愛の芽生えを感じるコラボ作品;John Hicks and Elise Wood・Luminous [音源発掘]

開花に一喜一憂した今年のソメイヨシノの花の饗宴も終わり、春らしい日々の訪れに、心も明るくどこからか漲る力が湧いてくるのを感じられるようになる季節。

そうした昨今、あまりTVのコメディ番組を見ない私が唯一見ている番組で、記憶に残ってしまったのが、超長寿人気のTV番組の「笑点」からの林家木久扇師匠引退を飾る最終回の放送。

この木久扇師匠、私は、亡き母が三味線の先生として教えを受けていたのがこの師匠のお母さんだったとのことで親近感を抱いていた人で、師匠ならではの面白きお馬鹿芸を楽しみにして来た者の一人。

その後継は、立川一門から55年振りの起用だという立川晴の輔師匠となった訳だけど、”笑点”という番組、他のレギュラーの噺家諸氏との阿吽の呼吸による即興の掛け合いから生まれる笑いの落ちが、笑いの大きなポイントの一つ。

そうした中で、木久扇師匠、1969年に”笑点”初出演以来55年簡に渡りこの番組を支えて来た偉大なる大功労者。

それは、その後を務める晴の輔師匠にとってはかなりの重圧だと思うのですけれども、師匠出演の初回を見た限りでは、木久扇師匠とはまた違ったキャラクターで、この番組を引き続き盛り立ててくれそう。

そうしたことでこれからの”笑点”、こてまでとは違った掛け合いの面白さへの期待は持つことが出来たなと思っているのですが、木久扇師匠の最後となる大喜利の舞台で記憶に深く残ったのは、師匠が放ったこのお笑いの一コマ。

そのお題は、「どうしようもない馬鹿な奴、それを越える馬鹿とは?」。
それに対する、木久扇師匠のその答えは...........................!!

「何度、注意しても同じ間違いをする馬鹿。そして、それを越えるのは、注意されるから、なにもしなくなる馬鹿!!」と、こんな回答だったと記憶しているのですけど、そこで思い出したのが、以前の私の職場にいたH君のこと。

この人、まさに木久扇師匠の答えを地で行く存在で、何をやらしても何一つ満足出来るものはなく、
それまで、10年に渡り5人の方が指導・教育に当たって来たのだけど、いつまでたっても本人になんとかしようという気は全く育たず、最後には全員が匙を投げてしまったという  存在自体が壮絶極まりなく信じられない人。

これ、お笑いの世界ならいいけれど、おかげで現実の職場では、彼一人のために問題百出、皆、毎度その後始末に振り回されるれることになってしまっていたのです。

とまあ、木久扇師匠に最後の最後で、忘れていたまがまがしい記憶を呼び起こされてしまいましたが、それはともかく、55年の長きに渡り皆を笑いの渦の中に招き入れてくれた木久扇師匠に、ご苦労様、そしてありがとうの気持ちを送りたいと思います。


さて、余談が過ぎてしまいましたけど、ソメイヨシノ咲き乱れる新年度を迎えたところで、今回選んだ作品は!!

ピアニストJohn Hicksの作品より、咲き誇り春を告げてくれたソメイヨシノに寄せて、フルート奏者とのコラボによるこの作品と致しました。

John Hicks and Elise Wood  Luminous.jpg


その作品は、女流フルート奏者のElise Woodとコラボによる1985年制作の”Luminous”。

今回このJohn Hicksの作品を選んだのは、ここのところ聴いているサックスやベースのアーティストのリーダー作品のピアニストが、どういう訳か、ことごとくJohn Hicksになってしまっていたことから、ならばと、彼のリーダー作品を聴き始めたところ、そのスタイル、フォーマットの多様性に驚かされると同時に、そのどれもにおいても現れる彼らしい個性的なプレイが印象に残ったことから、さらに彼の作品を聴きたいと思い調べたところ、フルート奏者とのオーソドックスなジャズの共演があることを知り聴いて、マイナーな作品だけどその調べ良さに、是非とも聴いて頂きたいと取り上げることにしたもの。


