2023年 心に残ったお気に入り作品 その1 Jazz編 [音源発掘]

夕刻 になると、あちらこちらにX'masの飾り付けが輝いて、街はすっかり年の瀬気分。

これまでは、コロナ予防のため密を避けるべく、X'masの飾り付けにも自粛の空気が漂いなんとなく慎ましやかな感じだったけど、今年はその猛威も収まり、この日を待ってましたとばかりの百花繚乱・花盛りといった様相。

こうした風景を見ていると、ようやく街も活気を取り戻したなあと、何とも喜ばしい心持になって来て、今は、突然の早すぎる冬の寒さもなんのその気分となっているところ。


と、冬の足音と共に身近に年末を感じるようになった今日この頃、1年の終りもう間近となったところで、今年も相も変わらず1年間聴き続けて来た音楽を、この辺で今年聴いた音楽を振り返り取りまとめをして置こうということで、今回はそのジャズ編。

そのジャズ、
年頭の目標は、ここ数年は、毎年やろうとするも実現することが出来なかった、50年代、60年代のジャズ作品にもう少し深く接し聴いてみるという目標を今年こそは実行し達成しようとして来たのですが、果たしてその成果は?.........と考え、思い返しみると

今年は、まずは50年、60年代ジャズに浸るためこれまで愛聴して来たSonny Clarkの”Cool Struttin”やJohn Coltraneの”Blue Train”等の歴史的名盤から聴き始め、Eric Dolphyの”Outward Bound”へと聴き進めていくうちに、アメリカのバップ系アーティストの60年代半ばの渡欧移住後の作品に出会い、50年代と違った新鮮なバップの響きに引き込まれてしまったのです。

そうした作品、既にトランぺッターのkenny DorhamやArt FarmerとPhil Woods のヨーロッパ・レコーディング作品である”Short Story””What Happens?”、を当ブログで紹介して来ましたが、今度はそれが切っ掛けでそれまで聴いたことなかった新な50年代のバップ作品に出会うことになったのです。


そこでまず最初にご紹介するのは、今年そうして出会ったバップ作品の中で最もお気に入りとなった、

tommy flanagan the cats.jpeg

ピアニストTommy Flanaganの1957年制作の作品”The Cats”と致しました。


この作品、今年3月に亡くなったサックス奏者Wayne Shorterを偲んで彼の作品を聴いているうちに、Shorterが大きな影響を受けたJohn Coltraneの50年代の作品が聴きたくなり、そこでブログでもご紹介した”Kenny Burrell & John Coltrane”を久々聴いたところ再びその良さに魅せられてしまい、他にもColtraneとKenny Burrellが共演している作品はないものかと探し始め見つけ出し聴いたのが、その出会いの始まり。

Tommy Flanaganの作品とあるが、どんなメンバーが参加している作品なのかとパーソナルを見てみるとJohn ColtraneとKenny BurrellをはじめDoug Watkins、Louis Hayesなど、その後のジャズ界で活躍することになる若き日の名手たちの名が見える。

これは、なかなかの組み合わせ、イケること間違いなしと早速聴いてみたところ、大正解!!
耳にしたのは、若さ満ち溢れる痛快なバップ・サウンドだったのです。


それでは、その若さ満ち溢れる痛快なバップ・サウンド、皆さんにも聴いて頂くことに致しましょう。
曲は、Flanagan作曲の”Minor Mishap”です。





Tommy Flanaganの初リーダー作品というと1957年8月録音の”Overseas”と言うのが通例ですが、本作の録音日は”Overseas”の録音を遡ること約4か月前の1957年4月とこと。

本来ならこの作品が初リーダー作品のはずなのところのこの逆転現象は、本作の発表が1959年であったのに対し”Overseas”の発表が1958年であり、後者の方が早く世に出たことから生じたものなのですが、制作順から数えれば、この”The Cats”の方が Flanaganの初リーダ―作品と見なし得るもの。

そうしたこのFlanaganの実質的初リーダ―作品、6曲中5曲がFlanagan自身のペンになるオリジナル曲。
そのそれぞれの曲が、彼らしい親しみやすいメロディとブリリアントなバップ感に満ちていて、フロントを飾るSulieman、Coltrane、Burrellの3人も、のびのびと自己の個性を発揮したプレイでそれに応えている感じが気分を爽快にしてくれます。

初リーダー作品といえども、それ以前より、Sonny Rollinns やJ.J.Johnsonの下でサイドマンとしてジャズの歴史に残るプレイで実績を残してきたFlanagan
この作品は、初リーダーという立場を得て、その実力を自由にかつ遺憾なく発揮した作品だなと思いました。



そして、続いての2023年 心に残ったお気に入り作品は、

今年は、内容はわからずとも何か良さげと感じた作品にも、ちゃんと耳を傾け聴いてみようと心掛けて来たところ、あまり名を知られていないマイナーなアーティストの作品にも結構いいものがあるのを発見した年でもあったのですが、次の作品は、お気に入りとなったそのマイナーなアーティストの作品から、

