ファンク・ビートに乗せられたクラシックの名曲♪・Eumir Deodato: Deodato 2 [音源発掘]

音楽記事を書き始めて、早、3年。
これまで多くのアーティストを取り上げて来ましたが、
中でもとりわけ多いのがピアニスト。
いつの間にか50人のピアニストを取り上げることを目標に書き綴るようになってしまったのですが、その数も今回で49人目。 あと一人で50人のところまでやって来ました。

ということで、今回はこの曲にまつわる、あるピアニストの話。まずはこの演奏をご覧ください。



現代アメリカ音楽を創り上げた偉大なる作曲家 George Gershwin、その彼の名曲”Rhapsody in Blue”。
巨匠 Leonard Bernsteinが、ピアノを弾きながらの指揮を取っている珍しい演奏の映像です。

そこで、今日はお堅くクラシック。そのピアニストはバーンスタイン??



ではなく、70年代の初め、クロスオーバーやフュージョンという呼び名がなっかった頃、このバーンスタインと縁の深い”Rhapsody in Blue”を、ファンク・ビートに乗せ人気を博したブラジル人キーボード奏者のEumir Deodatoのお話。


そのエウミール・デオダードの演奏、クラシックのオリジナルと聴き比べてみようと冒頭のバーンスターインに登場を願ったということで、早速、デオダートの”Rhapsody in Blue”を聴いてみたいと思います。



いきなり原曲とはかけ離れたファンクビートのイントロ、テーマはどうなるのだろうと思って聴いていると、ストリングが耳慣れた”Rhapsody in Blue”の後半の主題をファンク・ビートに乗せ提示をし、続いて各楽器のソロに入っていく。
そして最後は、この曲の最初の主題が静かに流れ曲は幕を閉じるという構成。

元々中間部に即興演奏のパートが織り込まれているこの曲に、大胆にファンク・ビートを取り入れ現代風にアレンジした、デオダートの編曲が冴渡る名演奏だと思います。

deodato2.jpg


さて、この演奏が収められているのは、60年代初めからブラジルで活躍してきたデオダートが、1972年 CTIレコードに移り、アメリカ・デビュー作となった"Prelude"に続く1973年 第2作目の作品として発表したアルバム”Deodato 2"。

デオダードがアメリカ・デビューを果たしたこの時期、アメリカの音楽シーンではサンフランシスコを中心としたラテン系ミュージシャンの台頭が著しく、サンタナをはじめ多くのラテンのミュージシャンにより、ラテンの要素を持った新しいスタイルの音楽が生れ脚光を浴びていた時期。

そうした最中、クラシック作品をにラテン・タッチを加味し、ジャズテイスト溢れる音楽に作り変えていったその斬新な手法はなんとも小気味よく、当時のラテン人気の波にも乗り、瞬く間に大きな反響を呼んだものでした。


さてこの演奏、さらに注目したいのは、その演奏陣。

まずはパナマ生れのドラマー ビリー・コブハム。
最も早いスティックさばきを見せるドラマーと言われ、マイルス・ディビスやジョン・マクラグリンのマハヴィシュヌ・オーケストラへの参加で知られる、この名ドラマーのこのアルバムへの参加は、サウンド全体をさらにパーカッシブな躍動的なものとし、引き締まったもの仕上げているように思えます。

そして、次にギターのジョン・トロペイ。
そのロック・ティストを感じる音色と骨太なプレーは、このコンボの演奏に一本の太い芯を通してくれているかのように感じます。

ベースはスタンリー・クラーク。
チック・コリアのグループ リターン・トゥ・フォーエヴァーで名を上げたこの名ベーシスト、彼の強靭さとしなやかさを兼ね備えたスピーディなサポートが気持ちいいですね。

それでは、そうしたメンバーによるサウンドをこのアルバムから、もう一曲。
曲は"Super Strut"



デオダードという人、80年代に入ると演奏活動を控え音楽シーンの表舞台か遠ざかっていたこともあり、彼を知らないとう方もいるかと思いますが、スムース・ジャズの元祖的存在として、また近年活発に活動を再開したこともあり、是非、また耳を傾けていただければと思います。

