バップ世代とロック世代の激突;George Adams/Don Pullen Quartet Live At Monmartre [音源発掘]

毎年、この時期になると申し合わせたように届く、悲しいニュース。

これまでも、Chick Corea,Wayne Shoter,Jeff Beck、Keith Emerson等の訃報に、長年彼らの音楽に親しみ親しみ育てられ来た私は、悲しい思いに駆られながらも感謝の気持ちを抱いて来たのですが、今年も、また届いたのは、長きに渡り私を親しみ楽しまさせていてくれていた、漫画家の鳥山明さんTARAKOさん逝去の訃報。

鳥山明さんは、今ではドラゴンボールの作者として世界に知られる漫画家ですが、私が彼を知ったのはその前に連載された”Dr.スランプ アラレちゃん”の時。

女の子のロボットと幼児的スケベ・オヤジのセンベイ博士が主人公という奇想天外な配役設定にのうえに、これまでのギャク漫画にはなかった爽やかでありながらハチャメチャなギャクの面白さに、新婚早々の夫婦ともどもで大ファンになってしまったです。

そして、それに加えて目を引かれたのがその絵の巧みさ
一本一本の線がキッチリと描かれていて、ストートリーの奇想天外な面白さに加えて、絵の方も何度繰り返し見ても飽きない楽しさがあった。

特に、登場するメカの精緻な描写には毎度引き込まれてしまった思い出があり、漫画家としての資質の凄さは元より、それら扱うメカの題材から私と同世代のノスタルジアを体験した同胞として親近感を抱いていた人なのです。


そして、TARAKOさん。
ちびまる子ちゃんの声優として語られることが多い彼女ですが、私がTARAKOさんを知ったのは、声優としてではなく、シンガーソングライターとしてのTARAKOさん。

切っ掛けだった曲は、ちびまる子ちゃんより半年遅れで始まったTVアニメ“まじかる☆タルるートくんの彼女の作詞・作曲による”挿入歌だったのですが、その珍しく愛らしい声質の歌声が印象に残りその名を記憶することになった人なのです。

そのTARAKOさん、最も思い出に残っているのは彼女の名を知ってから暫くして幕張メッセで開催されていたアニメ‣ショウに行った時のこと。
場内を一通り見ながら歩いたところ、どこから歌声が聴こえてきます。
どこかで聴いたことあるような歌声。
誰だろうと、その歌声の方へと歩いてくと、ちょっとしたステージがあってその上で一人女性が歌い踊っている。
そこで、ステージ横にあった歌い手さんの名を見ると”TARAKO”とあります。
しかし、あの頃はまだTARAKOさん、まだ余り名を知られなかったのか観客は超マバラ。

おかげで、これ幸いと座り込み、独占状態で彼女のステージを楽しむことが出来たこと、当時、彼女の将来を期待していた私にとって、不思議な出会いの思い出が残る声優さんだったのです。


そうした私にとって身近感じ親しんで来た二人、共にもう一旗挙げられる、まだ60代という若さでの別れに悲しさを越え無常の空虚を感じ、ただご冥福を祈るばかりとなってしまいました。


さてのっけから、湿っぽい話となってしまいましたが、今回の作品は、その湿っぽさを吹き飛ばしてくれるようなジャズ・サウンドということで

George Adams/Don Pullen Quartet Live At Monmartre.jpg


サックス奏者George AdamsとピアニストのDon Pullen が率いるカルテットの1985年、デンマークはコペルハーゲンにある名門ジャズ・クラブ Jazzhus Montmartreでのライブを録らえた”George Adams/Don Pullen Quartet Live At Monmartre”といたしました。


私にとってGeorge Adamsというサックス奏者は、どちらかというと苦手なアーティストで普段はあまり聴かないのですけど、今回そうした彼の作品を選んだのは、George AdamsとDon Pullen のカルテットにゲスト・アーティストとしてギター奏者のJohn Scofieldの名前があったことに興味をそそられ聴いてみたのがその始まり。

というのもGeorge AdamsとDon Pullen のカルテット、4人のメンバーのうちGeorge Adams、Don PullenとドラムのDannie Richmondの3人は、1973年から75年のCharles Mingusのバンドのメンバーで、Mingusといえば、闘い祈るブルーに満ちたバップという感の、極めて灰汁の強い独創的な音楽の創造者で、そのMingusの下で1974年の作品”Mingus At Carnegie Hall”に代表されるような70年代のMingus黄金時代を築き上げるに貢献した3人も、かなりの曲者ばかり。

そして、その曲者3人相対するギター奏者のJohn Scofieldというと、ロック・ブルースのフィールドで育ち、その後、Billy CobhamとGeorge Dukeのバンドに参加、1982年にはMike Sternの後任としてMiles Davisのバンドに加入、1985年の退団までに”Star People、Decoy、 You're Under Arrest ”等のMiles作品にその足跡を残している、いわばフュージョン系のアーティスト。

という具合に、全く毛色の異なるAdams・PullenとScofield。
ある意味、まさにバップ世代とロック世代の激突、そこでいかなるサウンドが生みだされるのか!!