とは言っても、フルート奏者のElise WoodはともかくJohn Hicksというピア二スト、日本では彼の認知度は決して高いとは言い難く、初めてその名を聞いたという方多いのではと思うので、まずはその経歴を簡単にご紹介してみると、

1963年に、ジャズのメッカ ニューヨークに進出、1965年にはジャズの巨人 Art Blakey率いるThe Jazz Messengersのピアニストとして2年間活動、その後は Woody Hermanのビッグ・バンド、トランペット奏者Charles Tolliver下での活動を経て女性ヴォ-カリストBetty Carterの下でその力量を磨いてきたアーティスト。

そして、1970年代半にいささか遅咲きながら初リーダー作品を発表、1980年代以降は自己のリーダ作品を発表しつつ多くのアーティストの作品にサポートメンバーとして名を残して行くことになるのですが、その共演歴を見て驚かされるのは、そのスタイルはアヴァンギャルとからバップまで、そのフォーマットもソロに始まりスモール・コンボはもとよりビッグ・バンドからヴォーカルの伴奏までと、多彩ともいうべき間口の広さ。

また、さらに深く共演アーティストの方へと目を向けてみれば、サックス奏者 Hank Mobleyに始まり Pharoah Sanders,Archie Shepp、Sonny Fortune、Eric Alexander、Joe Lovano、トランペット奏者Lee Morgan、Charles Tolliver 、Roy Hargrove、ギタリストのLarry Coryell,  ベーシストのCharles Mingus、Richard Davis等、新旧相乱れ、そのスタイルも大きく異なる面々が名を連ねている。

ちなみに私も、昨今、Hicksの参加するこれらアーティストの作品を聴いていたのですけど、そのサウンドは、彼が影響を受けたMcCoy Tynerのピアノが聴こえたと思ったら、バップやクラッシックのピアノの音がが聴こえて来たり。

どの作品を聴いてもHicksは自己の持ち味を見失うことなく、リーダー・アーティストに輝きを与えていた、その懐の深さと凄味にすっかり引き込まれてしまったのです。


さて、前置きが長くなりましたが、そうしたJohn Hicks、この異色の作品から、ここで1曲お聴きいただくことに致しましょう。




曲は、”Yemenja”でした。
まずはJohn Hicksについてご紹介いたしましが、この作品のもう一人主役であるフルート奏者のElise Woodについて。
私もこの作品に出会うまでは彼女のことは全く知らなかったのですが、調べてみるとそれもそのはず、本作が彼女のレコーディング・デビュー作であり、その後もHicksとのパートナーシップの中で活動して来たアーティストだとのことで、Hicksの作品を追い求めなければちょっと出会うことは難しかったア^ティストのようなのです。

そしてその経歴をさらに追ってみると、この作品の制作時には、この二人、共に配偶者を持つ身であった(Woodは既に別居状態であったとのこと)のですが、その後、2001年には晴れて結婚、夫婦となる間柄だというのです。

そうしたこと知ってこの演奏を聴くと、ここでのHicksのプレイは妙に明るく浮き浮き感が横溢しているような感じ。
そして、曲によっては、HicksのWoodに対する細かい気配りが感じられる程。

その煽りを食ったのか、いつもブルーが満ち漂ているはずのClifford Jordan、ここでは妙に軽やか明るいテナー・サックス・プレイを見せています。

なにはともあれ、なんとなく愛の始りを感じてしまう演奏。
長い間、ジャズを聴いて来た私ですけど、こんな感じは初めてのこと。

こうしたことが思えて来るのも、まさしく、その場の感情が音になる、アドリブが真髄のジャズならではのこと、これまで知らなかったジャズの面白さをまた一つ発見したような気がしてきました。


そして、もう1曲。
続いての演奏は、その愛の行く末。
Hicksが亡くなる1ヶ月前の2006年4月に吹き込んだ作品”Sweet Love of Mine”より、

John Hicks   Sweet Love of Mine.jpg

曲は、 Benny Golson作曲の名曲”I Remember Clifford”で、緊密な愛の結晶の姿を聴いていただこうと思います。



HicksとWood、お互いに相手の心を分かち合いながら、なにかを語り合っているかのような感のある演奏です。

元は、 Benny Golsonが、25歳の若さでこの世を去ってしまったた天才トランぺッターClifford Brownを偲んで作ったこの曲、しかし、その1ヶ月後には、"I member Hicks"となってしまうとは!!

