Jazz[黒ハート]で聴くBeatles Part;2 [名曲名演の散歩道]

名曲名演の散歩道、Jazzで聴くBeatles 、前回は"Revolver"までの楽曲の中から3曲を選んでお話をいたしましたが、今回はいよいよ”Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band”以降の楽曲。

ある意味、現代のポピュラー・ミュージックの元ともなる多くの試みが行われたSGT以降の作品、そのどれもが、サウンド的に多彩かつ複雑で変化に富むものとなって来ていて、一見ジャズには向かないようにも思えるのですが、近年、ビートルズをスタンダードとして育った、若いジャズ・ミュージシャンによるジャズ界の世代交代のせいか、意外な曲がジャズで取り上げられ演奏されるようになって来たように思えます。

そんな訳で、今回は新旧アーティストの演奏を織り交ぜながら、まずは1967年の、ビートルズというバンドの範疇を越えロック史上、然も重要な歴史的名盤と言われている、SGTの楽曲の中から曲を選びお話を始めたいと思います。

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そのSGTの曲が、ジャズの世界で最初にレコーディングされたのは、驚いたことに非常に早く、このアルバムが発表されてからまだ1週間もたたない6月6日,7日のこと。

ギタリストのWes Montgomeryの演奏による”A Day in the Life ”ででした。
(記事はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2010-09-05

この変化に富んだこの曲をジャズで演奏するのは、かなり至難の業のように思われるのですが、ドン・セベスキーのウエスのダイナミックなギタープレーを浮き彫りにする巧妙なアレンジによって、ビートルズのこの曲にまたジャズのスリリングな一面を付加し、イージーリンスリング・ジャズという新しい分野を開拓したのがこの作品でした。

そこで、最初の曲は、この”A Day in the Life ”から。
ジャズのアーティストではないのですが、著名なギタリストのあの人も、この曲に挑んでいた。
私のお気に入りの”A Day in the Life ”となっている、その演奏からお聴きいただこうと思います。






英国の3大ロック・ギタリストの一人、Jeff Beckの演奏です。
この映像は1999年の来日公演のもの。
艶やかさを帯びた”A Day in the Life ”、その昔ロック・ギターの真髄ここにありと言われたベックならでは演奏ですね。
インストメンタルの場合、間違えば、単調な響きに陥ってしまいそうなこの曲を、ギターの音色に変化を加えながら、次第に盛り上げていく、ベックのギターの真骨頂をここに見たように思います。


さて続いてもSGTの中からの曲。
今度は、ピアノ・トリオの演奏で”She's Leaving Home” を聴いていただきたいと思います。



現代を代表するジャズ・ギタリストPat Methenyとの共演で話題を撒いたピアニスト、Brad Mehldauの演奏です。

幻想的な安らぎを感じさせる原曲を、ピアノ・トリオでどう料理するのか、私自身、メルドーのアルバム”Day Is Done”でこの曲を見つけた時は、皆目見当がつかなかったのですが、聴いてみるとフォーク・タッチのアプローチの中に、この曲の本質を十分に表現しつつ、いくつものメルド―ならではヴァリエーションが展開されている。

ビートルズの解散した1970年生まれの彼ならではの新解釈が、美しいピアノの音色で語られている、新時代の”She's Leaving Home”に出会ったようなそんな気がする演奏ではないでしょうか。


SGTからの曲は、とりあえずここまでとして、次は、1968年の作品”White Album”からの曲。
彼らの設立したレコード会社Appleレコードからの最初の作品となったこのアルバム、それまでの作品と比べ全体的に曲の統一感欠け、アルバムとしてのまとまりはないものと評価があるものの、逆にそれがメンバー一人一人の個性を浮き彫りして、収められた曲一つ一つがそれ単体でその魅力を味わえるという意味で、曲の多彩性も含めて実に重要な作品ではないかと思います。

ところが、この中からジャズの演奏で1曲となると、元々ジャズ向きな曲が少ないせいなのか、なかなかいいものが思い浮かばなかったのですが、最近仕入れた作品で見つけたこの演奏。

シンプルにもかかわらず、心に残った演奏ということで、
ジョン・レノンの”Julia”をジャズのインストメンタルで聴いてみたいと思います。



オルガンのJohn Medeskiを中心に結成されたバンド Medeski、Martin & WoodにギターのJhon Scofieldが加わったカルテットの演奏です。

Medeski、Martin & Woodは、90年代初頭に登場したバンドで、その音楽はファンク・フュージョンに前衛的手法加味した、変化に富み、気の抜けない演奏スタイルの持ち主。

一方共演のジョン・スコフィールドと言えば、晩年のマイルス・ディビスの1983年の作品”Star People”時に、このバンドに参加していたギタリストで、こちらの演奏もなかなか気の抜けないもの。

この”Julia”、この気の抜けないどうしが共演した作品”Out Louder”に収められているものなのですが、その気の抜けない張り詰めた演奏中で、唯一リラックスできる演奏で、疲れた耳に届くその清涼感は格別。

このバックで、ジョン・レノンが歌ってくれたならな、などという思いが胸をよぎります。



長いお話となってしまいましたが、次はいよいよ最後の曲。
ビートルズ1969年の作品”Abbey Road”から、ジョージ・ハリスンの手によるあの名曲を、ちょっと趣向の変わったピアノ・トリオの演奏でお聴きいただきたいと思います。



このピアノの主は、今やジャズ界ピアニストの最長老となってしまったJunior Manceの演奏で、曲は”Something”。

先日、この人についてはこちらの記事(http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2013-02-19)にUpさせていただきましたが、この演奏は彼の2001年の作品”Yesterdays”に収められていたもの。

静かなソウルでブルージーなサウンドを醸し出す彼のピアノ、近年はさらにその感がさらに強く表に出てきているように感じているのですが、この”Something”もかなりブルージー。

最初聴いた時には、かなり違和感あったのですが、何度も聴くごとに味が出てくる、その渋さが心に残る”Something”。だと思います。



ここまで、聴いていただいたJazz[黒ハート]で聴くBeatles。
その演奏スタイルは変われども、その瑞々しさは失われない。

こうした演奏を続けて聴くことで、あらためてビートルズの偉大さを知ったような気がします。

時には、こうした聴き方も面白いもの、皆さんはどのビートルズがお気に召したでしょうか。


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tromboneimai

最後のSomething、とても印象的でした。
曲自体も改めてこうやって聴くととても新鮮ですね。
ビートルズ恐るべしですね^^
by tromboneimai (2013-03-19 02:05) 

老年蛇銘多親父

tromboneimaiさん

Junior Mance、なかなか味があるでしょう。

しかし、こうやって聴くと、またその凄さがわかりますね。
by 老年蛇銘多親父 (2013-03-20 20:26) 

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