Jazzで聴くBeatles Part;1 [名曲名演の散歩道]

名曲名演の散歩道、今日の行先は、Beatlesの小道。

ビートルズが登場した時、まだ腕白少年だった私も、どこかで聴いたShe Love's Youのメロディを覚えてしまい意味もわからないのままに、シー ラブズ イェーイェーイェと歌いながら遊んでいた、思えばそれが私にとっての彼らとの出会いだったのですが。

以来耳にタコができるくらい接してきた彼らの曲、しかし、何度聴いてもその瑞々しさは色褪せることなく、40年以上たった今も多くのアーティストによって演奏され続け、また新しいファンを獲得している。

誰が言ったの定かではないのですが、当時彼らは20世紀のモーツアルトになると評したその言葉が、まさしくその予言通りになった、音楽史上に残したその大きな功績は不変もののように思っています。


さて、そのビートルズの名曲、これまで多くのがカバーがあるのですが、今回は、少し変わったところでジャズのミュージシャンによるビートルズ、その演奏の中からいくつかを選び、そのサウンドの世界を散歩することことにしたいと思います。

a-hard-days-nightm.jpg


そこで、今回取り上げるビートルズの曲は、となるわけなのですが、ジャズの場合、多くのアーティストによって取り上げられている特定の曲があるわけでもなく、どうも各アーティスト、自分の好みの曲を素材として使い、独自のイマジネーションをもって演奏しているかのようで、その選曲も人によってまちまち。

それは、ビートルズの曲のコード進行がジャズの核である即興演奏をするには、演奏しづらい面があるためのようにも思えるのですが、逆にそのことが演奏者それぞれの曲の解釈の仕方の違いを生み、演奏者の個性が強く現れたサウンドとなっているという点、ジャズならではビートルズを味わえるように思えるのです。

ということで、今回は曲を1曲に絞ることはせず、各アーティストの選んだビートルズ、それぞれ個性的なその演奏を楽しんでもらおうかと思います。



まず最初の演奏は、ビートルズの最初の主演映画『A Hard Day's Night』(邦題;ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)からその主題曲”A Hard Day's Night”から始めることにいたします。



Ramsey Lewis Trioによる演奏。
この方、以前に記事でご紹介しましたが(記事はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2011-04-29)、60年代半ばに台頭してきたロック、そのビードを巧みに取り入れた名曲”The In Crowd."で、一世を風靡した、ジャズ・ロック、フュージョンの元祖ともいうべきピアニストなのです。

この”A Hard Day's Night”の演奏も、1964年のこの曲のヒットから僅か2年後の1966年のライブ。
観客の大合唱と一体となった、実に楽しい演奏だと思います。
思わず歌詞が口元からこぼれてくる、ビートルズの親しみやすく知らず知らずのうちにその旋律を覚えてしまう、そうした彼らのサウンドの特徴が良くわかる演奏ではないかと思います。

そうそう、この後このPV、他の曲へと演奏が続きますが、3曲目もビートルズの有名な曲が演奏されています。
どんな曲が出てくるか、興味がある方はこの後も続けて聴いてみてください。


なんとも楽しい”A Hard Day's Night”の演奏で始めることにしましたが、続いての曲は。
今度も、ビートルズ主演映画のサントラ盤となったアルバムからの曲。

1965年発表のアルバム『Help!』(邦題;4人はアイドル)から、ビートルズと言えばこの曲という彼らの代表曲。
その曲を、現在日本を代表するジャズ・ミュージシャンのあの人が演奏しています。



そうです”Yesterday”、ギターのGábor Szabóのグループによる演奏です。

ポールが単独でレコーディングし、当時彼らのマネージャーであったブライアン・エプスタインのクラシック趣味により弦楽四重奏が加えられたというこの曲、私もこの曲が発表された翌年に初めてこの曲を聴いて、ロックに弦が加わり、それが破綻することもなく素晴らしい楽曲へと仕上がっていることに驚き、またロックという音楽の秘められた可能性を感じることになった、そうしたことが思い出されます。


この演奏、この曲の発表された1965年、信じられないことにサボはその同じ年、ジャズの素材としていち早く取り上げているのです。
この演奏を見つけた時、その曲をカバーしたサボの鋭い先見の明に、思わず頭が下がる思いを感じたものでした。


そして、そのレコーディングに一人の日本人が参加していた。
”Yesterday”の美しいメロディを優しく歌いかけるフルートを演奏しているその人。

その演奏者は、当時、ボストンのバークリー音楽大学に留学中だった若き日の渡辺貞夫さん。

どこか日本的情緒を感じさせるリリカルなサウンド、当時チャーリー・パーカーの信奉者でありバリバリのジャズ・マンであったナベサダの新境地を切り拓いたサウンドがここにあります。

70年代、日本のフュージョン・ミュージックの牽引者となった渡辺貞夫さん。
その原点は、このサボのグループへの参加で、多くの人たちに親しめる音楽の在り方を知ったことだったと語っています。