場所は、サウンドに多くの化学反応をもたらしてきたジャズ・クラブ Jazzhus Montmartre。
きっと何か得るものがあるはずと、聴いてみることにしたものなのです。

果たしてその顛末は??

というところで、そのステージへ、
ご一緒に出掛け、その真偽、確かめてみることに致しましょう。




曲は、Scofield作曲の”.I.J”でした。
テーマに続くScofieldのギターソロ。
彼の特有の硬質なトーンで繰り出される攻撃な旋律に触発されてか、後に続くAdams・Pullenも、渾身を込めた爆発的プレーで挑み返している。
漲る熱さが時を越えてダイレクトに伝わってくるような演奏です。

Scofieldというアーティスト、これまで私は彼の作品のいくつかを聴いてきたのものの、その無機質な感覚がどうも好きなれずにいたのですが、バップの洗礼を浴びたここでのプレイは、無機質感は薄まりクールな熱さが見え隠れしている。
やっとのことで、現代を代表するギタリストとして活躍するScofieldの真価を実感することになりました。

思いのほかの収穫だった、Scofieldとアクの強いCharles Mingusファミリ―と共演。
共に互いの手の内を理解しながらの熱演に、Scofieldのことを調べてみたところ,なるほどと思ったのが、Scofield自身も1977年に Mingusの”Three Or Four Shades Of Blues ”のレコーディングに参加していたという事実。

そのレコーディングについて、以前、Mingusのレコーディングに参加したことのある、ピアニストの秋吉敏子の話を聞いたことがあるのですけど、Mingusのレコーディングにはかなり茫然とした独特の雰囲気があったそうで、そのことから、Scofieldもしたと思われるその独特な経験が、このAdmasとPullenとの共演に際して大いに生きたのではないかと思えて来るのです。


さて、まずはScofieldの曲で超熱い演奏をお聴きいただきましたけど、今度はPullen作曲のバラード曲で、Admasの乾いた音色で歌う男性的なサックス・プレイを味わってみることにいたしましょう。

曲は、”Song Everlasting ”です。



男性的な音色で歌うAdmasのサックスが、この曲にさらに深み与えている感のある演奏。
続く、Pullen、Scofieldのソロも秀逸です。

それにしてもScofield、この人にこんな抒情的な側面が感じられるなんて!!
フュージョンでは聴くことできなかったScofieldの、新たな一面を知ることになった1曲でした。


発表当時は、評論家諸氏からの評価は低かったと言われているこの作品ですが、考えてみればあの時代はフュージョンが時代の潮流の音楽として隆盛を誇っていた時期だし、今とは違って伝統的なジャズ・ファンからは、その系統のアーティストへの評価はまだまだ厳しかった時期。

そう言いう私も、あの時代にこの作品を聴いたとしたなら、Scofieldの存在が鼻につき、Adams・Pullenのカルテットを空中分解の追い込んだ諸悪根源として忌避し、作品自体駄作としてしてしまったかもしれなかったかもしれません。

変わりゆく時代と共に変化する潮流の中で、個々のアーティストの組み合わせ如何で、聴き手側の予想を越えた音楽が生まれでることもあるこのジャズの世界。

この作品は、固定観念に縛られることなく、時を経て接してみてその良さを体感することもある、不可思議な魅力を持った好作品だと思いました。


Track listing
1.I.J. (John Scofield)
2.Flame Games (George Adams)
3.Well, I Guess We'll Never Know (Don Pullen)
4.Forever Lovers (George Adams)
5.Song Everlasting (Don Pullen)

Personnel
Don Pullen – piano
George Adams – tenor saxophone
John Scofield - guitar
Cameron Brown – bass
Dannie Richmond – drums

Recorded
at the Jazzhus Montmartre in Copenhagen
on April 4 & 5, 1985





ライヴ・アット・モンマルトル

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  • アーティスト: ジョージ・アダムス~ドン・プーレン・カルテット
  • 出版社/メーカー: SOLID/TIMELESS
  • 発売日: 2015/09/16
  • メディア: CD




Mingus at Carnegie Hall

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  • 出版社/メーカー: Atlantic / Wea
  • 発売日: 2000/03/13
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スター・ピープル(期間生産限定盤)

