新年早々の憂いを癒してくれたミュージック:Jon Anderson/In the City of Angels [音源発掘]

年明け早々、能登半島の大地震そして翌日の羽田空港C滑走路での航空機衝突事故と、御屠蘇気分に浸る間もなく大惨事連発に振り回されてしまうことになった2024年の幕開け。
特に地震災害は、この日本列島に住む限り明日は我が身にもと、私としては、とても他人ごとではなく、今は、一刻も早く安寧の兆しを掴めるようにと祈るばかりなのですが。

そこで、いきなりそうした気持ちに襲われた新年、その最初となる作品は、2014年の行く末に不安を抱かせる出来事に暗い気持ちとなっていた心に燈明を灯してくれたこの作品。

Jon Anderson In the City of Angels.jpg


1970年代の初めに登場、King CrimsonやPink Floyd、Genesisと共にプログレシッブ・ロック、その黎明期を牽引したバンドであるYesのヴォーカリストとして活躍したJon Andersonのソロアルバム”In the City of Angels”と致しました。

この作品は、1988年に発表されたAndersonのソロ第5作目となるもの。

Yes時代より形而上学的色彩が濃かったAnderson諸作品に対して、本作はAndersonには珍しくかなりポップ色の強く批判的な評価を受けたものだったというのですけど、聴いてみて強く感じたのは他のAndersonの作品では感じなかった身を包み込んでくれるような暖かさがあったということ。

そして、その暖かさが心に燈明を灯してくれた。


ということで、私に、かすかな希望への灯を届けてくれたAnderson、新年早々立ち込めた暗雲を払ってもらえればという気持ちを込めて、まずはそのサウンド聴いて頂こうと思います。





曲は”For You”でした。

普通のロックのヴォーカルとは一線を画す清らかで暖かみを感じる美しいAndersonのヴォーカル。
その歌声が、このポップ感覚溢れるメロディと見事に調和して、より一層の暖かさを引き出しているように感じます。

とはいってもJon Anderson、ポップ化したとは言え、プログレシッブ・ロック魂は健在。
複雑かつ色彩豊かなの音のハーモニーは健在で、この曲の随所に、これまで培った技の極意の冴えを見せてくれています。

そして、70年代Yes黄金期において曲作りの中核をなしその名を残している Anderson、あの成功は決して彼無しには成し得られるものではなかったと、その才能の豊かさと奥深さを実感させられることになりました。


さて、そうしたことを感じたこの作品、どの曲も捨てがたい魅力があるのですが、中でも弾む感じが心地良く、新年早々の憂いを吹き飛ばしてくれたのが作品の冒頭を飾っていたこの曲。

やはり皆さんにも聴いて頂きたい。
とこ言うことで、曲は、"Hold On to Love" 。
聴いて頂くことに致しましょう。



この作品が生まれた1988年という年は、が1981年に活動を中止後1983年に Trevor Rabin、Chris Squireによって活動を再開したYesを音楽性の違いから脱退した年。

この80年代のYesはこれまでのYesとは大きく異なりポップな作風で、1983年に発表された作品”90125”は商業的にも成功、今も耳にする名曲"Owner Of A Lonely Heart"などのヒット曲を生み出しているのですが、この曲を聴いていると、音楽性の違いから80年代Yesを脱退したAndersonではあるものの、その活動で得た親しみやすい感覚は継承され、それが本作のポップな感覚に繋がったように思えて来るのです。

しかし、そういうと、Andersonがコマーシャリズムを意識してこの作品を制作したかのように思われてしまうかもしれませんが、そこで、今度は、Andersonのプログレッシブ・ロック魂健在感じられるを曲を1曲聴いて頂くことに致しましょう。
曲は、”Top Of The World (The Glass Bead Game)”です。



こうやって聴いてきたこの作品、聴き終えて思ったのは、Anderson がこの作品で目指したのは、70年代の難解かつ形而上学的なプログレシッブ・ロックではなく、従来のプログレシッブ・ロックの複雑かつ聴き応えのある音作りは継承しつつも、親しみ易いポップな感覚を有した新しいプログレシッブ・ロックだったように思えて来るのです。

それを証すかのように、これの作品以降のAnderson の音楽を聴いてみると、70年代の小難しさは影を潜め、優しく清らかな暖かさと親しみ易さがにじみ出てくるものとなっていることに気付かされます。

それにしても、今回はAnderson、ここのところ疎遠にしていたけど、あらためて聴いてみて、そのサウンド作りに対する凄味を体感することになりました。
おかげでこの年初め、今しばらくはAndersonの諸作品を追い求めその足跡を探ってみたくなりました。


Track listing
1.Hold on to Love -Jon Anderson,Lamont Dozier-
2.If It Wasn't for Love (Oneness Family) -Jon Anderson-
3.Sundancing (For the Hopi/Navajo Energy) -Jon Anderson-
4.Is It Me  -Jon Anderson,Rhett Lawrence-
5.In a Lifetime -Jon Anderson,Lamont Dozier-
6.For You -Jon Anderson,David Paich-
7.New Civilization -Jon Anderson,Don Freeman, Gordon Peeke-
8.It's on Fire -Jon Anderson,Don Freeman-
9.Betcha -Jon Anderson,Rhett Lawrence-
10.Top of the World (The Glass Bead Game) -Jon Anderson,David Paich-
11.Hurry Home (Song from The Pleiades) -Jon Anderson-

