2011年 印象に残った作品(その2.・Rock編)  [音源発掘]

前回は、2011年 印象に残ったJazz作品について書きましたが、今回はRock編。

今年は、ジャーマン・メタルを中心に聴いていこうと思い、いくつかの作品を聴いてみたのですが、終わってみれば年頭の誓いとは裏腹の結果に。

けしてジャーマン・メタルが良くなかったとのことではなく、むしろ好みの部類に入るサウンドなのですが、他にそれ以上インパクトの作品に出会ってしまったというのがその理由。


そこで、まずはその好みであるジャーマン・メタルを越える強い印象を受けた作品からお話を始めたいと思います。

mercy fall.jpg


そのバンドは、スウェーデンのプログレッシブメタルバンドSeventh Wonder。
作品は、彼らにとって3作目のアルバムとなった、2008年発表の”Mercy Falls”

このバンド、日本でのCDデビューは2010年、4作目の”The Great Escape ”だったのだそうですが、本作品は、彼らの名声を世界に広げ確固たるものとしたという意味でも、その内容は聴き応えはかなりのもの。


まず最初に聴こえて来る車の激突音、そして鳴り響くサイレンの音に、どこかQueensrycheの歴史的名盤”Operation: Mindcrime”を思い浮かばせる資質の良さを感じながら、それ続いて突如飛び出す重厚なメタルサウンド、という劇的な構成に思わず耳を奪われてしまう。

そしてその次に来るのは、どことなく往年のYesのRick Wakemanを想起させるシンセサイザー響きと、重厚さと強力なリズムでサウンド全体をスケールの大きなものへと飛翔させるベース、それにギターとドラム加わり嵐のように生れ出る音声空間。

その空間の中を滑らかかつメロディアスに歌上げていくTommy Karevikのヴォーカルの心地良さ。
思いもかけない、音の万華鏡世界との出会いに。、いつの間にかすっかり心を呑みこまれてしまっていたのでした。



このバンド、聴いてみて強く感じるのは、一つ一つの楽器の音が非常にクリアなこと。
激しいサウンドの中にも、そのそれぞれが有機的に絡み合い、独特な音空間を創り出している。

そして、抒情的な曲の演奏では、さらに安らぎのある美しさを生み出している、そのように思えるのですが。



これまでの、プログレシッブ・メタルとは一味違ったSeventh Wonder、これからも注目していきたいバンドの一つになりそうです。


Track listing
1. A new beginning
2. There and back
3. Welcome to Mercy Falls
4. Unbreakable
5. Tears for a father
6. A day away
7. Tears for a son
8. Paradise
9. Fall in line
10. Break the silence
11. Hide and seek
12. Destiny calls
13. One last goodbye
14. Back in time
15. The black parade

Personnel
Tommy Karevik - Vocals
Kyrt Söderin - Keyboard
Johan Liefvendahl - Guitar
Andreas Blomqvist - Bass guitar
Johnny Sandin - Drums
Jenny Karevik - Female vocals

Recorded
Wonderland, May. - Jun. 2008



さて2つ目のアーティストは、昨年以降北欧のプログレシッブ・メタルに嵌まりすぎたきらいもあることから、どこか他の国へと旅してみよう思い、今度こそはジャーマン・メタルかと思ったのですが、はたまた脱線、行きついたのは地中海。
ちょっとメタルとはあまり縁のなさそうな国スペイン、そこから登場したDark Moorに出会ってしまったのです。

あるコラムで読んだこのバンドの紹介、その中にあったシンフォニック・メタルいう文字。
シンフォニック・メタルというと、本家本元にイタリアのRhapsody Of Fireがいるのだけど、最近の作品はかなりマンネリ気味。
ならばちょっと覗いてみよういうことで聴いたのが、彼らの2008年、10作目にあたる作品の”Autumnal”

autumnal.jpg


実は、このアルバム、その1曲目にあるのが、あのチャイコフスキーの有名なバレエ曲の”白鳥の湖”
チャイコフスキーが好きだった母親のおかげで、子供時代さんざんこの曲を聴かされた私にとっては、メタルの”白鳥の湖”とはちょっと見逃せない。