涙を誘う、何か運命的なものを感じる演奏でした。


1975年に、当時私がよく聴いていたCharles Tolliver のグループ・メンバーとして初めて知った彼の名前。
当時は、McCoy Tynerの影響を受けたピア二ストとして、そのプレイを存分聴いてみたいと思いながらも、インターネットもない時代。
そのリーダー作品を探すも、当時日本ではほぼ無名に近い存在であったJohn Hicks、そうした彼の作品にはなかなか出会えず、この時はなんとか1作に出会うことが出来たものの、その後はお目にかかれぬまま30年余りが過ぎてしまいそれ以上の成果を諦めてた矢先、どういう訳か、彼のサイド・マンを務めた作品群にぶつかり、そこから新たなリーダー作品ばかりを探し聴くことになってしまって。

それを切っ掛けに、彼のピアノへの興味が大きく頭をもたげ見つけたのがこの2作品だったのですけど。

剛に入ってはパワーフルでダイナミック、柔に至っては気配り豊かな繊細かつデリケートサウンドを届けてくれる、今回はこのJohn Hicks というピアニストの底知れない魅力の一端に触れられたように思っていました。

今回ご紹介した作品は、Hicks してはレアなイメージのもの。
日本では、私を含めコアなファンはいるものの今一評価が低くいと言われるこのHicks というピアニスト、これを縁に、そこに目を向け彼のピアノ・トリオやPharoah Sanders,Archie Sheppとの共演作等、幅広く聴いて頂ければと思っています。

それではラストに HicksとWoodの”Sweet Love of Mine”で、その信頼の証を聴きながら本稿を締めることに致します。




Luminous
Track listing
Original release
1.Luminous 
2.Yemenja
3.Ojos De Rojo
4.Blue in Green
5.Motivation
6.Expectation
7.Chelsea Bridge
Reissue
For the reissue, four tracks were added to the seven on the original album:
8.Osaka
9..Once in a While
10..I'm Getting Sentimental Over You
11.Upper Manhattan Medical Group

Personnel
John Hicks – piano
Elise Wood – flute
Clifford Jordan – tenor sax (tracks 1, 2, 8)
Walter Booker – bass (tracks 1–3, 5, 6, 8, 9, 11)
Jimmy Cobb – drums (tracks 1–3, 8, 9)
Alvin Queen – drums (tracks 5, 6)

Recorded
July 31, 1985, September 1988, New York City


Sweet Love of Mine
Track listing
1.One Peaceful Moment
2.I Guess I'll Hang My Tears Out to Dry
3.Sweet Love of Mine.
4.The Things We Did Last Summer
5.The Things We Did Last Summer
6.Once I Loved.
7.Hold It Down
8.Mambo Influenciado
9.I Remember Clifford
10.Peanut Butter Two
11.Sunset Blues

Personnel
John Hicks – piano
Javon Jackson – tenor sax (tracks 2, 3, 5–9)
Elise Wood – flute (tracks 3, 7–9)
Curtis Lundy – bass (tracks 3, 5–9)
Victor Jones – drums (tracks 3, 5–9)
Ray Mantilla – percussion (tracks 3, 5, 7, 9)

Recorded
April 5, 2006 Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey



Luminous

Luminous

  • アーティスト: John Hicks and Elise Wood
  • 出版社/メーカー: Evidence
  • 発売日: 1993/05/04
  • メディア: CD




SWEET LOVE OF MINE

SWEET LOVE OF MINE

  • アーティスト: JOHN HICKS
  • 出版社/メーカー: HIGH NOTE
  • 発売日: 2009/03/07
  • メディア: CD




アフリカ

アフリカ

  • アーティスト: ファラオ・サンダース
  • 出版社/メーカー: SOLID/TIMELESS
  • 発売日: 2015/03/18
  • メディア: CD




