My Live Recording Libraryより・Art Farmer&Tommy Flanagan in Tokyo '79  本日の作品;vol.115  [デジタル化格闘記]

デジタル格闘記と題したこのコーナー、さほど忍耐強くない私としてはよく続いたもので、今回が115話目。
そこで今回は少し半端ながら、その115回目を祝って、My Live Recording Libraryより、私のお気に入り最有力の演奏をお届けすることにしたいと思います。

さて、我が家レコード・ライブラリー、そこには、これまでラジオやTVで放送されたライブをエアチェックして残しテープ類をリミックスし編集し直したCDやDVDが結構あるのですけど、中には、なかなかの名演なのに市販されていないため、通常は接することが難しい音源も結構あるようなのです。

そういう訳で、今回はそうした音源の中から、渋めの演奏を一つ。

1979年5月に来日した名ジャズピアニストのTommy Flanagan とトランぺッターのArt Farmer、この二人の率いるカルテットの東京でのライブ・ステージの演奏をお届けしたいと思います。

実は、このライブ、当日、私もそのコンサートに出向きその生のステージに接することができたのですが、今ご紹介する演奏は、後日その日のステージの模様がFM放送でオン・エアされることを知り、オープン・リール・レコーダーに重いテープを仕掛け録ったもの。

今でも、この演奏を聴くと、その日の4人の仕草、様子が瞼の裏に浮かんでくる、フラナガンとファーマー、共に故人となってしまった二人の生の音を聴くことが出来たという喜びが湧いてくる演奏なのです。

それでは、そのステージ、フラナガンのファーマーを呼び出すMCからそのサウンドを聴いていただくことにいたしましょう。



1950年代半ばか60年代初めに多くの名レコーディングを残して来た、ファーマーとフラナガン。
60年代モードやフリージャズの旋風が巻き起こる中、一時は影の薄い存在となってしまっていたのですけど、70年代半ば従来のジャズが見直されるようになると、旧来の名手たちが再始動、レコーディングを開始しています。
中でもフラナガンは、同じくピアニストのハンク・ジョーンズ等と共に、当時そのカム・バック組の本命として、注目を集めていた、そうした記憶が残っています。

しかし、私は先行したハンク・ジョーンズに対して、フラナガンのそれは、当初、なにか柳下のドジョウ様な感じがして、ちょっとその演奏はいかがなものかと疑問に思っていたのです。

そして、疑問の解答を得るため、このコンサートに出掛けたのですが。

果たしてその結果は!!

良!!良!!良!!


そのうえ、その生の音に接して、私が50年代の作品で彼のピアノに持っていたイメージ、まろやかな珠玉の様な美しいタッチ、それはいいのだけどどこか弱々しさを感じてしまう、そうした思い対し、以外にもその美しいタッチと合わせ、がっしりとした強靭さがあることを発見することになってしまったのです。

さて、そのフラナガンの強靭さを発見したコンサートの演奏から、もう1曲。
今度、フラナガンの相方、ファーマーのソロにも耳を傾け、渋い燻銀の技を十二分味わていただきたいと思います。

曲は、”Namely You”です。



ここで、フリューゲル・ホンを演奏しているアート・ファーマー、私は、以前より派手さはないものの、その物思いにふけっているような趣味のよいソフトな音色のソロが好きで、贔屓にしてきたのですが、こちらもその生の音に接して、そうした控えめな感じのする演奏の中にも、時折聴く者をはっとさせるような鋭さがあり、それが彼のサウンドをさらに味わい深いものにしていることをあらためて知らされことになったのです。

そして、それ以前に聴いた60年のファーマー名義の二人の共演作品”Art”、そこには、そうした隠し味が潜んでいて、それがこの作品を価値を一層高めていたことに気付かされることになったのです。
 
さて、この日、この二人を支えた残りの二人のメンバーのReggie Workman(ベース)とJoe Chambers(ドラム) 。

フラナガン、ファーマーに二人比べ一世代若い60年代に登場したこの二。
ワークマンは60年代初頭、その頃マイルス・ディビスの下を離れ独自の道を歩き始めたジョン・コルトレーンのグループでベースを務めていたことで知られるアーティストで、一方のジョー・チェンバースは、新進ヴィブラフォン奏者ボビー・ハッチャーソンのグループに参加、新しい感覚のドラム・ワークでハッチャーソンを盛り立て、Blue Note レコードにその名演を残しさしめた人物。

共に、モーダル・ジャズのの洗礼を浴びた新感覚を身に着けた二人を得て、フロントに立つフラナガン、ファーマーの二人のプレーも、一層鋭さを増している、そうした感を強く受けるのです。

