Jacques Loussier;デジタル・プレイ・バッハ [音源発掘]

今年最初の、音楽談義。

静かなお正月の雰囲気にあうような、そんな感じでJ.S.バッハの作品を取上げてみることにしました。

といっても、バッハをピアノトリオで演奏した作品、

       

それは、フランスのジャズピアニスト、ジャック・ルーシェの1986年の作品”デジタル・プレイ・バッハ”です。


J.Sバッハ、この偉大なる作曲家は、作曲家であると共に偉大なる即興演奏家であったのです。

そのことは、バッハの息子エマニエルよって書かれた略伝、その中のあの有名なバッハの管弦楽曲”音楽の捧げもの”の作曲譚にも見ること出来ます。

そこには、時のプロイセン王国の国王、フリードリッヒ2世の御前演奏に招かれたバッハが、そこで、王の指定した主題に基づき演奏することを命ぜられ、そこで即座に見事な即興演奏披露し、王を喜ばせたとあるのです。

そして、さらに王の提示した主題に対し、その場で即興演奏しなかったものを持ち帰り、後に展開し譜面にして王に送り届けたのが、この”音楽の捧げもの”だと書かれているのです。


バッハとジャズの馴初めには、こうしたバッハの即興性が、現代における即興演奏家であるジャズメンに相共通するものを感じさせ、その技法を取り入れる方向へ走らせらたのだと云われています。

こうした、バッハの技法を最初にジャズに取り入れたのは、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のピアニスト ジョン ルイスよってでした。

ルイスは、このMJQでバッハの対位法などの技法を積極的に取り入れた演奏で、ジャズの世界に新風を贈りこむことになったのですが、さらに、バッハの作品をジャズのフォーマットで演奏しようとする試みが行われるようになります。

そのパイオニアが、本邦のジャック・ルーシェ。
1959年に発表された”プレイ・バッハ”と題する3枚の作品がそれです。

しかし、この作品、今聴くとバッハの音楽をピアノトリオで演奏したものの、音楽的躍動感に欠け、何か固い印象が残るものでした。

ルーシェもこの出来にはけして満足していなかったように思え、その後もバッハ作品を演奏し続けているのですが、1978年にこの最初のトリオを解散、バッハ生誕300年の1985年に立ち上げた新トリオで制作したのがこの作品なのです。

そのサウンドは、前の作品にあった固い印象はまったくなく、ルーシェ自身バッハを完全に自己の中に消化して、瑞々しく自由奔放に歌いあげている様子が聴き取れる美しく楽しい作品になっているのです。。

それでは、その中から、あの有名な”G線上のアリア”をどうぞ。




今や多くのジャズアーテイストが演奏している”G線上のアリア”。
その中でこのルーシェの演奏は、もっともバッハを自己の中にきっちりと消化しつくした名演ではないかと思います。

ルーシェ以後、ヨーロピアン・ジャズトリオをはじめ、美しいクラシックの調べを、見事に消化し、軽快なタッチですぐれた演奏をするアーティストが多く生まれています。

ルーシェは、そのパイオニアであり、今もバッハ以外の作曲家、ヴィバルディ、ドビッシー、サティなどの作品等、新しい分野に挑戦し続けてるとのこと。
これからの彼の活躍にも、注目していきたいものだと思います。

ところで、こんなバッハの音楽もいいものでしょう。





曲目リスト
1. G線上のアリア
2. 2声のインベンション第8番ヘ長調
3. シチリアーノ・ト短調
4. トッカータとフーガ・ニ短調
5. 前奏曲第1番ハ長調
6. 前奏曲第2番ハ短調
7. 主よ,人の望みの喜びよ
8. イタリア協奏曲ヘ長調 第1楽章
9. イタリア協奏曲ヘ長調 第2楽章
10. イタリア協奏曲ヘ長調 第3楽章
11. コラール前奏曲
12. 幻想曲ハ短調
13. ピアノ協奏曲第1番ニ短調 第1楽章
14. ピアノ協奏曲第1番ニ短調 第2楽章
15. ピアノ協奏曲第1番ニ短調 第3楽章