Personnel
Jon Anderson - Vocals, Harp, Drums, Percussion
Steve Lukather - Guitar (Track 10)
Steve Porcaro - Keyboard programming (Track 10)
Jeff Porcaro - Drums (Track 2, 4 & 10)
Mike Porcaro - Bass (Tracks 2 & 4)
David Paich - Keyboards, Orchestration (Tracks 2, 4, 6 & 10)
Joseph Williams - Backing vocals (Track 10)
Larry Williams - Keyboards, Programming (Tracks 1, 3, 5 & 9)
John Robinson - Drums (Tracks 1, 3, 7–9)
Paul Jackson Jr. - Guitar (Tracks 1 & 5)
Jimmy Haslip - Bass (Track 1, 5, 7 & 8)
Lenny Castro - Percussion (Tracks 1, 3, 5 & 7)
Dann Huff - Guitar (Tracks 2, 4 & 8)
Michael Landau - Guitar (Tracks 2, 4, 7-9 & 11)
Marc Russo - Saxophone (Track 4)
Paulinho Da Costa - percussion (Tracks 4 & 8)
Gordon Peeke - Drum programming (Track 7)
Don Freeman - Keyboards (Tracks 7 & 8)
Jerry Hey - Trumpet (Track 7)
Gary Grant - Trumpet (Track 7)
Bill Reichenbach Jr. - Sax, Trombone (Tracks 7 & 9)
Kim Hutchcroft - Sax (Track 7)
Rhett Lawrence - Keyboards, Programming (Tracks 9 & 11)
The Cathedral Choir - Backing vocals (Track 11)

Recorded
1988 Ocean Way Recording (Hollywood, California)、The Manor (Shipton-on-Cherwell, UK)



In The City Of Angels

In The City Of Angels

  • アーティスト: Jon Anderson
  • 出版社/メーカー: Voiceprint Uk
  • 発売日: 2024/02/02
  • メディア: CD



******
1月2日に、羽田空港で起きたC滑走路での航空機の衝突事故。

以前、羽田に着陸する航空機の航路の下で仕事をしたことのある私は、間断なく頭上を飛んで行く航空機の多さに、一体どのくらいの時間で飛んでくるのだろうかと、その間隔を計ったことがあるのですが、驚いたことにその時間は、おおよそ1分半に1機という結果。

その超短い間隔で、時速250㎞のスピードで滑走路に着地して行く。
その時は、こんな有様であってもこれまで事故の話は聞いたことがない。
それは、管制側に、離着陸を円滑に制御するためのハイテク技術や監視人員が配置されているからなのだろうと思ったのですけど.........。

しかし、事故後の報道を見ていると、管制官は1人、セキュリティ・システムも飛行機の異常行動をモニターする機能はあるものの、それは画像だけで異常を音で知らせる機能は無く、基本的には管制と飛行機側のにコミュニケーションは、双方を結ぶ無線のみ頼っていたとのこと。

これでは、私の知る着陸間隔だけを見ても、管制官1人だけの対応では人の限界を越えているように思えてしまう[exclamation×2]

そこに持ってきて羽田空港、世界で3番目の過密空港だとのですけど、上位1.2位の空港の滑走路は、1本1本、離陸専用と着陸専用に限って運用しているのに対し、羽田のC滑走路だけは離着併用だったというのです。

これでは、ちょっとした思い違いで大きな事故が起きるのは当たり前の状況。
これまで、専門家の方を含めて、誰もこの当たり前の危険に警告発しなかったのだろう。
それに加え報道、つまらないことに大騒ぎするくせに、こと技術的問題が絡むと尻すぼみとなってしまう。

この事故はの責任は、管制官やパイロットにあるのではなく、この業務にかかわって来たすべての人たちが背負うものだと思いました。


難しい話になってしまいましたが、今年初詣に行った習志野市実籾にある大原神社にあった昨年の干支のウサギと今年の干支の辰の置物、心が和む愛らしさが何気に印象的でした。

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mk1sp

今年もよろしくお願いします。

Anderson、優しいVo.が心地良いですね♪
「City of Angels」は、LAの愛称なんですね、
1980年代のLAを通すと、様々なものが、Popになる、
自然な流れなんでしょうか

大変な年明けとなりましたね
災害への備えの重要性を再認識しました

羽田の事故もショッキングでしたが、
そんなに過密なフライトスケジュールだとすると、
直接的な原因がヒューマンエラーだったとしても、
根本的には組織的な問題という感じがしてきますね

by mk1sp (2024-01-16 23:02) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

”City of Angels”は、LAの愛称、なるほどね。
そこから、LA出身のアーティストはどんな人がいるかなと思って見てみたら、凄いアーティストがいました。

その人は、現代ソウルを生み出した大御所のQuincy Jones。

「LAを通すと、様々なものが、Popになる」ということ、
これも、Quincyの影響なのかなと思いました。

羽田の事故、その後のニュースにで知ったのですが、それぞれの飛行機が、自分の位置と他の飛行機の位置を確認できるシステムがあり、既に、海外では既に装備することが義務付けされている地域があるとのこと。

そういうこと知ると、この事故の原因には日本の航空管制に対する関係者の怠慢があるなと、ますます確信を深めてしまいました。



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2024-01-17 18:08) 

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