかったので、初めてその名を聞く人も多いはず。

そこで、私が待ち焦がれたその演奏、まずは聴いて頂こうと思います。
曲は、あのBill Evansの伝説のピアノ・トリオ、そのベーシストとして知られるScott LaFaro作曲の”Gloria's Step”です。






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70年代プログレシッブ・ロックに新たな生命を与えたアーティスト・Fleesh:Eclipsed [音源発掘]

いよいよ梅雨入り。

今年の梅雨は、海水温度が例年に比べ高いことから、梅雨の間の台風発生が多くなり大雨となることが多くなる可能性が大の予報。

大きな災害とならなければいいなと思いながら、なんとも鬱陶しい気分になって来ます。

そんな鬱陶しさが忍び寄る6月、ここのところその鬱陶しさを少しでも忘れられればと聴きたくなってしまったのが、爽やかさを感じるロック・サウンド。

そう思うと困ったもので、自然に若き日に聴いた70年代のロック・サウンドへと食指が動きだしてしまうのですが、どうも今はその気分ではない。

なんとなく新鮮さを感じる現代のサウンドが欲しいということで、探し目に飛び込んで来たのがこのジャケット。

Flesh Eclipsed.jpg


なんとなく求めていたイメージと合致するそのデザインに惹かれて、作品のタイトルを見てみると”Eclipsed”とある。

なるほど、このジャケットは日食をイメージしたものなのだな思い、そこから70年代プログレの雄である Pink Floydの名作”The Dark Side of the Moon(邦題;狂気)”を勝手に連想、これならそのサウンドも求めていたものに違いないはずと、なにはともあれ早速聴いてみることにしたのです。


さて、一体どんな音が聴こえてくるものか。
まずは、ご一緒に聴いてみることに致しましょう。







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亡き友が愛した思い出のジャズ・レコード;Eric Dolphy・Outward Bound [音源発掘]

初夏を思わす日々が続いたと思ったら、その翌日は初春の頃へと季節は逆戻り。

おかげで、この激しい寒暖の変化の繰り返しに体が馴染まずとうとう体調不良となってしまった私。
幸い発熱することもなかったので、軽い夏風邪だろうと風邪薬を飲んで一日養生してみたところ何とか回復。

そして、悪い病ではなく良かったなと思ったら、今度は10年振りだと言われる早さの梅雨の入り。
おかげで今は、いつもの年にも増して気まぐれがすぎるお天気模様に翻弄さればっなしでどうも気が晴れず、悶々とした日々を送っているところ。

そんな日々を過ごしている中、最近聴いているのは、今年4月に亡くなった学生時代からの友人が、その昔、私に教えてくれた彼のお気に入りだと紹介してもらった諸作品。

その彼、学生時代まだジャズを聴き始めたばかりだった私が、よく彼の4畳半の下宿を訪ねそこで音楽を聴きながらジャズの教えを受けた、深い親交のあった友人なのですが、亡くなって1ヶ月、心の整理が出来たところで、彼を偲び、共に聴き教えてもらった作品を思い出し聴いていたのですが、今回取り上げたのは、その中でも最も思い出の深かったこの作品。

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マルチ・リード・プレヤーのEric Dolphyの初リーダ作品、 1960年制作の”Outward Bound"。

星が好きだったというその友人、音楽作品についても内容はともかく星や天体現象が作品のタイトルにあると即Getとしてしまう癖があるのだと語っていたのですが、実はこの作品も邦題に”惑星”とあったため即Get、聴いてみたところすっかり気に入ってしまったものだったとのこと。

原題”Outward Bound"、訳せば「外国行きの」はずが、どうして”惑星”という邦題がつけられたのか妙に思ったものの、この時が私としては初めて聴くEric Dolphy。
聴いてみて、ぶっ壊れたような音を響かせながら繰り広げられる異次元のインプロビゼーションの世界に、これこそ「惑星」だと惹き込まれてしまい、私にとっても記憶の底に深く残ってしまった作品なのです。


そこで、私が「惑星」を感じた、Eric Dolphyの一線画したソロの世界、まずは、お聴きいただくことに致しましょう。



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