こうして見て行くとビートルズ、日本のジャズにもある意味影響与えていた、そんなことも言えるのかもしれませんね。



名曲"Yesterday"に続いて、次にご紹介する曲は、ビートルズ1966年のアルバム”Revolver”収められていたこの曲。

弦楽八重奏をバックに、今度はメンバー4人で収録した”Eleanor Rigby”を、今度は、エレキ・ギターのソロ演奏で聴いてみたいと思います。



日本では来日の興奮冷めやらぬ1966年の秋にリリースされたアルバム”Revolver”から、”Yellow Submarine”とカップリングで2枚目のシングルとしてカットされたこの曲、当時その反響は凄まじく、連日連夜ラジオから流れなっかた日はないくらいだったと、そんな昔の様子が思い出されます。


そうした思い出のある”Eleanor Rigby”、演奏するはStanley Jordan 。
ジャズの名門レーベルBlue Note Recordsが、1984年、その新生Blue Note としての再出発に際し、その第1号作品して発表されたアルバム”Magic Touch”からの演奏です。

ところでこのギター演奏、リズムと旋律が同時に聴こえてくる、とても一人で演奏いしているとは思えない部分ありましたよね。

もしかすると多重録音?


ではなく、これは正真正銘のソロの演奏なのです。
それこそアルバム・タイトルの”Magic Touch”の由来 !!

実はこのスタンリー・ジョーダンというギタリスト、両手でギターを弾いている。
というと、ギターを両手で弾くの当たり前じゃないかという声が、返って来てしまいそうですが、ここでいう両手で弾くというのは、本来弦を押さえるだけの左手も右手と同様に、弦を押さえつつはじいて音を出しているいうことなのです。

まるでギターをピアノように弾いている。
その超絶テクニックを駆使しての”Eleanor Rigby”、それは美しさの中に緊張感を生み出している、数ある”Eleanor Rigby”、の演奏の中でも最上ランクの演奏ではないかと思います。




さて、今回は1966年”Revolver”までのビートルズの楽曲の中から、いくつかのジャズ演奏を聴いていただきましたが、”Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band”以降の曲は、また次回に。

次第に複雑化していったSGT以降のビートルズのサウンドを、ジャズ・アーティスト達がどのようにジャズとして消化し聴かせてくれるのか、興味が尽きないものがあると思いますが、意外な人の意外な選曲でお聴きいただこうと考えています

そんな訳で、また次回もよろしくお願いいたします。



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マチャ

ナベサダさんのフルートでしたか(*^_^*)
演奏しているアーティストの腕前やセンスももちろんですが、
やはり原曲の魅力があるからこそ、どんなジャンルでもしっかり
ビートルズになるのでしょうね。

なんか毎回、原曲の良さが・・・というコメントばかりしてしまってスミマセン(苦笑)でも、本当にそう思います。
by マチャ (2013-03-12 17:23) 

老年蛇銘多親父

マチャさん

原曲の良さ、確かにそうですね。
他にも日本のピアニスト 佐藤允彦のミッシェルなどもあったのですけど、こちらはミッシェルのテーマの後は前衛的な演奏になってしまうので、載せるのは辞めましたけど、前衛的演奏の後、またミッシェルのメロディが出てくる。

すると、その美しさが身に沁み、凄くほっとした気持ちになる。

原曲の良さがあるからだと、つくづく感じ入って聴いてしまいました。

それにしても、ジャズ・アーティストのアプローチ、人それぞれで実に面白いものだと思っています。


by 老年蛇銘多親父 (2013-03-13 05:32) 

マチャ

他のアーティストによるカバーや別アレンジで聴いてみると、オリジナルだけでは分からない魅力に気づくことがありますね。


by マチャ (2013-03-14 16:30) 

ミスカラス

音楽の好みも年齢的に変化しますが、ガーボル・ザボのビートルズナンバー・・おぉ素敵ですね。何かウェス・モンゴメリーとかグランド・グリーン辺りがやるのではなく、ガーボル・サボという事実が実にカッコいいです。なんたってブリージンの作者でボビー・ウォーマックと共演してますから・・、この後、ジョージ・ベンソンで火がつきましたね。
by ミスカラス (2013-03-15 20:20) 

老年蛇銘多親父

マチャさん

そうなんですよね。
SGT以降の曲、これはビートルズ事態の演奏もかなり完成度が高いので、それを他のアーティストがどう取り組むか、この辺さらに面白いですよ。
by 老年蛇銘多親父 (2013-03-17 05:53) 

老年蛇銘多親父

ミスカラスさん

私も、最初サボのYesterdayを見つけた時、意外な感じがしました。

私の場合、サボはサンタナの演奏で知られるGypcy Queenの作者のイメージが強かったものですからね。

by 老年蛇銘多親父 (2013-03-17 06:04) 

Sanae C.

今月9月アルディメオラがビートルズトリビュートアルバムをリリースします。よかったらぜひチェックしてみてください!
by Sanae C. (2013-09-07 06:09) 

老年蛇銘多親父

SanaeC.さん
情報ありがとうございます。

ディメオラ出てきた時は、早いばかりでどうも好きなれないギタリストでしたけど、アコースティックも弾くようになってから、早さの中に味わいが出てきたように思え、今では時折聴いています。

彼の弾くビートルズ、また一味違ったものような気がしますので、ぜひチェックしてみたいと思います。
by 老年蛇銘多親父 (2013-09-07 16:19) 

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