遅まきの花を大きく開花させたピアニスト;Larry Willis・How Do You Keep the Music Playing? [音源発掘]

今回は、遅まきながらもその才能を開花させたピアニストを取り上げ、その作品をご紹介することにしたいと思います。

そのピアニストとは、遡ること50年、彼が当時ブラス・ロックの巨頭の一つに数えられていたBlood, Sweat & Tearsのメンバーとして活動していた頃、私が、そのバンド演奏のかいまに聴こえて来た短い彼のソロがえらく気に入ってしまい、以後、彼のピアノ・プレイを思い存分聴きたいと、彼のリーダー作品を探し続けて来たアーティストなのですが、今回ご紹介するのはそのアーティストのこの作品。

larry willis How Do You Keep the Music Playing.jpg



ピアニストのLarry Willis、1992年制作のトリオ作品”How Do You Keep the Music Playing?”です。


このLarry Willis、私は、Blood, Sweat & Tears在籍時よりそのリーダー作品を探し続けて来たとお話しいたしましたが、実はつい最近までその作品を見つけられず、Blood, Sweat & Tearsの活動以後は、音楽シーンから消えてしまったものと半ば探すの諦めていたのです。

ところが、ある日 Wes MontgomeryやJim Hallの血を引く現代のジャズ・ギタリストはいないものかと 探していたところ、TV放送されたRon Carterのカルテットのライブで、そのギタリストとして参加していたRussell Maloneを発見。
探し求めていた通りのギタリストということで、その後、Maloneの作品を聴いてく中で彼の作品” Wholly Cats”を手にしたところ、その作品のサポートメンバーにLarry Willisの名に発見、ようやくの出会いを果たすことになったのです。

消えてはいなかった。!!

ならば、他にもまだ何か出てくるはずと喜び勇躍してLarry Willisの作品を探してみると、出て来る出て来る。
リーダー作品ばかりかサイドマンとして参加の作品まで、多くの作品に出会うことになったのです。


とは言っても、このLarry Willis。
日本では、マスコミ等でほとんど取り上げられたこともなかったので、初めてその名を聞く人も多いはず。

そこで、私が待ち焦がれたその演奏、まずは聴いて頂こうと思います。
曲は、あのBill Evansの伝説のピアノ・トリオ、そのベーシストとして知られるScott LaFaro作曲の”Gloria's Step”です。








Herbie Hancockの影響も感じられると評されている彼のピアノ、確かにLarry Willisのピアノにはそうした一面はあるものの、Herbie が時おり見せるこれでもかと織りなし広がり行く超刺激的アドリブの空気は希薄で、どちらかと言うと、50年代ジャズ雰囲気のある温かく優しいスィングを感しる新しさの中に伝統の味を感じさせるもの。

そのサウンドは、私が長年待ち続け思い描いていた以上の出来で、待ったかいありとなんとも喜ばしい限り。

さて、そうしたLarry Willis、タイトルに”遅まきの花”と書きましたが、その意味は。
まずは、Willisがピアノを始めたのが17歳と遅めだったこととと、それに加え1965年、23歳にして早くもJackie McLeanの下で働き初レコ-ディングにものぞみ、その後70年代に入って2つのリーダー作を残ながらも、さしたる注目を浴びることもなく、その存在を認められ多くの作品を残すようになったのが、デビュー以来25年近くが過ぎた50歳直前の1980年後半のことだったということ。

特に知名度に関しては、Jackie McLean以外、注目度の高い超大物アーティストとの下での実績がなかったことが大きな要因だと思うのですが、それでも80年代に入るとNat Adderley, Woody Shaw, Roy Hargroveと言った60年代以降頭角を現して来たアーティストと活動を通じ、多くの作品を残しており、そのあたりに、認知される機会に恵まれることがなかったということの示しが如実に現れているように思うのです。


そこで、もう1曲。
今度は、彼のジャズのスタンダード・ナンバーの演奏を聴いてみることに致しましょう。
曲は、名曲"Alone Together"です。



進むべき道を模索し物思いにふける人の姿が見えてくるような"Alone Together"。
多くのアーティストが演奏を残している名曲。

私も、これまでいろいろな"Alone Together"を聴いて来ましたが、Willisの演奏はなにか違った趣がある。
いささか贔屓目化もしれませんが、曲にまた異なった趣を作り上げるWillisのセンスの良さに、その昔、彼のピアノの虜なった訳を知り、清々しく晴れやかな気持ちを得ることが出来ました。

