千変万化のアドリブ世界へ;Miles Davis・My Funny Valentine 本日の作品;vol.114   [デジタル化格闘記]

早いもので、もう7月。

5月後半な異常な暑さに、今年は一体どうなることかと心配していたのですが、ここのところ梅雨のこの時期にしては意外としのぎやすい日が続き、外での仕事することの多い私にとっては、この天気は大変ありがたいばかり。

今年の夏は、外での仕事のスケジュールがびっしりと詰まってしまってこともあり、これからもこんな気候ならばいいのになと願うものの、おそらくそうはならないだろうと思い、熱中症にならぬよう十分に構えで臨まなければと考えを決めたところで、今日のお話。

これまで「何度も聴いているのに、何かと言えば聴きたくなる私の好みの作品」をテーマに記事を書いてきましたが、ここのところ取り上げているアーティスト、ちょとマイナーどころが続いてしまったということで、今回はネタを変え超メジャーどころのアーティストの作品の中から一つを選んでみることに。

この作品、タイトルのアドリブということでお分かりでしょうが、実は私がまだJ-POPやRockという音楽などしか興味のなかったころ、友人の家で初めて聴かされ最初にお気に入りとなったJazz作品、その後、友人からレコードを借りてテープに録音して繰り返し聴き続けて来たものなのです。

その作品というのがこちら!!

my funny valentine miles davis.jpg


Jazzの帝王といわれたMiles Davisの1964年のLive作品 ”My Funny Valentine”。
1960年代初頭のマイルスというと、1959年、現代のジャズへと続くモードジャズの道を切り開いたといわれる、ジャズ史上において歴史的価値を問われる大名盤”Kind of Blue"の制作した直後のことで、その創造力は最大限のまで達していたと思われるのですが、ことスタジオ制作の作品となると、1961年Hank Mobey (tenor saxophone) Wynton Kelly (piano) Paul Chambers (bass) Jimmy Cobb (drums)のクインテットで吹き込んだ ”Someday My Prince Will Come ”と1963年の”Seven Steps to Heaven”ぐらいで、あとは1965年の”ESP”に至るまでの間、残りすべてがライブ作品となってしまっているのです。

そして、そのサウンドは、クールで理知的雰囲気のあったスタジオ録音の”Kind of Blue"のスタイルとは大きく異なり、そのほとんどがソロが飛び交い絡み合う熱気溢れるものなっているのです。

それは、”Kind of Blue"の制作の後、マイルスのもとを去ったテナー・サックス奏者のJohn ColtraneやピアニストBill Evansに代わる、新時代のジャズを創造できるアーティストを求めライブを繰り返していたためだからのようで、そのことは、60年から64年のサックス奏者のWayne Shorterの加入までの間の目まぐるしいメンバーの交代を見ても分かるように思えるのです。

さて、1964年のこの作品は、そうした中でマイルスが、その前年に獲得した60年代マイルスを支えることとなる若き俊英リズム・セクション、(Herbie Hancock (piano) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums) )の3人を従え、7色の音色を持つという彼トランペット、ライブの中でその技巧駆使し若き彼らに挑んで、ソロの極みともいうべきプレーを展開している緊張感溢れるもの。

現代ジャズの中心的存在となったリズムセクションの若き日の3人の天才的プレーもさることながら、マイルス・ディビスの凄さを改めて認識することができるのではないかと思います。

それでは、ここでいつもの通りその演奏、1曲目はちょっと長めですが、このアルバム表題曲の”My Funny Valentine”で、マイルスの凄さをじっくりとご堪能していただくことにいたしましょう。









緩急目まぐるしく変わるリズム。
一つの曲の中から、いくつもの表情が生まれ出る、メンバー各人の持つ、無限のイマジネーションの豊かさがうかがい知れる演奏ではないかと思います。

テナー・サックスは、George Coleman 。
私自身この人のテナーは、どちらかというと好きなのですけど、他の4人と比べるとそのソロは凡庸な感じを受けてしまいます。、
その印象は、それは他の4人があまりも凄すぎるということなのかもしれないのですけど。


その4人の中でマイルス以外に耳を傾けてもらいたいのが、ドラムのTony Williams。
複雑かつスピーディなスティックさばきから叩き出される彼の繊細かつ大胆なリズムは、時として他のプレヤーに鋭い刺激を与え、音楽の流れを変えてしまうほど。

