スランプに落ちた時に聴くサウンド;The Rolling Stones・Sticky Fingers 本日の作品;vol.112 [デジタル化格闘記]

今回は久々に音楽の話題。

今回の作品は、ここのところテーマに取り上げている「何度も聴いているのに、何かと言えば聴きたくなる私の好みの作品」の中から、私にとってその極め付けともいえるもの。

スランプに陥入り意気消沈となってしまった時に、この作品を聴くと何故か自分の周りを覆っていたいやな霧が晴れ自然とその後の進むべき方向が見えてくる、不思議な力を与えてくれる作品なのです。

それがこちらの作品。

rolling_stones-sticky-fingers-280med.jpg


The Rolling Stones、1971年発表の作品”Sticky Fingers”。

私にとって、そもそも洋楽を聴くきっかけとなったのは、このローリング・ストーンズだったのですが、60年代の半ばに初めて出会った彼ら、当時はビートルズ全盛時代だったのですけど、ブルースやR&Bをベースにした彼らのサウンドの方が私の好みであってしまったことから、以来ずっとお付合いすることになってしまったのです。

といいながらも、その後ストーンズもサイケデリック・ミュージックやボブ・ディランによるフォーク・ロックのなどの影響を受けて、一時、彼らのサウンドも本来の路線から大きく離れてしまていた時期もあり、そのため、ほとんど彼らのサウンドを聴かなくなってしまていた時もあったのですが、そのストーンズと再び向きあうようになったのが、1968年の作品”Beggars Banquet”、そして続いて翌年発表された”Let It Bleed”。

そこには彼らブルースやR&Bをベースした本来の姿が、それも以前にも増しさらに磨きがかかったサウンドがあり、私自身も以前に増して彼のサウンドに引き込まれて行くことになってしまったのです。


そして、その余韻を残し次に発表されたのが今回ご紹介するこの作品。

自らのレコード・レーベル ローリング・ストーンズ・レコードからの最初の作品として発表されたこの作品、日本でも、オーディオ・メーカーのパイオニアが設立したワーナー・パイオニア・レコードの初作品として登場したのですが、そのアルバムを手に入れた私、そのおかげ大変なラッキーを手に入れることなったのです。

それは、今や伝説となっているとある大物ロック・バンドのライブへの招待............!!



実は、この作品を買った時にそのレコードについて来たパイオニア・レコードの設立を記念してのレッド・ツェペリンの来日公演への招待の応募はがき、けして、くじ運が強いとは言えない私のこと、どうせ当たらないだろうと思いながら応募してみたところ、なんと驚いたことに、見事そのチケットをゲット、勇躍そのライブに参戦することになってしまったのです。


そんなこともあってか、このストーンズのこの作品、私にとってその後は、物事がうまく進まなくなった時やスランプに陥った時に、この作品を聴くと、何故か元気が湧いてきて、解決の糸口を見出す方向へと導いてくれる、不思議な霊力を与えてくれるアイテムとなってしまったのです。


さて、その験の良さを運んでくれるそのサウンド、ここで1曲聴いてみることにいたしましょう。
曲は、その後のストーンズのステージでも幾度なく演奏された彼らの代表曲の、やはりこの曲から始めたいと思います。









”Brown Sugar”ですね。
この作品を、当時初めて聴いて感じたのことは、これまでになく積極的にブラス・セクションを使い、厚くドライブ感のあるサウンドを実現しているということ。

中間部で聴かれるサックスのソロも、これまでのアルバムには見られなかったもの。

スートーンズは、当時から最高のライブ・バンドとして高い評価を得ていたのですが、この作品の前に発表されたライブ・アルバム” Get Yer Ya-Ya's Out! ”などを聴くと、自由奔放なアドリブ・プレーでスタジオでのオリジナル演奏とまた異なったその曲の魅力を作り上げていることに気付かされます。
この作品でも、ブラス・セクションに自由なスペースを与えていることで、スタジオ録音でありながらそうしたストーンズの自由奔放なライブ感を味わえるサウンドに仕立て上げている、そのように思うのです。


1969年に急逝したオリジナル・メンバーのブライアン・ジョーンズに代わって新規加入したミック・テーラーを加えての新生The Rolling Stones。
前作”Let It Bleed”にも収められていたブルース・バラード曲の”Love In Vain”という味わい深い曲がありましたけど、この”Sticky Fingers”にも素晴らしいブルース・バラード曲が収められています。
それでは、今度はそのブルース・バラード曲で、ストーンズ魅力のまた違った一面を味わってみることにしたいと思います。

曲は、”Wild Horses”です。



しっとりと一語一語を噛みしめるように歌い上げてゆくミック・ジャガー。
ブライアン・在籍時代にはこういったじっくりと聴かせる曲はなく、”Let It Bleed”以降のストーンズの新境地が、ここにあるように思うのです。

それまで私は、ミックのヴォーカルについてはいささか疑問を持っていたのですが、この曲を聴き、その独特な表現で聴く者を歌の世界に引き込んで行ってしまう、優れた歌唱力をあらためて知ることとなってしまったのです。

そういう意味でこの曲は、彼らがミュージシャンとして大きく成長を遂げたことの証として、数あるストーンズの曲の中でも屈指の名曲の一つではないかと思うのです。


ところで、このアルバムのジャケット、見ての通りジーパンが描かれているのですけど、そこにちょっと面白い仕掛けがあるのです。

それが、この写真??

