400年の時を越え愛され続けている名曲 [名曲名演の散歩道]
今回のお話は、名曲名演の散歩道。
このタイトルを見て、驚かれた方もいるかもしれませんが、400年の時を越え愛され続けた名曲というタイトル。
400年時を越えているとすれば、この曲が生まれたのは16世紀後半。
その頃の日本は、かの信長さん、秀吉さん 家康さんが活躍していた安土桃山時代。
「そんな昔の曲なんて知らないよ。クラシックの曲ではないですか」という言葉が返ってきそうですけど、あにはからんや、その曲、おそらくこれを知らぬ人はまずいないという、超有名なポピュラー・ソングなのです。
そういうと「そんな曲あるのですか!なんていう曲ですか、もったいぶらないで早く教えろ」ということになるのでは思いますので。
まずこちらPVをご覧ください。
この曲、おわかりですね。
イングランド民謡として知られる”Greensleeves”ですよね。
小中学校時代、音楽の授業で習ったなんて方も多いかと思いますが、今では市町村の防災無線や時報を知らせる音楽としてもあちらこちらで使われている、ポピューラー中のポピュラーといってもよいほどの名曲ですね。
その時報の”Greensleeves”は、
先日の震災による液状化で一躍有名になった新浦安での風景です。
街の雑踏中で鳴る静かなイングランドの響き、喧噪さの中に潤いのひと時をもたらしてくれる、そうした味わいを感じます。
ところでこの曲を今回選んだのは、昨年12月から書いた”2012年印象に残った作品”で取り上げた1枚のアルバムの中に収められていた”Greensleeves”。
その演奏を聴いて、そういえばロックやジャズの分野においても多くのアーティストがこの曲を演奏していたな思い、我が家のライブラリーを探してみると出てくる出てくる。
それならば、それぞれの聴き比べを兼ねて記事を書いてみようということで、始めたのがこのお話。
そこで、このお話のきっかけとなったその演奏、そこからお話を始めることにいたしましょう。
英国のプログレシッブ・ロック・グループ Jethro Tull の演奏。
”2012年 印象に残った作品(第1話)”でご紹介した、彼らの2004年のアルバム”Christmas Album”に収録されていたものです。
原曲の哀愁を帯びた静かな憂いを感じさせる演奏とは打って変わり、弾むリズムに乗って登場する明るく軽やかなイアンのフルートが、原曲とまったく異なった喜びの世界を作り出しているかのように思えます。
さて、この”Greensleeves”という曲、調べてみるとその初見は1580年の書籍出版記録にみられるものだそうで、その作者は時の英国国王ヘンリー8世で、その王が、彼の愛を一度は拒絶した、のちに王妃となるアン・ブーリンのために作ったものだったという伝説があるのだとか。
そしてまた一説には、レディ・グリーンスリーブスとは、Greensleeves(緑の袖)をつけている女性は当時娼婦であることを意味していたことから、魅力的な娼婦への愛の心を歌ったものだとか、その成立には今だ多くの謎に包まれているのだということなのです。
それにしても、この歌の初見という1580年は、あの織田信長の本能寺の変の2年前、そんな昔から幾世代もの人の営みを乗り越え、今尚、輝きを失っていないこの曲、その普遍的生命力には驚かされてしまいます。
さて、ここでもう一つ、ロックのアーティストによる”Greensleeves”を聴いてみることにいたしましょう。
えーっ!この人が思う、この演奏などいかがでしょう。
ロック・ギターの真髄ともいわれるエリック・クラプトン、ジミー・ペイジとならび英国の3大ギタリストと言われているJeff Beckの”Greensleeves”です。
ベックの初期の作品”Truth”からのこの演奏、日頃、静かなワイルドさに満ちた彼のプレーとはまた違う、静の中に静がある、彼の思索的な一面が見える演奏だと思います。
スローな曲に見せる彼の感性の豊かさ、ここにも息づいていました。
ロックサイドからの”Greensleeves”は、とりあえずこの辺にして、次はジャズサイドの”Greensleeves”。
ロック側からギターの演奏をお聴きいただきましたので、最初はこちらもギタリストの演奏で聴いていただきたいと思います。
私の好きなギタリスト、Kenny Burrell の”Greensleeves”です。
原曲のしっとりとした優しさをはぐくんだテーマ、そしてそれに続くスィング感に満ちた、バレル特有のブルーな香り漂わせたギタープレー。