ブルー・バラード

ブルー・バラード

  • アーティスト: アーチー・シェップ・カルテット
  • 出版社/メーカー: ヴィーナスレコード
  • 発売日: 2014/12/17
  • メディア: CD





関東以西では、大幅に開花の遅れた今年のソメイヨシノも花の饗宴を終え、今は新緑に包まれ始めたところ。
しかしながら、今年のソメイヨシノ、振り返ってみると開花が遅かったばかりではなく、例年にはない珍妙な現象があったことが思い出されます。

その珍妙な現象とは、
まず一つ目は、いつもの年なら、私の住む船橋のソメイヨシノの開花は東京の開花宣言が出て2,3日遅れだったはずが、今年はほぼ同時か、幾分早ぐらいものがあったこと。

そして二つ目は、通常は日当たりの良い場所にあるソメイヨシノの方が先に開花するはずなのに、今年は、日当たりの悪い場所のソメイヨシノの方が先に開花している様子があちらこちらで見られたこと。

これも、今年の異常に暖かい日があった2月と真冬に逆戻りしたかのような寒い日が続いた3月、その異常気象のせいなのか。

とは言いながらも、ちょうど新生活のスタートを祝うように訪れた満開の桜の宴、時には異常気象も日々の生活に潤いをもたらしてくれることもある。

と、そう思えば、いつもと違う桜の季節も良いものなだなあと思えます。

そうした今年のソメイヨシノ、見頃が短いという予報を受けて、私は急ぎ足で近場中心に花見をすることにしたのですけど、そう決めて歩いてみると意外にも灯台下暗し。

この地に住んで30年になるのですけど、狭い路地が多いということもあって、これまで家からちょっと離れた場所ではその路地奥へ行くことはなかったのですが、今年は近場でどこかにと、最寄り駅の駅舎3Fから周辺を眺めまわしてみたところ、さほど遠くない場所に桜が咲き乱れる場所を発見。

ならばと、これまで歩いたことなかった路地を進み、その桜の咲く当たり目指したところ、出会ったのがこの景色。

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滝台八幡神社参道の桜並木。

いつもはそれほど人が来る所ではなさそうなのですが、この時は桜に惹かれてから次から次へと人の訪れがありました。

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近場でいい場所を見つけて気を良くすることとなったものの、さらに報じられたのは、今年の見頃の時期は雨の日が多いとの予報。
しかし、お花見を楽しむ人々の様子も見てみたいと、天気の良い間にと出掛けたのが新京成線沿線の桜の名所?とされている近くの公園。

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こちらの方も満開の桜が、私を出迎えてくれていました。

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そして、人々が多く集まっている方に足を向けてみると、テントを張りその中で寝ころび桜を楽しんでしている人、椅子席を設けバーベキューの用意をしている人。
それぞれ思い思いのいで立ちで桜を楽しんでいる様子が、なんとも微笑ましく喜ばしい。

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ここまで見ると、3月に河津桜を鑑賞した松戸神社のソメイヨシノも見ておきたくなってしまった。
そこで今度は、雨降り模様の日であったけど、ここで行かねば見頃は終わってしまう

という訳で、雨もなんのその!!
の気合で出掛けてみると、

_DSC9758-hm.jpg

幸い雨も小降りで、川に垂れかかる花の傾きも良い感じ。

参道の方から拝殿の方を見てみると、

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小雨に濡れる桜の前で記念写真を撮っている人の姿が見えます。

_DSC9712m.jpg


子供の頃、満開のソメイヨシノの下で新スタートを祝ってもらった記憶のある私にとってこの風景は、深く心に刺さるもの。

短い見頃とのことで、急ぎ歩き回り見てた来た今年のソメイヨシノの花の宴。
日本という国に生まれ育った者の一人として、そうした自然をもたらしてくれたこのソメイヨシノに、本来、日本人の心を奥底に宿っている平和を見せられたような気を感じることになりました。










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