ということで、早速そのアルバムを聴いてみることにしたのです。



最初の一発からメタルの迫力で迫る、”白鳥の湖”。バレエ音楽の主題を軸に独自のメロディでそれをつなぎ、それを破綻なくまとめ上げた見事なアレンジ。

Alfred Romero のクラシックの声楽的要素を多分に織り込んだヴォーカルが、このメタル・シンフォニー・サウンドをさらに本格的なものに仕上げているように思えます。

彼らのこのアルバム、このクラシック作品にばかり目が行きそうですが、他の曲も一曲々古典的ヨーロッパ音楽の要素を取り入れたりしながら、それぞれ違った表情を持つ音楽に仕上がっているところなど、内容も豊かで面白い。

ということで、この曲などは、ちょっとメタルバンドにはない個性的な曲だと思うのですが、いかがでしょうか。



前作TAROTでは、ベートーベンの運命や月光、そしてモーツアルトのトルコ行進曲を演奏していたという彼ら、メタルとクラシックを見事に融合した彼らのサウンド、来年は、その辺もじっくりと聴いてみようか思います。

Track listing
1."Swan Lake"
2."On the Hill of Dreams"
3."Phantom Queen"
4."An End So Cold"
5."Faustus"
6."Don't Look Back"
7."When the Sun Is Gone"
8."For Her"
9."The Enchanted Forest"
10."The Sphinx"
11."Fallen Leaves Waltz"

Personnel
Alfred Romero - Vocals
Enrik Garcia - Guitar
Dani Fernandez - Bass
Roberto Cappa - Drums

Released
January 10, 2009



今年は、久々にプログレシッブ・ロックの雄であるYesが、前作”Magnification”以来10年振りとなる新作”Fly From Here”を発表、近く来日の予定だとか。

Yes全盛時からのファンである私にとって、この話、最初は実に嬉しいものだったですが、その後、再編されたメンバーを聞いてがっかり。
なんと、あのYesの顔であり、その音楽の中心であるJon Andersonがいない。

確か、数年前病気で一線を退いていると聞いていたので、そうであれば残念だけど仕方がない、Steve Howe もChris Squireが参加しているなら期待できるかもと思い、とりあえずその新作を聴いてみたのです。

しかし、そのアルバム、ハウもスクワイアもかなりいい演奏しているし、新人ヴォーカリストのBenoît Davidも、よく頑張っていて、往年のYesの雰囲気を保ちながら、なんとかアンダーソンいない穴を埋めているようには聴こえるのですが、なにか物足りない。

ちょっと落胆した気持ちで、Yesはもう終わりだなと思っていた矢先、見つけたのがこの作品。

the living tree (2).jpg


なんとJon Andersonと Rick Wakemanのデュオ。それも2010年発表の新作。

一見、弱々しく聴こえるアンダーソンのヴォーカル、しかし過去に聴いたアンダーソンのアカペラでの素晴らしい声量と、マイク・オールドフィールドや喜多郎のアルバムの数曲に客演し、その中で彼の参加した曲が格段の輝きを放っていたことを知る私にとっては、聴かねばならないもの。
ましては相棒がウェックマン、そうであれば名盤間違いなしと確信し疑いもなく手にしてしまったのがこの”The Living Tree”。

いろいろ言う前に、まずはアンダーソンとウェックマン二人の静かな調べをお楽しみください。



ウェックマンの美しいピアノに支えられ登場する、アンダーソンの優しく透き通った歌声には、深い年輪を重ねた深みが感じられるように思えるのですがいかがでしょうか。

ここでのウェックマン、この人、多くのソロアルバムを出していますが、どの作品も耳当たりは悪くないのだけどもう一つ何かが足りない。
しかし、ここでの彼のプレーの美しさは、それとは別物の輝きを放っている。

やはり、アンダーソンという輝きが、彼の才能に火を付けその何かを引き出したものなのか。

今年、最後に聴いたこの演奏、その美しさに出会えたこと本当に良かったと思っています。

Track listing
1."The Living Tree (Part 1)"
2."Morning Star"
3."House of Freedom"
4."The Living Tree (Part 2)"
5."Anyway and Always"
6."23/24/11"
7."Forever"
8."Garden"
9."Just One Man"