バレルならでは”Greensleeves”がここにあります。
バックを務めるギル・エヴァンス・オーケストラの、控えめながらも大胆なアレンジもこのサウンドを大いにもりたてています。
それにしても、ベック、バレルのギターによる”Greensleeves”の演奏、共にギターという楽器でありながら違った面持がある、ギターという楽器の表情の豊かさがよくわかるところ、実に興味深いものあるのを感じました。
そして、ジャズサイドから、もう一つ。
今度は、サックス・プレヤーによる”Greensleeves”。
一体どんなサウンドが登場することでしょうか。
サックスの巨匠 John Coltraneの”Greensleeves”です。
コルトレーンがImpulesレコード移籍後の第1作目の作品、1961年発表のアルバム”Africa/Brass”からの演奏です。
ここでコルトレーンが手にした楽器は、前作My Favorite Things で初めて手にしたソプラノ・サックス。
オーボエと似た音色を持つこの楽器による”Greensleeves”は、この曲のメロディに新鮮な響きをもたらしているように思え、私自身、この演奏を初めて聴いた時、聴きなれたこの旋律に何か違った臭いを感じ、以来お気に入り筆頭の”Greensleeves”となってしまったものなのです。
フレンチ・ホルンを加えたビッグ・バンドの演奏をバックに、滔々と吹きまくるコルトトレーンのソプラノからは、赤黒い情念の炎が噴き出している、そうした強烈なパワーを秘めた名演ではないかと思います。
そのチューンは600種以上にものぼるといわれている”Greensleeves”、今回は、ロック、ジャズのアーティストによる演奏中から私の印象に残った演奏のいくつかご紹介しましたが、その締め括りとしてヴォーカル・ヴァージョンの”Greensleeves”の演奏を聴いていただきたいと思います。
ディープ・パープル、レインボーのギタリストとして名を知られるRitchie Blackmore 、その彼と現在夫人となったCandice Nightの出会いによって生まれたバンド”Blackmore's Night”による"Greensleeves”です。
1997年発表の”Shadow of The Moon”からの演奏。
ヨーロッパ各地の古き民謡をベースにした曲作りで知られる彼等らしい演奏だと思います。
それにしても”Greensleeves”、古き面影を宿しながら現代をも吸収する、そこに懐の奥深さと強い生命力を感じます。
それこそ、真の名曲の姿だということなのかもしれませんね。
------------------------------------------------------------
2月ですね。
あの1月の大雪の以来、横浜みなと未来地区対岸のとある場所に籠る毎日続き、なかなか記事の筆が進まない。
といいながら、ある日その対岸見えた横浜の風景、
忙しさの中にも安らぎのひと時を味わうことができました。
このタイトルを見て、驚かれた方もいるかもしれませんが、400年の時を越え愛され続けた名曲というタイトル。
400年時を越えているとすれば、この曲が生まれたのは16世紀後半。
その頃の日本は、かの信長さん、秀吉さん 家康さんが活躍していた安土桃山時代。
「そんな昔の曲なんて知らないよ。クラシックの曲ではないですか」という言葉が返ってきそうですけど、あにはからんや、その曲、おそらくこれを知らぬ人はまずいないという、超有名なポピュラー・ソングなのです。
そういうと「そんな曲あるのですか!なんていう曲ですか、もったいぶらないで早く教えろ」ということになるのでは思いますので。
まずこちらPVをご覧ください。
この曲、おわかりですね。
イングランド民謡として知られる”Greensleeves”ですよね。
小中学校時代、音楽の授業で習ったなんて方も多いかと思いますが、今では市町村の防災無線や時報を知らせる音楽としてもあちらこちらで使われている、ポピューラー中のポピュラーといってもよいほどの名曲ですね。
その時報の”Greensleeves”は、
先日の震災による液状化で一躍有名になった新浦安での風景です。
街の雑踏中で鳴る静かなイングランドの響き、喧噪さの中に潤いのひと時をもたらしてくれる、そうした味わいを感じます。
ところでこの曲を今回選んだのは、昨年12月から書いた”2012年印象に残った作品”で取り上げた1枚のアルバムの中に収められていた”Greensleeves”。