IMG_1064.JPG


お分かりですか。
もう少し、仕掛けの部分を拡大してみましょうか。

IMG_1065.JPG


いかがですか。

そうチャックの部分............


そこには本物のファスナーが使われていた。

ちょっとした遊び心。
最近のCDではあまり見られなくなりましたが、LP時代はこうした遊び心のあるジャケットが結構あったのですけどね~。

それにしてもストーンズ、こんな所にもファンを大切にしてきた彼らのサービス精神が現れているように思えます。


それではこの辺で、この作品から1曲。
この曲も、私の好きなストーンズ・ナンバーの一つなのですが、今度はミックがブラス・セクションをバックにしっとりと歌い上げているブルース・ナンバーの”I`ve got the Blues”でお話しを締め括りたいと思います。

ここのところ、またしても仕事連鎖に巻き込まれてしまいパニック状態の日々が続いていた私、おかげでじっくりと音楽を楽しむことができなくなってしまっていたのですが、久々にこの作品に接し、少し心にゆとりが戻ってきたかのよう。

私にとってのストーンズ・マジック、今尚、顕在でした。





Track listing
All songs written by Mick Jagger and Keith Richards, except where noted.

1. "Brown Sugar"
2. "Sway"
3. "Wild Horses"
4. "Can't You Hear Me Knocking"
5. "You Gotta Move" (Fred McDowell/Gary Davis)
6. "Bitch"
7. "I Got the Blues"
8. "Sister Morphine" (Jagger/Richards/Marianne Faithfull)
9. "Dead Flowers"
10. "Moonlight Mile"


Personnel
The Rolling Stones
Mick Jagger – lead vocals, acoustic guitar on "Dead Flowers" and "Moonlight Mile", rhythm guitar on "Sway", percussion on "Brown Sugar"
Keith Richards – rhythm guitar, acoustic guitar on "Brown Sugar", "You Gotta Move", "I Got the Blues" and "Sister Morphine", twelve string acoustic guitar on "Wild Horses", lead guitar on "Wild Horses", the first part of "Can't You Hear Me Knocking" and "Bitch", co-lead guitar on "Dead Flowers", backing vocals
Mick Taylor – lead guitar, acoustic guitar on "Wild Horses", rhythm guitar on the first part of "Can't You Hear Me Knocking" and "Bitch", slide guitar on "Sway" and "You Gotta Move", co-lead guitar on "Dead Flowers" (not present during "Sister Morphine" sessions)
Charlie Watts – drums
Bill Wyman – bass guitar, electric piano on "You Gotta Move"

Additional personnel
Paul Buckmaster – string arrangement on "Sway" and "Moonlight Mile"
Ry Cooder – slide guitar on "Sister Morphine"
Jim Dickinson – piano on "Wild Horses"
Rocky Dijon – congas on "Can't You Hear Me Knocking"
Nicky Hopkins – piano on "Sway", "Can't You Hear Me Knocking"
Bobby Keys – saxophone
Jimmy Miller – percussion on "Can't You Hear Me Knocking"
Jack Nitzsche – piano on "Sister Morphine"
Billy Preston – organ on "Can't You Hear Me Knocking" and "I Got the Blues"
Jim Price – trumpet, piano on "Moonlight Mile"
Ian Stewart – piano on "Brown Sugar" and "Dead Flowers

Recorded
2–4 December 1969, Muscle Shoals Sound Studio, Sheffield, Alabama; 17 February, March – May, 16 June – 27 July 17 – 31 October 1970, and January 1971, Olympic Studios, London, UK; except "Sister Morphine", begun 22–31 March 1969

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ミスカラス

そうでしたね。ロックのアルバム!昔は趣向を凝らして、色んな形態がありましたね。アリス・クーパーのパンティ付きのジャケとか、フェイセズのウーララのアルバム等・・目玉が飛び出すのとか、トラフイックの六角形のアルバムとか。
その点、ソウルのアルバム等はジャケの楽しみはなかった。
by ミスカラス (2014-06-16 19:53) 

老年蛇銘多親父

ミスカラスさん

こういったジャケットは、ソウルもそうですけどジャズにもありませんでしたね。

しかし、こうしたロックのアルバムのジャケットのおかげで他のジャンルのアルバムも、この時期から、デザインに気を使うようになり質的にも良くなっていったように思います。

ジャケットを楽しみながら音楽を聴く、そうした楽しみもあったのですけど、今やダウンロードで音楽を手に入れられる時代、何か寂しさを感じます。

by 老年蛇銘多親父 (2014-06-18 05:39) 

raccoon

ローリング・ストーンズ あまり知らないのですが、「Start me up」とか、「Satisfaction 」とか聞くと、元気が出そうですね。

ジャケット見て、ずっと後のブルース・スプリングティーンの「Born in the U.S.A.」を思い出しました。

このように、面白いジャケットであれば、飾っておきたくなるでしょうね。

by raccoon (2014-06-20 22:18) 

老年蛇銘多親父

raccoonさん

ローリング・ストーンズ とかボブ・ディランというと名前はみな知っているというのに曲は知らないという人多いですよね。

両者ともビートルズに比べるとかなり癖が強いというのが原因なのでしょうが、聴いてみると奥が深くて結構面白いですよ。

そうそう「Born in the U.S.A.」のジャケット、これを初めて見た時はパクったなと思いました。


by 老年蛇銘多親父 (2014-06-21 10:34) 

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