ジャズとロックで味付けされた古き日本の歌:矢野顕子・長月 神無月 [音源発掘]

最近手に入れたCD、以前からかなり期待をしていたのですが、聴いてその期待を遥かに上回る出来にノック・アウト。
久々に背筋に冷たいものが走るほどの衝撃を受け、聴くほどに胸の高まりを感じたのは、矢野顕子×上原ひろみの”Get Together ~LIVE IN TOKYO~”。

2台のピアノと矢野顕子のヴォーカルという最小ユニットの演奏なのに、矢野顕子の個性的なヴォ-カルと、上原ひろみとの以心伝心とも言うべき一体感のあるダイナミックなピアノの饗宴が、スリリングで刺激的な音空間を作っている。

今年聴いた作品の中でも最高の稀に見る名演奏じゃないかと思っているのですが。

そこで、今日のアーティストは、その矢野顕子。

そしてその作品は、”Get Together ~LIVE IN TOKYO~”についてはいずれまた筆を執らしていただくこととして、1976年”JAPANESE GIRL"デビューした矢野顕子、その直後のライブの様子を捉えた作品で現在の矢野顕子の原点とも言うべき”長月 神無月”選んでみました

長月神無月.jpg


私がこのアルバムを最初に聴いたのは、当時美術学校に通っていた妹が、友達から発表されて間もない”JAPANESE GIRL"とこのアルバムを借りてきて、カセット・テープに録音してくれというので、ターン・テーブルに乗せたのが始まり。

どうせ当時はやりのニューミュジックの類だろうと思っていたところ、聴こえて来たのは、日本の童謡や民謡、そして古い歌謡曲を独特のアレンジと唱法で仕上げた音楽。

ロックやジャズのエッセンスを取り込んだ純度の高い演奏。

日本の曲のこんな解釈もあるのだと感心しつつ、さらそのピアノを聴くとその腕前は相当のもの。
オーバーな言い方かもしれないのですけど、このアルバムを聴く前に、聴いていたジャズピアノ巨匠キース・ジャレットのソロ・ピアノと比べても遜色がないと感じられたほど。
実に面白い演奏。テープ録りのつもりが、いつのまにかその音楽世界に惹き込まれてしまったのでした。


そこでまず曲を聴いてもらうこととして、最初の曲は、今も矢野顕子さんのコンサートでは定番となっている曲、”あんたがたどこさ”です。 



自由奔放なピアノの弾き語り、このシンプルで懐かしさの香るこの童謡がジャズ・ティストを帯びて聴こえてくる面白い演奏ですね。

そしてお次は、皆さんご存知のこの曲。



何処となく重々しさあるあの日本国国歌、あの雅楽的な旋律を持つこの曲が、完全なロックになっている。
実に驚きのアレンジです。

いろいろな”君が代”を聴いてきましたけど、このアレンジは勝るものは今だないように思います。

そして、バンドとの演奏でもう一曲。



三橋美智也の歌っていた古い歌謡曲”.達者でナ”です。
日本情緒溢れるこの曲も、その味を残しながら現代的な響きを持った音楽にリニューアルされているという感じですね。
私のお気に入りの1曲です。



このアルバム、発表されてから35年が過ぎようとしているのに、今だその個性的な輝きは色あせていない。
そして今、上原ひろみという凄腕パートナーと組、さらにパワー・アップしている矢野顕子さん、これからもどんな音楽を聴かせてくれるのか、本当に楽しみな存在だと思います。


Track listing
1.あんたがたどこさ (わらべうた)
2.あわて床屋 (作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰)
3.いもむし ごろごろ (わらべうた)
4.待ちぼうけ (作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰)
5.アメフリ (作詞:北原白秋 作曲:中山晋平)
6.相合傘 (作詞・作曲:細野晴臣)
7.金太郎 (作詞:石原和三郎 作曲:田村虎蔵)
8.あの町この町 (作詞:野口雨情 作曲:中山晋平)
9.風太II (作詞・作曲 矢野顕子)
10.君が代 (作詞:日本国国家 作曲:林広守)
11.達者でナ (作詞:横井弘 作曲:中野忠晴)
12.絹街道 (作詞・作曲:細野晴臣)
13.津軽ツアー (作詞・作曲:矢野顕子)
14.ジャイアンツを恋うる歌 (作詞:矢野顕子 作曲:Edmundo Zaldirar)

Personnel
矢野顕子: ボーカル、ピアノ、キーボード(mini-moog)
駒沢宏季: スティールギター、パーカッション、コーラス
平野融: ベース、コーラス
上原裕: ドラム、水笛
かしぶち哲郎: 和太鼓、チャンチキ、ティンパニー、鈴
堅田喜三久: つづみ、虫笛
山上進: 津軽三味線、囃子笛

Recorded
1976年9月12日、渋谷公会堂&1976年10月、芝郵便貯金ホール



さて、矢野顕子さんと上原ひろみさんのデュオコンサート。
書くだけ書いてお預けとは酷いと言われそうなので。
”Get Together ~LIVE IN TOKYO~”に収められた今年の演奏ではありませんが、2009年ノ―シ―・ジャズ・フェスティバルの映像がありましたのでそれをご覧ください。



Miles Davisの名曲”So What”が”ラーメン食べたい”なっていく奇想天外な展開。
二人の熱いピアノ・ソロの応酬が凄いですね。


青森育ちの矢野顕子さん、去る12月9日にはその青森で上原ひろみとコンサートを開いたとのこと。
まだまだ震災の余韻が色濃く残る東北の地にこの演奏、きっと大いなる元気を呼び起こしたのではないかと思います。




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コメント 5

えい♪

どの曲も面白いですね~
矢野顕子を見直してしまいました。
by えい♪ (2011-12-20 22:38) 

老年蛇銘多親父

えい♪さん

矢野顕子という人、どうも奇矯なイメージが強く敬遠されがちなアーティストかもしれませんが、そのインプロヴィゼーション能力の高さはかなりのものだと思っています。

上原ひろみとのデュオでは、その能力がさらに大きく開花している。

この”長月 神無月”は、そんな彼女の原点を聴くこと出来るものとして、また別の視点から聴いていただければその良さが分かるのではと思います。
by 老年蛇銘多親父 (2011-12-23 10:09) 

かなっぺ

アッコさんとひろみちゃんのDUOは
いいですね~[__るんるん]
矢野顕子さんはあの声が好き嫌い
分かれるところでしょうか?
清水ミチコとセッション?してた
ドレミの歌がちゃんと?JAZZしてて
笑えたのを思い出しました。

by かなっぺ (2011-12-24 19:07) 

老年蛇銘多親父

かなっぺさん

矢野顕子さん、確かに癖が強いので好き嫌いがハッキリしてしまいますよね。
私も、初めて彼女を聴いた時は、何じゃこれと思いましたからね。

清水ミチコとセッション、これ会話だけでも緊張感のある???ジャズになってしまうように思います。

これなんかもCD化したらいいのにと思いますけどね!!!
by 老年蛇銘多親父 (2011-12-25 11:42) 

老年蛇銘多親父

powaちゃん
bee-15さん
itukiさん
yamさん
R8さん
マチャさん
TAMAさん
こーいちさん
といくさん
せいじさん
ねこのめさん

皆さん、niceありがとうございます。
これを機に矢野顕子さん聴き直してみてはいかがですか。
意外と奥が深いアーティストだと思います。





by 老年蛇銘多親父 (2011-12-31 14:22) 

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