本日の作品;vol.70;Emerson, Lake & Palmer‣ Trilogy [デジタル化格闘記]

最近、クラシックサイドからよく取り上げられているロック・アーティストというと、思い浮かぶのはキース・エマーソン。

つい最近では、吉松隆の編曲した彼の作品”タルカス”のクラシックオーケストラによる演奏がTVで放映されたり、少し遡り7年ほど前には、ピアニスト黒田亜樹さんが、同じくこの”タルカス”を室内楽のフォーマットにアレンジ演奏をした作品を発表したりと、40年の月日越えちょっとしたブームになっているかの様子。

私も都度これらの作品をこのブログでも取り上げてきましたが、やはりオールドロックファンとしては当時純音楽のサイドから冷たく見られていたロックが、現在、そのサイドからの積極的なアプローチを受けるようになったと感じ、なにやら嬉しく感じています。

黒田亜樹さんの記事はこちら

吉松隆さんの記事はこちら

ところが、この”タルカス”を演奏していたグループ、Emerson, Lake & Palmer(EL&P)については、いまだ取り上げたことがない。[パンチ]


エマーソンに関しては、以前EL&Pの前に参加したグループ、Niceについて取り上げたこともあり、私自身もこのグループの演奏はかなり気にいっているのですが、当時、現代クラッシック的な曲を作曲、それを自己のグループで演奏しようとしていたエマーソンにとっては、ジャズ指向の強い リー・ジャクソン、ブライアンとデビンスンとの組み合わせでは、その演奏の実現は得られないと考えていたように思えるのです。

Niceについてはこちら

そして、そうしたエマーソンの次のステップを実現するために結成されたのがこのEL&Pだった。

当時バレエ音楽に興味持ち、ロック界きっての美声ヴォーカルを持つ男と言われていたキング・クリムゾンのベーシスト、グレック・レイクと繊細多彩かつメロディアスなリズムをたたくドラマー、アトミック・ルースターのカール・パーマーの二人との出会いは、見事エマーソンの狙いを実現しロックの歴史に大きな足跡を残すことになったのでした。

そこでこのEL&P、今回取上げるのは、彼ら4作目の作品、1972年発表の”Trilogy”

trilogy elp.jpg


本来、EL&Pと言えば、先の”タルカス”かまたはこの作品、

展覧会の絵 el&p.jpg


”展覧会の絵〟の方が名高いのですけど、タルカスは先のクラシックの演奏で書いたこともあり、また”展覧会の絵”は、彼らのリハーサルの合間にエマーソンが弾いていたムソグリスキーの作曲によるこの曲に、レイクとパーマーが即興でバックをつけて来たことからレパートリーになったもので、彼らの作曲した曲ではないことから、彼の作曲による曲を中心構成され、EL&P全盛時のものとしてこの作品を選びました。

さてトリロジー、タルカス、展覧会の絵 という作品の影に隠れてしまている感もあるのですが、永遠のフーガ、トリロージーという大作を中心に、ラベルの名曲 ”ボレロ”やジャズからは オリバー・ネルソンの名盤”ブルースの真実”で有名な”ホウ・ダウン”を、El&P流ロックアレンジで聴かせているなど、バライティ富んだ内容の作品ではないかと思います。

特に2曲の大作では、流麗なエマーソンのクラシックコンサートスタイルピアノソロ、レイクの美しいヴォーカルに加え、70年にいち早く取り入れたシンセサイザーの音色効果的に作用し、いかにもネオ・クラシックという雰囲気を醸し出しています。

また、レイク作曲の”From The Beginning”では、レイクお得意の親し易いメロディが、大作の後の程よい癒しの時間を与えてくれなど、他の二人のメンバーの個性も見てとれる楽しさを味わえます。

それでは、この作品の中から、このアルバムの表題曲 Trilogy をどうぞ。



抒情的なクラシック的な導入部から、パーカシッブな現代音楽的サウンドへ、なかなか聴き応えがあるサウンドだと思いませんか。


このアルバムの発表の直後、EL&Pは初来日を果たしていますが、この公演では、Liveで最も狂える男と言われたエマーソンのオルガンに剣を刺し、挙句の果てには日本刀まで繰り出してのド派手なライブパーファンンスと、馬鹿でかい音量に話題が行き、音楽の方の評価はほとんど埋もれてしまっていたのです。

しかし、あらためて彼らの音楽を聴くと音ひとつひとつに細かい配慮がなされていて、聴くにつれ都度新しい発見する面白さがあることに気付きます。

そこで、もう一曲。グレッグ・レイクの美しいギターが印象的な”From The Beginning”をお聴きください。



このアルバムのタイトルの”Trilogy”は「3部作」とか「3部曲」と訳されるのですが、ここには、メンバーによる三位一体の音楽という意味も込められているのだそうで、ジャケットもそれを意味するように、三人の体の部分が合体した絵が描かれています。

また、LPでの内ジャケットは、森の中に沢山のメンバーが写っている合成写真が使われた幻想的な物。
このジャケット、どうやらCDでは紙ジャケット盤でしか見れないのだとか。??