そして、この二人、特に驚いたのはワークマン。
コルトレーン時代の彼のベース、コルトレーンが好んだベーシストのポール・チェンバースや、ワークマンの後にコルトレーンの下に参加したジミー・ギャリソンと比べると、どこか線が細く頼りなさを感じたものでしたが、この日の彼のベースは、その時の印象とはまるで違った太く豊かな音量でがしっりと迫りくるものだったのです。

今回聴いていただいた二つの演奏にも、そうしたワークマンの素晴らしいベース・ワークが刻まれていると思うのですが、その当りもまたじっくりと聴いていただければと思っています。

DSCN4283m.JPG


私にとっては、大変思い出で深いコンサートの自家録音、35年の時を経てもいまだその色は焦ることなく、むしろ輝きを増している、そう感じているのですが、いかがだったでしょうか。

ここのところ、出張の連続に明け暮れる多忙な日々が続き、なかなか筆をとれませんが、次回も、そうした珍しい音源、また記事にUpしてお楽しみいただければと考えていますので、その節は、またお立ち寄り下さい。

Track listing
1.Chelsea Bridge
2.Here's That Rainy Day
3.Cherokee Sketches
4.Namely You
5.Yesterday's Thoughts
6.Oleo

Personnel
Art Farmer(flh)
Tommy Flanagan(p)
Reggie Workman(b)
Joe Chambers(ds)

Recorded
May 24 1979
東京新宿 厚生年金大ホール
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ミスカラス

ひぇ・・初心者にとって難しいなぁ。モーダル・ジャズってモード・ジャズとは又違うのですか?。
by ミスカラス (2014-07-20 08:56) 

老年蛇銘多親父

ミスカラスさん

難しいとは、どうもすみませんでした。

モーダルとモード、これは同じことなのですけど、要は、70年代に復帰した50年代の名プレヤ-達が、60年代登場した若手プレヤーと組んで、見事にリニューアル、魅力的なプレーをしていたということで、そちらの方は余り構えずに読んでいただき、じっくりと音楽の方を楽しんでいただければと思っています。

by 老年蛇銘多親父 (2014-07-20 12:32) 

ハンコック

老年蛇銘多親父さん

Tommy Flanaganといえば、BLUE NOTE、PRESTIGEに物凄い録音を残していますが、
こちらの演奏も良いですね!

特に、”Namely You”は、曲が好きというのもありますが、凄く良いですね。

そんなに盤を持ってはいないのですが、
このあたりの年代のを聴きたくなりました。

しかし、オープンリールのお宝、羨ましい限りです。
こうして聴かせていただけるのが、
本当にありがたいです。
ありがとうございます!

by ハンコック (2014-07-20 17:42) 

ハンコック

老年蛇銘多親父さん
当方のBlogに老年蛇銘多親父さんへのリンクを
張らせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか。
どうか、よろしくお願いいたします。

by ハンコック (2014-07-20 17:48) 

老年蛇銘多親父

ハンコックさん

こうした録音、若い時に幻の名盤ブームというのがありましてねえ!
その時、一枚のLPがもの凄い高額で取引されてるのを知り、ジャズというのは、アドリブ芸術であるだけに、そのアーティストの絶頂期のものは貴重なんだということを悟り、金もなかったので、その当時のライブ音源、それがいずれ貴重なものになるのではと思い録り貯めていました。

ずいぶん録り貯めましたが、これはという音源はなかなかないもので、金銭的価値はともかく、ジャズの面白さを多くの人に知ってもらいたいと考え、ここに公開することにしました。

喜んでいただき、嬉しく思いますとともに、リンクの件、こうした音源を、さらに多くの方に知ってもらえたらという気持ちで、了解いたしたく思います。

今後ともまたよろしくお願いいたします。

それと、この時期のフラナガン、充実した演奏が多いので、是非とも聴いていただければと思います。
by 老年蛇銘多親父 (2014-07-20 20:31) 

ハンコック

老年蛇銘多親父さん

リンクの件、ありがとうございます。

確かにライブは、神が下りたかのような演奏を見せるときがありますよね。
ライブの後に、アーチストのマネージャーさんとお話をする機会があるときなどは、マネージャさんも
今日の演奏は特に凄かったと豪語されるときがあります。もう二度と聴くことができない刹那的なものがあり、まさに幻ですよね。
録音であっても、この神が下りた演奏を聴くことができれば、これほど至福なときはありません。

こういった意味でも、ジャムセッションを主に録音した
PRESTIGEのFLANAGANの盤は、まさに幻の名盤なのでしょうね。

by ハンコック (2014-07-21 06:13) 

ハンコック

老年蛇銘多親父さん
RSSでリンクを張ろうとしたのですが、
なぜかエラーになり、登録することができないようです。
原因をso-netのほうに聴いてみようと思います。

by ハンコック (2014-07-21 07:01) 

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