ジャック・ルーシェ(ピアノ)、アンドレ・アルピノ(ドラム)、
バンサン・シャルボン(ベース)
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コメント 13

せいじ

ピアノによる「G線上のアリア」もなかなかですね[嬉しい顔]
by せいじ (2011-01-03 12:00) 

ヒサ

Jazzアレンジの「G線上のアリア」がすごく新鮮でした。
「主よ人の望みの喜びよ」もどういうアレンジになっているのか
興味があります[嬉しい顔][複数のハート]
by ヒサ (2011-01-03 13:25) 

ブラックアビブ (旧名 本物ホネツギマン)

バッハについては何たるか全く分からない私でも、ジョン・ルイスのバッハのプレリュード&フーガのVol4迄の4枚のアルバムは心が落ち着きます。癒しとかの次元とも違う様な心の安らぎがありますね。色んな方がバッハの演奏してるのですね。
by ブラックアビブ (旧名 本物ホネツギマン) (2011-01-04 10:11) 

KSGY

シャッフルビートでトッカータとフーガが楽し過ぎます[嬉しい顔] これ良いですね~[ムード]
by KSGY (2011-01-05 08:01) 

老年蛇銘多親父

せいじさん[ペン]ありがとうございます。

この曲は、ロン・カーターや木住野佳子、ヒューバート・ローズ等、多くのジャズメンが取り上げていますけど、やはりルーシェの演奏が、原曲の良さを一番よく伝えているなと思います。[複数のハート]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-05 12:50) 

老年蛇銘多親父

ヒサさん[ハート]&コメントありがとうございます。

「主よ人の望みの喜びよ」のアレンジも、独特なものがあって、ルーシェならではという感じですよ。[晴れ]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-06 06:09) 

老年蛇銘多親父

本物ホネツギマンさん[ハート]&コメントありがとうございます。

モーツァルトもそうですが、バッハも人間の生理をよく刺激する音を知っていて、それをうまく使っった曲作りをしている。そのように思います。[晴れ]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-06 06:15) 

老年蛇銘多親父

KSGYさん[ハート]&コメントありがとうございます。

楽しんでいただいて良かった思います。
この人の、バッハも楽しいですけど、ヴィバルディの四季も楽しい作品ですよ。[晴れ]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-06 06:20) 

老年蛇銘多親父

マチャさん
river883Rさん
ねこのめさん
ジンジャー@欧州支部長さん
ぷにょさん
KGさん
こーいちさん

[ハート]ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-06 06:23) 

ituki

う~ん ジャック・ルーシュ 凄いテクニックですね~
バッハのアレンジはよく耳にしますが さすがジャズにもクラシックにも精通している親父さん バッハを消化してる・・・なんてなかなか言えない言葉です^^[複数のハート]
ジャズの楽しさもクラシックの香りも織り交ぜながら バッハの荘厳さが感じられる
ほんとに他の曲どうなってるのか聴いてみたいですね^^

 
by ituki (2011-01-10 00:27) 

老年蛇銘多親父

itukiさん[ハート]&コメントありがとう。

昨年11月、ビデオを整理していたら、ルーシェの1997年の来日公演のテープが出てきて、そこでいつかはこの作品取り上げようかと思っていたのですが、なんとなくお正月がふさわしいように感じ書いてみました。[嬉しい顔]


ジャズのバッハでは、このルーシェと、以前に書きましたが、ベニー ゴルソンのビッグバンドものがいいと思います。[複数のハート]

ゴルソンの紹介はこちら  
 http://playlog.jp/Malo/blog/2009-04-04

ただし、音源を見つけるのは難しいかもしれません。[悲しい顔]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-10 07:50) 

老年蛇銘多親父

かなっぺさん[ハート]ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-12 06:11) 

老年蛇銘多親父

りなみちゃん[ハート]ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-23 21:19) 

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