その演奏を聴いて、そういえばロックやジャズの分野においても多くのアーティストがこの曲を演奏していたな思い、我が家のライブラリーを探してみると出てくる出てくる。
それならば、それぞれの聴き比べを兼ねて記事を書いてみようということで、始めたのがこのお話。
そこで、このお話のきっかけとなったその演奏、そこからお話を始めることにいたしましょう。
英国のプログレシッブ・ロック・グループ Jethro Tull の演奏。
”2012年 印象に残った作品(第1話)”でご紹介した、彼らの2004年のアルバム”Christmas Album”に収録されていたものです。
原曲の哀愁を帯びた静かな憂いを感じさせる演奏とは打って変わり、弾むリズムに乗って登場する明るく軽やかなイアンのフルートが、原曲とまったく異なった喜びの世界を作り出しているかのように思えます。
さて、この”Greensleeves”という曲、調べてみるとその初見は1580年の書籍出版記録にみられるものだそうで、その作者は時の英国国王ヘンリー8世で、その王が、彼の愛を一度は拒絶した、のちに王妃となるアン・ブーリンのために作ったものだったという伝説があるのだとか。
そしてまた一説には、レディ・グリーンスリーブスとは、Greensleeves(緑の袖)をつけている女性は当時娼婦であることを意味していたことから、魅力的な娼婦への愛の心を歌ったものだとか、その成立には今だ多くの謎に包まれているのだということなのです。
それにしても、この歌の初見という1580年は、あの織田信長の本能寺の変の2年前、そんな昔から幾世代もの人の営みを乗り越え、今尚、輝きを失っていないこの曲、その普遍的生命力には驚かされてしまいます。
さて、ここでもう一つ、ロックのアーティストによる”Greensleeves”を聴いてみることにいたしましょう。
えーっ!この人が思う、この演奏などいかがでしょう。
ロック・ギターの真髄ともいわれるエリック・クラプトン、ジミー・ペイジとならび英国の3大ギタリストと言われているJeff Beckの”Greensleeves”です。
ベックの初期の作品”Truth”からのこの演奏、日頃、静かなワイルドさに満ちた彼のプレーとはまた違う、静の中に静がある、彼の思索的な一面が見える演奏だと思います。
スローな曲に見せる彼の感性の豊かさ、ここにも息づいていました。
ロックサイドからの”Greensleeves”は、とりあえずこの辺にして、次はジャズサイドの”Greensleeves”。
ロック側からギターの演奏をお聴きいただきましたので、最初はこちらもギタリストの演奏で聴いていただきたいと思います。
私の好きなギタリスト、Kenny Burrell の”Greensleeves”です。
原曲のしっとりとした優しさをはぐくんだテーマ、そしてそれに続くスィング感に満ちた、バレル特有のブルーな香り漂わせたギタープレー。
バレルならでは”Greensleeves”がここにあります。
バックを務めるギル・エヴァンス・オーケストラの、控えめながらも大胆なアレンジもこのサウンドを大いにもりたてています。
それにしても、ベック、バレルのギターによる”Greensleeves”の演奏、共にギターという楽器でありながら違った面持がある、ギターという楽器の表情の豊かさがよくわかるところ、実に興味深いものあるのを感じました。
そして、ジャズサイドから、もう一つ。
今度は、サックス・プレヤーによる”Greensleeves”。
一体どんなサウンドが登場することでしょうか。
サックスの巨匠 John Coltraneの”Greensleeves”です。
コルトレーンがImpulesレコード移籍後の第1作目の作品、1961年発表のアルバム”Africa/Brass”からの演奏です。
ここでコルトレーンが手にした楽器は、前作My Favorite Things で初めて手にしたソプラノ・サックス。
オーボエと似た音色を持つこの楽器による”Greensleeves”は、この曲のメロディに新鮮な響きをもたらしているように思え、私自身、この演奏を初めて聴いた時、聴きなれたこの旋律に何か違った臭いを感じ、以来お気に入り筆頭の”Greensleeves”となってしまったものなのです。
フレンチ・ホルンを加えたビッグ・バンドの演奏をバックに、滔々と吹きまくるコルトトレーンのソプラノからは、赤黒い情念の炎が噴き出している、そうした強烈なパワーを秘めた名演ではないかと思います。