Charles Sullivan Genesis.jpg

まずは、トランペット奏者Charles Sullivan 1974年制作の初リーダー作品” Genesis”をご紹介したいと思います。

この作品、実はジャケットに写るSullivanの表情に、いかにも「俺のサウンドを聴いてみろ」という叫びを感じたことから聴いてみたものなのですが、聴いてみると、のびやかで整ったトランペットの音色から生まれるサウンドの心地良さ。
特にバラード曲における奥深い美しさを感じるプレイは、また格別なものがありお気に入りとなったもの。

ということで、そのバラード曲をここで聴いて頂くことに致しましょう。
曲は、”Good-bye Sweet John”です。



この作品を聴き終え、もっと彼のリーダー作品を聴いてみたいと思い調べてみたところ、これだけの実力持ちながら、現在までその数は、僅か4枚だけとのこと。

売れなかったからと言えばそれまでなのですが、この作品の以後の彼の作品も聴いてみたところ、こちらの方も上々の出来。

中でも本作の次に発表された1976年の”Re-Entry”などはスタンダード・ナンバーの演奏も聴けるなど一層ジャズを感じる作品で、私にとって本作以上のお気に入りとなってしまったほど。


そうしたSullivan、なれどなぜ過小評価されて来たのか。
考えてみれば、これら作品の発表された時のジャズ界の趨勢は、フュージョンやスピリット・ジャズが隆盛だった時期。
そうした環境の中では、Sullivanの音楽は時流に乗ったものだったとは言えず、そのためその良さを理解されなかったのではと思え、そこにそうであっても流行に嵌まることなく、数は少なくとも真摯な姿勢でジャズに取り組み、ひとつひとつ丁寧に作品を作り上げて来たCharles Sullivanというアーティストの真骨頂を見たような気がしました。



さて、Charles Sullivanを聴いて頂いたところで、3つ目の2023年 心に残ったお気に入り作品は、

続いても、昨年夏にトランぺッターWoody Shawの1981年の来日ライブを録音したカセット・テープをみつけデジタル化して聴いたことが始まりで、今年に入っても、近年その良さを見直され発表されたShawの埋もれていたライブCDを聴きあさっていた中で出会った、あまり名を知られていないマイナーなアーティストの作品。

そのアーティストはサックス奏者の、Carter Jefferson。

先のCharles Sullivanよりマイナーなアーティストなのでその名を知らないといわれても当然なことで、
私も、このJefferson、1977年から1980年の間、Woody Shawのバンドのメンバーとして共演していたアーティストで、近年発表されたその時期のWoody ShawのライブCDを聴いたところ、サイド固めるサックス奏者のサウンドの良さに耳を奪われてしまったことから、その名を知ったアーティストなのです。

そして、Shawのライブでの好印象から、このアーティストならリーダー作品も残しているはず、次はそれを聴いてみたいという願望が芽生え、なにはともあれと探して見つけたのが、

Carter Jefferson – The Rise Of Atlantis.jpg

この、Carter Jefferson、1978年制作の作品” The Rise Of Atlantis”だったのです。

この作品、注目するは、サイドマンとして日本人トランぺッターの日野皓正と大野俊三が参加していること。
この時期のこの二人、共にアメリカに移住、80年代の活躍を控えての飛躍への第1歩を踏み出したところ。
その二人が、Carter Jeffersonとの共演の中で、どんな掛け合いを見せるのか大いなる期待が、高まって来ます。

ということで、その演奏、早速聴いて頂くことに致しましょう。
曲は、日野皓正が加わった演奏で”The Rise Of Atlantis”です。



心地良い穏やかさ感じるサウンドをバックに、強烈なテンションを与えるColtraneスタイルで身を包んだJeffersonのテナーとその場の空気を突き破るように吠える日野皓正のフリューゲルホーン。

Woody Shawとの共演からは想像していなかったサウンドに戸惑いを覚えながらも、スピリチュアルでありながらも心地良さ感じさせる、Jeffersonの絶妙バランス感覚に満ちたプレイにすっかり飲み込まれてしまうことになりました。

こうした思いもたらしたJeffersonなのですが、さらに彼の他の作品聴いてみたいと思い調べてみると、彼のリーダー作品はこれ1枚のみだとのこと。

しかし、そのJefferson、過度な飲酒、喫煙による病で、既にこの世の人ではなく(1993年没 享年47歳)今となっては、その次作は望むべきことは出来ないのですけど、考えてみれば彼がこの作品を制作した時期は、フュージョンが台頭・全盛となっていた時。

彼を起用した恩師でもあり、この作品のプロデュースを担当したWoody Shaw自身も、今でこそ再評価されるに至っているものの、あの時代での評価は低かったことを思えば、彼の目指した音楽と活動した時代の趨勢の間には大きな隔たりがあり、そのことが彼の命を縮めてしまうことになってしまったのでは思えて来るのです。