この作品でもそうしたプレーを聴くことができるのですが、この時のトニーの年齢はわずか17歳。
17歳の少年が、マイルスすらもそのリズムで、その動きを変えさせてしまっているのです。

それでは、そうしたトニーの華麗なスティックさばきが聴ける曲、あの名盤、”Kind of Blue"に収めれていた曲で”All Blues”を、このアルバムと同じ年のイタリアでのライブ映像ありましたのでこちらでお楽しみください。



いかがでしたか。
映像を見ると。サックスにウェイン・ショーターが登場しているので、この作品より後のライブと思われますが、今やジャズ界の重鎮となったハービー・ハンコックやロン・カーター、いやはや若いですね~。


ソリストとして、さも脂の乗っていたと思われる時期のMiles Davis.。
その後はウェイン・ショーターを迎え、ソリストしてよりはサウンド・クリエーターとしての色彩が濃くなって行き、こうしたバリバリとトランペットで歌う姿を聴くことは少なくなってしまうのですが、この時期に残した数々のライブ盤には、そうしたマイルスというトランぺッターとしての凄みが、しかっりと捉えられているように思います。

中でも、この”My Funny Valentine”はバラード中心の選曲が収められていることもあり、繊細さと熱い刺激が入り混じった、マイルスならではのサウンドを届けてくれる、実に貴重な記録だと思うのです。


Track listing
1."My Funny Valentine" (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
2."All of You" (Cole Porter)
3."Stella by Starlight" (Ned Washington, Victor Young)
4."All Blues" (Miles Davis)
5."I Thought About You" (Johnny Mercer, Jimmy Van Heusen)

Personnel
Miles Davis — Trumpet
George Coleman — Tenor Saxophone
Herbie Hancock — Piano
Ron Carter — Double Bass
Tony Williams — Drums

Recorded
February 12, 1964
Philharmonic Hall of Lincoln Center, New York City

DSCN4235m.JPG



最後におまけの1曲。
この作品からではありませんが、この作品と同日のライブの演奏で、"Four" & More”というアルバムに収められていた曲”Joshua ”、この演奏も気に入りなので貼り付けておきました。
また、ご一聴していただければと思います。


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ハンコック

こんにちは。
”My Funny Valentine”と"Four" & More”
この2枚のLIVE盤は傑作ですよね。

自分は、初めにKind Of BlueのSo Whatを
イントロが終わり、テーマを一聴した瞬間、やられました。
あの時の感動は、今でも覚えています。
それから数年後、このSo Whatを超える演奏を聴きました。
それがこの"Four" & More”でのSo Whatでした。
こちらの演奏のほうが凄い!
Kind Of Blueを超える演奏がある。
そう感じたのでした。

Liveということで、スタジオという枠を超え
アドリブもいい具合ですよね。
JazzにはやはりLiveが似合いますね。

おっしゃる通り、Tony Williams のスピード感ある
スティック裁きです。
これによりかなりスリリングな演奏に仕上がっているように思います。

by ハンコック (2014-07-12 15:27) 

mk1sp

マイルスデイビス、名前は良く耳にしますが、お姿は初めて見たように思います、寺島進さん似?(笑)

1曲目は長い曲の中で抑揚があって良いですね♪
ピアノだけだと素敵だけど少し暗くなりそうな所、トランペットが被さると力強さがあって相乗効果が良いですね♪
by mk1sp (2014-07-12 21:43) 

老年蛇銘多親父

ハンコックさん

"Four" & More”のSo What、これはいいですね。
そのSo What、In Tokyoの演奏もいいですよ。

こちらはSaxが、コールマンではなくサム・リバースなのですけど、この人の演奏、少しばかり前衛がかっていて、このためトリオの3人もその演奏につられて、前衛がかったスリリングなソロを展開してるのですよ。

その後サム・リバース、マイルスの目指していた音楽とはそのスタイルが相容れないものだったのか、この一枚の録音を残してマイルスの下を去って(クビ?)いますが、少し毛色の違った緊張感のある演奏で、こちらのSo Whatも、なかなか捨てがたいと思っています。
by 老年蛇銘多親父 (2014-07-13 17:14) 

老年蛇銘多親父

mk1spさん

マイルス・ディビス、ルックスもなかなかいいでしょ。

その”My Funny Valentine”、ここにある抑揚、マイルスだからこそのものではないかと思っています。

もし、この時期のライブ、興味がおありでしたら”Miles In Europe”、などもいいと思いますので、一度聴いてみてください。

by 老年蛇銘多親父 (2014-07-13 17:25) 

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