ということで、内ジャケット、最後にちょっとお見せしましょうか。

DSCN4030.JPG



Track listing

1."The Endless Enigma (Part One)" (Keith Emerson, Greg Lake)  永遠の謎
2."Fugue" (Emerson) 
3."The Endless Enigma (Part Two)" (Emerson, Lake)  永遠の謎
4."From the Beginning" (Lake)
5."The Sheriff" (Emerson, Lake)
6."Hoedown" Taken from Rodeo (Aaron Copland)
7."Trilogy" (Emerson, Lake)
8."Living Sin" (Emerson, Lake, Carl Palmer)
3."Abaddon's Bolero" (Emerson) 奈落のボレロ


Personnel

Greg Lake: Vocals, electric & acoustic guitars, bass,
Keith Emerson: Hammond organ C3, Steinway piano, zoukra, Moog synthesiser III, mini Moog model D
Carl Palmer: Drums, percussion
Eddie Offord: Engineer
Barry Diament: Mastering

Recorded
January 1972, Advision Studios, London, England

DSCN4032.JPG




ところで、音源発掘、デジタル化格闘記の音楽記事、今回で150稿目。
できる限り同じアーティストを取り上げないよう、書き綴って来ました。

200稿達成までは、毎回違ったアーティストを訪ねる旅をこれからも続け行きたいと考えていますので、またよろしくお願いいたします。

それでは、次の出発に向けて、EL&Pのクラシックの名曲をアレンジした名演、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」より行進曲を題材にした”Nutrocker”をお聴きください。


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neopon

EL&Pはいわゆる4大プログレの中で他の3つより異常に評価が低いですよねえ。昔、レコードを売っ払った時にEL&Pだけ買い取り値が低かったような記憶が。[__ふらふら]
最近EL&Pの評価が高まってるというのは知りませんでした。
by neopon (2011-05-22 20:31) 

R8

「恐怖の頭脳改革」も名盤ですよね。EL&Pは時間が経ってから1stやトリロジーも好きになりました。最初は派手なのが好きでしたので・・・
by R8 (2011-05-22 21:29) 

老年蛇銘多親父

R8さん

恐怖の頭脳改革もいいですね。
ただ、こちらはジャズ的な要素が強いように思え、ここではクラシック的要素が強いこの作品を選びました。

90年代の再結成の作品もいいので、こちらも聴いてみるといいですよ。
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-23 05:50) 

老年蛇銘多親父

neoponさん

EL&P、やはりあのライブでのド派手なアクションが評価を下げていたのでしょうね。

当時、EL&Pはプログレでないとか言われ、90年代には英国のシンフォニー・オーケストラが往年のプログレを演奏したアルバムを多く出しているのですけど、EL&Pは取り上げられていない。

彼らの音楽、現代クラシック的要素が強いのですけど、どうもそれが理解されなかったとういうことなのでしょうね
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-23 05:51) 

抹茶

EL&Pと言えば「展覧会の絵」。
ピアノ組曲をシンセサイザとオルガンでアレンジ!
う~ん!画期的編曲に驚きましたが、当時も今もサッパリ解りません(-"-;)
by 抹茶 (2011-05-27 12:14) 

老年蛇銘多親父

抹茶 さんコメントありがとうございます。

わからないと言われてはどう返事をしていいかわかりませんけど、とりあえずプロムナードを歩きながら、目に止まった絵を一つ一つ鑑賞していく気分で聞いてみるのがいいでしょう。

構えないで感性で味わうのがいいのでしょうけど、人それぞれ好き嫌いはありますからね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-28 12:24) 

老年蛇銘多親父

ねこのめさん
ヒサさん
R8さん
akiyoshiさん
かなっぺさん
マチャさん
Markさん

皆さん☆⌒(*^-゜)vありがとうございます。

by 老年蛇銘多親父 (2011-05-28 12:37) 

snowman

四大プログレバンドをあまりまじめに集めてない自分ですが、EL&Pだけはなんだかんだで結構持ってます(この作品も持ってますよ^^)

ところで、内ジャケットの写真ですが、自分の持ってるCD(透明ケースの普通の輸入盤CD)だと、ちゃんと見開き全面で載ってますよ
by snowman (2011-05-29 02:08) 

老年蛇銘多親父

snowmanさんコメントありがとうございます。

今でこそEL&Pは、4大プログレのひとつに数えられていますけど、プログレ全盛の当時はEL&Pはプレグレではないとまで言われた時期があったのです。

かくいう私もピンク・フロイド、イエス中心で、EL&Pはあまり真面目に聴いていませんでした。
彼らを見直したのは、純粋のクラシック作品を聴くようになり、現代音楽の世界に首をつこんでからでしたかね。


裏ジャケットないのがあると聞いて、あれいいのになと思い写真を掲載したのですけど、ないというのはやはりおかしいですよね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-29 16:24) 

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