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デコイ (特典なし)

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  • アーティスト: マイルス・デイビス
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレーベルズ
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3 Or 4 Shades of Blues

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  • アーティスト: Mingus, Charles
  • 出版社/メーカー: Atlantic UK
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD




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日々大きな寒暖差に悩まされることになった今年の早春。
2月には、早ければ3月17日頃が東京のソメイヨシノの開花かと報じれられた予報も、その直前の真冬への逆戻りですべて帳消し。

結局、東京のソメイヨシノの開花は、平年より5日遅れの3月29日となってしまった訳ですが、今回はソメイヨシノの前に満開を迎えた彼岸桜のお話。

それは、私が毎日利用している最寄りの駅前に立っている彼岸桜。
毎日、電車を乗り降りする度にホームの上から開花の様子を眺めるも、やはり3月に入っての真冬の寒さのせいで、昨年に比べかなり遅くなっている様子。

この分では当分開花は見込めないなと考え、桜のことなど忘れてしまっていたところ、3/19の帰宅時にいつものホームへ降り立ち何気に桜の木の方に目をやると、闇の中に薄っすらとした街灯の光に照らされてピンクの花のようなものが見えています。

そこで、急いで改札を抜け桜の木の下の来てみたところ.......!!!

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昨年の今頃は、もう花は散り始めていたはずなのに、今年は今が満開の様子。

ならば、暗がりで見る桜も良いけれど、やはり明るい陽射しの下で眺めてみたいもの。
という訳で、翌日は朝から駅前へ散歩がてら出掛けることにしたのです。

そして、その途中にある、地元の有志の方々によって管理されている踏切脇にある花壇のところまで来てみると。
そこに咲く色とりどりの花々が、通り過ぎる電車を前に春の訪れを喜び歌っているかのよう見えてきます。

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かくて駅前に到着。
彼岸桜の前まで来て見てみると、昨年はこの桜、10月に狂い咲きをしてしまったせいか、花のつきは今一つでしたが、今年は再び持ち直し枝一杯にピンクの花を付けている。

_DSC9581-hm.jpg

さらに、近づいて見上げてみればこの通り。

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ソメイヨシノに比べて花は小さいけれど、やっぱり桜。
その周辺には、春の艶やかな空気が流れているように感じます。

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昨年までなら、この時期はソメイヨシノ満開を終え見頃は終わりとなっていた頃なれど、今年の東京の満開はまだこれから。
この遅咲き、2012年以来12年ぶりのものだ言うだけれども、こうなったも寒い日もあったけれど、暖冬だった今年の2月、桜というのは一定期間の寒さが続かないととならず、開花のスイッチがONそれが開花の時期を左右するのがとか。

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となれば、今年の2月は、暖かい日が多かったため開花のスイッチがONとはならず開花が遅れに繋がったのだとの由。

とはいっても、これからは暖かさが訪れ日によっては初夏を思わせる日もあるという4月の初め、おかげで早々に満開を迎え、全体的に花の期間は短いというソメイヨシノ。

しかし、この時期での桜の宴は、新しい門出がスタートするこの時期にはなんともふさわしく思えるもの。
ここ数年、こうした新しい門出をめでる時期の桜の風景から遠ざかっていただけに、これこそ本来の姿だと、喜ばしさがこみ上げて来るもの。

そんな喜び溢れた桜の風景、今年は急ぎ足でとしながらも、心行くまで楽しめればなと思っています。

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ぼんぼちぼちぼち

チック・コリアって、亡くなってたのでやすね。
正直言って、あっしはこの時代のジャズは自分には合わないんでやすが、
25年くらい前だったかな?来日公演(パルテノン多摩での野外ライブ)に、彼の大ファンの一度目のダンナと聴きに行った思い出がありやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2024-04-02 09:58) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ぼんぼちぼちぼちさん

Chick Coreaは、1995年と1996年にパルテノン多摩での野外ライブを行っていて、私は95年の新日本フィルとの共演のライブは見ているのですけど、ぼんぼちぼちぼちさんは、95,96どちらに行ったのかな。

なお、96年のセプテットのライブはDVDになっているそうです。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2024-04-04 16:06) 

U3

私にとって、最近の出来事で強く印象に残っているのは、昨年3月末の坂本龍一の訃報でした。
by U3 (2024-04-09 21:37) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

U3さん

昨年3月、坂本龍一の訃報もありましたね。
そういえば、あの時、私は、故人を偲んでその後しばらく Yellow Magic Orchestraを聴き続けてました。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2024-04-13 15:41) 

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