たった1枚だけども、聴けばその印象が深く胸の内に残ってしまう、こんなアーティストがいたことを心の内に残していただければと思います。


暮れ行く2023年、今年心に残ったジャズの作品は、遥か昔のものばかりとなってしまいましたが、あらめて、共に演奏する人が異なればまた違った音の展開が生まれ出るジャズの面白さに浸れたこと、そして時代の流行りの霧に閉ざされ隠れてしまっていたアーティストの音楽に触れることが出来たこと。

2023年は、私にとって聴く側の、これまでとは異なった心掛けを学ぶことになった年でした。

ジャズ、聴く方向を変えれば、また違った顔が見えてくる。
本当に、尽きることない奥行きがある世界だと強く感じた1年でした。



Tommy Flanagan:The Cats
Track listing
1.Minor Mishap
2.How Long Has This Been Going On? (George and Ira Gershwin) - trio track
3.Eclypso
4.Solacium
5.Tommy's Time
All tracks written by Tommy Flanagan except where noted.

Personnel
Idrees Sulieman – trumpet
John Coltrane – tenor saxophone
Tommy Flanagan – piano
Kenny Burrell – guitar
Doug Watkins – bass
Louis Hayes – drums

Recorded
April 18, 1957 Van Gelder Studio


Charles Sullivan:Genesis
Track listing
1.Evening Song
2.Good-Bye Sweet John (In Memory of John Foster: Pianist)
3.Field Holler
4.Now I'll Sleep
5.Genesis
All compositions by Charles Sullivan

Personnel
Charles Sullivan – trumpet
Sonny Fortune – alto saxophone
Stanley Cowell, Onaje Allan Gumbs – piano
Sharon Freeman – electric piano
Alex Blake – bass
Billy Hart – drums
Lawrence Killian – congas, percussion
Dee Dee Bridgewater – vocals

Recorded
June 20 & 21 and July 24, 1974 Sound Ideas, N.Y.C., and Minot Studio, White Plains, N.Y.


Carter Jefferson:The Rise Of Atlantis
Track listing
1.Why
2.The Rise Of Atlantis
3.Wind Chimes
4.Changing Trains
5.Song For Gwen
6.Blues For Wood

Personnel
Carter Jefferson - Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
日野 皓正 -Flugelhorn(2-3)
大野 俊三- Trumpet(5-6)
Harry Whitake - Piano(1-3)
John Hicks - Piano(4-6)
Clint Houston - Bass
Victor Lewis - Drums
Woody Shaw - Producer(1-3)
Lani Groves Vocal(1)

Recorded
1-3: December 23, 1978.
4-6: December 27, 1978.




キャッツ

キャッツ

  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1992/01/25
  • メディア: CD





Genesis

Genesis

  • 出版社/メーカー: Inner City
  • 発売日: 2009/10/13
  • メディア: CD




Re-Entry / リエントリー / PA-7152

Re-Entry / リエントリー / PA-7152

  • アーティスト: Charles Sullivan / チャールズ・サリヴァン
  • 出版社/メーカー: Whynot
  • 発売日: 1976/01/01
  • メディア: LP Record




ザ・ライズ・オブ・アトランティス

ザ・ライズ・オブ・アトランティス

  • アーティスト: カーター・ジェファーソン
  • 出版社/メーカー: SOLID/TIMELESS
  • 発売日: 2015/03/18
  • メディア: CD




Live Volume One

Live Volume One

  • アーティスト: Woody Shaw
  • 出版社/メーカー: High Note
  • 発売日: 2009/03/07
  • メディア: CD




師走の足音が日に日に増してくる昨今、ここに来て、私の周りもにわかに忙しさ増して来て、おかげで私も東に西へと飛び回る機会が増えてしまっているところ、

しかし、忙しいと言っても考えようで、おりしも季節は秋の風が訪れ行く時。
外に出れば、そうした秋の風情に出会えるという楽しみもある。

先日も車でつくばに行き、仕事帰りの車中から見たのが、

IMG_0055 (1)k-m.jpg

赤や黄に染まった銀杏並木が続くこんな風景。

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さらに車を進めて行くと、その色合いが濃くなって行く。

どこまでも続く銀杏並木、実に見事でした。


そして数日後、次に向かったのは小田原。
秋晴れの下、車を進めて行くと正面に見て来たのは、

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富士山!!

今年は、いつまでも暑さが残っていたのに、かなり早い時期から真っ白な姿に衣替えをしていた富士山。
この雄々しい姿を見ると、どこからともなく元気が湧いてくる。
忙しさの中、安らぎのひと時に浸ることが出来ました。

_DSC8981-m.jpg

都会も次第に訪れる秋の色。
近々、紅く染まった楓を探しに出掛けようと思っています。




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