Track listing
1."Nights in White Satin" (Justin Hayward)   サテンの夜
2."Pavane for a Dead Princess" (Maurice Ravel)
3."Skyscrapers" (Eumir Deodato)
4."Super Strut" (Eumir Deodato)
5."Rhapsody in Blue" (George Gershwin, arrangement and adaptation by Eumir Deodato)

Personnel
Eumir Deodato(key) John Tropea(g) Stanly Clark(b) Billy Cobham(ds)

Recorded
Apr 12, 1973-May 16, 1973

それでは、最後にラテンビートでクラシック演奏し、彼を世界の檜舞台に押し上げた、そのきっかけとなったこの曲を聴きながら、デオダード再発見を楽しんで下さい。





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コメント 7

ituki

「Rhapsody in Blue」のスタンリー・クラークいいですね~^^[ラブラブハート]

ブラジル的なラテンはそんなに感じないけど・・・ 
もっとスケールの大きなジャンルに入るというか 上手く言えませんが^^; クラシックを上手く使って 管楽器や弦楽器を違和感なく取り入れて 自分流にアレンジしている 優れたコンポーザーって感じを受けました

最後の曲のR.シュトラウスやラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」とかも 原曲のイメージを崩さずデオダード流に仕上げられているのが凄いですね
「pavane for a dead princess」
http://www.youtube.com/watch?v=l8fZLcbxEhk&fmt=18
by ituki (2011-11-20 11:51) 

マチャ

ガーシュウィン、いいですね~。
僕もずっと、音楽記事にしようと考えているのですが、なかなか
筆が進みません。

バーンスタインのこの映像も珍しいですが、ファンクになった
ラプソディ・イン・ブルー、すごいですね。
こんなノリの良い作品に仕上がるとは驚きです。

ガーシュウィン作品自体がさまざまなジャンルの
クロスオーバー要素があるので、こういう解釈も不自然に
なりませんね。
by マチャ (2011-11-20 18:11) 

TAMA

Rhapsody in Blue 大好きです!
ミュージカル映画の「巴里のアメリカ人」で初めて聞いたと思いますが・・。
色んな方が演奏されてますが、
Eumir Deodatoのはすごくウキウキする感じで
これもいいですね♪

by TAMA (2011-11-21 10:29) 

老年蛇銘多親父

itukiさん

クラークとコブハムのリズムセクション、本当によくきまってますよね。

デオダート、クラシック素材にした作品もいいのですけど、スィング・ジャズを素材にしたこの曲もまたいいですよ。

http://www.youtube.com/watch?v=EBZY6urezxQ

今回、亡き王女のパバーヌを取り上げなかったのは、この曲、多くのジャズの演奏家が演奏しているので、名曲名演の散歩道で別に取り上げることにしようと思ったからなのです。

どんな演奏が聴けるか、楽しみしてください。
by 老年蛇銘多親父 (2011-11-21 21:04) 

老年蛇銘多親父

マチャさん

ガーシュインお好きなのですね。

ガーシュインがクロス・オーバー、おっしゃる通りですね。
西欧の音楽であるクラシックに黒人達のブルー・ノートを取り入れたこと自体、クロス・オーバーですから。

また、ガーシュインの曲を使っていろいろな演奏表現を紹介したいと思っていますので、よろしくお願いします。
by 老年蛇銘多親父 (2011-11-21 21:12) 

老年蛇銘多親父

TAMAさん

ミュージカルでRhapsody in Blue に出会ったのですか。

このミュージカル、ガーシュインが、この開祖的存在だと思っています。

パリのアメリカ人での弦楽器の使い方など、後のミュージカルの音楽によく似た形で取り入れられていますし、ガーシュインの功績を継承した巨匠、バーンスタインなどはミュージカルの名作 ウェスト・サイド物語を作曲している。

そういう意味からも、ガーシュインこそ現代アメリカ音楽の原点といえるのだと思います、
by 老年蛇銘多親父 (2011-11-21 21:28) 

老年蛇銘多親父

えい♪さん
せいじさん
raccoonさん
ねこのめさん
podpodさん
keita-gotoさん
mk1spさん
こーいちさん

niceありがとうございます。



by 老年蛇銘多親父 (2011-12-04 15:51) 

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