Personnel
Jon Anderson - Lead and backing vocals / Guitars
Rick Wakeman - Piano / Keyboards / Synthesisers
Erik Jordan - Engineer

Recorded
August - September 2010



今年一年、このなんともこの気難しいサイトにお越しいただいた皆様、どうもありがとうございました。
来る年も、またよろしくお付き合いのほどお願いいたします。
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マチャ

いろいろと楽しませて頂きました。
来年もどうぞ宜しくお願いします。良いお年を。
by マチャ (2011-12-31 16:53) 

老年蛇銘多親父

マチャさん

楽しんでいただき、光栄です。

マチャさんの奈良の風景や歴史記事、私もいつも楽し待させていただいております。

来年も引き続きよろしくお願いします。
by 老年蛇銘多親父 (2011-12-31 23:14) 

snowman

お久しぶりです。そしてあけましておめでとうございます。

Seventh Wonder
「The Great Escape」しか聴いてないのですが、こちらもいい作品ですね^^ 最近の某夢劇場と比べて技巧の使い方にいやらしさがないのがいいです(あのいやらしさも好きなのですが^^;

Dark Moor
この手のバンドにはあまり食指が動かないのですが、白鳥の湖のアレンジはカッコイイですね^^ 映像もまさにファンタジーという感じでいいです。

Anderson/Wakeman
Yesの初体験は「危機」だったのですが、最初聴いたときにはなぜかJon Andersonの声になじめませんでした^^; そんな自分からするとこちらの声のほうがなんとなく居心地がいいです。


ということで、今年もよろしくお願いします。
by snowman (2012-01-01 01:12) 

こーいち

Seventh Wonder 好きかもしれません[__わーい]
紹介、ありがとうございます[__るんるん]
by こーいち (2012-01-04 22:48) 

老年蛇銘多親父

snowmanさん

Seventh Wonder
”某夢劇場と比べて技巧の使い方にいやらしさがない。”
確かに、その表現ぴったりだと思います。

しかし、某夢劇場からそれを取ったら、それもまた味気ないように思えますね。

Dark Moor
この”白鳥の湖”、本当にうまい具合にアレンジ決めてますよね。

Anderson/Wakeman
私も、Yesが日本で騒がれ始めた頃(”こわれもの”リリースの頃)、ラジオで初めて彼らを聴いたのですが、アンダーソンのヴォーカル、最初は馴染めなかったですね。

ご指摘の通り、アンダーソン、声質からいってこういう曲の方が、馴染み易いのかもしれません。

by 老年蛇銘多親父 (2012-01-05 05:59) 

老年蛇銘多親父

こーいちさん

”Seventh Wonder 好きかもしれません”
こう言っていただけると、紹介しがいもあるというもの。
是非、聴いてみてください。
by 老年蛇銘多親父 (2012-01-05 06:02) 

powapowa

BLACKMORE'S NIGHTの「Writing On The Wall」が
白鳥の湖でしたよね・・・。
初めて聴いたときはびっくりしました(笑)

PLAYLOGで「こー☆ち」さんに教えて頂いたアルバム
でした~(^^)

最後の曲Jon Andersonと Rick Wakemanさん
良いですね!(*^^*)
by powapowa (2012-01-05 22:36) 

老年蛇銘多親父

powaちゃん

BLACKMORE'S NIGHTのデビュー・アルバム”Shadow of The Moon”に収められていた”Writing On The Wall”も、白鳥の湖ですね。

このアルバム、他にもいい曲ばかりなので、この曲のことすっかり忘れていました。
ギターのリッチー・ブラックモアさんとヴォ―カルのキャンディス・ナイトさんの馴初め話でも、またいつかしましょうかね。


by 老年蛇銘多親父 (2012-01-07 08:56) 

モンクレール マフラー・帽子・小物

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by モンクレール マフラー・帽子・小物 (2012-02-15 17:42) 

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