そのチューンは600種以上にものぼるといわれている”Greensleeves”、今回は、ロック、ジャズのアーティストによる演奏中から私の印象に残った演奏のいくつかご紹介しましたが、その締め括りとしてヴォーカル・ヴァージョンの”Greensleeves”の演奏を聴いていただきたいと思います。
ディープ・パープル、レインボーのギタリストとして名を知られるRitchie Blackmore 、その彼と現在夫人となったCandice Nightの出会いによって生まれたバンド”Blackmore's Night”による"Greensleeves”です。
1997年発表の”Shadow of The Moon”からの演奏。
ヨーロッパ各地の古き民謡をベースにした曲作りで知られる彼等らしい演奏だと思います。
それにしても”Greensleeves”、古き面影を宿しながら現代をも吸収する、そこに懐の奥深さと強い生命力を感じます。
それこそ、真の名曲の姿だということなのかもしれませんね。
------------------------------------------------------------
2月ですね。
あの1月の大雪の以来、横浜みなと未来地区対岸のとある場所に籠る毎日続き、なかなか記事の筆が進まない。
といいながら、ある日その対岸見えた横浜の風景、
忙しさの中にも安らぎのひと時を味わうことができました。
ジェフ・ベックの”Greensleeves”、心が洗われるようなアコースティックギターの音に癒されます。
by yuzman1953 (2013-02-05 11:16)
yuzman1953さん
ベックが、”Greensleeves”を演奏していたことすっかり忘れていましてね。
今回、これ書くあたり、検索をしてみたらこの演奏が出てきて、聴いてみたらこれが意外といいので、追加することに決めたものなのです。
気に入っていただき、追加して良かった思っています。
by 老年蛇銘多親父 (2013-02-06 06:25)
いい感じですね。ジェスロ・タル!。田園風景が雪の世界に様変わりだぁ。
by ミスカラス (2013-02-08 20:59)
ミスカラスさん
今回この記事を書くに当たりいろいろ調べててわかったのですが、グリンスリーブスのメロディ、クリスマスキャロルでも詩を変えて使われているのだそうで、『What Child Is This/ 御使いうたいて(みつかいうたいて)』というのがそれなのだとか。
イアン・アンダーソンもそうしたことで、この曲をクリスマス・アルバムに収めたのでしょうね。
by 老年蛇銘多親父 (2013-02-09 16:42)
日本人の心にも響く、哀愁あるメロディですね♪
ジェフベックバージョン、シンプルな味付けですが、そこがまた原曲へのリスペクトが感じられて良いですね♪
ちなみに、これを思い出しました
http://youtu.be/HRwdwCnbw-Q
英国民謡(グリーン・スリーブス)がモチーフだったとは知らなかったです(^_^)v
by mk1sp (2013-02-10 22:15)
mk1spさん
ジェフ・ベックの演奏に、キャプテン・ハーロックのOCARINAを重ねて聴いてみましたけど、なるほどベックのギターのバックアレンジのようにように聴こえてね。
グリーン・スリーブスがモチーフになっているのがよくわかりましたよ。
by 老年蛇銘多親父 (2013-02-11 17:33)
ねこのめさん
ハマコウさん
ねじまき鳥さん
sumijuniさん
thisisajinさん
マチャさん
タカさん
tromboneimaiさん
R8さん
ゆきママさん
せいじさん
みなさんどうもありがとうございます。
日頃聴き慣れた曲も、時にはそのルーツを探ってみるの面白いものだと思いました。
by 老年蛇銘多親父 (2013-02-11 17:38)
この曲もギターの練習曲でした。
400年も愛されてるなんて知りませんでした。
すごいですね!
by TAMA (2013-02-19 00:29)
TAMAさん
そういえば、ギターの練習曲にありましたね。
この曲、やっぱりギターが似合うような。
その昔、吟遊詩人がギターを携え街から街へと旅を続けながら、この歌を広めていった、そんな風景を思い浮かべてしまいました。
by 老年蛇銘多親父 (2013-02-20 05:51)