とは言ってもLarry Willis、ウェブで調べてみても日本ではかなり馴染みの薄い存在のよう。
これを機会にその名を記憶し、彼のサウンドに親しんでいただければと思っています。


それでは、最後にその名を記憶に留めて頂けるよう、もう1曲、彼のピアノ・トリオの演奏を聴いて頂くことに致しましょう。

曲は、"How Do You Keep the Music Playing?"です 。と



若き日に出会った、Larry Willis。
これまで、何度も手近なアーティストに触れることに躍起となり、何度も疎遠になるべき事態に陥りながらも、心の呼びかけに従って思い出し念願のリーダー作品に出会うことが出来たこと、本当に良かったと思っています。

今は、これを機会に、Blood, Sweat & Tearsで出会ったアーティストたちのその後の軌跡を探し、また聴いてみようと考えています。

Track listing
1.Gloria's Step (Scott LaFaro)
2.How Do You Keep the Music Playing? (Michel Legrand, Alan Bergman, Marilyn Bergman)
3.All of You" (Cole Porter)
4.North West (Jeff Williams)
5.Slick Rick (Larry Willis)
6.Missing You (Larry Willis)
7.Ezekiel Saw the Wheel (Traditional)
8.Dance Cadaverous (Wayne Shorter)
9.Alone Together (Arthur Schwartz, Howard Dietz)

Personnel
Larry Willis – piano
David Williams – bass
Lewis Nash – drums

Recorded
April 27, 1992 SteepleChase Digital Studio


How Do You Keep the Music Playing

How Do You Keep the Music Playing

  • アーティスト: Willis, Larry
  • 出版社/メーカー: Steeplechase
  • 発売日: 1992/12/26
  • メディア: CD




※※※
最近知って驚いたのは、日本人なら誰でも知っている、とある曲の作曲者のこと。

その曲は、”むすんでひらいて”。

ほとんどの人が日本童謡だと思ているのではと察するのですが..........。

なんと!!
それが18世紀フランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソー だというのです。

調べてみるとルソーは音楽好きで音楽を学んでおり、確かこの曲の作曲者だとのこと。

日本には、明治にヨーロッパから伝えられたものだそうなのですが、さらに驚いたのは、その時代にこのメロディにつけられ流行したという日本語の歌詞。
その一節をご紹介すると

見渡せば、寄せてくる 敵の大軍 面白や
スハヤ戦闘(たたかい)始まるぞ、イデヤ人々攻め崩せ。

ー以下略ー

今の子どもたちの無邪気な顔思い浮かぶ歌詞ではなく、全く裏腹の血なまぐさい歌詞。
どうやら軍歌として歌われたようで、タイトルは”戦闘歌”だったそうなのです。

二重の驚き!!
古き歌、そのルーツ、侮れないものがあるものですね。




nice!(19)  コメント(2) 
共通テーマ:PLAYLOG

nice! 19

コメント 2

tarou

お早うございます、天草四郎ミュージアムに
コメントを有難うございました。
昔は社内旅行が有りましたね、旅行先で魚釣り、
釣り好きにはステキなイベントです(^^)v
こちらでは、東京湾の太刀魚釣りが有名ですが、
釣りたての、お刺身・塩焼きは最高です。
日本の童謡に、ヨーロッパから伝えらものが
有ったとは驚きです。音楽には国境がないと
いうことですね(^^)v
by tarou (2023-07-04 09:37) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

tarouさん
”むすんでひらいて”の話、明治時代、西欧化を進めるため、積極的に西欧音楽教育実施、その結果、外国産のメロディも入って来ることになったとのことなのですけど、ただ歌詞は、訳ではなく日本のオリジナルものに拘って
いたのだとか。

この”むすんで”の他にも、原曲はスコットランド民謡の”Auld Lang Syne”と曲で、それにオリジナルの日本語の歌詞つけた”蛍の光”などがあるのだそうです。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-07-06 13:56) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント